空がきれいで心も晴れる。




ドリーム小説

『私にもっと頼っても良いのだぞ。私にとっては家族だ。可愛い妹みたいなものだ』

そっか、私は妹みたいな存在か。

『今は妹でもさ。この先はちゃんと一人の女性として見てくれるかもしれないよ』

そうだよね、私の心の傷を受け止めてくれたものね。
これからだよね。





【4】





「やっぱりね。そうだとは思っていました」

「痛い、痛いってば雲緑〜」

雲緑はの頬を抓っている。
後から、も趙雲が好きだと聞かされて雲緑皮肉を込めて抓ってみたのだ。

「だから、最初に聞いたのに」

パッと手を離す雲緑。
は抓られた頬を涙目で摩っている。

「だって……あの頃はさ」

「ああん?なんだって?素直に白状したまえ」

「痛い、痛い!」

今度は逆の頬を抓る雲緑。どこかその顔は楽しそうである。

「あはは、でも良く正直に話す気になったね」

「ん〜だってねぇ…雲緑は最初に言ってくれたし」

「ありがと。ねぇ、この事知っているのって、私と姜維だけ?」

「うん。他の人になんか話せないよ」

「まね。趙雲は人気あるから、あまり広めない方がいいわね」

「やっぱり?」

「そう、多いわよ〜趙雲狙いの女」

なんでだろうね、同じ人を好きなのにこんな話を笑いながらできるのは。
普通ならば黙っているだろうに。
でも、自然と雲緑には素直に話せた。
雲緑も特に気にはしてないようでと色々なことを話した。

最初に出会った頃は、『趙雲目当てよ。はついで』と言った彼女だが、元々面倒見が良いのだろう。
を構ってくれる。

やっぱり、彼女と友だちになれたのは嬉しい。



***



「なんだよ、気色悪いなぁ。なんとかならねぇのかよ、その面」

「え?失礼なこと言わないで下さいよ、馬超殿」

「だってなぁ?姜維…」

自分に話をふられて姜維は困るが、確かに馬超が言うとおり趙雲の顔の締りが悪い。
ニコニコ、終始笑いっぱなしだ。
馬超や姜維は気味が悪いと言うが、この笑顔を見た女官たちは卒倒寸前だった。

「ですが、何か良い事でもあったのですか?」

「え、特にないけどな。最近が」

が…』って話にあるとこれは無駄に長い。
聞いて失敗したと思う二人。
子どもが生まれたばかりの父親とでも言うのだろうか?我が子自慢をする父のような趙雲は。
あーだ、こーだとの話をするのだ。

「わかった、わかった。もういい」

「何も言っていませんよ」

「聞くだけ無駄」

「ば、馬超殿、それは酷いですよ」

彼女自慢をされるのも嫌だが、これはこれで物凄く嫌。
自分の娘自慢。

(なんで、そっちに行くかぁ?俺はてっきり嫁にでもするのかと思ったのによ・・・)

馬超は趙雲がを嫁にするのでは?と思っていた。
飛躍しすぎかもしれないが、近い将来そうなるのでは?と思っていた。
を引き取ってからの趙雲は、自分のことではないのに色々彼女の事で悩んでいる事が多かった。

どうすれば、元気になるのか。

どうすれば、笑ってくれるのか。

馬超に相談しに来るくらいだ。
だから、話に聞く『』と言う人物を見てみたいと思っていた。
実際に会って見て、趙雲に似合うと思った。
羽化する前の蝶と言う感じ。
きっと、趙雲によって綺麗な蝶か花になるのではと思った。

直後に自分の一言の所為で彼女が傷ついたらしいと知った時、申し訳ないことをしたとは思ったが
それがきっかけで趙雲との距離が縮んだ。
これは、もしかしたら?

と思ったら、趙雲の方は完全に彼女を『娘・妹扱い』のような存在に定着させていた。

(いや、家族って言い方が悪かったのか?…でもよ、伴侶としてとってくれても普通だよな)

馬超は腕を組んで考え込んでしまう。
自分の進め方が間違っていたのだろうかと。
と言うより、余計な事をしてしまったかもしれないと思った。

「どうかしましたか、馬超殿」

「あ?いや、別に」

(雲緑には悪いが、と似合いだと俺はやっぱり思うぞ…)

馬超は乱暴に自分の髪を掻いた。



(まぁ、確かに。をいきなり一人の女性扱いするのは無理かもね…)

姜維は茶を啜りながらそう考える。
最初からどうもそんな気がしていたのだ。

どちらかと言えば、趙雲は自分との仲を心配しているようだし。

(友だちだっての、僕とは。なんでわからないのかな…いつも貴方を見ているのに)

この、鈍感野郎!

と、趙雲が将軍様でなかったら言ってしまう所だった。
友だちを心配して見舞いに来たことを、好きな女の子の為にと思われたらしい。
時々、『とはどうだ?仲良くやっているか?』と聞いてくる趙雲。

(いい加減にしてくれ…)

戦場などでは敵の裏の裏側まで読み取る趙雲が、実は恋愛ごとでは超がつくほどの鈍い人だったとは…

「どうした、姜維。私の顔に何かついているのか?」

「え、いえ、別に…あはは、すみません」

思わず凝視してしまったらしい。
姜維は笑って誤魔化すが、どうやら隣にいた馬超にはわかったらしい。

「お前も大変だよな、姜維」

「え、なんですか、突然」

「あ?鈍い男なんだよ、あいつは…」

「…そ、そうみたいですね」

「いや、もっと大変なのはの方だな」

馬超と姜維は顔を見合わせて苦笑した。
意味がわからないと言った感じで趙雲は茶を飲んでいた。

(本当、。焦ったら負けだよ…この人には長期戦狙いで行くべきだよ…)



***



「妹扱い?まだ良いほうじゃないの?私なんて『馬超の妹』としか見られてないわよ」

「やっぱり妹なわけ」

「そうみたいね。出会ってから、そんなに経つ訳じゃないけどさ。もう鈍すぎ、趙雲ってば」

「でも、優しいでしょ?」

「まぁ…でも、それが他の女を増長させるのよ」

「あはは、雲緑ってば」

いまだ、趙雲邸の庭でと雲緑は話しこんでいた。

「最初は怖い人だなって思ったの。戦場だったしね。けど、一緒にいるようになってからそうじゃないなって」

「でも、少しずれているのよね…」

「そう!」

好きな人の話なのに、その人物に対しての愚痴が出てしまう。
別に趙雲は自分の彼氏でもないのに。

「この前なんてさ!姜ちゃんとの事色々言われたのよ!絶対、姜ちゃんと付き合ってると思われてる!」

「うわ、飛躍しすぎね。でも姜維が他の女性と仲良いのってあまり見ないしね」

「そうなの?でも私たち、本当にただの友だちだよ」

「あ、そうなの?それにしてもお互いなんで苦労してるのかね」

「好きな人の話をしているだけなのにね」

声を出して二人は笑った。
とても楽しい時間。
友だちとそんな風には好きな人の話はしたことがなかった
それは雲緑もそうだ。

(普通なら、趙雲目当ての女とはそんな話はしないよねぇ…でも、とは自然と話せちゃうし)

最初はライバルとでも思っていたが、友情の方が勝ってるらしい。
かと言って、趙雲を諦めるつもりはないし。

不思議なものだ。

「「もう鈍感野郎!!」」

思わず二人で声に出してしまう。
運が良いのか悪いのか、そこへ趙雲が馬超と姜維をつれて帰ってきた。

「誰が鈍感野郎なのだ?」

後ろを振り返ると趙雲が。
馬超と姜維は笑いを堪えている。

「お、お帰りなさい、趙雲様」

「あら、帰ってきたの…兄上と姜維も一緒なの」

なんのことでしょう?と言わんばかりに笑顔でいると雲緑。
趙雲一人が何のことだかわかってない。

「考える事は皆同じだな、姜維…」

「ば、馬超殿!」

「え、皆同じって兄上?」

「同じだよ、同じ」

「姜ちゃん?」

、そう言う事は思っていても口に出さないほうがいいと僕は思うよ…」

馬超と雲緑、姜維と
4人がそれぞれ鈍感野郎と思っている趙雲は仲間はずれにされた気分になって一人面白くなさそうな顔をしていた。


夕餉の時。

、昼間の鈍感野郎とは誰の事なんだ?」

「え…いや…誰と言われても…」

「あ、姜維のことか?」

(そう来るか、趙雲様)

どうやらこの男。
が雲緑に恋の悩み相談でもしていたと思ったらしい。
あながち間違ってはいないが、相手が全く違うぞ。

「姜ちゃんではないです」

「違うのか?後は誰だ?」

(…貴方ですよ、趙雲様…)

は乾いた笑いを浮かべながら、黙々と食べ続けていたのだった。

「なんだか、今日は皆可笑しいな。何故だ?」

「さぁ、何故でしょうね?」

「わからないな…私には」

「そ、そうですか…わからなくてもきっと平気ですよ」



***



毎日が平穏で外に出るのも苦にならなくなった
なので、以前働いていた時雨亭で再び働かせてもらう事になった。

その事を趙雲に話した時、彼はとても難しい顔をした。

「別に働かなくとも生活はできるだろう」

そう言う。

つまり、が外で働くのが嫌なのだ。を心配してそう思っているのだろう。

だが、としては、一日屋敷でごろごろしているのが嫌だったのだ。
ここには大勢の使用人がいるため、基本的にのする事はない。

「もう、お店の方で話をつけちゃいましたので、駄目だと言われても私は行きますからね」

、そう言う事は先に言うべきだ」

「先に言ったら、趙雲様は反対なさると思ったから」

「………」

これでは、趙雲も駄目だと言えず結局以前と同じようには日中時雨亭で働く事になった。

がまた働いてくれてウチとしては助かるけど、良かったのかい?」

主人は何だが趙雲に申し訳ないと思っているらしい。

「もう!良いのですってば!一日ゴロゴロしてると太ってしまうので」

「それは一大事だ」

「でしょ?」

などと言いながら笑う二人。
元々この店の者は気の良い者たちばかりなので、が再び顔を出した時喜んでくれた。

「あれ、。いつ戻ったの?」

「いらっしゃいませ〜えへへ、今日からまたよろしくお願いしますね」

常連たちもの姿を見て気軽に声をかけてくれた。

にとって、この店も大事な場所に戻って行った。



***



「なんだよ、その顔・・・うざい」

「…酷い言い草ですね、馬超殿…」

馬超の執務室で次の兵士たちの訓練について話していた二人。
だが、趙雲の集中力がいつもより散漫な為馬超が放った一言だった。

が心配でしょうがないって?あのな…前と同じ所で働くぐらい大丈夫だろ」

「あ、あはは。それはわかってますよ。店主も良い方なのは知ってますし」

「過保護すぎ」

「そうですか?…馬超殿だって、雲緑殿が心配になったりするでしょ?兄ってこんな感じなのでしょうかね」

(おいおいおいおい…兄でもそこまで心配しねぇよ…)

と思ったが口には出さずにいた。

「何故、黙るのですか?馬超殿」

「…俺は雲緑の事にいちいち口出す気ねぇし、兄だからってそこまで心配したことねぇな」

馬超は広げてあった地図を片付け始めた。

「馬超殿、話はまだ纏まってませんよ」

「場所変更。お前が余りに煩いから時雨亭とやらで、メシ食いながら話す」

「別に、わざわざ行く事ないでしょうが」

「早くしろよ、置いていくぞ…あぁ、別に俺一人でもいいけどな。の顔見てくるわ」

馬超は趙雲にひらひらと手を振ってさっさと執務室を出て行く。
趙雲も急いで彼の後を追ったのだった。



「いらっしゃいませ・・・あ、趙雲様に馬超様!」

いきなり店に二人が現れて驚く
でも、下手に騒ぐと周りに迷惑がかかるので、急いで彼らを席に案内する。

「ど、どうしたのですか?二人とも」

「別に、メシ食いに来ただけ。ここ美味いって評判だし。だから、適当に頼むな」

「は、はい」

馬超に言われて厨房へと駆け込んでいく
趙雲はなんだか恥ずかしいらしい。

「中々様になってるじゃん、なぁ、趙雲」

「え、そ、そうですね」

「…なんだよ、見惚れてたのか?可愛い可愛いちゃんにってか?」

ニタニタ笑う馬超に趙雲は真っ赤になって反論する。

「ば、馬超殿!変な事を言わないで下さいよ」

「いい嫁さんになるだろうな、は。なんでもあいつのいた世界じゃ、家事は使用人じゃなく自分たちでやるものなんだってな。奥さんが旦那様のために手作り料理を用意して家で待ってるのだろう?いーよなー」

「馬超殿、なんかそれは」

親父臭いです。

そう言いたかったか、あえて口に出さずいた。

「お待ちどうさまです」

!」

「…?どうかしました?趙雲様」

「な、なんでもない…馬超殿止してくださいよ、その目」

終始顔を赤くしていた趙雲。
馬超はずっとからかいっぱなしであったのは言うまでもない。








11/12/24再UP