予想外。


ドリーム小説
なんでそんな事をしようと思ったのかはわからない。
わからないけど、あぁ、あたしも女の子だなぁとちょっと頬が緩んだ。
同時に、それをあいつが見たらどんな反応をするのかな?って気になった。

多分。
いつも通りだと思うけどね…。





王元姫の天幕に女の子達が集まっていた。

「いいじゃない。似合うわよ、甲斐」

「そ、そう?」

甲斐はくるりと回って見せる。
自分でも思っている以上にこれは気に入った。

「いつも元姫の衣装が可愛いなって思っていたのよねぇ」

「お嬢様って感じで可愛いものね。気品もあるし」

「そんなことない」

甲斐と尚香が褒めるので、元姫が珍しく照れた。

「わらわのはどうじゃ?」

「あたしに比べたらまだまだだけど、中々いいんじゃない?」

他にもガラシャに鮑三娘もいる。
皆同じ年頃だったので、生まれ育ちが違ってもすぐに打ち解けた。
彼女達がしていたのは、新たに服を仕立てのだが、ただ仕立てるのは面白くないと言うか。
ちょっとした気分転換のつもりだったのか、他の子達の衣装をモチーフにしたのを仕立てようと言う話になったのだ。
今回甲斐は元姫を。ガラシャは鮑三娘と色違いで仕立てた。
そのお披露目中なのだ。

「いつもより動きやすいような気がするのだ!」

「まぁ、あんたのいつもの衣装に比べたらねぇ」

髪型も変えて見れば?と鮑三娘はガラシャをその場に座らせて髪型もいじり出す。

「やー二人ともいいなぁ。あたしも新しく仕立ててみようかなぁ」

くのいちは珍しく羨ましいと感情を出した。
普段飄々としていて本音を掴ませないが、女の子らしい一面と言うのは誰よりも強く思っているのがくのいちだ。

「たまにはいいんじゃない?やってみなさいよ。あ。もちろん稲も」

「え?わ、私?私は…」

尚香に言われて戸惑う稲に対し、くのいちはいいかも。などと満更でもない様子。

「うんうん。いいじゃん、いいじゃん。我ながらいい出来だわ」

「本当か!?」

ガラシャの髪を弄っていた鮑三娘。

「そんなに長くないから、まぁ、軽くまとめる程度だけど」

「よし!父上に見せてくるのじゃ!」

「え?父上って…や、よした方がいいんじゃ」

「なぜじゃ?」

「いやぁ…」

「行ってくるのじゃー!」

ガラシャは嬉しそうに天幕を出て行った。
その姿に鮑三娘は肩を落とす。

「別にいいじゃない。父親に見せるくらい」

甲斐が鮑三娘に言うも、彼女はかぶりを振る。

「そりゃあ。一般的にはいいかもしれないけどー。あの子の父親ちょっと固いじゃん?
今までが今までだから、急にあたしと同じような格好したのを見たら卒倒するんじゃないの?」

露出が高めの鮑三娘の衣装だ。

「あとであたしが叱られたら嫌なんですけど」

ガラシャの父。明智光秀ならば、やりそうだ。

「大丈夫。その時は私達も一緒だし、というより…誰か味方につけちゃえばいいんじゃない?」

「あぁ。濃姫様とかわかってくれそう」

濃姫を味方につければ光秀は文句を言えないだろう。
普段あまり考えもしない悪知恵を少女達は働かせてしまう。

「で?甲斐はどうなの?」

「は?あたし?あたしは別にどんな格好しようが叱られないけど?」

「違うわよ。見せたい人いないの?」

「見せたい人…い、いないわよ、別に」

一瞬とある青年の姿が脳裏に浮かんだが、甲斐は瞬時に打ち消した。

「隠さなくたっていいのにー。見せてくれば?」

くのいちが甲斐の背中を押す。

「ちょ、ちょっと!」

甲斐はいないと公言しても、周りはそうじゃないだろうと思っているようだ。
勝手に決めつけられたようで面白くない。
さっさと行けとばかりに天幕から追い出された。



***



「あ?なんだ?」

飯店で仕込みをしていた
その耳に悲鳴のようなものが聞こえた。

「何?何かあったんすか?」

表に顔を出すと、ガラシャがいた。

!ど、どうすればいいのじゃ?父上が…」

「明智様?」

珍しく困惑気味のガラシャ、だが、その姿には。

「あ。姫さん、可愛いね。その恰好」

「ぬ?本当か!?」

困惑気味から一転、晴れやかに笑ったガラシャ。

「珍しい格好だと思ったけど、いいんじゃない」

いつもひらひら衣装で、いかにもお嬢様。という感じだったから。

「そうか!よかった、甲斐たちも褒めてくれたのに、父上は…あ、そうじゃ!父上!」

慌ててガラシャは駆け寄った。
駆け寄った場所には卓に臥せっている明智光秀がいた。

「明智様?どうなさったんですか?」

も近寄り光秀に呼びかける。

「わらわの姿を見たら、父上は突然気を失ってしまったんじゃ〜」

「………精神弱ぇ…」

品行方正の塊のような男。明智光秀には娘のお洒落に耐えられなかったようだ。

「そんなに可笑しな格好かのう?」

「それ言ったら、鮑ちゃんに失礼だよね…」

どこかで見たことがあるなと思えば、それが鮑三娘が普段着ているものだったから。

「父上〜」

「とりあえず…天幕に運ぼうか…」

たまたま通りかかった人達に声をかけて光秀を彼の天幕に運んだ。



「娘を持つとそうなるのかねぇ…」

光秀の天幕を出たはしみじみとそんな事を思った。
同じように娘を持つ父親として本多忠勝、張飛、孫堅などがいるが。
娘の性格からして、父親を卒倒させるような感じはないなと思ってしまう。
張飛、星彩親子に関しては、張飛の方が娘を過度に心配している面はあるが。
星彩が今回のガラシャのように腹を出して出歩くことはないだろう。
孫堅の娘尚香も割と常識人だから心配はないと思われる。
多少父親譲りで戦場で駆けていくような子ではあるが。

「どうしたの?考え込んじゃって」

「甲斐。色々と…って。あ」

の前に現れた甲斐。
彼女もガラシャと同じように普段とは違う格好だ。
元姫の衣装と色違いの赤だ。

「な、なによ」

「可愛いじゃん」

「どうせ、あんたは似合わないとか思って…へ?」

「珍しい格好だなって思ったけど、いいじゃん。たまにはそう言うのも」

「う、嘘」

は呆れた。

「なんで褒めたのに、嘘呼ばわりなんだよ…」

「や、だ、だって…あんたが素直に言うと思わなくって」

甲斐は指をもじもじ絡める。
確かに、あまり人に対して興味を持った風に見せなかったし。
その手の話は一切しないし。
先程のガラシャもそうだったが、珍しく言葉がするっと出たのだ。

「悪くないから、普通に感想が出てきたと思うんだけどな」

…」

「さっき、姫さん見てもそうだったし」

「あたしは二番目かよ!」

「は?」

吐き捨てるような甲斐には一瞬呆けた。

「な、何でもないわよ…」

甲斐は咳払いをして誤魔化している。

「で、でもさ。ちょっとは思った。笑われるんじゃないかな?って」

「甲斐から見て、俺はそんなにひどい奴なのか…」

「や。だって、あんたいつも言うじゃない。人の事怪力だとか熊だとか!」

「言ったか?記憶にないんだが…」

そこらの男より漢らしいとは言ったかもしれない。
だけど、それは甲斐の常日頃の言動、行動の所為だろう。

「でもさ。別に甲斐はそのまんまでいいと思うけどな。急にしおらしくなったら逆に病気か?って思う」

「なに、それ…あたしが女らしくしたら病気なわけ?」

「病気はいいすぎか。甲斐らしくないって話だ」

「褒めてんのか、貶しているのかわからないわよ」

は小さく笑う。

「とりあえず、その恰好で蹴りとか出すなよ?」

「や、やるわけないでしょ」

「さてと…仕込みの途中だったんだよな」

飯店に戻らねばと歩き出した

「あ。待ってよ!」

甲斐が着いてきた。

「ところでさ。あんた何してたの、ここで」

「何って言うか…明智様が娘の変わりように衝撃受けて気絶したから運んでた」

「………あれで?」

「普通に可愛いと思ったんだけどな、俺は」

は首を傾げた。





なんか、ずるいと思った。
ちょっとだけ悔しいって。
だって、2番目だったから。

あいつの口から「可愛い」なんて言葉聞けると思わなくて。

びっくりしたけど、やだぁ、もう〜ってなくらい舞い上がったのも一瞬で。
まさかの2番目よ。

でも、いいことなのかな?
少しはあいつも変わったみたいだし。






「お。珍しい〜どうしたんだよ、その恰好。似合わねぇ〜」

「馬子にも衣装って奴だな」

「明日は雨が降るかもしれん」

飯店に戻れば、甲斐の衣装を見て三馬鹿がそんな事を言った。

「あんたら絶対女にもてないわよ」

拳を震わせる甲斐。

「お前に言われたくねーよ」

正則が豪快に笑う。

「泣かす!」

甲斐は一瞬で三馬鹿を飯店の外に蹴り出した。

「さっき言ったろ…その恰好で蹴り出すなって…」

が蹴り出された三馬鹿を憐れむように見ながら言った。

「だって、あいつらが悪いのよ!」

地団駄を踏む甲斐。

「ま…甲斐らしいっちゃ甲斐らしいけど…」

は卓に飲み物を置く。

「しょうがないから気が済むまで愚痴ぐらい聞いてやるよ」

〜」

甲斐の事を放っておけないと思ったから。
普段は自分の事を色々気遣ってくれているから。

「可愛いと思うけどなぁ、俺は」

思わず出た呟きに甲斐が赤くなっていたのをは知らない。







19/12/31再UP