空がきれいで心も晴れる。




ドリーム小説
『お前ってさ、いっつもそれな』


『つまんねー』


『なんか疲れる』





【3】





目が覚めたとき、は泣いていた。

「あ、れ?なんで?」

何故泣いていたのかは憶えていない。
けど、胸が苦しい。

涙が止まらなくて。

外を見るとまだ薄暗くて日が昇る前のようだ。
でも二度寝する気にはなれなくて身体を起こす。
まだ他の部屋からも物音はしない。

寝台のそばに置いてある水差しを手にするが夕べのうちに全部飲み干してしまったらしい。
仕方なく厨房で水でももらおうと思い部屋を出る。
相当喉が乾いていたらしく、水が喉をしみこんでいくのがわかる。

「はぁ…なんで泣いてたのかな…」

頭の中に靄がかかっている。
見た夢の所為で泣いたとは思う。
でも起きたと同時に忘れてしまった。
そう大した事ではないかもしれない。

いや、そうであって欲しい。

部屋に戻る途中庭から感じる人の気配。
そっと覗いてみると趙雲が槍を振るっていた。

(え…趙雲様!?だってまだ太陽出てないよ?)

しかし、彼は随分前から起きていたらしく、大量の汗を流している。

「…ふぅ…どうした

(えっ!なんでバレタの!?)

趙雲は手を止め、汗を拭っている。
名前を呼ばれてしまった以上顔を出さないといけないのだが…

「お、おはようございます」

「ん、おはよう。と言ってもまだ日は出ないが」

趙雲がの方に振り返るが、彼女の姿はない。
柱の後ろに座り込んでいるのがわかる。
何で隠れているのか不思議で笑ってしまう。

?」

「な、なんでもないです。どうぞ続けてください」

「いや、もう終わりだ。、何故隠れる?」

(何故って、私は夜着なんですけど・・・恥ずかしいもん)

早く部屋に戻り着替えたいと思うだが、趙雲の方が近づいてくる。

(ぐわっ、何で来るの?)

……ん?泣いていたのか?」

趙雲はの前に屈んで、の顎に手をかける。
涙が通った後を見つけたのだ。

「別に泣いてません」

は恥ずかしくってしょうがない。
寝起きの顔だし、夜着だし。
だが趙雲はそんな事は気にしていない。

「隠す必要はない。なんだ、どうしたのだ?」

「う…本当、なんでもないです!」

はバッと立ち上がり一目散に部屋に駆け込んでいく。
その顔はとても赤かったが、趙雲には良く見えてないと思われる。

!」

趙雲にしてみると、いまだ遠慮がちな態度が淋しくてしょうがない。
姜維や雲緑といるは自然体でいるのに、自分とは距離があるような感じがする。

結局、その後顔を会わせることがなく趙雲は登庁したのだった。



***



「それでね、美咲ちゃんがね」

「うん、それで?」

姜維と雲緑がの下を訪れていた。
二人とも仕事はしなくて良いのか?と心配になるだが、こうして会いに来てくれるのは嬉しい。
姜維は聞き上手らしく、いつもいやな顔をせず話を聞いてくれる。
だが雲緑の方は動いている方が好きってだけあって、会話にはあまり入ってこない。

「ね、。兄上が貴女に会ってみたいっていうのだけど、どう?」

「え、雲緑のお兄さんって・・・確か」

「趙雲殿と同じ将軍の馬超殿だよ」

「なんでその馬超様が?」

「さぁ?私や姜維がよく貴女のことを話すからじゃないの?趙雲もたまに兄上に何か言ってるし」

「ごめん、私は」

あまり城の人間とは会いたくないのは変わらないらしい。
の態度を見て仕方ないかと雲緑は肩を竦める。

「別にいいけど。兄上は私が言うのもなんだけど、結構付き合いやすい性格だと思うけどね」

「うん、そうだよ。馬超殿は下の者の面倒を見たりしてくれる気さくな方だよ」

などと馬超のことを色々聞かされてしまうだった。

その馬超とは意外にも早くに出会うことになった。
姜維と雲緑がを街の外にある大きな湖がある場所までつれて来てくれた。
屋敷の中ばかりじゃ厭きるだろうからと彼らなりに考えてくれたらしい。

「うわ〜すごい綺麗〜ありがとう、二人とも」

が喜んでくれて嬉しいよ」

「結構良いところなのよ?馬を休めるにもちょうど良いし」

しばらくは湖を眺めたり、何をするわけでもなく寝転んでみたり、散歩したり。
自分の思うままに遊んだ。

そこへ、馬が走っているのが目に入る。
近づいてきたかと思うと、馬はの頭上を飛び越えていく。
突然ことで腰を抜かしてしまう

「おっと、悪い!人がいたなんて気づかなかった。大丈夫か?」

馬から降りてきた男。
本当に悪いと思っているのかいないのか?その態度に首を傾げてしまう。

「あ、兄上!あぶないじゃないですか!が怪我でもしたらどうするのですか!」

「お、雲緑。それに姜維も」

急いでの下へ走ってくる二人。
馬超とは対照的に二人は青ざめた表情をしている。

「そうですよ、馬超殿!」

「なんだよ、悪かったって。ほら、立てるか?」

馬超が手を差し出すが、は動きやしない。
正確には動けないのだ。

「しょーがねぇなぁ、ほらよっ」

「きゃあ!!」

「兄上!」

「馬超殿!」

馬超はの腰に手をやり持ち上げる。
子どもを持ち上げるように。

「あ、あの!」

「ん?なんだ?お前軽いなぁ、メシちゃんと食ってっか?」

の頬が恥ずかしさで赤く染まる。

「食べてます!それより、お、おろして欲しいのですけど…」

「お、悪い」

ストンといとも簡単におろす。

「何してたんだ、お前たち」

「何って、気晴らしに外に出ただけですよ。馬超殿こそ執務はどうしたのですか?」

「あぁ、岱に任せた。それに俺の仕事場は戦場だ」

とはいうが。単に逃げ出したようだ。

「兄上〜後で岱従兄様に叱られても知りませんからね」

「平気だろ?現にお前も遊んでるだろ」

「私はちゃんと許可を取ってあります!」

「あ、僕も丞相の許可を頂いてますからね」

「…なんだよ。別に大丈夫だろ?…そう言えばお前とはお初だな」

「は、はい」

三人のやり取りで、この男が雲緑の言っていた兄、馬超だと言う事はにもすぐにわかった。
確かに雲緑と姜維が言うとおり、気さくな兄貴肌のようである。

「趙雲の所にいるってんだろ?俺は馬超だ、よろしくな」

「は、はい。よろしくお願いします」

「趙雲や雲緑にお前の話をよく聞かされてな、一度会ってみたいと思ってた」

「はぁ……」

「普通だな」

「は?」

馬超はを上から下、下から上とまじまじと見て言った一言。

「いいんじゃねぇの?派手すぎず、地味すぎず。趙雲に似合いだろ」

「な!」

「兄上!私の前でそう言うことを言うのですか!」

「別にそう思っただけだから良いだろ?思うのは俺の勝手だ」

「ならば、口には出さず頭の中だけにしてくださいませ」

中々面白い兄妹だとは思った。
ポンポンと軽快なやり取り。
趙雲と同じ将軍と言ってもタイプが違うようで、本当に将軍かと思ってしまう気さくさ。
初対面なのに好感を持て憎めない性格のようだ。

それから4人で雲緑が用意したお弁当を食べた。
もいつも以上に楽しめ、色々な話をした。
やはり姜維は笑って頷いて、ちゃんと聞いてくれている。
雲緑も突っ込んできたりして、一層仲良くなった気がする。
けど、馬超は。

「へぇ、面白いね。のお父さんは」

「少し変わってるかも。それを美咲ちゃんに言ったらね」

「……なぁ、おい」

「「「?」」」

「お前、なんで人のことばっか話すわけ?自身の事は何一つ出てこないぞ」

馬超がなんとなく浮かんだ疑問を口にした。
言われて見ればと、姜維も雲緑もそう思った。
だが、言われたは一瞬息が止まるような思いをした。
そして、誰とも目を会わせず俯いてしまう。

?」

「…ううん、なんでもない…そう、だね…」

の脳裏には思い出されたあの頃の事。


『お前ってさ、いっつもそれな』


『つまんねー』


『なんか疲れる』


それはに刻まれた心の傷。
初めて付き合った人から言われた言葉。

臆病になった原因。

他人にしてみれば何気ない、なんでもないようなことでも
にはとてつもなく大きな事で。

馬超が言った事は、にそれを思い出させるきっかけになった。

、どうしたの?」

「ん?なんでもないよ」

「なんか顔色悪いよ、平気、

「大丈夫。平気、平気」

言葉とは裏腹にの表情は暗く、姜維たちには何がなんだかわからない。
ただ、馬超の一言が引き金になったとは思うのだが。

「兄上が変なことを言うから」

「あぁ?俺は何も言ってねぇだろ?大したことじゃねぇだろうが」

確かに以外には意味がわからないことだから。
結局、は少しも笑う事がなく趙雲邸へと戻った。

いつもの夕餉の時間になっても部屋からは出てこない。
侍女が声をかけるも『食事は要らない』の一言で。
帰宅した趙雲にも何も言わないまま、は部屋から出てこなかった。


翌日。

「姜維」

「あ、おはようございます。趙雲殿」

「あぁ、おはよう。実は聞きたいことがあるのだが」

「はい?」

諸葛亮の所へ行く途中の姜維を趙雲が呼び止めた。
趙雲が聞きたいのはの事。
趙雲に昨日の事を訊ねられ、姜維は困惑してしまう。
正直、姜維には何がなんだかわからないのだ。

「そうか、わからないのか…」

「すみません。お役に立てなくて…、元気ないのですか?」

「夕べは部屋から出てこなかった。食事もしてない。私にはどうしてなのかわからないのだが」

「別に変わった事はなかったのですけど…馬超殿がに自分の事は?って聞いてから元気がなくなった気はするのですけど」

「馬超殿?なんだ、昨日は雲緑殿と三人ではなかったのか?」

「あ、偶然馬超殿にお会いしたのですよ」

「そうか…馬超殿か」

「僕はこれで。丞相のところへ行かなくてならないので」

「あぁ、悪かった。引き止めて」

姜維は趙雲に軽く頭を下げて歩き出した。
趙雲は馬超の所へ行く事にした。

「失礼しますよ、馬超殿」

「あぁ」

扉をニ、三叩き趙雲は中へ入る。
馬超は面白くなさそうな顔をして書簡と睨めっこをしていた。

「どうした?」

「昨日の事をお尋ねしたくて」

「昨日?何かあったか?」

馬超はそう言って、手にしていた書簡を机に抛り投げる。

が夕べから元気がないのですが、馬超殿何をしたのですか?」

どことなく、その声から怒りを感じさせている。
馬超は何で自分の所為なのだ?と頭を捻る。

「なんで、俺なんだよ」

「馬超殿に何か言われたのが原因と聞いて」

「俺?…にか?…あ〜言ったけどよ。別に酷いことは言ったつもりはないぜ」

「貴方にその気がなくとも、には酷く感じたのでしょう?」

完璧に自分が犯人扱いされている。
馬超は面倒なことになったと嫌になる。
滅多なことで怒りはしない趙雲。
けど、最近はのことで何かあるとすぐに機嫌を悪くする。
自分はと会ったことがなかったので、どんな子なのか興味があった。
会ってみて普通の子だったから馬超も好感は持てた。
趙雲と似合いではないかと。
だが、今の趙雲は思いっきり保護者の気分なのだろう。
娘、妹を傷つける奴は自分が成敗するぞ!とでも言わんばかりの迫力で迫ってくる。

「ちょっと疑問に思った事を聞いただけだよ」

「何を」

「あいつ、話をするのに、他人の話ばっかりするんだ。家族や友人のことをさ」

「別に普通だと思いますが」

「だーかーら!自身の事は何も出てこないから、何で自分のことは話さない?って聞いただけだ」

「…あ、言われて見ると」

趙雲が毎日夕餉の時に聞くの話は、家族や友人のこと。
今日、誰それがどうしたとか、そんなこと。
それについて、がどうしたとかはあまり聞いたことがなかった。

「な?別に普通だろ?」

「確かに…でも現には…」

趙雲はやはりに寂しさを感じる。
自分ではどうにもできないのだろうか?

「気にすることねぇと思うけどね、俺は」

「………」

「気になるならちゃんと話せばいいだろ?じゃないとわからないわけだし」

「それは」

「ま、頑張れば。今のアンタにとっては大事な家族なんだろ?」

「家族?」

「この先何が起こるかわからねェ世の中だろ?
家族とも何かきっかけで別れるかわからん。だから話せるうちは何でも話した方が良いぜ」

「馬超殿…」

少しだけ淋しそうに笑う馬超。
それは自分のことを言っていたのだろう。
父と弟たちを曹操に殺された馬超。
馬超が雲緑に対して何でもはっきり言うのはそのことがあるからだろうか。
できる限り一緒に居て、話せる事は話そう。

それが馬超の妹の為にしていること。

一緒に暮らしている以上、自分がを連れてきた以上。
自分にはを守る義務はある。
まだ短い時間だが、は趙雲にとって家族と同じなのだ。

「では、帰ったら話すことにしますよ」

「おぉ、そうしろ」

自分からも歩み寄らないといけないことだ。



***

 

自然と笑うようになった
けど、先日姜維たちと出かけてからまた塞ぎこむようになった。
でも、趙雲は馬超に言われて、と話をすることに決めた。

いつも誰かに頼みっぱなしだったし。

、少し良いか?」

「…はい」

何かに怯えているような気がする。
それは、自分に対してか?…だとすると正直悲しい。

「先日、姜維たちと遊びに出かけたのだろう?楽しくなかったのか?」

「え…そ、そんなことないです」

「ならば、どうした。あの日から元気がないようだが」

「それは…」

答える気がないのか、言えないのか。
多分後者の方だろう。
自分に心配をかけまいと言う気がないのだろう。
だが、今のその状況にこそ趙雲は心配してしまう。

「馬超殿に言われた事はにとって辛い事なのか?」

「な、んで…」

「馬超殿に聞いた。が自分のことではなく人の話をするのは何故だと聞いたと馬超殿は言っていた」

「………」

「私には言えないか?…この前の朝方泣いていた事も隠していただろ」

「………」

は俯いたままだ。
趙雲はため息を吐く。



少し低めの声で名前を呼ばれ肩をビクつかせる

「……私が怖いのか?」

「ち、違います!」

は顔を上げ、驚く。
趙雲の顔は酷く悲しそうで寂びそうに感じる。
いつも自信に満ち溢れた顔をしていたから。

こんな顔をさせてしまったのは自分の所為か?

はキュッと服を掴む。
そして、ゆっくりと話し始める。

「怖いです…皆に厭きられてしまうのが…」

「何故、そう思う」

「…私、ここにくる前に付き合ってた男の子がいたんです。でも長く続かなくて。その人が私に言ったんです…なんで人のことばかり話す…なんで」

は少し泣きそうになる。嫌な思い出なのだろう。

「なんで自分を隠すんだって…そ、そんなつもりなかったのに…その人に壁を作っていたみたいで」

深く息を吐く

「そんな私といてもつまらないって。馬超様に言われた時、その時のことを思い出しちゃって…口には出さなくても姜ちゃんも雲緑も皆、あの人みたいに、私の事……」

「私はそれくらいじゃの事は嫌いにならないぞ」

バッと顔を上げたの目には笑った趙雲が映る。

「趙雲様…」

の世界の事、私は知らないから、そこでどんな事をしていたか、どんな人たちと一緒にいたのか、色々聞けて私は嬉しいと思う。それに、その人たちはにとって大切な人たちなのだろう?」

「はい、大切な大好きな人たちです」

の大切な人を知る事ができて嬉しい。そうだな、これから少しずつのことも聞かせてくれればいいさ」

「趙雲様」

趙雲はの頭を優しく撫でる。

、もう一つ良いか?」

「はい」

「私にもっと頼っても良いのだぞ。私にとっては家族だ。可愛い妹みたいなものだ」

「……妹?」

「あぁ、私のような兄では口煩いだけかもしれないがな」

「そんな…こと…ないです。ありがとうございます、趙雲様」

趙雲は気づかなかったようだが、は『妹』と言う単語に反応した。

 ―そうか、私はそう言う風に映るのか
 ―仕方ないか

家族として改めて迎えてくれる趙雲には気持ちを隠して笑うしかなかった。



***



、怒るよ」

「だって…」

あの後、を心配して様子を見に来た姜維にもちゃんと話した。
すると、少し面白くなさそうに口を尖らせた姜維。

「僕はそんな風に思ったことないよ。別には他人の事ばかり話しているわけじゃないよ」

「本当?」

「ちゃんと自分で思ったことを言ってるよ。はぁ、それにしても…その人酷いね」

「もう終わった事だもん」

「そうかな?だってさ、考えてもみなよ。が家族や友だちの事を話すのはその人にもの好きなものを知ってもらいたいってことだろう。それのどこがいけないのさ」

終わった事。
そう言っても自分は今まで気にしていたわけだし、でも趙雲や姜維が言ってくれた事は嬉しかった。
だから、今また話せるのだろう。

「その時は本当に、壁を作っていたのかもしれないし」

「最初から自分をさらけ出してくる人間もどうかと思うよ」

「あはは、姜ちゃんキツイなぁ」

「焦りすぎたんだね、その人は。でも、やっぱり許せないな、僕は」

「ありがと、姜ちゃん」

「もっと怒るべきだよ」

「今、怒ってもしょうがないよ。姜ちゃんがそう思ってくれただけでも嬉しいし」

少し恥ずかしそうに笑う
ようやく、姜維も安心したようだ。

「でも、まだ引っかかるな」

「え、何に?」

、まだ何かに悩んでるでしょう」

「そんな事ないよ」

はぶんぶん首を振る。

「嘘だね。多分…趙雲殿のこと…かな?」

「え…」

瞬時に頬が赤くなる

「当たりだね」

頬を赤く染めるを見て、姜維は笑った。わかりやすい反応だったから。

「聞いて欲しい?聞くだけなら聞くけど」

「えっと…どうしようかな…」

さっきの話と違って姜維は無理に聞こうとはしなかった。
それが恋愛に関することだからだろう。
は少しもじもじして姜維を何度かちらちら見る。
そして、意を決したようで話し始めた。

「趙雲様が、私のこと妹みたいだって」

「ふーん。普通はそうだろうね」

「やっぱり…」

「でもはそれが気にいらないってことは、好きなんだね、趙雲殿のことが」

「姜ちゃん!声大きいってば」

は慌てて周りを確認するとりあえず、今は誰もいないようだ。
胸を撫で下ろし、少し恨めしそうに姜維を睨んだ。

「あはは、ごめん。やっぱりそうじゃないかとは思っていたよ」

「姜ちゃん」

の前の恋人の話じゃないけど、焦りは禁物だと思うよ。だって趙雲殿のことあまり知らないだろ?」

「うん、うん」

「今は妹でもさ。この先はちゃんと一人の女性として見てくれるかもしれないよ」

「えへへ、姜ちゃん優しい〜ありがとう」

「いえいえ」

「ね、姜ちゃんは?姜ちゃんは好きな人いる?」

「な、ぼ、僕は別に」

「いるなぁ?その様子じゃ」

「内緒だよ」

「ずるい、教えて。姜ちゃん私の好きな人知ってるじゃん」

「それはちょっと違うぞ、

縁側でそんな風にじゃれてる二人を見れば、全員がこの二人の仲の良さに呆れてしまうであろう。
だが、意外にもこの二人の間に恋愛感情は皆無だった。

「教えてよ」

「誰に言わないって約束できる?」

「勿論」

ニコニコ笑うにちょっと不安を覚える姜維。
仕方ないかとため息をつく。

「絶対だからね。……さん」

名前の部分だけ微妙に小声になった。
そしても知っている人だ。

「って、確か城にいる」

「そう、その人。絶対内緒だからね。僕はまだ気持ちを全然伝えてもいないのだからね」

悔しそうに顔を赤くする姜維。
男の子とこんな話ができるとは思っても見なかったのでは嬉しくなる。

「ちゃんと約束は守るよ。そっか、あの人か」

ちょうど、そこへ趙雲が帰ってきたようだ。

「ただいま、。姜維来ていたのか」

「お帰りなさい、趙雲様」

「あ、お邪魔してます。あれ?」

「よう、この前は悪かったな、

趙雲の後ろから馬超がやって来た。
手には何かを持っている。

「馬超様。いえ、私の方こそ」

「姜維も丁度いい、夕餉を食べていくがいい。馬超殿が色々差し入れてくださった」

「本当ですか?じゃあ遠慮なく」

「なぁ、約束ってなんだ?お前ら何隠してるんだ」

突然、馬超がと姜維に向って言った。
二人は顔を見合わせて笑う。
そして


「内緒です」
「僕との二人だけの秘密です」


と言った。
馬超は教えろとギャーギャー騒ぐが、その隣で趙雲はが楽しそうに笑うのを見て目を細めるのだった。
その晩の夕餉は馬超と姜維もいただけあって、とても騒がしいが楽しい時間となったのだった。








11/12/24再UP