おもうこと




ドリーム小説
何か隠してないか?アイツ…





【4】





趙雲と
あれ以来、ごく自然に会話できるようになった。

にとっても趙雲と過ごす時間はとても楽しかった。
馬超と姜維を含めて4人で遊ぶ事が多かったが、それはそれで楽しい。

兄が一度に沢山出来たという感じで。

「へぇ、叔母さんってばそんなこと言ったのですか?らしいなぁ」

「えぇ。一瞬口を閉じるのも忘れてしまいましたよ」

最近では趙雲がここにいた頃の美咲の話をしてくれる。
にとって、美咲は憧れの女性だったので彼女の話を聞けるのは嬉しい。

殿は美咲殿に憧れていたのですか?」

「はい。叔母さんは私の憧れなんです。
なんて言うか、叔母さんがふんわり笑うとこっちまで嬉しくなれるし」

「あぁ、私もその気持ちわかりますよ」

「本当ですか!」

「笑顔のとても素敵な人でしたね」

と笑う趙雲の顔も、は見惚れてしまう。
趙雲との共通点は叔母の存在。

嬉しくもあり、少し切ない。
この人は叔母の今を知らないのだから。

楽しそうに話している二人を遠くから馬超が見ていた。
そこへちょうどやってきた姜維。
今、は姜維の忘れ物を城に届けにきたのだ。
ちょうど昼も近いということから、後で一緒に昼餉を食べようと約束し
その時間が来るまでは城を散策していた。

で、ちょうど趙雲と出会ったと。

「あれ、馬超殿どうかしました?」

「お、姜維…ほら、アレだ」

「ん?あ、趙雲殿と。良かった楽しそうですね、二人とも」

「あぁ、そうなんだけどよ…」

姜維は単純に二人の仲が良くなった事を喜んでいたのだが、馬超は少し思う所があるらしい。

「なんです?歯切れ悪いですよ」

「その…なんだ…美咲がいた頃に戻った感じが少しするなと」

「それは、確かにと美咲殿は似ていますが」

「あぁ、似ているけど中身が全然違うからな。あとな…」

「あとなんです?」

馬超は言いかけるが、息を吐くだけに留める。

「やっぱ、止めとく」

「なんですか、もう!」

「なんか俺が言う事でもない気がするしな」

「はぁ?」

「飯、食いに行くんだろ?と」

「え、はい」

「なら行こうぜ。俺も腹減ったし、趙雲も誘ってさ」

「そうですね」

姜維は趙雲たちの下へ駆けていく。
馬超はゆっくり歩きながら、言葉にしなかった事を考える。

「…何か隠してないか、アイツ…」

ポツリと洩らしてしまうが、その呟きは誰にも聞こえてないようだった。



***



は与えられた部屋である物を見ていた。
それは、祖母から形見分けとしてもらった叔母が大事にしていたと言う簪。

今思うと、これは趙雲が叔母にあげた物ではないかと思う。



、いつかその人に伝えて欲しいな…私は幸せでしたって』



叔母が言った言葉。
叔母にはわかっていたのだろうか、もう二度と【その人】には会えないということに。


チリン


がそれを卓に置くと、簪の飾りが小さな音を立てた。

「言わないといけないのかな…言えないよね。あんなに嬉しそうに叔母さんの事を話す人にさ…」

最初は黙っていようと言う気持ちの方が強かった。
でも、趙雲と段々と親しくなるにつれて嘘をつき続けるのが苦しくなっていた。

すべてを伝えたら、趙雲がどうするだろうか?

泣く?
怒る?

嘘をつくなと自分を罵る?

「う〜〜言えないよぉ〜」

反応が怖くて言えない。
は卓に顔を突っ伏してしまう。

そこへ行き成りの客が現れた。
ガラっと扉が開かれて馬超が入ってきた。
慌てて顔を上げる

「おい、。明日暇か?」

「え、馬超!?」

「なんだよ、俺じゃ悪いか?」

「もう〜馬超殿は突然すぎますよ〜」

姜維は馬超の後ろで苦笑している。
どうやら、二人で休日の予定を話していた所、も誘ってどこか行こうかと言うことにしたらしい。
なので、の予定を聞いてくると馬超がの部屋へ行ったのだ。

「明日な…ん?それ…」

馬超は卓の上に置かれた【それ】を見つけた。

「あ!なんでもないよ」

がそれを隠そうとする寸前に馬超がそれを手に取った。

「わぁ綺麗な簪だね。どうしたの?」

姜維は綺麗な細工の簪に感嘆の声を上げる。

「え…うん…そのね」

「お前、これどうした?」

姜維の表情とは裏腹に馬超の表情は険しい。

「も、貰ったの。それ」

「へぇ、いいもの貰ったね」

「誰にだよ…美咲にか?」

あ…馬超はこれが【何か】知っている。

の脳裏にはこれは危険だというシグナルがこだまする。

「う…ん。叔母さんに」

「美咲殿に?別に普通じゃないですか?」

姜維は馬超に問うが、馬超は姜維を一睨みする。

「悪い、姜維。黙っていてくれ」

「あ、はい…」

。前から思っていたが、お前、俺らに何か隠しているだろ?」

「………」

「答えられねぇか?俺の前でそうなんだから、趙雲の前ではもっと言えないだろうな」

趙雲の名を聞いては顔を伏せる。

「これは…この簪は趙雲が美咲にやったものだ。それも特別な願いを込めて。
だから、簡単に人に渡すわけがねぇ。それが大事にしていた姪だとしてもな」

あぁ、もう本当のことを話さねばならないようだ。
姜維はともかく、馬超はかなり深い部分まで知っているらしい。
よりもこの簪のことを知っているようだ。

はとても小さい声で言った。


「…遺言…だったから……」


馬超と姜維は耳を疑った。

「ここに来る、2ヶ月前に…叔母さん、死んだの…病気で」

「嘘だろ」

は首を振る。

「叔母さんの遺言でこの簪を私にって遺言残してた。それで、家族で叔母さんの…」

姜維が呟く。

「美咲殿の墓参りをしていた時に、こっちへ来たのだね」

「うん。ごめん、黙ってて…なんとなく言いづらかったし、知らなくても良い事だと思ったから」

は痞えていたものが取れたようで、泣き出してしまう。



姜維がの頭を優しく撫でる。
は姜維に抱きつき声を上げて泣き出す。

「…マジかよ…」

馬超は手にしていた簪を見つめ呟いた。

聴かない方が良かったかもしれない。
そう思う。

けど、この簪は趙雲が美咲のために作らせたもので。
完成した時、自分に照れながらも嬉しそうに見せてくれた。

『どうです?馬超殿』

『あ?んーいいんじゃねぇの?喜ぶだろうな、美咲』

『喜んでくれるでしょうか?』

『喜ぶに決まっているだろ。ほら、さっさと渡してこいよ』

『ば、馬超殿!』

あの時、こっそり教えてくれた。
本当なら誰にも言わずにしておくだろう趙雲が、簪の出来の良さに
嬉しくて、馬超にこう洩らした。


『美咲殿に私の気持ちをちゃんと伝えて、それで…一緒になって欲しいなと』


聴いているこっちが恥ずかしくなると、馬超はその時笑い飛ばした。
だが、趙雲は至って真剣な顔をしていたので。

きっと上手くいくさ…と友を送り出した。

「渡せたけど、一緒にはなれなかった…だよな」

趙雲が美咲に簪を贈った直後に美咲は姿を消した。
それはちょうど、一年前だ。

一年後に美咲ではなく、美咲の姪だと言う少女が現れた。
顔は似ていても中身や性格がまったく異なる少女。
最初はを見るのが辛いと言った感じだった趙雲だが、今では普通に接していた。

当初話を聴いた時に、美咲の時間はすでに10年も経っていた。
自分たちの時間はまだ1年なのに。

「馬超殿」

姜維が心配そうに声をかける。
この事実を趙雲にどう話そうか?話すべきか、止めておこうか?

。悪かったな、辛い事言わせてよ…言いにくい事だよな。悪い」

が何か隠しているとは思ったが、馬超の中ではてっきり、美咲にはすでに新しい恋人なり夫がいるのでは?
そんな事ぐらいにしか思ってなかった。
だから、簪も必要なくなったのではと…

…趙雲には俺から伝える」

「馬超」

「嫌だろ、またこんな思いするの?それに言いにくいだろ?俺たちにでさえ、こんなんだしな」

趙雲に言うのは無理だろう。
そう馬超は考えるも、は首を振った。

「ううん。私、自分で言う」



「叔母さんから、趙雲に伝えて欲しいって言葉があるから。私が自分で言う」

反応が怖いなんて言っていられない。
趙雲のこの先を思うなら、言ってあげなくてはいけない事だ。

もしかすると、自分はこれを告げるためにここに着たのではないか?

、本当に出来るのかい?」

「うん、大丈夫。馬超、姜維ごめんね、ありがとう」

「礼を言うのは変だって…」

「明日、趙雲に言うよ」

「そっか…」





その日の晩。
は本当にすべての事を馬超と姜維に話した。
上手く伝えられたか心配だったが、二人ともしばらく無言のままだった。

明日、趙雲に伝えよう。

そして、この簪を趙雲に返そう。








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