他力本願。



ドリーム小説
「なんだかんだで…仲良くやっているよね…」

ぽつりと呟きが出た
縁側でぼんやり座っていた。

「何がですか?」

隣に居た青年にその呟きが聞こえていた事に少々慌ててしまう。
けど、別に隠す必要はないだろうから青年、安成に話をする。

「アニキと鶴姫ちゃんですよ」

「あぁ。そうですね、似た者同士ですよね」

安成は今も自分たちの前方で子供の喧嘩染みたやり取りをしている二人を見て、穏やかに笑った。

「安成さん、平気なんですか?大事な姫御前なのに」

安に言えば、箱入り娘として育てた、先見の力を持つ巫女がガサツな海の男と騒いでいるのだ。
悪く言えばガサツになってしまうぞ。と。
その海の男のそばにいつも居る自分が言うのも可笑しいとはも思うが。

「最初は色々懸念しましたけど、もう慣れました。姫御前が楽しくやっているようなので」

「あ、あれが…楽しく…ですか」

「あなたはそうは思いませんか?」

「んー…最初に比べて角は取れたと思いますね」

ただ言うほど、その巫女、鶴姫と付き合いが濃いわけじゃない。
出会ってから日が浅いから、彼女に対してまだ遠慮している部分はある。

「外の世界を知ることはいいことで、姫御前にとって様々な出会いが彼女を変えると思いますから」

「ふーん。大人だなぁ安成さん」

膝の上に肘をつき、頬杖をつく
安成はなおも穏やかな笑みをにむける。

殿よりは大人だと思っていますよ?」

「あ。ひどーい、私の事を子ども扱いして。鶴姫ちゃんよりはお姉さんなんですよ?」

「それでも。私の方が大人ですから」

「えーからかうのやめてくださいよー」

「そうですね」

優しいお兄さん。と言う印象が強い安成。
その人に穏やかにからかわれるのは勘弁してほしい。
だが、安成が言うように。彼よりも年下なのは本当の話だ。
大人の安成から見れば、自分は子供だろう。
現に、今前方の二人のやり取りを羨ましく思っている自分がいて。
それが子供みたいな感情だとわかっている。

前方の二人。
長曾我部元親と鶴姫。
は元親の世話になっており、安成は鶴姫の世話係のような従者だ。
元親を海賊呼ばわりする鶴姫に対し、元親は船でのレースを申し出た。
挑発して強引に勝負に持ち込んだのだが。
結果、元親が負けてしまうものの、以後も何かと鶴姫との付き合いが続いている。
何が元親をそうさせるのかわからないが、傍から見れば呆れるほどのやり取りを鶴姫としているのだ。

お互いの部下は自分たちの頭が案外似た者同士なんだな。と気づいてから楽しくやっている。
頭は小競り合いをしても、部下たちは和気藹々だ。
現にも安成とのんびりそれを見ているのだから。

「アニキ…私と居るより楽しそう」

殿?」

「あ!………えと……聞かなかったことにしてください」

「まぁ…別にいいですけど。姫御前は別に元親殿の事を」

鶴姫は戦場で自分を助けてくれたとある忍に一目惚れしたとのこと。

「知っていますけど…なんか…やっぱり子供ですね、私」

は軽く両手で顔を拭う。

「いえいえ。年頃の女の子らしくていいと思いますよ」

安成の気遣いには苦笑して返す。

「女の子だから、色々あるのでしょうね。悩み事が多くて大変だ」

「ですね。ちょっとした事でも不安になるから…」

「でしたら、秘密厳守しますので私に話してみてください。少しは気がまぎれるかと思いますよ」

聞き上手なのだろうか。
安成に話をするのを苦とは思わない。

「じゃあ少しだけ」

話してみて。などと言ってくれるが、別に真剣に聞いてくれなくてもいい。
軽く聞き流しても、ただ誰かに話してすっきりしたいだけなのかもしれない。

「私、鶴姫ちゃんみたくアニキに面と向かって言えないんですよね」

「おや」

「鶴姫ちゃんだけでなく、サヤカさんって女性もアニキにはズバッと言うらしいんですけど」

まだ会った事もない、元親の幼馴染だと言う女性。
航海の途中、たまに彼女の住まいを尋ねるらしい。
はっきり物を言う女性らしく、しかも元親を平気で小突くようで元親は愚痴を零すも、そのサヤカの事を話す時の目が優しいのだ。

「だから、ちょっと羨ましい…って言うか…」

元親もそう言う女性、少々勝気な女性が好みなのかな?と思う。
彼の目から見て、きっと自分は妹分のようなものだろうし。

殿が姫御前やそのサヤカ殿のようにならずともいいと私は思いますが?」

あなたはあたならしく。
安成はやはり穏やかな笑みをにむける。

「私。らしく?」

「そうです、殿はそのままが一番だと思いますよ?少なくとも私はそう思います。
こうしてあなたとのんびりお話をする事を私は嫌だと思いませんから」

「あ、ありがとうございます。私も嫌じゃないです」

なんだか照れ臭い。
安成にそんなつもりはないだろうが、どこか誘われているのか?と思えてしまって。
照れ臭いけど、なんとなく笑って。
でもって、鶴姫が土産だと言って持ってきた蜜柑に手を伸ばした。

「まだまだ続きそうですから、蜜柑でも食べてませんか?」

「そうですね。あ、お茶も淹れなおしましょう」

ここでのんびり待ちましょう。と安成は言った。



***



「…………」

「やっぱり玩具じゃないですか!ま、ここはあなたのお家なので文句は言いませんけど」

南蛮の技術に自分たちなりに手を加え、製造費も馬鹿にならないと言うのに。
製造途中のからくりを見ての鶴姫の反応。
これの良さがわからないとは、やっぱり奴はお子様だと元親は思う。
思うのだが、今はそれよりも違うことが気になった。

「おい、鶴の字」

元親はその場にしゃがみ込む。

「なんですかぁ?」

ちょいちょいと鶴姫を手招く。
鶴姫は渋々元親のそばに同じようにしゃがみこんだ。

「お前んとこの、優男…」

「優男…?」

「ほら、と一緒に居る奴だ」

「あぁ。彼がどうかしたのですか?」

彼とは安成のことだ。

「…………」

元親はムッと口を噤む。
小難しい顔をし、眉間に皺までよせて。

「仲…良すぎねぇか?」

「はい?」

鶴姫は小首を傾げる。
意味がわからないと一歩元親に体を近づける。

「あ〜だからよぉ」

元親は乱暴に自分の髪を掻く。

とだ!さっきからずっと和やかに笑いあってんじゃんか」

「普通じゃないですか?」

「普通か?あれが!?」

素っ頓狂な声を上げてしまう元親。

「普通にお話をしているだけのように見えますけど?」

わかってねぇ!元親は舌打ちしてしまう。
普通に話をしているだろうが、その距離感は縮まっているように見えるし。
時折は恥ずかしそうにはにかんでいる。
そして今では二人仲よく蜜柑を食べている。
あとで自分もと食べようと思っていたのに…。
安成に先を越された。そう感じた。

「女ってのは、あーゆー優男がいいのか?」

「人それぞれでしょうが、少なくとも私はあなたみたいなガサツな乱暴者よりはいいと思いますけど」

はっきり言ってくれる。
じゃあもそうなのだろうか?
鶴姫が来ると、大概彼女は安成と一緒に居る。

「そう言うもんかぁ?」

「あくまで私は。の話なので、ちゃんがどう思っているのかは知りませんよ」

気になるなら聞けばいいじゃないか。
鶴姫は言う。

「き、聞けたらお前になんか聞くかよ」

「折角答えてあげたのに、お前になんかとは!言葉が汚いです!」

「わ、悪ぃ」

素直に元親が謝ったので、鶴姫が意外そうな顔をした。
いつもなら一言、二言でも余計なことを口にしそうだが、鶴姫は笑うだけだ。

「な、なんだよ」

「いいえ、別に」

「………」

「どうかしましたか?」

「俺って、んなにガサツで乱暴者か?…まぁ畏まった態度は得意じゃねぇけどよ」

恨めしそうな顔を鶴姫にむければ、鶴姫は元親の反応に笑うだけだ。
しかも声を出して。

「な、なんだよ!」

「だから、人によるって言っているじゃないですか」

「そ、そりゃあそうだが…」

ちゃんが大事なんですね?」

年下の子にね?と尋ねられて、元親の頬が薄ら赤く染まる。
唇を尖らせつつも、

「……おう」

と元親は答える。

ちゃんが今のあなたを見て、何か文句を言うようならば問題ありですけど。そうじゃないならいいんじゃないですか?」

「………かもしれねぇが…女はあーゆー奴がいいのか?とか思ってよ。、あいつと仲がいいじゃねぇか。
向こうも気に入ってんだろ?いつもと一緒にいやがる」

「それはどうなんですかね?私は知りませんけど」

の性格もあるだろう。
比較的誰とでも仲良くできるのがだ。
それが彼女のいい所だとも思うが、元親には少しだけそれが面白くないと思ってしまう部分もある。

「家康とも仲がいいもんな…あの毛利にだってはかわらねぇし」

会う奴会う奴と仲が良くなっていく。と元親の顔が渋る。
それを聞いて鶴姫が両手を両頬に当てて青ざめる。

「はっ!もしかして、宵闇の羽の方とも親密とか!?」

立ち上がって、あらぬ方向に手を組み拝むように視線を向けた。

「よ、宵闇?誰だよ」

「北条のおじさまにお仕えする忍で」

「…風魔か…けったいな呼び方するなよ。誰かと思ったじゃねぇか」

「ま!あの方の良さをあなたはわかっていませんね!あなたとあの方を比べたら月とすっぽん!ですよ!!」

とすると、鶴姫から見れば風魔はガサツで乱暴者には入らないのだろう。
元親は彼の事をそんなに知らないので、比べられようとも構わない。

「あーそうかい」

面倒臭そうに頭を掻く元親。

「それで?どうなんですか!?ちゃんと、あの方は!」

「…俺の知る限りでは…付き合いがあるようには見えねぇけどな」

自分の知らないところで親交を深めていたとなるとちょっと寂しい。
元親の答えに鶴姫は安堵する。

ちゃんは可愛い方ですから、あの方がちゃんを見初める可能性もありますからね」

「な…!?」

「まぁでも…私もちゃんの事は大好きですから。このまま一緒に連れて帰ってもかまいませんよ。
安成にその気があるなら、ちゃんをお嫁さんに迎えてもいいですよね!」

ね!と嬉しそうに言う鶴姫。

「そんなこたぁ、俺が許すかよ!」

立ち上がる元親。

「あなたの許可など必要ないでしょう?重要なのはちゃんの気持ちですから」

「そ、それはそうだが…けど、あ…あー」

再びしゃがみ、頭を抱えてしまう元親。

「そうそう。孫市お姉さまもちゃんと会ってみたいっておっしゃっていたので、ぜひともちゃんを連れて孫市お姉さまの所に行かないと!」

鶴姫は嬉し楽しそうにくるくるその場で回った。
だが、それ以上に。

「そうだよ!サヤカがいるじゃねぇか!」

元親は立ち上がる。

「お子様の鶴の字なんかより、サヤカに聴いた方がいいに決まっている」

「ま!なんですか!その言い草は!!人が大人しく話を聞いてあげていると言うのに!」

鶴姫は頬を膨らま怒る。

「だったらもっと役立つことを言えってんだ!」

またも二人は喧々囂囂と周囲の注目を浴び始めた。
そのほとんどは「あぁまた再開した」程度にしか思わなかったのだが…。



「本当…アニキ楽しそう」

安成と蜜柑を食べながら、突然「サヤカが!」と叫びだした元親を見てが言った。
その顔は不機嫌そのもので。

「本当楽しそうですね」

安成は穏やかに笑っている。
それから元親がの所に戻ってきても、はしばらくそっけない態度だったために、
余計に元親は焦ってしまのだった。





結局の話。
も元親も、お互いを気にしているものの、それがからまわっているだけのこと。
周囲から見れば、なんで?と言う風に見えるようだ。

ただ、鶴姫はわかっておらず、安成は元親が自分に向ける視線の意味に気付いているようだが…。






19/12/31再UP

話に出てくる安成さんは一応、ゲーム中に出てくる鶴姫のそばにいるイケメンさんです。
名前など不明なのですが、話に出すのに不明のままでは書き難いので鶴姫の恋人越智安成の名前を使いました。
19/12/31再UP