好きなもの。


ドリーム小説
「さ、佐助!佐助はおらぬかぁ!佐助ぇー」

慌てているようだが、どこか弱々しい呼び声に佐助は何事かと思い姿を現す。
いつもの彼らしくない声。

「旦那。どうしました?」

「佐助ぇーそ、某のどこが悪いのだろうか?」

「あーしいて言うならば、おつむ?今の旦那相当頭悪く見えますよ」

「ち、違う!そうではない!」

「はいはい」

戦になれば鬼だとか言われてしまうのに。
今の彼は泣きそうな面をしていて情けない。

でも、なんとなくわかる。
戦で兵士たちから恐れられた真田幸村にこんな顔をさせるのはただ一人。

ちゃんと喧嘩でもしたんでしょう?」

「うっ・・・・」

「毎度毎度よくやりますねぇ」

この調子じゃの方が荒れているに違うない。

「で、俺に何を聞きたいと?」

話しを聞いてくれるというので幸村の目が輝く。
こんな顔をするのも限られているよなと思い浮かべる。

一つは主である武田信玄といる時。
一つは好物の甘味モノを食べている時。

(わかりやすい人だよなぁ・・・)

「じ、実はな。先ほどと団子を食べていたのだ」




。一緒に食べぬか?美味いぞ」

縁側に座り足をぶらつかせていたに幸村が声をかける。
幸村の姿を見ては笑顔を綻ばせる。

「あー幸村君。食べる!待っててお茶用意するから」

一旦立ち上がり奥の部屋に引っ込む
変わりに幸村は縁側に腰を下ろした。

「ふぅ」

天気も良くて日差しが気持ちいい。
世の中が戦で荒れていると言うのに、今はそれをまったく感じさせない。

「お待たせ。はい、幸村君の分ね」

「すまない」

が戻ってきて、茶を淹れてくれた。
幸村も袋を開けて中から団子を取り出す。

二人して並んで座って団子を頬張る。

「んー団子うまうま〜」

「そうだな」

ただ食べているだけなのに、なんとなく楽しい。

「うわ、幸村君それ何本目?」

「え?・・・・わからん。た、食べすぎか?の分はまだあるから心配せずとも」

「食べすぎじゃないよ。これは幸村君が買ってきたものでしょ?私はもうお腹いっぱいだからいいよ」

だから気にせず食べて良いとは言う。
幸せそうに食べている幸村の顔を横目で見ながらがぽつりと呟いた。

「幸村君は甘いもの好きだねぇ」

「ん、好きだ」

「お館様とどっちが好き?」

「それはお館様だ!」

きっぱり言い切る幸村には苦笑する。
まぁ菓子と比べてもしょうがないかと。

「お館様はとても素晴らしい方だからな!民のことを誰よりも考えておられる」

「うんうん」

「お館様が天下を取られればきっともっと良い世の中になると某は思う」

「うんうん」

それはも同じように思うから相槌を打つ。
拾われたのが武田家で良かったなぁと思えるのも信玄のおかげだ。

尊敬する信玄について熱く語りながらも食べるのは止めない幸村。
むしゃむしゃパクパク。
どんどん彼のお腹に納まっていく団子。

「ここまで気にせず食べれるのって羨ましいかも・・・」

「ん?なんだ

「なーんでもないよ。お茶のおかわりいる?」

「あぁ」

幸村の湯飲みにお茶を注ぐ
自分の湯飲みにも注ぐ。
幸村は受け取ったお茶を飲んで美味いと言う。

が淹れるお茶は美味いな」

「それはどうも。いつでも淹れて差し上げますよ」

「本当か!」

はくすくすと笑う。




佐助は口をぽかーんと開いてしまう。

「旦那。俺は惚気話を聞かされるのは嫌ですよ?」

「の、惚気ではない!」

「だって、そうとしか聞こえないですよー仲良く団子食って、お茶飲んで」

そんな話は他所でしてくれ。

「だ、だから、その後、その後だ」

「へー」




二人が縁側で団子を食べていると、その後ろを幸村と同じように信玄に仕える山県が通りかかった。

「お、ちょうど良かった。幸村殿、良ければこれも食べられるか?」

両手を出せと言うので素直に差し出す。

「山県殿・・・あ、これは。某にいただけるのですか?」

幸村の手の上にポンと置かれた包み。

「頂き物なのだが、拙者にはどうも苦手で、良ければ食べて欲しいのだが」

すでに中身が何かわかっているようで、それを見ただけで幸村の目が輝いてる。

「ぜひ!」

「それは良かった。殿と仲良く食べてくだされ」

「ありがとうございまーす」

山県に向かっては笑む。
山県はそのまま去ってしまうのだが、幸村の意識はすでに包みへ向かっている。

「きっとこれは団子だな。山県殿はいつも某に分けてくれる」

いそいそと包みを開ける。

「餌付けされているみたいだね、幸村君は」

山県が菓子類を苦手としているのは知ってはいるが。
包みを開けるとやはりと言うか出てきたのは団子だ。
団子と言っても、先ほど幸村たちが食べていたのはくし団子。
目の前にあるのは餡を餅で包んだものだ。

「ほら、も」

「あ、私はいいや。もうお腹一杯」

「そうか?」

「幸村君が食べていいよ」

「全部か!?」

「うん、全部」

そんなことで喜ぶ幸村には笑う。
だが、嫌ではない。
こう言う一面があるのは安心できるし。

幸村はぱくりと頬張る。

「なあ、こんど・・・・よへへふぁ、それふぁしと」

「あーもう、食べてから喋ってよ、行儀悪い。待っててあげるから」

「すまふ」

子どもだなぁ。
いや、武家の子はもっと行儀良いだろう。

幸村は一つ食べて、二つ食べてと止まる所を知らない。
ぱくりぱくりと先ほどと同じ光景が再び見られている。

「ねー幸村君」

「んー?」

「そのお団子美味しい?」

「んー」

「そのお団子好き?」

「んー」

「私よりも?」

「んー」

「・・・・・・・へぇ」

うぐっ。
団子を咽喉に詰まらせてしまう。

「・・・・つつつっ・・・・はっ!」

急いで茶を飲み乾すとから冷ややかな視線を感じる。

?あの、あのな」

「さぁてと、私はそろそろ行こうかな」

は立ち上がる。

「ち、違うぞ。先ほどのことは違うからな!間違いだぞ、間違いー」

「別に、今更って感じだし、幸村君は甘いお菓子大好きなのは知ってるから」

「だ、だからって、そ、某はより菓子などとは・・・・と言うより、やり方が汚いぞ!」

「汚い?・・・・逆ギレするわけ?」

「あ、いや、その」

「美味しそうなお団子、まだ残ってるわよ。早く食べちゃえばー」

は幸村に背を向けて歩き出す。

「お、おい!そ、某の話し、待っててくれるのではないのか!?」

「待たない」

はそう言って去ってしまった。




「と言うわけだ・・・・某が悪いのか?あれはも悪いと思うのだが・・・・」

話し終えた幸村は肩を落としている。

「どっちもどっちって言うか・・・・・そのうちなんとかなるんじゃないですか?」

佐助は助ける気はないらしい。
と言うより意味が無いように思えている。
幸村とは同じような事で喧嘩をしてしまうのだから。

「そ、そのうちだと」

「俺に何か言うより、ちゃんに直接言えば済みますよ」

「そ、そうだな・・・・・」

幸村は何度も頷き考え始める。
頭の中でどうしようか考えているのだろう。

(前はお館様と私どっちが好きー?とか言って普通にお館様って答えたよな、この人・・・・)

それでに笑顔で。

「そう。ならば私は幸村君と佐助さんなら佐助さんが好きー」

って仕返ししていた。
勝手に巻き込まれた佐助にはいい迷惑だったのだが。
相性が合わないように見えて、いつも一緒にいる。
不思議な二人だ。

(あれ?待てよ・・・・)

「旦那、真田の旦那」

「ん、なんだ佐助」

「気がついたんですけど、旦那とちゃんはどう言った関係で?」

「な、なんだ突然!」

か〜っと顔が見る見るうちに赤く染まる幸村。

「いやぁ、どっちから告ったのかなぁと思ったわけでして」

「・・・・・・」

「だ、旦那?あ、あれ?」

が好きだ好きだと言っても、それは恋愛の好きとは違う気がするし。
でも、態度を見ていればそうなのかな?とは思う。
なんとなく曖昧な関係。

「・・・・・・・・・」

少し顔を俯かせてしまう幸村に佐助はどうしたのか覗き込む。

「あ、旦那泣いてる」

「な、泣いてなどおらぬわー」

でも目尻に涙が溜まっている。

「・・・・・ー!」

幸村は軽く目元を拭って突然走り出した。
何か思ったらしい。
佐助は幸村に向かって手を振る。

「いってらっしゃーい」




武士として、いや一人の男として情けない。
だから、ちゃんとに言わなくては!
でないと、はどこかに行ってしまうからな!

某は、ずっと、ずっと・・・

「いた、!」


追いかけて、捕まえて。
伝えよう、君に。
ちゃんとした気持ちを言葉にして。









19/12/30再UP