ドリーム小説


すいません。
あたし、成仏していないのですが…?

少し前に、ひき逃げアタックされて亡くなってしまったのですよ。
 享年18歳。

一生懸命受験勉強に励んでいたのになぁ。
それはちょっと置いといて。

死後の世界なんてのは興味もなかったし、どうなるの?って言うのも知るわけが無かったので
考えていなかったわけですが、なんでか未だにふらふらしております。


あー未練があるとか?


んなの自分から死のうなんて思わん限り未練たらたらでしょうが。
少なくともあたしは山のように未練が残ってますぜ。
でも……。

「………ま、いっか」

別にお腹も空かないし、結構のんびりしているし、そのうちできるでしょ。

そう思って気軽にお空の散歩でもしましょうかねぇ。
少しばかり勉強、勉強で根を詰めていたからなぁ、好きなことしまくりたいね。





【始まりへ向かう道】





「よくねーよ」

「うぎゃ!」

背後から突然声をかけられて驚く
今まで自分のこの姿に誰も反応を示さなかったから。
恐る恐る振り返ると、黒い着物姿の男性がいる。
刀を腰にぶら下げている。

「あ、えーと…どちら…様で?」

だが男はの問いには答える様子も見せず、面倒臭そうに髪を掻いている。
オマケに愚痴つきで。

「はぁ。長い仕事がようやく終わったと思ったのによ…こんなトコででくわすとはなぁ」

(意味わからんって…なんかヤバげだから移動しよう)

よく見たら顔に傷とかあるし。
目つき悪いし。

はこっそり移動しようとするが男が呼び止める。

「まて、こら」

「な、なんですか?」

「とっとと魂葬してやっから」

「魂葬?」

「成仏ってやつだよ。いつまでもふらついているなよ…この地域担当の奴何してんだよ…」

は話の流れから彼があの世への道先案内人ではないかと思った。
だが、がっかりだ。
やる気なさそうで、イメージ的に綺麗なお姉さんか可愛いお姉さんが櫂に乗ってやってくると思ったのに。

…あ、いたらの話で。

(それは幽白だって)

「とにかく、俺が送ってやるから」

「あ、結構です」

「は?」

「別にまだ成仏する気ないし。嫌々にそんなんされても、こっちは気分悪いし…それじゃあ」

ベーッと舌を出しては歩き出した。
一瞬呆けた男だがすぐさまを追いかける。

「おい、待てって。悪かった!あんな言い方して」

別に幽霊なのだから歩かなくても良いのだが、生きていた頃の習性だろうか。
はスタスタと歩く。
それを男がに合わせながら着いてくる。
傍から見たら恋人同士の痴話喧嘩に見えなくもないが、残念誰もその姿は見えない。

「あーなんて言うか長期の任務がさっき終わったばかりで疲れてたから、ちょっと苛ついたんだよ」

「………」

「お前の所為じゃないよな、悪かった」

「………」

「あんな言い方されたら誰だって気分悪くするよな、普通は」

「………」

「だから〜その〜?」

は足を止まる。
そして男の顔を見る。

「変なの」

「あ?何が」

「別に言い訳なんかしないで、放っておけばいいのに。他の人が担当なんでしょ?」

「ま、まぁな」

「だったらもういいよ。疲れているなら帰っていいよ。私まだ成仏する気ないし」

適当にぶらぶらするからと。
男は口をへの字に結び頭を掻く。

「そうもいかねーよ。ふらふらなんかしてみろ、危ないぞ」

「危ない?なんで?」

「なんでって…その…!」

その時何かの電子音が鳴った。
男が懐から取り出した携帯電話のようなものからだ。

「ちっ…ほらみろ。やっぱりだ」

舌打ちした男がの前に出て腰に下げていた刀を構える。
空気が震えたと思ったら見たこともない化け物が姿を現した。

「…な、何アレ…」

「虚だ。ふらふらしってと、あんなのに魂食われちまうぞ」

「…そうなの?」

「でも、大丈夫だ。今は俺がいるからな」

どこから出るのだ、その自信は。
そう思ったが、自信たっぷりに言うだけあって、あっさり勝負がついた。
の目には一瞬の出来事で済んで化け物は消えた。

「………」

「な?大丈夫って言っただろ?」

「…うん」

ニッと笑った男に少し見惚れた。
なんだ、笑ったほうがこの人いいなと。
見かけで損しているのだろうなぁとか色んなこと考えた。

「未練があるのはしょうがねーけど、たま〜に虚に襲われちまうこともあるからな」

一応そこら辺を心配してくれたんだ。

「あの、あなたって結局何?」

「何って…檜佐木修兵だ」

「名前じゃなくて、その、えーと、職業?」

「あぁ、見てのとおりの死神。護廷十三隊九番隊副隊長!すげーだろ」

「…どの辺が死神なのか微妙なんですけど」

しかも死神ってイメージが想像していたのと違う。

「目の前に死神さんがいるってことは・・・私は地獄へ行くとかなの?そんなに悪いことはしてないつもりだけどなぁ」

「違う、違う。お前らが想像しているのは全く違うから安心しろ。俺は別に魂狩るような死神じゃないぞ」

「そうなの?」

「そうなの」

修兵は他所様の家の屋根に座りこむ。

「そろそろ行く気なったか?一応無理やりってのはやめといてやる」

「わかんない」

「なんだそりゃ」

「だって、未練たっぷりで死んじゃったし」

「………」

は自分が死ぬ前のことから話し出した。
別に修兵に話した所で何かが変わるとも思わなかったが。

「ひき逃げアタックって自分で言うか?」

「だって、そっちの方が軽い感じでいいじゃん」

「…そのひき逃げ犯を捕まえたいとか?」

「あ、捕まったから。翌日に」

よくある話だ。
轢いてしまった直後、怖くなって気が動転して逃げたってこと。
翌朝、家族に付き添われて自首しましたと。

「若い兄ちゃんでさ〜なんかこっちの方が申し訳ないよね、死んじゃってごめんね〜って」

「そう言うもんか?」

「だって怪我で済めば傷害止まりだし…」

「お前って優しいって言うよりお人好しだな」

「別に。一応腹たったし…」

「じゃあ、他の未練は?」

修兵に言われて、どんなことが未練なのか考える。
思い浮かぶのは大したことではないものばかり。

「連載中の漫画の続きが読めないとか、いつも見てたサイトの管理人さんの話の続きが読めないとか…
今度見ようと思っていた映画が見れないこととか・・・冬に出るはずの新作のゲームができないなぁとか」

「すげー物欲だな」

「そんなものだよ〜あ!あとね。折角勉強してたのに受験駄目になっちゃったなぁって」

「受験生の割りに遊んでいるように見えるけど?」

「息抜きはちゃんとしないとね」

ヘラッとは笑うが、すぐに目線を下げて軽く息を吐いた。

「あとは…家族や友だちのこと…かな…」

毎日自宅周辺をふらふらしていれば目に入る。
学校にも何度か行ってみた。

「でも友だちは、もうあたしのいない生活に慣れてるんだなぁって感じがして寂しかった」

逆に家族は落ち込みっぱなしで見ていて辛かった。

「どっちがいいのかわかんないけどね。家族にも元気になって欲しいし」

「馬鹿だなぁ、お前」

「は?何、いきなり」

「友だちだってお前がいないことに慣れたって言うより慣れなきゃ困るだろ?向こうは生きているんだ。
やることいっぱいあるんだよ。お前は受験しなくても良いけど友だちはやらなくちゃいけない」

修兵は立ち上がっての前に立つ。
少し乱暴にの頭を撫でる。

「友だちは別にお前の事を忘れたわけじゃねーよ。きっとお前の分もとか思っているはずだ」

「・・・だと、いいなぁ・・・」

「家族も心配なのはわかるけど、お前がここにいたってどうにもできねーだろ?」

「うん」

「でも、まぁ気持ちもわからないでもないから・・・少しだけ手伝ってやる」

「何を?」

「ちゃんと最後の挨拶していけよ」



***



娘が突然逝ってしまったことで、両親の落ち込みは激しかった。
それでも仕事に行かなきゃ生活はできない。
やるべきことは沢山ある。
子どもは娘以外にもいたし。

でも、と言うか。
やっぱり、と言うか。
魂が抜けたそんな感じでぼーっとしてしまう。

最後にあの子と交わした言葉はなんだっけ?
最後に見たあの子はどんな姿をしていたっけ?

あれこれ考えてしまう。
家族間でも会話が減った。

「もう!いつまでもくよくよしてないでよ!あたし心配で成仏できないじゃない!」

!?」

「あたしのこと悲しんでくれるのは嬉しいけど、それじゃ駄目だよ。あたしは向こうで新しい生活してるから平気!」

だから、皆は自分の分も生きてください。
あなたの娘で良かったです。

「だから、もう行くね」

、あのね」

「迎えに来てくれた人がね、結構イケメンなんだよ〜えへへ、ラッキーって感じだよね」

「馬鹿言っているんじゃない、お前は相変わらず・・・」

「だから、少しの間お別れ。いってきます!」

笑って。
あの日と同じ笑顔であの子は行った。

いってきます。って。

心配かけちゃったのはこっちだったんだね。
それじゃあ、こっちも笑って見送ってあげないとね。

だから、いってらっしゃい・・・

そこで目が覚めた。
夫婦で同じ夢を見たのを翌朝知った。

なんだか久しぶりに笑った気がする。

「あの子、格好良い人が迎えに来たとか言ってた」

「迎えに来ただけで、その・・・その人とはなんもないだろう」

「嫌だ、お父さんったら」

朝食をとりながら、家族でそんな話をした。



「これでいっかな?ね?」

「上出来なんじゃねーの?」

は笑った。
修兵はの頭を優しく撫でる。

「それじゃあ行くか。魂葬してやる。尸魂界も悪い所じゃねーよ」

「うん」

修兵は刀に手をかける。

「あ、あのね。一つ質問!」

「あ?」

「死神って誰でもなれるの?」

「誰でもってわけじゃねーけど、まずは真央霊術院って学院に入ってからだな」

「死神養成学校みたいなところ?」

「そんな所だ」

「そっか」

「なんだ、お前。死神になりてーのか?楽じゃねーぞ?」

「かもね。あんなんと戦うみたいだし。でもなれたらいいなって。一度あたしの人生終わったわけだし」

新しい何かを死んでも目指せるならば、それもいいかなと。
ただ、自分にその素質があるのかはわからないが。

「頑張れよ。見事卒業できたらウチに来いよ」

「えーもう配属先決定?」

「光栄な事だろうが、ウチの隊長はとても素晴らしい人だぞ」

「ま、考えておきましょう」

「それじゃあな、しばらくの間お別れだ・・・」

修兵は刀の柄をの額に軽く押し付けた。
の身体がすーっと消えていった。

「・・・あ、いけね。名前聞くの忘れてた・・・」

最後まで笑顔を見せていた彼女。
嫌な感じはしなくて。

修兵は頭を掻きながら考えるがすぐに止めた。

「本気で来るなら、会うだろ・・・」

次に彼女と会うのは死神としてだ。








05/11/09UP
11/11/13再UP