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長い間。
甲斐の為に!とを探す為都を出たくのいち。 かと言って、今現在がどの辺りを旅しているのかはわからない。 先月、政宗が都に来ていた際幸村にが彼の直轄地に来ていたと言う話は聞いた。 すでにそこも発った後らしいので、そこから予想するしかないのだろうか? 念の為に真田の他の忍び達にも情報を集めてもらいながらを探す事にした。 「徒歩だろうからそんなに奥州から離れていないと思うのだけど…」 関東に入っただろうか? 素直に関東圏に入るかも微妙だ。 狭いようで、広い島国。 人一人探すのは大変だ。 「ちんはお猿さんが嫌い…か」 秀吉様。と言わない自分も大概なものだと思うが。 その話はくのいちにとっては衝撃的過ぎた。 理由はどうあれ、家族を奪った原因は秀吉だ。 天下人からの誘いもあっさり断るくらいで。 幸村に対しても、切れるものなら豊臣との縁を切ってしまえ。と言ったそうだ。 の気持ちは痛いほどわかる。 主家を失う気持ち、主を失ったことはくのいちにもある。 だけど、今は真田家。幸村に仕えている。 忍は割り切ってしまうものかもしれない。 いや、もしこの先幸村が討たれてしまうようなことになれば。 きっと自分はその相手を一生許さないだろうし。 この手で葬ろうとするかもしれない。 幸村が、自分にとって最後の主だろうから。 「だから…ちんなりの抵抗なのかな…」 家族を奪った相手のもとで生活などできないと。 だとしたら、甲斐だって同じだ。 甲斐だって、家族同然の人たちを奪われた身。 それでも命令に従って都までやって来た。 毎日笑って暮らしているけど、がそばにいない事を寂しがっている。 きっと昔の甲斐なら、 「関係ないわよ!」 と強がっていたかもしれない。 なのに、それとなく探してなどと自分に頼むくらいだ。 相当寂しがっているはずだ。 だから自分もなんとかしたいと思っての行動なのだが。 最近甲斐と一緒に居ただけに。 甲斐びいきになっているようだ。 「ちんはずるい。自分だけ楽になって」 無理やりはやめてくれと幸村に言われたが、よほどのことがない限り縄でくくりつけてでもを連れて帰りそうだ。 「なんじゃ、一人とは珍しいな」 「あら、政宗。来ていたんだ。っと、幸村様、こんにちは」 聚楽第が現在の職場と言っていい場所で。 甲斐はそこに来ていた。 そんな甲斐に政宗が声をかけてきた。幸村も一緒にいるので挨拶を返す。 「えぇ。政宗殿は先程到着されたのですよ」 「へぇ」 「煩いくらいに暴れまわる印象のお前が大人しいとは気味が悪い」 「何気に失礼よね、あんたも…」 いつも一緒にいるくのいちは幸村からの任務でどこかに行っている。 他の年頃のお嬢さんたちとの会話も楽しいが、どこか物足りないのだ。 「じゃが、がそう話すからな」 「!?」 甲斐は反応してしまう。 そうだ。少し前は奥州にはいたと政宗本人から聞いたではないか。 「ね!は今どこにいるか知っているの?」 「知らぬ」 「そう、なんだ…」 あからさまに落胆してしまう甲斐。 「どこか行先に心当たりもありませんか?政宗殿」 その落胆ぶりを見てか幸村がさらに続ける。 「聞いてもおらん。ただ」 「ただ!?」 甲斐は思わず政宗に詰め寄ってしまう。 「いつかは蝦夷に行ってみたいとか言っておったが…」 「え、蝦夷!?」 「奥州より更に北ですね…」 どんどん都から離れていくに甲斐は落胆してしまう。 本気で彼はこっちに来る気はないのだろうなと思って。 だったらせめて文ぐらい出してくれればいいのに。 「い、い、いつかは!の話であって、今の話ではないぞ」 「そうですよ、甲斐殿。そのうちひょっこり顔をだしますよ、きっと」 「政宗、幸村様…」 幸村だけでなく政宗にまで心配をかけてしまったそうだ。 甲斐は笑って礼を言った。 「も一人だから身軽で楽しいだろうなって思うのだけど」 「ん?奴は一人ではなかったぞ」 「は!?一人じゃないの!!?」 旅の途中で気の合う仲間でもできたと言うのだろうか? それならば、こっちのことなど全く気にもならずにあちらこちらを旅しているのかもしれないが。 (もしかして、旅先で可愛い女の子と出会って…) 要らぬ妄想をしてしまう。 ただ出会うならいいけど、そこの父親に気に入られてそのまま婿に入るとかになったら。 にその気はなく、そのまま去ろうとしたが、女の方がを追って旅に出てとか…。 (文よりも先に…お嫁さん紹介されたらどうしよう〜) そう言えば、何気なくあいつは女性に人気あったではないか。 小田原城内では、甲斐が近くに居たためにどこか遠慮がちで、でも噂になって。 噂を否定するのが面倒くさいとそのままにしておいてなんて言われたが…。 「お、おい。甲斐?」 「甲斐殿?」 「あ、あはは…な、なんでもないです〜」 もしかして?な事を考えてしまうが笑って誤魔化す。 (今までこんな事考えなかったのになぁ…) しかも自分だけは考えているようでちょっと腹立たしい。 は何にも考えずに誰かと旅をしているようなので。 (そんな風に思うなら…あたしも一緒に行けばよかったな…) そうすれば毎日が楽しく賑やかだったかもしれない。 (関東に入ると、面倒なんだよなぁ) ちょっと前までは問題なかった。 それは北条家が治めていた頃の話。 信玄公から命じられて度々小田原まで来た事はあったが。 今は徳川家康が治めている。 そうなるとちょっと面倒なのだ。 家康が。ではなく。 家康に仕える忍の存在がだ。 (ま、半蔵の旦那は江戸にいるだろうし。そう簡単に出会う事もないだろうなぁ) が徳川の人と知り合いってわけでもないだろうし。 (小田原かぁ…そう言えば) 家康の領地になったが、ここには北条家に仕えていた人たちも残っている。 民自体が、北条家を慕っているようなので家康は現在苦労しているようだ。 (あれ?) そう言えば。仕えていた忍と言えば。 北条家にも居たはずだ。 甲斐はその忍は居なくなったと口にしていたが、あれはどっちの意味だろう? も彼の事は口にしていなかった。 半蔵とはまた違った意味でやりにくい相手ではあるが。 あれがそう簡単にやられるような事はないと思う。 (それよりもちんだよ) 小田原城やその周囲に彼の知り合いとかいないだろうか? 同じ料理番だった者達はいまも小田原城で働いているかもしれない。 (って…ちんと仲良い人いたの?) 元々どこか壁を作っていた人だから。 作業中黙々とやっていたし。 どちらかと言えば、ぐいぐい攻め込んだ?甲斐や幸村の方がと仲良くなっていたようなものだ。 結局手がかりになるようなものが見つからない。 期限付きの捜索だから、あまり遠回りはしたくない。 「もう!ちんってばどこにいるのさ〜」 逆にもう都入りをしているならばいいのだが。 幸村から聞いた話を思うと、そう簡単に都へは行かないような気がするのだ。 都を通り越して西へ行ってしまいそうだ、あの性格ならば。 「あ〜どうしようかにゃ〜…皆からの情報を待とうかなぁ〜」 それがいいのかもしれない。 だが。 「探し物なら寺にある」 「にゃにゃ?」 「仔犬が慕っていたのは誰かと言う話だ」 突如聞こえた声。 姿はない。 けど、あの声は知っている。 風魔だ。 「なんで…」 甲斐はもういない。と言っていた忍の声がどこからともなく聞こえた。 くのいちも同じ忍。 そう簡単に背中を取られる真似はしないし、気配なら誰よりも敏感だ。 なのに、その姿も気配も何も感じない。 それでもわざわざ教えてくれたと言う事は。 「あんたも心配だったんだね。二人のことが」 顔に似合わず。と言う所か。 嘘の情報ではないと思いたい。 あの風魔も家族が大事だったと思いたいのだ。 「寺。寺ねえ…」 「仔犬ってのは…ちんの事だよね?ちんが慕っていたと言えば…」 亡き氏康公だろう。 と言う事は。 「ちん…今、近くにいるんだ!!?」 くのいちの顔が晴れる。 氏康の墓がある寺と言えば。くのいちは即座にその寺に向い走った。 三基並ぶ墓。 はその一つ一つに手を合わせた。中でも氏康の墓には一番長く手を合わせた。 氏康が眠るここは北条家の菩提寺。 氏康の祖父、父の墓も並んでいる。 (まだ少しだけど…世の中見て回っていますよ、俺) 氏康と出会ったころを考えると、きっと同じような旅にはならなかったかもしれない。 (北条家が治めて居た頃に比べたら、中心は江戸になっちまったけど…家康公は割と頑張っていますよ) 北条家を潰してまで治めているのだ、簡単に潰れられても困る。 まぁは先の事を知っているので、その辺の心配はしていないのだが。 当初小田原を出発して、ちょっとだけ癪だが政宗の治める奥州方面へ向かった。 急ぎの旅でもないので、のんびり歩いた。 今まで気づかなかったものを見たような気がする。 金が少なくなれば、飯屋などで雇ってもらい稼いだ。 色んな人と触れ合う機会が増えたので、確かに以前の自分ならば考えられないことだなと。 奥州では政宗に見つかり、しばらくその地に滞在したが。 中々楽しかった。 料理の事となると政宗も趣味でやっているようなので、毎日何かしら料理し楽しかった。 開発などもしてみたし。 ずっとここに留まれば良いと言われたが、それはそれで楽だ。 けど、元々世の中を見て回るというのが目的。 それは遠慮した。 その後は元来た道を戻った。 一度相模に戻り、今度は甲斐信濃方面に行こうかと考えたのだ。 そして、ここによった。 氏康が眠るここへ。 (徒歩だからなぁ。日本は広いっすよ…全て行くまで何年かかるんだか) 氏康は今の自分を見たらどう思うだろうか? 「まぁいいんじゃねぇのか」 そう笑ってくれればいいのだが。 「さて、行くか」 が立ち上がると。 「ちん、見つけた!!」 「は?」 どこからともなくくのいちが姿を見せた。 「くのちゃん…?」 「もう!ちんの馬鹿!!甲斐ちんにちゃんと文出しなさいよね!!?」 再開早々くのいちから叱られる。 「えと…」 「甲斐ちん、ずっとちんのこと心配しているんだから。元気な姿を見せているけど、内心寂しいんだよ。ちんがいないから!!」 怒涛の口撃には後ずさる。 「や、えと………なんか、ごめん」 「………」 くのいちはジッとを見てから息を吐いた。 「いつになったらちんは都に来てくれるのかな?って待っていたんだけど」 「あ、それは」 「ちんの気持ちもわかるよ。殿下の所為でって思うんでしょ?けど、それは甲斐ちんも一緒だよ?甲斐ちんはちんと違って自由になれなかったから」 「………」 秀吉の天下などどうでもいい。 大事な家族を奪った奴のもとなどに居たくない。 氏康たちの言葉を理由に旅に出たけど、確かに。 甲斐は自分のように自由ではなかった。 命じられて都行きとなったんだ。 「じゃあ、行こうか」 「は?どこに?」 「勿論甲斐ちんに会いに。京の都へ!!」 「や、俺の予定では甲斐へ行くつもりなんだけど…」 「へぇそれも興味はあるけど。また今度ね。幸村様の命令でもあるからあたしは都へ戻らないと」 いや、くのいちの任務など自分には無関係だろう?そうは言いたかったが。 何故だろう。 今日のくのいちには逆らえないものがある。 矢張り甲斐への後ろめたさがあったからだろうか? 「でもまぁ、道は選ばせてあげる」 「道?」 「そう。このまま東海道を行ってもいいし、途中から東山道で入ってもいいし、さらに北陸道へ回ってもいいし!」 甲斐へ行くならば、東山道へ入るのだが。 さてどうしようか。 「まぁ歩きながら考えるよ」 一先ず目的地は京の都だ。 19/12/31再UP |