生生流転




ドリーム小説
#5





「…っはぁ〜よく寝た…かな?」

パチッと目が覚めて身体を起こした
だが知らない風景が入ってくる。

「あれ?ここ…どこ?」

「姉ちゃん、目が覚めた?」

小学生くらいのツンツン頭の少年が顔を出した。
隣には同じくらいの年の少女が大人しくしている。

「うん、覚めた。けど…ここは?」

「浦原商店!」

「あー駄菓子屋さん。たまに通るけど…駄菓子屋さんで何故私は寝ていたのかな?」

「説明するの面倒だから少し待って」

「うわぁ、酷いな少年」

少年たちはそれに答えもせずに部屋から出て行ってしまう。
何があったかを思い返してみる。

「そ、そうだ!お、お母さんと佐助!」

道端に倒れたままじゃないか!
あの化け物は倒したと思うのだが。

「あぁ!も!」

「元気良いですねぇ」

「へ?」

今度は男性が現れる。
その後ろには彼より体格の良い男性がいて茶渡と織姫を抱えていた。
二人ともぴくりとも動かない所を見ると気を失っているようだ。

「織姫!」

男性が二人を下ろして寝転がす。
は織姫に近づくが彼女は寝ているだけのようだ。

「びっくりした…あ、あの」

「…ここは?」

茶渡が目を覚ました。

「茶渡」

?それに井上も…」

二人の視線は一度絡むがすぐさま帽子を被った男性の方に向けられる。

「そちらのお嬢さんが起きたら説明しますよ」

一度に済ませたいようだ。

「あ、あの!私のこともここに連れてきたのあなたですよね?」

「えぇ、運んだの彼ですがね」

と体格の良い男を指で指した。
がここ浦原商店に近い場所に倒れていたらしい。

「そ、それで。私の他にも人がいたと思うのですが…その」

「あぁ、大丈夫ですよ。今頃家でぐっすり寝てますから」

「ほ、本当ですか?…良かった…」

は安堵の笑みを浮かべる。

「とりあえず、ゆっくり休んでくださいよ。ではまた後で…」

男たちは部屋から出て行く。
残されたたち。
織姫は寝ているために茶渡のとの間には沈黙だけが残る。

「………」

とりあえず、母と佐助は無事らしい。
急に母たちが倒れこんだのには驚いた。
理由もわからない。
ただ、あの帽子の男が大丈夫と言う事を何故すんなりと受け入れられたのだろうか?

「……は」

「ん?」

茶渡が先に口を開いた。

も何かに襲われたのか?」

「も…って…茶渡も?」

「…あぁ」

「なんだろうね、あれ……私過去に二度ほど襲われてるよ」

「二度もか!?」

「うん。でもそれを思い出したのはついさっきなんだけどね…」

「…そうか」

それから織姫が目覚めるまで黙ったままだった。



「…あれ?茶渡くん、おはよう」

「…おはよう…意外と石頭だな、井上…」

織姫が目を覚ました。
覚ました早々に茶渡に頭突きをくらわしたようだ。
何やらうなされているようだった織姫を茶渡が心配して覗き込んだのだが・・・・

「・・・・随分うなされていたな・・・・何の夢を・・・?」

鼻を押さえながら茶渡が織姫に尋ねるも彼女は顔を赤くして照れて教えはなしなった。

「なにしてんだか、織姫は…」

ちゃん!」

友だちの顔を見て顔が晴れる織姫だが同時に慌てだす。

「そ…そういえばここどこ!?学校じゃないよね!?どこ!?」

「「……」」

茶渡とは二人して織姫のリアクションが遅い事に呆れる。
織姫が目を覚ましたことに気がついたようで帽子の男が再び現れる。

「おや、ようやくお目覚めみたいっスね」

「…えっと…だれ…かな…?」

「俺も知らない…ただ…どうやら俺たちはあの男に救われたらしい…」

「織姫も起きた事だし、教えてもらいますか?」

「俺達に妙な力が生まれた理由…」

織姫も反応を見せる。

「それと一護との関係を…」

「------黒崎くんが…何って…?」



***



一通りの説明をされた三人。
茶渡も織姫も信じられないと否定している。

「…ちょっと…待ってくれ…」

「…何スか?信用できない?話が突飛すぎますかねぇ?」

「…ああ…」

「あ…あたりまえです…死神とか…ホロウ?…とか。そんなのいきなり言われて信じろって方がムリ…」

だが、は二人ほど驚きも焦りもなかった。
否定する気持ちもなかった。

「そちらさんは大丈夫みたいっスねぇ」

ちゃん…」

「私は…さっき茶渡にも言ったけど、過去に二度もあれに襲われてその度に死神に助けられたから…」

一人は長身の長い髪の男性死神。
一人はオレンジ頭のも知っている死神。

帽子の男性・浦原はから茶渡と織姫に視線をうつす。

「キミ達は否定しますか?それなら順番が違う。先程キミ達が襲われ胸に孔のあるばけもの…あれが虚っス。
こっちの話を否定したけりゃ、先程キミ達の受けた恐怖と痛み・・・先ずそっちから否定しなくちゃ」

シンと静まる場。
浦原は話を続ける。

「…黒崎一護。彼は確かに死神として並外れた霊力を持っている…だが、その有り余る力を扱う術はあまりに拙い。それゆえ彼の力は意志を持たずただやみくもに流れ出るだけ…。
その流れ出る霊力はその濃厚さゆえに、あらゆる霊なるものに影響を及ぼす。そしてそれはキミ達に於いても然り、思い出してください。
キミ達は、それぞれ過去に幾度か死神姿の黒崎一護と接触したことがある筈だ!!」

三人とも同じものを想像したかもしれない。

「そう…キミ達に生まれた能力は…黒崎一護との接触によってキミ達の魂の底から引きずり出された、キミ達本来の能力なんですよ!!」

「黒崎くんと接触して…あたし達の能力が引きずり出された…?」

「そっス」

「ちょ…っちょっとまってください…意味が…よく…」

「わからなくて結構。キミ達の『変化』は病に罹ったワケじゃない。ただ目の前に現れた扉の鍵を渡されただけなんスよ。
原因を知る必要も無ければ、我が身の不幸を嘆く必要も無い。手にした鍵で目の前の扉を開くも閉ざすもキミ達次第。開いたならばその奥に足を踏み入れるかどうかもね」

「………」

障子が開いた。
体格の良い男性が呼びに着た。

「店長“空紋”が…収斂を始めました…!」

「そうか…準備は?」

「万端!」

「よし。それじゃ行こうか」

三人に背を向ける浦原。
それを織姫が呼び止める。

「ちょっ…ちょっと待ってください!あたし達、まだ…」

「ついて来ますか?」

「…え…」

「見せて差し上げますよ。自分達で確かめるといい」

三人の返事を聞かぬまま浦原は部屋を出て行く。
だが三人も相談したわけじゃないのに浦原の後を追う。

「これからキミ達の踏み入れる世界を。そしてキミ達の敵をね」



***



割れた空と言うのが正しいのだろうか?
にはそこから出てくる巨大なモノが確かに映った。
茶渡と織姫と三人で空きビルなのだろうか?その部屋の一角から見ていた。

すぐ下には死神姿の一護とクラスメートの石田雨竜の姿もある。

「石田と…隣にいる一護は見えるか?」

「うん」

「…はっきりと?…」

「うん」

「そうか…俺にはかすれて見える…はどうだ?」

「見える。あの化け物も…」

「そうか」

「…ここで見ててください…か」

織姫の視線はまっすぐ一護に注がれている。

「それから選べってことかな…あたし達の歩く道を…」

それには茶渡もも答えなかった。

「…ちゃん、茶渡くん…あたし達…どうしたらいいのかなあ…」

「………」

茶渡はチラリと織姫を見るが、は壁際に背を向けてしまう。

「…歩く道か…」

一護がこれからあのでかいのと戦おうが別に関係ない。
そう思った。
見ていてくださいと言われても、見たからって何が変わるとも思わなかった。
織姫ほどに真剣に考えていない。
でも浦原の言う言葉を否定する気持ちは無い。

死神も虚も自分の目にはちゃんと見える。
三度も襲われた。
二度も助けてもらった。
そして倒した。

と力をあわせて虚を倒した。

あの後すぐに意識が途切れてしまったから確認はできなかったが。

「……」

またいなくなってしまった。
死神や虚が見えるならば、が見えたっていいじゃないか。
に一言謝りたい。
今のにはそっちの方が重要だった。

…」

強く願う。
また会いたい。
拳を握りキュッと目を閉じる。

「…ちゃん!」

「え?」

ふわりと優しい風が吹いた。
織姫の声に顔をあげると、目の前には薄っすらとだがが座っている。

?」

口を開けて尻尾を振っている。
あの頃いつも側にいてくれた時と変わらぬ姿で。

「…あ…」

手を伸ばすが触れられない。
寂しく感じるが、また姿を見せてくれたことが嬉しい。
の前にもしゃがむ。

、ありがとうね。私のこと助けてくれて…そしてごめんね。痛い思いさせて」

ポロッと涙が零れた。
だってに触れられるわけでもないのに、泣く彼女の頬を舐める。

「ごめんね、ごめんね…」

『そんな犬の主人でキミは幸せ者だ。だからその子の分も君は生きなさい』

「私、生きてるよ…

あの人が言ったとおりに。








05/11/05
12/03/20再UP