我很寂寞




ドリーム小説
最近では、あいつのことそんなに嫌いじゃない。
口は悪いけど、なんだかんだ言って相手してくれるし。

でもね、うん…

そう簡単に素直になれない私なのです。





【1】





ー暇だろ?飯、食いに行こうぜ」

「却下。私のどこが暇でしょうかね?」

「暇だろ?」

「暇じゃないっての!ちゃんとモノを見て言いなさいよ!」

「おぉ!」

ポンと手を打つ馬超。
馬超の目の前にいる少女は書簡の山に囲まれている。

「孔明さんに頼まれた書簡の整理してるんだから!邪魔しないで」

「邪魔する気はないぜ?誘ってるだけじゃん」

「がーー!!それが邪魔なの!」

「なんだよ、いいじゃねぇか」

「煩い、煩い!私は忙しいの!ご飯食べるだけなら趙雲さんでも誘えばいいでしょ?」

「はっ、あいつは今頃頼子といちゃいちゃしながら飯食ってるさ」

うんざりした表情で馬超は言う。
それはなんとなくにも簡単に想像がついてしまう。

「じゃ、じゃあ姜維さんでもいいじゃん…とにかく!私は先にこれを片付けるの」

「へいへい〜邪魔して悪かったな」

馬超はくるりと背を向け、部屋から出て行く。
ため息を吐く

(…別に嫌だから断ったわけじゃないんだからね…私は頼子と違って…)

当初、羽山頼子が玉璽を持つ者としてこの世界に召喚された。
それは誰が何故と言うは明らかにはなっていない。
頼子がいる、この蜀はまさに平穏そのもので、頼子は人々から『玉璽の姫』と噂されている。

はその頼子の親友だった。
ある日、人々の記憶から親友の姿が消えた。
彼女の親ですら覚えていないのに、は覚えていた。
そして、神濃と呼ばれる者が頼子に会わせてくれると言い、彼の力でこの世界へ来た。

当初は頼子を連れ戻す気満々だっただが、その時頼子にはすでに趙雲と言う存在がいた。
頼子はすでにここの住人のようで、自分が間に入る隙間はなかった。
逆にはこの世界と自分の住む世界の文化のレベルの違いに戸惑い、帰る事を望んだ。

もとの世界へ帰る瞬間、馬超に邪魔され結局頼子同様、ここにいる。

だが、頼子と違い自分は大層な扱いを受ける人間ではない。
事情を知った孔明夫妻の元で世話になり、日中は孔明の雑用を手伝っているのだ。

「あ〜慣れって怖い…」

思わず笑ってしまう。
帰るな、と馬超に言われた時『電化製品がないと生きていけない』と言った自分。
なのに、今、そんなものがなくても普通に生活している。

あの時、馬超は『頼子は暮らしている』と言った。
確かにそうだ。
彼女は違和感なくここで生活していた。
自分よりも辛い状況が何度もあったというのに。

「ま、今はここの整理をしましょうか!」

は腕まくりをして再び仕事を開始した。



***



「あはは、また殿に振られましたか、馬超殿」

「お前ね、自分が上手く言ってるからっていうじゃねぇか」

「そ、そんな事はありませんよ」

馬超は趙雲を捕まえて食事にでもしようかと思っていた。
趙雲に理由を聞かれたので、先ほどのとのやり取りを話したのだ。

「でも、馬超殿も酷いですよ、私がその…」

「頼子といちゃいちゃしながら飯を食ってる?」

「そうですよ。いつもそのような事してませんよ」

頬を少し赤くする趙雲。
いつまでたってもこういった話題には弱いようだ。
だから、馬超にからかわれてしまうと言うのに。

でも、そんな所が気にいってたりもするので、あえて言わないのだが。

「で、その頼子はどうした?」

「あはは、それがですね、諸葛亮殿の勉強会をサボって逃げたしたらしいですよ」

「はぁ?」

趙雲は可笑しくてしょうがないようだ。
笑いを堪えている。

「逃げたのですが、結局姜維に見つかって強制連行されましたよ」

「へぇ…それで今は軍師殿の下で勉強か?」

「えぇ、まったくしょうがないですね」

「あいつ、普段は大人しいくせに時々大胆に行動するよな…ま、そう言う行動力があったから今の頼子とアンタがあるのだろうけどさ。いいねぇいつも仲良くてよ」

「羨ましいですか?」

「あー羨ましいね」

「本当にそう思ってます?馬超殿にも今は殿がいるからいいじゃないですか」

最近の趙雲は人のことをからかうことを憶えたらしい。
特にに関して。
馬超はピクリと片眉を動かす。
面白くなさそうに口を尖らせる。

は可愛げなくて困るよな…もう少し淑やかにできねぇのかよ」

「あはは、馬超殿は今の殿が気にいってるのでしょう?そんな事は言ってはいけませんよ」

「なんだよ」

「さ、早く昼餉を済ませてしまわないと、私たちも午後の執務に支障が出ますよ」

「おう」

二人はそう言って、歩きだした。



***



「はー!終わった〜」

は山のようにあった書簡を全て一人で片付けた。
頼まれた仕事を終わらせた充実感と、その仕事にデキに満足する。

「さぁて、孔明さんに報告して…あ…」

ぐ〜っと鳴ってしまうお腹の音。

「お昼まだだったけ…厨房で何か貰ってこようかな…それとも一度屋敷に戻って」

「ほらよ」

「ん?」

突然背後に人の気配。
振り向くと馬超が何かを差し出して立っている。

「馬超?」

「ん」

「何…くれるの?」

馬超はそれをに持たせる。
何かが包まれている。
が中を開けると、おにぎりが数個入っていた。

「飯、まだなんだろ?厨房で頼んで作ってもらった、食えよ」

「あ、ありがとう…」

「いいから、食えよ。午後も軍師殿の手伝いがあるんだろ?」

「う、うん」

は壁に背をつけて座り込む。
馬超は立ち去る様子もなく、普通に頼子の隣に腰を下ろす。

「えへへ、美味しい」

「そっか」

「ありがとうね、馬超」

「別にどうってことねぇよ」

照れ隠しなのか、ぷいっと顔を背ける馬超。

なんだが、他愛のないこんな出来事が今のには嬉しいのであった。



***



最近のはよく働き、よく遊ぶ。
それは良いことだ。
孔明夫妻もが着てくれたことで本当に嬉しく楽しいようである。

休日になれば、月英と買い物に行ったり、孔明を含めて3人で本当の親子のように過ごしたり。
たまに馬超とどこかへ出かけたり。
毎日が楽しすぎるのだ。

あの世界へ帰りたいと願っていた最初の頃が嘘のようだ。

「最近は益々賑やかになりましたわね、孔明様」

「えぇ、本当に。戦も無く平和そのものですし」

「孔明様。殿なのですが…」

月英は夫にある提案をする。
それを聞いた孔明は目を細め頷く。
何やら二人の間で計画していることがあるようだ。

「私は構いませんよ。ですが、しばらくは黙っておきましょうね」

「はい。喜んでくれると良いのですが」

「どうでしょうかね…悪い話ではないと私は思いますよ」

笑みを浮かべ羽扇を静に扇ぐ孔明。
その笑みを見て月英もまた笑うのだった。



***



「あ、あれ…?可笑しいなぁ…」

は休日なのだが城の古い書庫に来ていた。
劉備が入蜀する以前の書簡やら竹簡が溜まっていたため、孔明に話を聞いたがそれの整理を申し出た。
普段の雑用が暇な時や、休日で暇な時間にやっているのだ。

その棚を見ては首を傾げる。

何かが可笑しい。

「なんか微妙にずれてる?」

種類、年代別、名前順、サイズなどで分けていたそれら。
今、が目にしてると一段ずつずれている気がする。

腕を組んで考え込む
そこへ馬超がやってきた。

「よっ!休日出勤か?

「馬超」

「お前さ、折角の休みにすることないだろうに」

「休みだからやるの。これは急ぎでもないもん。暇な時にしかやらないの」

「へぇ、ご苦労なこった…で、何か唸ってたろ?どうした?」

「ん〜別に大したことじゃないと思うのだけどね…整理した物の位置が微妙にずれてる」

馬超は棚に目をやるが、元を知らないために頷きようも無い。

「別に気にすることねぇって。ま、気長にやるんだろ?」

「まぁね」

そう言っては作業を始める。
ずれた位置を元に戻すだけなのでそう時間はかからないだろう。

「そんなの今日じゃなきゃ駄目なのか?」

すうっとの背後に周り抱きしめる馬超。

「ば、馬超!」

「たまには二人で過ごすのもいいだろ?今日は頼子たちもどこかに出かけたみたいだぜ」

「あ、あのねぇ〜」

耳元で囁かれるものだから、くすぐったくてしょうがない。

「なぁ、…で!」

馬超は自分を優位に立たせようとしたが、撃沈。
思いっきりに足を踏まれた。
かなり痛かったらしく座り込んでしまう馬超。

「馬超の馬鹿!私は今日は駄目だからね」

「なんだよ、いいじゃねぇか、気長にやるんだから今日じゃなくてもいいだろうに」

踏まれた足を摩る馬超。

「気持ちの問題」

「俺の気持ちはどうなるんだよ」

「知らない」

馬超は自分の方を向こうともしないに軽く息を吐いて立ち上がる。

「じゃあ、俺は俺だけで楽しんでくるぞ」

「どうぞ、ご勝手に」

「本当に行くぞ」

「行けば?お姉ちゃん達にでも相手にしてもらえば?」

「あぁ、そうかよ。後で泣きついても知らねぇからな」

「はいはい」

馬超はが相手にしてくる様子もないので機嫌を損ね部屋を出て行く。
ちょっと乱暴に戸を閉めていく。
勢いが良すぎて戸は反動で少し開いてしまう。
そんな馬超に思わずは笑ってしまう。

「大人なんだか、子どもなんだか…馬超って変な奴」

なんだかんだで最近馬超に甘えてるなぁと思う自分。
とりあえず、今は少しでもここの整理を進めてしまおうと考える。
それで少し早めに切り上げ、馬超に手土産でも持って行こうと思うだった。



城には最低限の人間しか今日はいない。
だからいつもより静である。
まして、この書庫は現在使われておらず、場所も隅のほうにあった。

「静で仕事が捗る、捗る」

いつもよりも効率よく進められた
途中で辺りを見回すと、予定していた物の整理も終えていたらしい。

「今日はこの辺でいっか…お昼食べて馬超の所へ行こうかな」

軽く伸びをする。
部屋を出ようかと戸に手をかけるが…

「あ、あれ?」

ガタガタ…

「嘘…」

ガタガタ…

戸が開かない。
どうやら鍵がかかってしまったようだ。

「冗談でしょう…あ、あの時?」

馬超が部屋を出た時乱暴に戸を閉めた。
あの時に鍵がかかったのだろうか?

この書庫の鍵は錠ではなく閂。
閂と言っても門で扱うような大型なものでなく、ちょいっと簡単に引っ掛ける形の物なの。
場合によっては鍵がかかった…

「なわけないじゃん!!」

何故なら、馬超はぴったりと戸を閉めなかった。
少し隙間があったではないか。

さて、これはどうしたことか?
意味もなく閉じ込められてしまった。
声を出した所で休日のお城、後宮には劉備らがいるだろうが、ここはそことは離れすぎている。

「…ま、いっか。書簡整理してよう」

は無駄に騒ぐのが嫌だったので、書簡整理を再開させた。
運が良ければ帰宅しない自分を孔明らが探してくれるだろう事を期待して。
それに明日になれば必ず誰かがここを通るはずだ。

「我慢しよう、お腹は空くけどね」

こう言うとき携帯電話が無いと不便だと考えてしまう。
あれがあれば一発で助けを呼べるというのに。

「あ、結構余裕あるじゃん、私」

誰もいないこの書庫で笑ってしまう。
自分は閉所恐怖症でもないし暗闇も平気だ。
書庫にの窓には格子がついているがサイズがそこそこ大きいのでなんとかなるだろう。

「案外この整理今日中に終わっちゃいそう…」

などと余裕綽々のだった。








「小恋」「笑って〜」後の馬超と彼女の話。
03/08/10〜08/13UP
11/12/24再UP