ドリーム小説


「行ったぞ!!」

「はい!」

虚討伐。
ほぼ毎日と言ってもいい。
でも、段々と慣れてきて自信がついてくる。
そろそろ現世に派遣しても良いのでは?と周りが思うくらいに。

そんな時に起きたこと……





【振り返ることの無い道】





「おー!」

「あ、久しぶり〜元気だった?」

「元気、元気。は?」

久しぶりに会った学院時代の友人でもあり同じ隊所属の男の子。
同じ隊にいながら滅多に会う事がない。
不思議なものだ。

「私も元気だよ〜毎日恋次さんにしごかれてるしね」

「あはは、いいじゃん楽しそうだし」

「まぁ、それなりにね。そっちは?」

「俺も先輩たちにしごかれてるよ。でもと同じで楽しいよ」

変な話だ。
しごかれている毎日なのにそれが楽しいと思える。
きっと力がついてきた自分に自信がついてきたからだろう。
柄の悪いと評判の十一番隊だが、それなりに楽しいとも思えるのだろう。

「どっちが早く現世に派遣されるかな」

「どっちかな?私はまだ今のままでいいかな。恋次さんに教わること多いし」

先日も稽古を見てもらったが、まだ合格点はもらえない。
それどころか実戦だと死んでしまうぞと脅された。

「そっか。とりあえず、一歩ずつ進んでいこうな」

「うん」

同期の中で同じ隊所属になったのは彼しかいない。
たまにしか会えないけど、一緒に頑張っているなって気がしてとしては張り合いがある。

だけど、それが彼の笑顔を見た最後だった。

「え………なんですか?」

「重症だってよ、お前のダチ」

「嘘」

「嘘言ってどーすんだよ…今、四番隊で治療中だ」

朝一で恋次に会った時、そう言われた。
昨日久しぶりにあった彼が、その後向かった虚の討伐で怪我をした。
しかも命に関わるような重症だという。

「………」

「おい、大丈夫か?

「……だ、大丈夫です………」

「お前、初めてだよな」

「な、なにがですか?」

恋次はバツが悪そうに少し口先を尖らせて目線をそらす。

「……誰かが………いなくなること」

「え……」

恋次にしては優しい物言いだったかもしれない。
でもそれだけでもには何を意味するのかわかった。
わかってしまうと、今度は悔しさがこみ上げてくる。

は恋次に背を向けて駆け出した。

「おい!!」

わからないけど、いかなくてはと思った。
これで最後になりたくないし。

「あ、!」

四番隊の隊舎前にやってきた。
そこで沢山の荷物を持った四番隊所属の友だちに会った。

「あ、あのさ…その…」

「うん、の聞きたいことわかる」

「そっか…それで?その、容態は…」

友だちは無言で首を横に振る。

「い、意味わからないよ…」

…」

彼女の話では必死で治療が行われているが、今夜が峠らしい。
は彼女に案内されて中に入ったが、横たわっている彼の姿に絶句する。
身体中包帯だらけ、巻かれた包帯の数箇所から血が滲んでいる。

「なんで……」

昨日、一緒に頑張ろうって話したのに。
一歩ずつ進もうって。



いつの間にか恋次がいた。

「恋次さん、なんで、あんな姿に…」

「俺も詳しくは知らねぇ。でも、弱いから、あいつは負けたからあーなったんだ」

「………」

「お前も人のこと構ってる暇はねーぞ。お前にも起こりうることだからな」

「………」

友だちは。
最後まで目を開けなかった。



***



友だちの死に直面してから、身体が鈍かった。
気落ちしてしまっているのと恐怖と言うのが改めて浮き出てきた。

「何やってやがる!死ぬぞ、馬鹿が!」

恋次には怒鳴られっぱなしだ。
あまり怪我をすることなどなかったのに、ココ最近虚討伐での怪我が増えた。
擦り傷、切り傷程度で致命傷を負うことはないが。

怒られても何も言い返せなくて、唇を噛締めながら俯くことが多くて。
最近、まともに人の顔を見たことがない。

「………」

だから一人で人が来なさそうな場所で座り込んでいた。
そんなの前に影ができた。





「がっかりっすよ、俺」

「は?何が」

っすよ。ダチが死んで悲しいのはわかりますけど、今のアイツはうちじゃお荷物状態っすよ」

「へー」

久しぶりに恋次と飲みに行った修兵。
そこで聞かされたあの少女の話。
いつもはこっちが訊ねたら答える程度なのだが、恋次のほうから話し出した。

「いまのアイツにはやる気とか覇気とか全く感じられなくて、それどころかいつもならしないミスしたり」

「結構、お前のお気に入りか、彼女は」

軽く頬を赤らめる恋次。

「お、お気にいりつーか、やる気のある奴は嫌いじゃないっすよ。アイツ筋もいいし」

「そーか」

「誰だって経験しなきゃいけないことじゃないっすか」

「まぁな。だったら、そうだと教えてやれば、お前が」

「………言いましたよ。でも無理でした」

早くもとの彼女に戻って欲しいものだ。
恋次はずっとそんなことを呟いていた。





「お前、根性ねーな」

「!?」

が顔をあげると不機嫌そうに立っている修兵がいた。
何故、ここに修兵が?とは焦る。

死神になるきっかけをくれた人。
一人前の死神になったら名乗ろうと思っていた。
でも、自分は中々その一人前になれないから半ば諦めていた。

「ひ、檜佐木副隊長…あの」

「俺が前に言った事忘れたか?」

「副隊長が私に?……」

修兵は頭を掻く。

「俺がお前を魂葬した時だ」

随分前の話ではあるが。
最初に修兵と出会った時。
あの時、は未練が一杯だと修兵に告げた。
家族に友だちのことが。

「あ…」

「思い出したか?あの時は逆の立場だったな」

死んだのは自分。
いなくなった自分に対して、友だちは新たに生活を始めていた。

『でも友だちは、もうあたしのいない生活に慣れてるんだなぁって感じがして寂しかった』

『馬鹿だなぁ、お前』

『は?何、いきなり』

『友だちだってお前がいないことに慣れたって言うより慣れなきゃ困るだろ?向こうは生きているんだ。
やることいっぱいあるんだよ。お前は受験しなくても良いけど友だちはやらなくちゃいけない』

そんな事を話した。
だから、自分も素直に魂葬された。
新しい目標が見つかったから。

「ま、あれとは少し違うけどな……恋次の奴にも言われたんだろ?下手すると今度はお前の番になるぞ」

「……はい」

「やっぱり、怖いか?」

「こ、怖いです」

「こればっかりは周りがどう言っても無理だ。お前自身で克服しねーとな」

「は、はい」

「死神は楽じゃねーとも言ったよな、俺」

は頷く。
死神になってからもそれは身に沁みた。

「だったら、止めちまうか?止めれば虚と戦うこともなくなるぜ」

「い、嫌です!止めたくないです」

「そっか。なら頑張れ。自分で少しずつ克服していけ」

「今まで、お前のしたことは無駄じゃねーんだ、ちゃんと胸張って前を見て歩け」

「は、はい!」

何故、急に修兵が自分の前に現れたのかわからない。
でも、ダメな自分を叱咤してくれた。

「お前、頑張ってるよ、毎日な」

修兵はの前にしゃがみ彼女の頭を撫でた。

「だからこれからも前向いて頑張れ。それでも疲れちまう時はあるだろ?
その時は俺がまた話聞いてやるよ、いつでも愚痴れ、泣きたきゃ泣け」

の目から涙が零れる。

「す、すみません。涙、出ちゃって」

「泣けって言ったばかりだろ、気にするな」

「でも、あまり人前で泣きたくなくて」

頑固な奴だと、修兵は苦笑する。

「俺がいいって言ってるじゃねーか。じゃあこれからは俺以外の奴の前では泣くなよ」

ポンポンと軽く頭を叩かれる。
優しくされて余計に涙が零れる。
我慢なんかできやしない、気が済むまで泣いてやる。


一頻り泣いた後。
なんとなく恥ずかしさやバツの悪さが浮かんでくる。
泣きはらした顔はみっともないだろうし。

でも、修兵はいつか見た笑顔でこう言った。

「名前。そろそろ教えてくれよ。ずっと我慢してきたんだぜ」

鼻を啜りながら、は小さな声で名乗った。

「…です」

か。ようやく聞けた」







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