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おもうこと
は永遠の人になるかもしれないよ? 【10】 「趙雲が、好きだから」 泣きながら言った。 顔は涙でぐしゃぐしゃだし、心が痛むとでも言うのだろうか、胸の辺りが痛くてしょうがない。 さらには泣きすぎて、頭痛もしてきた。 告白したと言ってもには最悪な状況でしかなかった。 「………」 趙雲は少なからずとも動揺しているらしい。 声をかけようにもできずと言った具合だ。 趙雲は困っているのだろうな、ってすぐにわかる。 予想通りだ。 だったら早く、予想通りの言葉を聞かせて欲しい。 断りの 拒絶の言葉を。 「……あの」 趙雲はに触れようとするが躊躇する。 それを見て変に納得してしまう。 だから、先に言葉が出たのは自分だった。 「ごめんね、趙雲」 「………」 「趙雲が叔母さんのこと大事に想ってるの知ってる。だから趙雲は私の事振っていいんだよ」 「あの殿!」 「最初からわかってることだもん…ごめん」 「殿、私は」 なぜだろう、上手く言葉が出ない。 「趙雲が思ったとおり、馬超を好きになってたら良かっただろうね、お互いにさ…」 チクリ また痛みに刺された。 「……私は、まだ彼女の事が」 知っています。 それでいいんだ、趙雲。 *** 結局、帰ってみれば姜維に心配かけてしまった。 ぐしゃぐしゃの顔。 あそこで泣いた顔を休ませるつもりだったのに、余計に酷くなった。 「、どうしたの?」 「えへへ、遅くなってごめんね、姜維」 「泣いた…の?」 「…うん、泣いちゃった。咽喉渇いちゃうし、泣きすぎて頭痛いし最悪」 何があったの? そうすぐ聞きたいが、今のが泣く要素と言えば趙雲ぐらいだからなんとなくは見当がつくがなんとなく聞きづらい。 とりあえず、今は好きにさせておこう。 (言っちゃった…ずっと言わないつもりだったのに…) 寝台に寝転び仰向けになって天井を見つめる。 結局振られた。 まだ叔母を忘れる事はできないと言った。 その後で、自分は一言『うん』と頷き趙雲に背を向けて歩き出した。 一度も振り返ることなく。 最後に見た趙雲の顔は大好きな笑顔ではなかった。 まぁ笑顔で見送られるのはどうかと思うが。 これからどうしようか? 以前と同じようなってことはならないだろう。 でも言ってしまい振られたのだから仕方ない。 少しの間、距離を置いて自然に話せるようになれば万々歳だろうか。 (でも…そんなんで上手くいったことってないなぁ) 本当はゆっくり寝たい。 でも身体より頭はすっきりしていて眠る事を許してくれない。 夕餉は食べられるだけ食べた。 あぁ、この辺の事を思うと自分は大丈夫と思う。 普通は食べるのを拒否してしまうだろうから。 でも空腹には勝てなかった… それを見て姜維を安心させたようだし良いかと思う。 夕餉の後はいつもなら風呂に入って、のんびりすごしていた。 姜維と沢山話をして。 今、姜維のところへ行っても平気だろうか? 振られてしまった所為か、余計に人恋しい。 (ダメだっての…馬鹿) 今日はもう寝よう。 横になっていれば自然と眠りにつけるかもしれない。 だが、逆に姜維の方がやってきたようだ。 「、起きている?」 「うん、起きてるよ」 少し間が空いてから、扉から顔を出す姜維。 は身体を起こす。 「寝るところだったかな?ごめんね」 「ううん。中々寝付けなかったから平気」 「そっか」 「隣、いい?」 「うん」 姜維はゆっくりと寝台に腰を下ろす。 「………」 「姜維?」 「あのさ」 「うん」 「理由…聞いてもいい?」 泣いて帰ってきた理由。 「あ、言いたくないよね。やっぱりいい」 「ううん、平気だよ。そうだね、言っちゃおうかな。どうせ姜維にはお見通しだろうし」 「そんな」 軽く笑うに姜維も笑うがどこかぎこちない。 「振られちゃいました。趙雲に」 はきっぱり言い切る。 姜維は目を丸くして驚く。 趙雲と何かあったかな?とは思ったのだが振られたとは思っていなかったらしい。 「何、その顔」 「え…だって、さ…びっくりした」 「なんで?」 「だって趙雲殿に会うのが嫌とか言っていたのに」 「あ、偶然川原で会ったの。でね、叔母さんの話をされたら私嫉妬しちゃって、趙雲に嫌味言って困らせてさ」 「嫌味?」 「八つ当たりもしちゃうし、最悪。オマケに私泣いちゃうし、走って逃げるし」 「へ、へぇ…」 なんか聞かない方が良かったかもしれないと今更少し後悔する姜維。 「でもね、趙雲は私の事追いかけてきて謝るんだよ。なんも悪くないのね」 「趙雲殿らしいね、なんか」 「うん、優しいよね。でね、思わず告ちゃった。最初からダメだってわかってたのに」 「なにが?」 告白したってことより、その後のほうが姜維は引っかかった。 「え?告白しても意味ないってこと」 「そうかな?僕はそうは思わないよ」 「って。だって趙雲は叔母さんのことがずっと好きで、多分今もそうで、多分じゃなくてそうであって」 「ふーん。最初から諦めていたんだ」 姜維は少しつまらなそうにを見つめる。 その目は少し非難しているかのように。 「好きになっても、報われないって思った?」 「…うん。だってそんなのわかりきってるし」 「なんだ、は自分のことを好きでいてくれる人にしか告白しないんだ」 「そ、そんなことないよ」 「最初から自分を想ってくれている人にしか自分の気持ちを伝えないんだ。それか待っているとか」 「それは」 「そう言うことでしょ?趙雲殿に失礼だよね。勝手に嫉妬して八つ当たりしてでも自信ないから告白しませんって。 「姜維!」 カッとなったのがわかった。 いつもより意地悪な言葉と態度に腹を立てる。 「最初から都合よく両思いなんて確率的に低いんだよ?なに諦めているのさ」 「そうかもしれないけど、趙雲はさ」 「相手の気持ちを考えるのは優しい事だよね。いいことだよ。でもさ、この先はまだわからないだろう?」 「この先?」 「そうだよ。今はダメでも先はあるってこと。僕はねが最初から諦めている事に腹が立つんだ」 姜維は自分のことみたいに怒っている。 「人に想いを告げるっていうのはさ、色々考えるよね、後ろ向きになってしまうこともわかるよ。 だから諦めちゃだめだよ。今はまだ駄目でもこの先のことは誰にもわからないんだからさ。」 この先のことなんて考えてもみなかった。 最初から無理、駄目だと決めて、実際振られた後にやっぱりと思って。 「でもさ、私はさ、いつか帰っちゃうかもしれないでしょ?」 叔母は趙雲と結ばれる事なく戻ってきた。 自分だっていつかは帰ることになるかもしれない。 「さぁ?それは僕にはわからないよ。帰るかもしれないから諦めるの?」 「えっと…」 「もしかしたら帰らないかもしれないだろ?」 「え…帰らない?」 「うーん、ちょっと嫌な言い方をすれば帰れないかもしれない」 前例があるために、確実に帰ると考えていた。 帰れないとは思ってなかった。 「帰れない…そうなの?」 「だから、僕にはわからないって。でも美咲殿の時との時は全然違うしさ。 美咲殿は本当に短い時間しかここにはいなかったんだ。でも君はそれより長い時間ここにいる」 「………」 「まだ先はわからないさ」 「わからないかぁ」 「もし帰ることになっても、ここにいた時間は嘘ではないだろ?大切だと思えるように前向きに行こうよ」 「姜維…」 ようやく姜維は笑ってくれた。 頑張ろうって手を握ってくれた。 趙雲への想いは捨てなくてもいいのだろうか? 諦めなくてもいいのですか? 「それにね、趙雲殿にとって美咲殿は通り過ぎてしまった人だけど、は永遠の人になるかもしれないよ?」 「永遠の人…うわっ、恥ずかしい〜」 「えーなんで?」 一瞬にして自分の顔一面が赤くなったのがわかる。 なんで恥ずかしげもなく笑顔で言えるのだろうか、姜維は。 でもこうやって話を聞いてくれて、背中を押してくれる人がいてくれて良かったと思う。 大抵の人は失恋したら慰めて、新しい人を見つけなよって言う。 でも姜維はそうではなく『まだ諦めるな』と言った。 その言葉、胸に刻んで前向きに行こう。 *** 趙雲が仕事復帰した事を姜維からは聞いた。 だから毎日が忙しいらしい。 軍のことに日常の執務。 今まで休んでいた分を取り戻すかのように働いているとの事だ。 だから邪魔しちゃいけないってわけではないが、今はまだ趙雲のところに顔を出すのはよそうと決めた。 会って話したい気持ちはある。 姜維に励まされて彼への想いを捨てる事は止めた。 けど、すぐに会いに行くのもどうかと思うので今はまだ… ゆっくりだけど、前を向くことにした。 「って!姜維って結構抜けてるよね!」 は城に来ていた。 城に行けば趙雲に会ってしまうだろうが仕方ない。 姜維の忘れ物を届けに来たのだ。 「あは、ごめんね、。わざわざありがとう」 「自分が今日使うものだって言ってたのに…机の上に置いてあるの見てびっくりしたよ」 「本当ごめん!」 「別にいいよ。気づいたの私だし。じゃあ帰るね」 「うん、気をつけてね」 姜維は孔明の元で働いている。 なので、孔明にも頭を下げて部屋を出る。 後ろで孔明に軽く注意されている姜維を見てちょっと笑ってしまう。 「さぁてと、帰りに何か買って帰ろうかなぁ」 は生徒の町並みを見て回るのが好きだった。 そこそこ知り合いもできた。 この前、関平に教えてもらった店にでも行ってみようか。 あそこは美味しい果物が売っていたから。 「お、じゃねーか」 「馬超」 馬超がの姿を見つけてよってきた。 も足を止める。 「なんだ、姜維に用事か?」 「うん、まぁね。でも済んだよ。もう帰るところ」 「そうか」 「馬超は馬岱君から逃げてるの?」 「なんだよ、俺はこれから休憩だよ。昼餉でも食おうかとおもってな。あ、一緒に行くか?」 「どうしようかなぁ。それもいいよね、当然馬超のおごりだよね?」 「ん?まぁ女に金を払わすマネはしねーよ」 「馬超、男前〜」 「なんだよ、普通だろ」 馬超は苦笑するが、すぐに真面目な顔をした。 「、お前俺に何か言うことあるだろ?」 「え?」 すごく真剣な馬超。 でも馬超に伝えることなんて何もないはずだ。 趙雲に振られたことか? そんな事いちいち馬超に報告する必要はないはずだ。 趙雲だって馬超に話しているとは思えないし。 「な、ないよ。別に」 「嘘つくなよ、、お前ね」 馬超の目が真剣に自分を見ていたから思わず息を呑む。 「俺の事どう思っているわけ?」 「え」 どうって… 馬超はお兄ちゃんみたいな人で、頼りになって・・・ なんか恥ずかしくなる。急に『どう思う?』なんて聞かれれば。 「どうって、私は別に」 「来る者拒まず、去る者追わずだとか、女なら誰でもいいとか言っていたらしいなぁ。なぁ?」 「え…」 それは、少し前に姜維に勢いで言ってしまったことだ。 馬超はそれを知ったらしい。 「俺みたいな奴と付き合ったらボロ雑巾のように捨てられるってのも聞いたけどなぁ」 「あは、あはは…それはねぇ」 馬超がニヤニヤ笑っているのが怖い。 「なんで馬超がそんな事知ってるのかなぁ」 「あ?姜維に聞いたんだよ。お前ね」 馬超は右腕での首を挟み左腕での頭をぐりぐりする。 「痛い、痛い、馬超〜ちょっちたんま!」 「うるさい、俺が触れたら妊娠するだぁ〜この野郎、人のことなんだと思ってやがる」 「だって、馬超ってばいつも違う女性連れてるし」 「んなの、たまたまだろうが。俺はそんな酷い男じゃねーぞ」 「わかった、わかったから痛い、痛いってば馬超〜あ〜私が穢れる〜」 「こいつ、まだ言うか!」 「ご、ごめん!嘘、嘘です!謝るから許して」 「おう、許してやる」 「…痛いよぉ〜…姜維のおしゃべり…」 は少し恨めしく思う。 自分の味方になってくれているようではあるが、あんな話を普通本人にするだろうか? 帰ったら問い詰めてやるとは呟く。 「よぉーし、メシ食いに行くか」 「………」 「なんだよ」 「女性に対して酷い仕打ちだと思ってさ」 「俺の方は名誉毀損だぞ、馬鹿。それにお前が思っているような女性関係はまったくないぞ」 「本当かな〜」 「まだ言うか。俺はずっと昔から一人の女性を想っているんだよ」 「え、嘘!意外…すっごく意外だぁ」 「…お前ね」 「ね、誰?どんな人?私の知ってる人?すっごく興味ある〜馬超の想い続ける女性って誰よ〜」 「さぁてね。ほらメシ食いに行くぞ。午後の執務に遅れちまう」 馬超はの髪をくしゃっと撫でて歩き出す。 は慌てて馬超を追いかける。 「ね、誰?教えてよ。誰にも言わないからさ」 「うるせーな。すごくいい女だよ。それだけだ」 「きゃーさらに気になる〜馬超にそんな事を言わせる女性ってどんな人なのよ〜」 はキャーキャー騒ぎなら馬超の隣を歩く。 馬超はそんなをはぐらかしている。 「俺の事より、メシだよ、メシ!あまり騒ぐとおごらねーぞ!」 「えー。その話をしながらお昼食べたいのに。馬超のケチ」 そんな彼らの楽しげな様子は城の者の目に映る。 楽しそうだねと笑う者が多い中、一人だけ浮かない顔をしていた青年がいたのをは気づいてなかった。 永遠の人ってのね、私も恥ずかしい〜って思ったけど、実は好きです。
私の大好きな漫画でそんな話がでたのさ〜中華モノで面白いです、その漫画は。
「あなたにとって最初の人になれなくても永遠の人になれるでしょ?」みたいなセリフですよ。
だからしっかりいい女になろうねってシーンでしたよ。
04/01/11UP
11/12/24再UP
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