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生生流転
#3 「おい、。大丈夫か?」 が目を開けると黒崎一護と朽木ルキアが映った。 「…?…黒崎?」 「しっかりしろよ?どっか痛いところあるか?」 は公園のベンチに寝かされていた。 確か佐助と散歩していたはずだが。 「さん、お医者様でもお呼びしましょうか?」 「あ〜平気。うん、つーか私…」 は身体を起こす。 佐助はルキアが抱き上げている。 自分の身に何が起こったのか思い出してみる。 「…佐助のリードに足引っ掛けて転んだ?」 「なんで疑問系なんだよ、知るか」 「私たちは倒れていたさんを見つけただけですから…」 「あ、そうなの?ありがと。友だちで良かったよ、見知らぬ人なら警察とかに通報されちゃったかも」 は軽く伸びをする。 「はぁ〜」 「おい、それより怪我とかねーのかよ」 「ん?ないない、平気」 不思議とどこも痛みはない。 一護はそうかと安堵した様子を見せる。 「よっと。なんだろう、いい夢でも見たのかな、気分は悪くないや」 ヘラッと笑い立ち上がるに一護が後頭部を軽く叩く。 「なに、能天気な事言ってんだよ。気をつけろ、馬鹿」 「はいはい、すみませんでしたね〜朽木さん、ありがとね、佐助」 「いいえ、とてもお利口な子でしたわよ」 ルキアは佐助の頭を軽く撫でてから地面に放しリードはに渡す。 「んじゃ帰るわ。今度は転ばないように気をつけるからさ」 「送っててやろうか?」 「いいよ、どこも痛めてないし」 「そっか、じゃあまた明日な」 「おーまた明日〜朽木さんもまた明日ね〜」 「はい。明日学校で」 は軽快に佐助と走り出した。 それを一護とルキアは見送った。 「…おい」 「なんだ」 「の奴大丈夫か?」 の後姿を見送っていた二人は表情と口調を変えた。 「傷は私の鬼道で治した、案ずるな。虚に襲われた記憶もどうやらちゃんと消えたようだ」 時間がまだ少ししか経っていないために多少心配であったが。 「しかし、一護もまだまだだな。の飼い犬とやらが助けに入らねば今頃どうなっていたのやら」 「な!お前が言うか!」 「まだまだ修行が足りぬな」 拳を振るわせる一護。 だがすぐさま思い出しルキアに訊ねる。 「なぁ、あの犬はそのままでいいのか?魂葬しなくても」 「大丈夫だ。特に問題はない、を守っているようだしな…」 「それすらも忘れさせちまうのはちょっと可哀相だな…」 「………」 は過去にも虚に襲われた事があるらしい。 そしてその時に愛犬を亡くしてしまった。 その時の記憶は当時、その場にいた死神が対処したらしいが… (私は知らぬが…誰だ、いったい…) 「どうした、ルキア」 「いや、なんでもない。私たちも帰るぞ」 「お、おぅ」 *** 最近の自分の周りは変な事が起こると感じ始めていた。 ただ、自分には無害ならばいいかと思っていたのだが。 とうとう、無関係ではいられなくなった気がする… 「…さぁて、どうしようかなぁ…」 都大会。 はインターハイ出場を決める大事な試合だったのに、個人戦であっさり負けてしまった。 たつきと約束したのに、結局駄目で。 決勝に勝ち残るまでもなく2回戦で敗れてしまった。 相手は過去に何度も対戦し負けたことがなかったのに。 顧問の教師にはこっぴどく叱られた。 団体戦のメンバーにも選ばれていたが足を引っ張りそうだったので辞退した。 「集中力が続かないのかな」 こんなの初めてだ。 たつきと互いの都大会の結果を報告すると何かあったのかと心配されてしまった。 「別に何もないよ。単に相手が強かっただけだろうし」 「どうみたって格下相手だったじゃない」 「でも負けは負けだよ」 「あーもーなんで笑うかな、悔しくないの?でも団体戦ではインハイ行けるんでしょ?」 「わかんない…団体戦のメンバーから外してもらったし」 「!」 春の大会ではそこそこの成績を残していたのに。 中学の時も頑張っていたのにはどうしてしまったのだろうか。 「怪我してるんじゃないの?どっか痛めてるとか」 「え?ないよ、そんなの」 「たーつきちゃん!ちゃん!ボハハハハーーッ」 「「織姫」」 両腕を前で交差させている織姫。 最近流行っているとか言うポーズだ。 「来週ね“ぶら霊”が空座町に来るんだって、一緒に見に行こうよ」 「ぶら霊か…あ〜暇だし別にいいよ」 「ホント?たつきちゃんは?」 「え?あ、あぁ別にいいけど」 は部活の話を早く断ち切りたかった。 ぶら霊だろうがなんだろうがなんでもいいから話題を変えたかった。 当分剣道のことは話したくなかったから… 剣道は嫌いじゃない。 小さい頃からやっていたわけだし、これでも有段者だ。 でも最近はどうも調子が乗らない。 部活には出るものの走りこみばかりしている自分が居る。 部内での練習試合では勝つのに、本番では力の半分も出ない。 「あの日だ」 佐助との散歩中に何かあったのだ、自分に。 でも転んだ事しか覚えていない。 それでも大事な何かがあったようで思い出そうとすると胸が締め付けられる。 『……間に合わなくて』 『自分の身を挺して……』 断片的に思い出される何か。 でもすぐに弾けてしまうかのように全てを思い出すことはできない。 少し前の自分ならば、悩むのが面倒だからと放っておいたはずだ。 なのに今は無性に拘ってしまう。 「ちゃんもボハハハーーッってやろうよ〜」 「物凄く嫌!」 「えぇ!なんで、なんで〜」 「それやったらもう戻れなさそうだから」 フッと笑う。 「どこに戻れなくなるの?」 「普通の人に」 「!!ちゃん、酷いよ〜」 「でも大丈夫よ、織姫」 はたつきの肩をぽんと叩く。 「私の分はたつきがやってくれるから」 「なんで、あたしが!」 「織姫の頼み断るの?」 などと言っていると一護が登校してきた。 織姫は一直線に彼の元に向かい、先ほどのポーズをとっている。 たつきは何故だかバツが悪そうな顔をしている。 「ちょっと行ってくるわ」 「おー」 「…黒崎か」 彼とも妙な縁を感じる。 別にお互い特に仲が良いわけじゃない。 たつきが幼馴染だからって点で多少は喋る機会があるだけだ。 でも、最近割りとその機会は増えた気がする… *** 水曜日。7:31 p.m ぶらり霊場突撃の旅が公開放送で予告通りこの空座町にやってきた。 廃病院を今回は突撃するとのことで、その周囲には一目見ようと大勢の人が集まっていた。 一護やその家族。小島たちなどこちらも約束どおり集まったのだが撮影が始まる頃にはバラバラになってしまった。 「いや〜流石噂の廃病院。薄気味悪いねぇ」 「でもこんなに人がいたらそうでもないよ」 「まぁね。実際本当にいるのかもわからないしね」 「噂だもんね」 はたつきと織姫と一緒にいた。 薄暗く気味悪がられている廃病院でも撮影の所為かライトアップされていたり 野次馬と言うかギャラリーの所為で遊園地のお化け屋敷程度にしか感じなかった。 だが・・・・ オオオオオオオオオッ… の耳に入った人の声、叫び声のようなもの。 聴いた瞬間身震いをしてしまった。 「…何…この…声…?」 辺りを見回すたつきの袖を軽く掴む織姫。 「…織姫…あんたも…」 「やっぱり…たつきちゃんも…?」 二人も何か感じたらしい。 「………」 は声も出さずに目だけで辺りを探る。 本当に何かいたのだ、この廃病院に。 だが、は別に昔から霊感が強いわけじゃない。 どこそこにいるとか噂のある場所に興味本位で友人たちと肝試しに行っても何も感じない人間だ。 なのに。 今日に限って。 神経が研ぎ澄まされたと言うのか。 何かを感じてしまう。 「ちゃん?」 不安げな表情のたつきや織姫がの顔を覗きこんだ。 「あ、大丈夫だよ、私は」 二人ほど不安な思いはない。 なんとなく大丈夫だ、自分は。 そう思えている。 そうしているうちに撮影が始まった。 番組の主役であるドン・観音寺で場は一層盛り上がる。 何故にこのオッサンが人気あるのかには不思議でしょうがなかったが。 でも視聴者をひきつけるものが彼にはあるのだろう。 は番組を見ていないのでどう言う進め方なのかは知らないが、早くも浄霊とやらが行われるらしい。 「なんじゃありゃ」 何も見えない一般人にとっては彼の動きは可笑しいとしか思えないのだが。 は笑って、たつきと織姫の不安を取り除こうとしたのだが。 観音寺が浄霊と称してステッキを振り上げ霊がいるらしい場所に突きつけた。 その時空気が震えた気がした。 「………」 ぎゃあああああ 叫び声が絶叫に代わった。 そして突然一護が撮影現場に飛び出し、警備員に押さえられた。 「一護!?」 「黒崎君…?」 「何してんの、あいつ…」 そしてルキアまでも飛び出している。 「ちょっと、朽木さんまで…」 暴れている二人。 いつもの教室での姿からは想像もつかない。 …黒崎はそうでもないかもしれないが。 番組は一護たちの乱入によりCMへと入ったようだ。 場は騒然としていたが、いつの間にかが一護たちに視線を戻すとすでにその姿はなかった。 そして観音寺が何故か吹っ飛んでいた。 ぎゃあああああ 「…なんか気持ち悪い…」 観音寺は立ち上がって一人コントのような動きをしている。 ドォン! 突然何もないのに辺りに爆音まで響いた。 観音寺はギャラリーに向かって浄霊終了のポーズをしている。 だが、すぐさま空気の震えが襲ってきた。 何かがぼんやり見える。 観音寺がまだ一人で何かしているが、それよりも違うものが目に入る。 「………」 いつかと同じような感覚。 見た事があるようなないようなもの。 はっきりとはわからないが、観音寺とは別にもう一人誰かいるような。 廃病院のガラスが突然割れて散った。 観音寺は引きずられていくように建物の中へ消えてしまう。 「…黒崎君?…」 織姫の呟きにたつきは変な顔をしている。 「……あの時に似ている…?」 「?」 まで何を言うのかとたつきは彼女と織姫の顔を交互に見ている。 でも二人ともたつきには何も言わずにずっと何かを考え込んでいた。 05/10/30
12/03/20再UP
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