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空がきれいで心も晴れる。
初めて人から告白されて、初めての交際。 ずっと上手く良くかと思ったけど、世の中そんなに甘くなくて。 2ヶ月と持たなかった仲。 きっと、私が幼すぎたのかもしれない。 彼から言われた言葉は私の心に突き刺さっている。 おかげで、恋愛に関して少し臆病になってしまいました。 【1】 は至って普通の子だった。 別に目立つ存在でもない可もなく不可もなく普通の子。 集団生活を乱すこともない学生生活。 良く言えば、従順な子。 悪く言えば、個性がない子。 きっとこの先もは学校に通い、就職して、結婚して、子どもを生んで・・・ などの世間一般で言われる普通な生活をしていくだろうと思っていた。 まぁ、夢の一つや二つあるだろうから、それを目指すか否かは自分次第。 だが、ある日を境にその生活は一転してしまった。 今現在、のいる場所は そう、戦場だった。 確かさっきまで学校にいたはずはなのに。 「……ど、どこなの?」 荒野と言うのがすぐに情報として叩き込まれるが、周りには傷つき倒れた人 折れた槍や矢などが突き刺さった大地。 強風の為舞う砂埃に嗅いだ事もない臭いが時折鼻を掠める。 あぁ、そう言えばどこぞの国で戦争おっぱじめた馬鹿がいたけど、ここはそこなのだろうか? だが、砂漠ではない。 歩き出そうにもどこへどういったら良いかわからない。 だが、いつまでもこうしているわけにも行かないので第一歩を踏み出す。 だが、足首を誰かに掴まれ転んでしまう。 「ふぎゃぁ!!」 「あ、あんた…たすけてくれないか…」 「ひっ!」 身体を反転させ上体を起こし見る。 自分の足首を掴んでいたのは青い軽鎧をつけた30代ぐらいの男だった。 だが、男は生きているのが不思議なぐらい体中傷ついている。 虫の息といった所だろうか。 「なぁ…」 と言われても、正直近寄りたくない。 助けてあげようと思えてもどうすれば良いかわからない。 「や、やだよ……私には無理だよ」 「たのむよ…」 「わかんないってば、どうすればいいの!」 依然足首を掴まれたままだが、少しずつ後ずさりする。 辺りが倒れた人・・・屍で埋め尽くされているので手がそれに触れてしまったりして気持ち悪い。 「ご、ごめん、おじさん、手離して」 「…!?…」 男性は突然死んでしまった。 何が起こったかわからない。 だが、すぐにわかった。 男性の背中には槍が刺さっていた。 男性が死ぬ寸前、瞬間にさらに強くの足首を掴んだのが気持ち悪かった。 「ここで何をしている」 ゆっくりと近づいてくる影。 馬に乗った誰かが声をかけてきた。 「………」 逆光になっていて馬に乗った人物の顔が良くわからない。 馬上から男性の背中に刺さった槍を抜く。 「どうした、答えられないか?」 「こ、答えなかったら、その人みたいに私も殺すの」 刃向かう気はなかったが何故かそんな言葉が出た。 それに答える事はなく、その人物は馬から降りた。 「そう言うわけではないが」 近寄ってきた人物=男はの前で片膝をつき目線を合わせた。 男から微かに感じた血の臭いには目をそむけた。 「どこから来た、珍しい格好をしている」 「……学校」 「そのような地名は聞かないが、むっ!」 男は何か異変を感じ素早く立ち上がった。 槍を構え神経を集中しているようだった。 「死にたくなければそこから動くな」 男が少し前進すると、さっき死んだ男と同じ青い軽鎧を見につけた男たちが現れた。 「こいつだ、蜀の将軍だ……こいつをやれば」 「首を取れーー!!」 男たちが一斉に向う中、たった一人でも怖じることなく立ち向かっていく。 「我が槍さばき!かわせるか!!」 一振り、二振り、次々と倒されていく男たち。 の目の前の現状が自分のいた世界ではない事を物語っていた。 (ここはどこなの?) 息一つ乱れることなく斬っていく目の前の男。 段々と辺りに血の臭いが充満してくる。 はその臭いと現状に耐え切れなくなりそのまま倒れてしまった。 意識が薄れていく中、男を見ては 「…青い……龍だ…」 そう呟いた。 気がつけば、少女が倒れていた。 自分を狙った敵兵士はすべて倒した。 少女に近寄り、頬を数回軽く叩くが反応はない。 ここに捨て置くことも出来ないので仕方なく自分の天幕へと連れ帰ることにした。 男の名は趙子龍。 蜀を治める劉備が信頼する男。 「趙雲!遅いから心配したよ。ん?何、その子?」 緑色の武闘服に身を包んだ、幼さが少し残る少女が趙雲に駆け寄る。 珍しい装束の少女を抱える趙雲。 「先ほど保護したのですよ、私の所為で倒れてしまったので」 「ふーん」 なんとなく面白くない様子の少女。 「そう言えば、馬超殿の方は良いのですか?」 少女は馬超の妹の馬雲緑。 兄に劣らず戦場を駆ける少女だ。 「兄上の方もあらかた片付いたから。そうそう、軍師さんから招集かかっているわ」 「わかりました、すぐに行きますから」 趙雲はそう言って再び歩き出した。 その後姿を雲緑はつまらなそうに見ていた。 軍医を自分の天幕に呼び、後を任せる。 そして軍師、諸葛亮の下へと急ぐのだった。 「名前、聞いてなかったな」 一度天幕の方を振り返り趙雲は呟いた。 *** は見知らぬ場所へ迷い込んだが、そこは過去の中国。 小説などでもよく知られた三国時代だった。 はその中でも蜀と言う国の成都で生活を始めて早一ヶ月が経っていた。 当初、過去の三国時代へ飛ばされたかと思えば、歴史の流れ、背景に微妙にズレがあった。 ここはの知らないもう一つの三国時代らしい。 がここへ呼ばれた、飛ばされた理由など自分には見当もつかないし かと言って何か出来る不思議な能力があるわけでもない。 それでもの事を不審に、異質に思う者が多くいるようで。 滞在を許された君主劉備の下でも、あまりいい思いをすることがなく。 は人間関係に嫌気がさして、城を出て普通の暮らしを始めていた。 大袈裟に言えば一人で生きていこうと考えていたのだ。 「、悪いが皿洗ってくれ」 「はーい」 は成都の町のある一角の大衆食堂とでも言うのだろうか、そこで働いていた。 昼間は食堂、夜間は飲み屋。 は昼間だけ働いていた。 最初は色々覚えることがあって大変だったが一ヶ月も経てばそこそこの働きを見せていた。 そんなに多く貰えるわけではないお給金。 だが、ひとりで生活する分には十分だった。 店の主人や店員もいい人ばかりで、自分は運がいいほうだと気づく。 「少ししか経ってないのに私ってば逞しくなったなぁ」 いつも『普通』でいただけなのに。 「、城へ注文取りに行ってくれ」 「あ、はい。わかりました」 素直に主人の言うことを聞いたもののあまり近づきたくないのが本音。 あそこの人間は自分のことを異質なものの目で見るからだ。 「ま、行った所で用があるのは厨房だし大丈夫でしょう」 の存在を知っているのは上の人間だ。 下っ端が知るはずもない。 門を潜り、教えられた厨房の裏口へと回る。 「毎度お世話になります、時雨亭です。ご注文承ります」 の声に料理長と思われるガタイのいい男性がやってくる。 「おっ、はじめて見る顔だね」 「はい、最近雇われたものです。これからよろしくお願いします」 「そうか、俺はこの厨房を預かる楊って言うんだ。よろしくな。嬢ちゃん」 楊とは早くに打ち解けた。 時雨亭との付き合いは前君主の代からのものらしい。 だからか色々裏話も聞けた。 「じゃあ、ご注文のお酒は明日お届けしますね」 「おう、頼んだよ」 「はい、ありがとうございました。失礼します」 用事が無事に済んだ事もあり機嫌がよくなる。 このまま店に戻って今日の仕事は終わりだろう。 だが、城を出る際にに気づいた者がいた。 「」 「……あ…こんにちは」 を保護してくれた男趙雲だ。 「どうした?」 「…仕事で…厨房に注文取りに来ただけです」 「そうか…困ったことなどないか?」 「特にないです。店の人も皆良い人ばかりだから」 「、戻ってくる気はないのか?城の者も悪気があったわけではないし」 「私を助けてくれた趙雲様には申し訳ないですけど、私今の生活気に入っていますから」 のことを異質な者として見ていた者は確かにいたが、趙雲はのことを気にかけてくれた。 だから城を出ると言ったときも最後まで反対した。 ならば、自分の屋敷に来ないか?とまで言ってくれた。 「わかった、ならば余り無理はするな。困ったことがあればいつでも私に言って欲しい」 最初の出会いは最悪だったが、優しすぎるこの武将にはどこか惹かれていた。 知らない大地で不安だった自分にいつも声をかけてくれたのは趙雲だったから。 「ありがとうございます。それで、あの」 「ん?」 が言いかけた時、他の声に遮られてしまった。 「趙雲!こんな所にいた。手合わせしてくれるって言ったじゃない」 「雲緑殿。そうでしたね」 雲緑は趙雲の腕を抱く。 親しげな二人には目を逸らす。 「約束ちゃんと守ってよね。…あれ貴女…」 「私、お店に戻らないと。失礼します」 頭を下げは走っていく。 「!」 「行っちゃった。さ、趙雲。行きましょう」 雲緑は趙雲を引っ張って歩き出す。 の後姿をチラリと見るがすぐに前を向いて趙雲に笑いかける。 「手加減、しないでよね」 「しませんよ、そんなことをしたら貴女は怒るだけですから」 *** 店に戻り、城からとって来た注文を主人に伝える。 「おう、わかったよ。今日はもうあがって良いぞ」 「はーい、お疲れ様でした」 笑って店を出る。 本当はあまり笑いたくなかったが、周りに心配掛けたくなかったから無理をしてでも笑った。 が笑いたくなかった理由。 趙雲と雲緑を見てからだ。 短い時間だったが城にいる間、二人の仲の良い様子を何度も見かけた。 それだけで心苦しくなる。 自分はそれだけ趙雲に惹かれていたのだろう。 けど今の自分には何をどうするって事が出来なかった。 「ふぅ…やっぱりあれが響いてる…駄目だなぁ」 立ち止まって首を振った。 忘れてしまいたいのに、忘れられず残っている言葉。 「もう!」 それを振り切るかのように走り出す。 しかし、角を曲がったところで何かにぶつかった。 「うわぁ!」 「ぎゃ!」 ぶつかったのは人で、辺りにその人=青年が持っていたと思われる荷物が落ちた。 「す、すみません。大丈夫ですか!?私がよそ見していたから」 「え、大丈夫です。僕の方こそ情けないですね、あはは」 怒るどころか笑って答えた青年にもつられて笑う。 二人で荷物を拾い、改めては頭を下げた。 「いえ、僕にも責任はありますから。じゃあ」 青年は荷物を持ち直し行ってしまった。 気持ちの良い青年だなって思いながらも帰路に着いた。 翌日、再び城へ行った時その青年に会って驚いた。 「あれ、君…」 「昨日はすみませんでした」 「あ、別にたいしたことはないから」 面白いくらいに青年と意気投合した。 青年の名を姜維 字を伯約という。 諸葛亮の弟子である。 は今までのことを姜維に話した。 「今まで一度も会わなかったのが不思議だなぁ」 「そうかな」 「だって同じ城にいたのに。僕はそんな話全然聞かなかったよ」 「聞かないほうが良いよ」 歳も近い所為か割りと気軽に話せるようだ。 「じゃあ、僕こんど、時雨亭に行ってみようかな」 「本当!美味しいものいっぱいあるよ」 「楽しみだなぁ…あ、ちょうど昼時だから今から行こうかな」 「平気?お仕事あるんじゃないの」 「午前中の分は終わったよ。だから平気。行こうか」 「うん、案内するよ」 大人たちに囲まれた生活で出来た初めての友だち。 なんだか嬉しくてしょうがない。 「?」 姜維と楽しげにしているの姿を趙雲は見た。 滅多に笑う姿を見せなかっただったから趙雲は驚くと同時に少し安心した。 「元気そうで何よりだ」 邪魔をしちゃ悪いと思い趙雲はそのまま行こうとするが、姜維が趙雲の姿を見つけ声をかけた。 「趙雲殿!」 「な、なんだ?」 自分の下へ駆け寄ってくる姜維。 少し遅れても来た。 「趙雲殿も行きませんか?時雨亭で昼食にしませんか?」 「いや、私は」 ちらっとの方を見る。 趙雲なりに気を使っているらしい。 「私も一度趙雲様に来て欲しいなって思っていたから…お暇なら、ぜひ」 「そうか…じゃあ行ってみようか」 は自分を心配してくれる趙雲に、『ちゃんと自分は頑張っていますよ』って姿を見せたかった。 少しでも安心してもらいたくて。 に案内されてやってきた時雨亭。 昼の混雑時であったが、趙雲も姜維も席に座れ、食べることが出来た。 一生懸命働くの姿を見て趙雲は笑ったのだった。 今日は友だちもできた。 私、ここで頑張れそうだ。 皆良い人だし、何よりも趙雲様に私の働いている所を見てもらえたから。 趙雲様、私は大丈夫ですから。 本館でも撤去した趙雲夢です。覚えている方いますかね?
タイトルは…確かこんなんだったような?
11/12/24再UP
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