まだ子どものような。



ドリーム小説
前から不思議に思っていたことがあった。

「なぁなぁ成ちゃん」

「ん〜?どうした

政宗の従兄弟という伊達成実。
伊達組にしか見えない組織の中で、彼もやはり政宗と似たようなタイプではあるが。
だが普段はヤンチャ坊主とか、一緒に馬鹿騒ぎをするような。
学校の友達を思い出させ、にとっては結構気を許せる御仁だった。
だから成実のことを成ちゃんと呼んでみたりする。
年も同じだから。

「政宗には嫁さんいないのか?小十郎さんはいるよなー」

強面のあの人がどこで知り合ったのかは知らぬが、可愛いお嬢さんをお嫁さんにしている。
一度畑仕事を手伝っている時に会う事ができ紹介してもらった。

「いるなー。小十郎には」

「成ちゃんにはいないのか?」

「んー今の所いねぇなあ」

気楽な独り身さぁ〜とのん気な成実。

「じゃあ政宗には?」

「梵天?」

普段は「殿」と呼ぶが、近しい者しか居ない場合、成実は政宗のことを幼名で呼ぶことが多い。
もその近しい者の仲間に入っているのかと思うと嬉しいものであり。

「許婚ぐらい居てもおかしくね?あいつ、もう跡目を継いでんだからさ」

「まぁそうだなぁ」

縁側でのんびりお茶を楽しんでいる。
湯呑み持って、どこかの老人会のようなのんびりした雰囲気。
いい若い者が昼間からたるんどる!!
そうどこからか叱りつけられても可笑しくない。

「なに?気になんの?」

「気になるっつーか・・・・居ても可笑しくねぇなぁと思っただけで」

「ふーん」

「今は問題なくてもさ。そのうち何かしらあって、跡継ぎが必要なこともあるだろ?」

「まぁなあ・・・」

「政宗に何かあった場合、成ちゃんが上に立つのか?」

「いや?その場合は弟くんだろうよ」

弟が居たのか・・・。
今まで一度も会ったことがない。
政宗からも聞いた事はない。

「会ったことないぞ、俺」

「だろうな・・・・弟くんはここにはいねぇし・・・・」

母の義姫と共に別の館で暮らしているそうだ。

「ふーん」

こくり。お茶を一口含む。

「まあ。が梵天の嫁さんになりゃいーじゃん。そうすりゃ跡継ぎ問題O.K」

「ぶはっ!!ごほっごふっ!!し、成ちゃん・・・・阿呆なこと言って俺を殺す気ですか?」

思わず茶を噴出してしまった。
成実は冗談だと言って腹を抱えて笑っている。
ひでぇ・・・気管に入るし、鼻の奥まで痛い。

「俺、そっち系じゃないし・・・・政宗もそうだろ?」

「いやーが気にしているから、ちょっとからかっただけだって。悪い、悪い」

「ぜってー悪いって思っていねー癖に・・・・」

口の周りを手拭で拭う。
寧ろ・・・衆道って言うのだっけ?
そっちの話は、この時代では洒落にならないだろう?よくある話だって聴いた事はある。
戦場には女性を連れて行けないからとか・・・。
まぁ、最近わかったことだか。
どうもここは教科書通りの歴史とはかけ離れているようだ。
だから政宗にはいまだに正室がいないようなのだ。

「あー気持ち悪ぃ・・・・」

「そんな風に言うなよー」

「言うだろ、普通・・・あーそうだな、でもさ。俺が女だったらの話」

「おっ。なになに?」

ノリがいいよな。案外こいつも。
そういう目で成実はを見る。
堅苦しいことよりも、笑って楽しむ方が好きなのだ。

「政宗よりも、小十郎さんの方がよくね?旦那にするならさー」

「ほうほう」

腕を組み数回相槌を打つ成実。

「怒らせたら怖いけど、普段は冷静沈着、頼れるアニキ!畑仕事もできちゃうよ!家計に優しい人だね!ってなさー」

「うんうん」

「ま。冗談通じねぇんだけどさ。その辺は真面目だからいいわけで」

「お〜」

「ってことはだ。小十郎さんのお嫁さんは、いい旦那を貰ったよなー」

「そうだなぁ。お買い得だったなぁ」

二人してしみじみと頷いてしまう。

「その点、政宗は駄目だな。常に俺様、戦や政じゃたいした奴でも、私生活が駄目すぎだって」

「ん〜そりゃ否定できねぇなあ」

「仕事は出来ても家庭を顧みない奴はお嫁さんが泣いちゃうからな」

「仕事と家庭の両立か?難しいねぇ」

言いたい放題の二人である。

「案外さー。姉さん女房がいくね?駄目な所はちゃんと叱ってくれる人」

「そうか?年齢は関係なく、梵天は好き勝手にすると思うぞ、殿様だし」

「あー殿様じゃそうかもなー」

「まぁ。今の所は小十郎が目を光らせているから問題はなさそうだけどなー」

「それじゃあ、小十郎さんが女だったら良かったな。あははは」

「はははははっ」

一頻り笑うも、はたと動きを止める二人。

「「・・・・・」」

しばし沈黙が流れる。
そしてどちらともなく、おかわりの茶をいただく。
ずずっと啜って、ほっと一息。

「今のは、怖いぞ、・・・・」

「うん。俺も思った・・・」

小十郎の姉、喜多を想像すればよかったのだが、生憎二人の想像力は低く。
単純にあの顔の女性を思い浮かべてしまったのだ。

「平和だなー」

「あー平和だー」

世はまだまだそうはならないのだが、ここは平和だ。
そういう時間だ、今は。

「そりゃあ。人のことをネタにすりゃ平和な気分にもなるだろうよ」

「「!!?」」

いつの間にいたのか、すぐそばの室で肘枕をしながら横になっている政宗がいた。

「好き勝手言ってくれるな、てめぇらはよ・・・・」

玩具にされたと少し拗ねているような。
横になりながら饅頭を頬張るのは少々いただけない。

「政宗君。いつからそこに?」

「俺に嫁はいないのか?・・・辺りからだな」

「あーそう」

ほぼ話は聞いていたんですね。

「俺から言わせてもらえば、てめぇみてぇな女なんざ御免だな」

「へぇ」

「もっと聞き分けのいい女がいい」

それは誰でもそうではないのか?成実と二人ぼそりとそんな風に話してしまう。
端から反抗的な女を落とそうなんて奴は変わっている。
あぁ、あれか。最近流行のツンデレって奴か。
ツンからデレに変わる瞬間に萌えるのか。

「政宗。ツン好きそうだけどな・・・」

「なになに?ツンってなに?」

「ツンってのはー」

こういう感じのー。成実に丁寧に教えている
一通り説明を聞いた後に、成実はおぉと唸る。
二人して政宗ことなど置いておき盛り上がっている。
政宗は軽く舌打ちをする。なんだか面白くない。

「政宗ー!」

遊びに来たぞーと。少女が一人廊下を駆けてきた。

「こら。いつき。静かにせんか」

小十郎が後からついてくる。

「おー。雪ん子」

政宗は身体を起こす。
政宗がよく来たなと少女の頭を撫でている。
珍しい光景だとは唖然とする。
こそりと、成実に誰だと問う。

「あー。あの子はいつき。ちょっと離れた北の村の子だ」

「村の子がなんで?」

以前。まだがここへ来る前に、農民一揆が起きた。
いつきは幼いながらに、その一揆の中心人物だったそうだ。
一揆は政宗は鎮圧し、事なきを得たが、農民たちの苦しみ、痛みをより知る事になった。
それ以来、政宗はいつきを気に入ったようで、度々相手にしているようだ。

「まだ小さいのに、すげーなー・・・・・あ、あー・・・・・」

「どうした?

すす・・・すすす・・・・。
こそりとはその場から離れようとする。
なんだ?と思って成実も一緒について行く。

(小さいのにすごいなーって思ったけど・・・同時に、思っちゃったよ、俺・・・)

戦国時代って、年端も行かない子が普通に結婚させられたものだよなーと。
のいた場所では二十歳未満、二十歳そこそこでの結婚はまだ早いとか言われても可笑しくないのだが。
この時代は、二十歳過ぎでは遅いと言われるくらいだ。
確か、史実では伊達政宗の正室愛姫が嫁いだのは十代の始めぐらいだったような?

(なんかさー・・・・)

絶対口にするなよ。自分でそう警鐘を鳴らす。
一度気にすると、延々と気にするぞ、絶対。

「どうした?

「----が、子供相手に・・・ってようなもんだよな、あれは・・・・」

ハッと口を押さえる
キョトンとした顔の成実。だがすぐにニヤリと笑みを浮かべる。
強くの肩に腕を回す。

が何を思ったのかわかっちゃったー」

「し、成ちゃん。わかったのはいいけど、口にしたら駄目だ!」

「わかった、わかった。あれだな。梵天が嫁さんを貰わない理由がアレだったらすげぇわな」

相手だって満更じゃないだろうし。そう成実は付け加える。

「マジで!?へー。ある意味あしながおじさんでも気取っているのかと思った」

「なに、オジサン?」

「あしながおじさんは、世界名作劇場でアニメになっちゃうような話でー」

二人でこそこそ。時折、成実から「おー!」などと歓声まで上がっている。
政宗はやっぱり面白くない。仲間はずれにされているようで。
気付けば自分たちとは距離を置いているし。

「わかる。わかるぜー。それ。んでもって自分好みにしたてあげるんだな!」

「いやーそこまで行っちゃうと、あしながおじさんじゃなくて、光源氏だって」

は色々知っているな、すげぇって」

「雑学程度だけどね。そういうの流行ってたんだ」

意外なところで役立っているなぁとはなんだが嬉しくなる。
ただの雑談程度ではあるが。

「そっち系じゃねぇとか言っている割に二人でこそこそ怪しいじゃねぇか」

自分が食べていた饅頭をいつきにも分けている政宗。
小十郎が茶を居れ、そのそばでいつきが饅頭を嬉しそうに頬張っている。
政宗に言われたことで、と成実は顔を見合わせる。
そしてニヤッと悪戯を思いついたような笑みを浮かべる。

「「別にー」」

「なんだよ」

「俺と成ちゃんは仲良しだからさー」

「殿はいつきと仲良くやっていればいいんじゃね?」

いつきがいるからか、成実は政宗を「梵天」とは呼ばなくなった。

「なぁなぁ、政宗。あっちの兄ちゃんは誰だか?おら初めて会うだよ」

政宗の着物の袖を引くいつき。

「あ?いつきにはあいつの姿が見えるのか?」

「へ?」

どうやら今度は政宗が仕返しのターンのようだ。

「ありゃ、この館に住む座敷わらしだ」

「えー!わらしって見た目じゃねぇべ」

座敷わらしと言えば、東北地方に伝わる、家を守る妖怪。
見た目も幼い子どもであり、座敷わらしが居るとその家は繁栄し、姿を消すと没落すると言われている。

「って!まてぇ!!誰がわらしだ!」

「おーおー。座敷わらしが何か吠えてるぜ」

「やんのか、コラァ!」

「上等じゃねぇか」

先ほどまであった距離がゼロになる。臨戦態勢とまでは行かないが。
政宗とは睨み合いをしている。

「あしながおじさんが何言っているんだかなー」

「誰がオジサンだ!ガキに言われたくねぇな、座敷わらしさんよ」

「その座敷わらしが居なくなったら、伊達家は政宗の代で落ちぶれますなぁ」

いつきは成実の近くに避難する。ではないとそろそろ雷が落ちるだろうと予測して。

「いい加減になさいませ!政宗様!!」

「「うわっ!!」

こども、いつきの前でみっともないと小十郎の雷が落ちた。
小十郎は二人に正座をさせて、みっちり叱る気満々のようだ。

「なぁ成実・・・・結局、なんだ?あの兄ちゃんは」

「んー?つって。殿が拾った奴だよ。普段は小十郎の畑仕事を手伝ったり、
あーして、殿とくだらない喧嘩をしたり、一緒に説教されている奴だよ」

いつきから見たまんまの奴だよ。成実は笑った。

「ふーん。喧嘩って言っても、別に仲が悪いんじゃねぇだか」

「寧ろ仲良しに見えるだろ?さっきもさ、自分が仲間はずれにされていたから拗ねていただけなんだ」

だから、今は膨れ面をしていても、楽しそうだろ?
言われてみれば、そうだなと。いつきは思った。
いつもはどちらかと言えば「くーるでかっこいい青い侍」なのに。
今日の政宗は「普通のお兄ちゃん」に見える。

「それも悪くねぇべ」

いつきは小さく笑った。

「・・・・・長引きそうだな、これは」

「逃げるか?」

政宗とはチラッと成実の方に目を送る。
視線に気付いた成実は歯を見せてニシシと笑った。

「聞いておりますか?二人共」

「あぁ、聞いてるぜ、小十郎」

「あ。小十郎さん、可愛い奥さんがナンパされてるよー」

居るわけないのに、ここに。
わかりきったことなのに、小十郎は思わずそちらへと反応してしまう。

「逃げるぞ、!」

「了解!!成ちゃん」

「おうよ。いつき、ちょい我慢してな」

「え?えぇ!?」

咄嗟に駆け出す正宗と
成実はいつきを脇に抱えて共に駆け出した。

「・・・・・・・政宗様、・・・・・」

はらり・・・。小十郎の前髪が一房垂れた。

「覚悟はできているんでしょうな・・・・」

素直に説教されていれば、更に小十郎を怒らすことはなかったのに。
小十郎は逃げた面々を追いかけ始めた。
残念だが、これで成実といつきも同罪だろう。




「ありゃ、絶対に怒らせたな」

走りながらも政宗はそんな風に言う。

「お、おらたちは関係ねぇべ!」

いまだ成実に抱えられたままのいつきが非難の声をあげる。
同じく成実も。

「俺も無関係だって!」

「一緒に逃げちまったんだからしょうがねぇだろうが」

あの怒りをどう和らげようか、それが悩みどころだ。

「俺、いい逃げ場所知ってるぜ」

そこに行こうとが言う。

「どこだ、そりゃ」

「小十郎さんち。可愛い奥さんの前じゃ絶対、小十郎さん、政宗のこと叱らないと思うね」

「ほう。そりゃいいねぇ」

「よぉし。手土産持って、小十郎んちに逃げ込もうぜ!」

「三人で楽しそうだべなー」

普通説教中に逃げるか?
いつきは呆れつつも仕方ないと諦めた。

(これだから、男はいつまでたっても子どもだと言うんだべ)

政宗も単純にたちと遊びたかった。それだけか。
少々に妬いてしまいそうだと思ったが、いつきも楽しかったので良しとした。








19/12/31再UP