とくべつ。



ドリーム小説
「ったく・・・・なんでこいつらと顔を合わせて酒なんぞ飲まなきゃならねぇんだか・・・」

仏頂面の政宗。
「こいつら」と言われた一人がムッと顔を歪ませる。

「まぁまぁいいじゃん。ここで会ったのも何かの縁。楽しまなきゃ損だって」

反論しようとした青年を、押さえる長身の男。

「欲しくもねぇ縁だな、そりゃあ」

鼻で笑う政宗。
だが。

「じゃあ政宗は先に帰ればいいよ。俺は花見を楽しむから」

、てめぇ・・・」

お前が連れ出したんだろ?と政宗はを睨みつける。

「ユッキーと慶ちゃんは俺の友達なんだ。だから一緒に居ても問題ないぞ」

「ゆ・・・・ゆっきーとはそれがしのことでござる、か?」

政宗に反論しようとしたのは真田幸村。
その幸村を押さえて場を和ませようとしたのは前田慶次。
どちらも政宗にとっては一癖も二癖もある厄介な相手だ。

「そうでござるよ。ユッキー」

ヘラッと笑うに幸村は毒気を抜かれてしまう。

「ほらほら〜独眼竜の兄さんも不機嫌な顔してんなって。折角の酒も不味くなるぜ」

慶次は政宗に酌をする。
目一杯酒を注がれ、思わず政宗も杯を慌てて口に持っていく。

「男に注がれても嬉しくないだろうが、ま、そこは我慢してくれよな」

笑顔全開の慶次。
ここで一人で管を巻いてもしょうがないと諦める政宗。
はおずおずとそんな政宗の様子を窺う。

「あ?なんだよ・・・」

「怒ってるのか?やっぱり・・・・俺が我が侭言ったから」

「・・・・怒っちゃいねぇが呆れてはいる」

「なんだよ、それー」

「花見がしたいと言うから、近場かと思えば、わざわざ京に連れて行け。だからな」

そう。ここは政宗の治める奥州米沢ではなく、誰もが憧れる京の都だ。
とある寺の一角に敷物を敷いて花見をしているのだ。
花見に行きたいと言ったに仕方ないと政宗が同行したのだが、場所が場所なだけに呆れてしまう。
幸村と慶次とは京で偶然出くわした。
元々慶次は京で生活をしているらしく、を見かけて声をかけてきた。
幸村も仕える信玄公の命により偵察をしていたらしいのだが、が捕まえ今に到るのだ。
二人共、が以前一人旅をした際にできた友達だと言う。

「いいじゃんかー。有名なんだぞ、醍醐の桜!一度見てみたいって思ったからさー」

「先にそれを言え、先に」

「言ったら反対しそうじゃんか」

だろうな。留守番となっている成実辺りから後で恨み言を言われそうで嫌だ。
それよりも怖いのは小十郎の存在だろう。
ただ、自分も同行してここまで来ているのだ全て一人には押し付けられないだろう。

「本音を言えば、俺が見たいと思ったのは、京の醍醐の桜じゃなくて、岡山の醍醐桜なんだぞー」

ここの桜も見事ではあるが、大きく雄大な巨木も見たいのだとは饅頭を頬張りながら言う。

「岡山とはどこでござるか?」

「えーと・・・・備中とか備前とかそこら辺?」

にとっては旧国名となる呼び方は今ひとつわからない。
だから語尾に疑問符をつけた話し方になってしまうも、一応の説明は通じたようだ。

「あー確か、後醍醐天皇が絶賛したっていう桜だよな?」

「慶ちゃん知ってるんだ!」

「そりゃまぁ。一応。有名だもんな、あそこは」

ならばが見たいと駄々をこねる気持ちもわかるぜと慶次は笑みを浮かべる。

「桜ねぇ・・・・」

綺麗な物を愛でたいという気持ちは政宗にもないわけではないが、わざわざ遠出をして見に行こうとまでは思わない。
だが、に言わせると。

「政宗は戦が絡むと飛び出して行くじゃんか」

らしい。
本能寺で織田信長が討たれた。そう聴けば自分で確かめに行くと出てしまう始末だ。
それと似たようなものだろう。とは言いたいらしい。

「まだ実物を見たことがないから。一度でいいから見たいんだよ〜」

この世界がの知っている戦国時代とはずれているのは知っている。
だが、存在するものは存在しているからもしかしたらと思うのだ。

「でも。京の都から備前とはまた遠いでござるな」

政宗を連れ出して京へ来ている為にこれ以上連れ回すことはできないだろう。

「今年は無理でも来年・・・いつか見ることができたらいいなぁ」

ある意味これも夢なのだろうか?
たかが桜。だがにしてみればそういうちょっとしたことでも大事にしたいのかもしれない。
今まで興味のない、感じたことのないものに。

「なんでぇ。それなら言やぁいいじゃねぇか。俺が連れていってやるぜ」

「アニキ!」

登場した男の姿にの顔が破顔する。
その男。長曾我部元親は担いでいた酒樽を置く。
どうやら彼もに誘われた口らしいが、政宗は軽く舌打ちをしてしまう。

「なに、連れて行ってくれるの?アニキが!?」

差し入れだと持ってきた酒樽に慶次が口笛を鳴らす。

「おうよ。船で送ってやるよ。なぁに安心しな。帰りもそのまま奥州まで送ってやるからよ」

が両手をあげて大喜びする。
それに慶次が身を乗り出し手を上げる。

「俺も俺も!俺も一緒に行っていいか?」

「あぁ別にかまわねぇぜ」

「よっしゃ〜!」

それを見ていた幸村も行きたいなぁと思っても首を何度も横に振る。
自分は遊びに来たわけではないのだ。
信玄に命じられて偵察にやってきた身。
今一時だけ一息をついているにすぎないのだと。

「ユッキーは行かないのか?」

「あ、あ・・・・そ、それがしは・・・遠慮するでござる。見たら話を聞かせてくれればよいでござるよ」

「えー。ユッキーも一緒に行けばいいじゃんかー。きっとアニキが駿河辺りまで送ってくれるって」

と元親に同意を求める。
元親に別に異存はないらしく、あっさり承諾する。

「ほら!アニキも良いって言ってるし。ユッキーも行こうぜ」

「そ、そうでござるか?」

「虎のおっさんには西国まで偵察に行ったって言えば済むだろ?」

慶次も幸村を連れ出そうとしているようだ。
帰りにあわよくばそのまま幸村に同行して甲斐に行くつもりらしい。

「で、では。お言葉に甘えさせていただくでござるよ」

幸村も行くことが決定し、慶次とハイタッチをして喜ぶ

「なー楽しみだ。政宗」

「あ?なんだそりゃ。俺もそこに含まれているのか?」

キョトンとする

「当たり前じゃんか。なんで政宗だけ置いて行くんだよ。一緒に行くに決まってるじゃんか」

可笑しくなことを聞くんだなとは言う。

「陸路も良いけど船旅もいいぞ。政宗もきっと気に入るって」

「・・・・・」

野郎におねだりされても嬉しくもなんともないのだが。
どうもにお願いされると弱い。
政宗は杯の酒をぐいっと飲み干す。

「小十郎にする言い訳をちゃんと考えておけよ」

それが政宗の答え。
はニシシと笑う。

「やったー!醍醐桜が見れるー」

子どもみたいにはしゃぐに政宗は呆れつつも、自分も小さく笑っていた。

「ハハハッ!おめぇら全員纏めて世話してやっからよ」

「おー。アニキカッコイイ!!アニキ愛してるぜー!」

の一言に一部の空気が冷える。

「おう。ありがとうよ」

言われた元親は不敵に笑う。

・・・それはどうかと思うなぁ。男相手にさー」

「は、破廉恥でござる」

「気色悪い」

慶次、幸村、政宗のそれぞれの反応に逆にが表情を歪める。

「つーかさ。なにマジでとるわけ?普通サラリと流すもんだろ?」

冗談も通じないのかと呆れ顔だ。

「じょ、冗談でござるか?」

「なんで本気にとるんだよ・・・・・まぁでもアニキがカッコイイのは本当の話だけどさー」

「よせよ。照れるじゃねぇか」

陽気に自分が持ってきた酒を飲んでいる元親。

「いやいや。アニキは漢の中の漢だよ。俺、マジで憧れるって」

グッと拳を握って力説する

「腕っ節は強いし、みんなから慕われて、なんでもできるじゃん。アニキすげーもん」

「褒めてもなんもでねぇぞ?」

「本当の話じゃん」

が元親ばかりを褒めるので、残された面子は少々面白くない。

「性格云々は別として。腕っ節はどうかな?俺が一番だと思うな」

慶次が腕を見せる。
俺だって強いぞと意思表示をして。

「それがしもそう簡単には負けぬでござるよ!」

「HAッ!誰が一番強ぇかやろうってのか?いいぜ。面白れぇじゃねぇか」

幸村も政宗もやる気充分のようで、3人とも立ち上がる。

「おいおい。こりゃ参ったな・・・どうするよ、。お前の所為だぜ?」

元親は参戦する気はないようで、呵呵と笑いながら酒を飲み続ける。

「別に。どうもしない」

好きにすれば?と彼らの力比べなどには興味はないようだ。
だがこのままここで暴れられては折角の桜がダメになる。

「暴れるならどっか遠く行ってやれよ?お寺に迷惑かけちゃダメだからな」

団子をパクリ。

「まぁ、あとでそれぞれのご家庭にチクってやるから。それでも良いなら暴れれば?」

他人事のようには3人にそう声をかけた。
3人の脳裏に浮かぶのはそれぞれ逆らえない人たちの顔。
慶次はまつ。幸村は信玄。政宗は小十郎・・・・。
それぞれ顔を見合わせ誰からもなくストンと腰を下ろした。

「折角の桜の前で暴れちゃ悪いよ?」

誰の所為でそうなったと思っているのだ。
政宗たちは言い返してやりたいが、には何を言っても無駄。
無駄と言うより、暴れるだけ自分たちが損をするような気がした。
だから飲みなおす。
それで次は希望の醍醐桜でも見に行こう。





「でもさー。鬼さんも残念だなーって思うだろ?」

「あ?何をだい?」

元親の船。約束通り醍醐桜を見に行こうと航行中。
慶次がふと元親に言う。

が男じゃなくて、女だったら良かったのにーって思わないか?」

元親は何を言い出すのかと燻しがる眼差しを慶次に向ける。

「だってさ。アンタのことすげー慕ってるじゃん。可愛い女の子ならともかく、は男だしさー」

「俺はアンタみてぇに年中春めいたことは考えちゃいねぇからな。別になんとも思わないぜ」

「あ。ひでぇー。なぁ幸村はどうだ?」

そんな話を自分に振らないで欲しいものだが、幸村は意外にもバカ正直に答えてしまう。

をそのような目で見た事はないが。そこまで慕われているのを見ると正直羨ましいとは思うでござるよ」

「そうそう。それそれ。俺も似たようもんだよ」

慶次は後頭部で腕を組んだ。

「誰とでも仲良くなれる奴だけど。鬼さんには無条件で心開いてるって感じだよな〜」

これがやっかみなのかはわからない。
友達の中でも特別って言う枠に自分はいないのかと思うと少し寂しいものだ。

「そうかい?俺はそうは思わねぇけどな」

元親はくつくつと笑う。

「そう言うのは俺じゃなく、独眼竜に向けているのが正しいな」

「政宗殿?」

船首で談笑していると政宗へと慶次と幸村は目を向ける。
が身振り手振りで話しているのを黙って聞いている政宗。
に向ける眼差しが比較的穏やかだと見てわかる。

「俺に対して憧れるなんて言っちゃあくれるが、の基本になっているのは独眼竜だな」

元親にしてみれば別に気にすることでもない。
アニキ、アニキと慕ってくる弟分には変わりないのだ。

「ふーん。そんなものかねぇ〜」

「まぁでも確かに。の話にはよく政宗殿のことがでるでござるよ」

本人達にそれを言えば思いっきりしかめっ面になりそうだ。

「だったら、独眼竜の兄さんが一番残念ってわけだ。が女じゃなくて」

慶次はご愁傷様と笑うも、元親にそういう目で見るのはやめておけと苦笑されてしまうのだった。





「そんなに楽しみか?桜が」

自分たちが話のネタにされているなど思っていない政宗と

「楽しみだよ。当然じゃん。醍醐の桜も綺麗だったけど、醍醐桜も見事なもんだと思うぜ?」

「どっちも醍醐と名がついているが違いはあるのか?」

「場所だろ。普通に・・・・あとは、京の醍醐の桜は醍醐寺にあるからそう呼ぶんじゃねぇの?」

一方は慶次が述べたことからだろう。詳しくは知らないとは首を横に振る。
そう思うと今更ながらにもっと調べて、勉強しておけば良かったと思ってしまう。
だが別世界に飛ばされるなど普通は思わないので仕方あるまい。

「由来を調べるのは向こうについてからでいいよ。俺は見れるだけでも嬉しいんだ」

「そうかい」

「あぁ。あとさ、皆と一緒ってのが嬉しいな。アニキとユッキーと慶ちゃんと政宗と。
贅沢を言うならここに小十郎さんと成ちゃんといつきも、あぁ佐助さんも一緒だったら良かったよ」

全員連れてとなると確かに贅沢だろう。

「俺は米沢に帰ったときのことを考えると頭痛がするがな」

「あははは〜まぁ・・・・土産で誤魔化す?あ。アニキに九州まで行ってもらおうか」

「あ?余計に遠くなったじゃねぇか」

「なんかさー。慶ちゃんの話だと、なんとか教って宗教団体が作る野菜が珍しいらしいよ」

それを小十郎に納めてなんとか許してもらうと?
難しい話だなと政宗は笑う、それもそうかと釣られても笑った。

「まぁいいや。叱られる時は二人一緒ってことで」

「共犯者だからか?」

「そうそう。俺達共犯者じゃん。なんとかなるって」

米沢に戻った時のこと考えると本当に頭が痛くなるものだが。
ただに言われると本当に「なんとかなりそう」だと不思議と思えてしまった。








19/12/31再UP