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不機嫌な理由。
「結果的に、誰が天下の色男だったの?」 「ん〜?誰だったかしら?」 「幸村様や信之様は大分危ない目にあったらしいけど」 先日、何故かは知らぬが「天下の色男決定戦」なるものが開かれたらしい。 らしいと言うのは、それを話で今聞いたからだ。 聞けば、孫市と言う人物が開催したらしいが、それにどんな意味があるのか。 そして、選ばれてなんだという話だと思うのだが…。 「へぇ。ユキさんそんな話少しもしていなかったけど?」 「あら、は知らなかったんだ」 甲斐が意外だと言う。 共にいるくのいちも頷く。 は真田家に世話になっている身だ。 「ん〜ユキさん、この前どっか出かけたなぁと思ったけど、それだと思わなかったから」 「普通に戦に行きます!みたいなノリだったのかしらね?」 それも幸村らしいと達は笑う。 「他にどんな面子がいたの?」 「えーと…三成とか、左近殿もいたわね。大谷殿と…」 「小さい軍師さんもいたよ」 小さい軍師…あぁ竹中半兵衛の事か。 その他に伊達政宗、片倉小十郎、直江兼続、松永久秀も居たそうだ。 「結局、なんのためにそのような事をしたのかわからなかったんですけどね」 女ながらに井伊家の当主だという井伊直虎も苦笑している。 「ふーん」 は興味なさそうな返事をする。 「でも、わかった」 「何が?」 「信之さまがひたすら、天下の色男は幸村だ!って兄馬鹿炸裂していたから」 「あの人意外に自分を見えていないのね」 甲斐は呆れる。 「けど、その人選なんなの?」 「ん?」 「人選ですか?」 「や…一部、どうも色男からは遠いような人がいるから…」 見た目だけではなく、中身も勝負って事なのだろうか? それに、色男と聞いて入っていないのが可笑しい人物もいる。 「ほら、九州の立花宗茂さんとか」 「爽やかに辞退していそうだよね」 「わかる、わかる〜」 参戦した人達も、騙されて参加したとか、暇つぶし程度の参加だったのかもしれない。 政宗に至っては、孫市の必死さに同情したかららしい。 「でも、は納得してませーん。って顔をしているけど?」 「そんなんじゃないよー」 天下人が開催したものならばわかるが、そうじゃない祭りのようなものだから、その天下の色男に選ばれらところで何か得るものがあったのかわからないだろうに。 「あ。甲斐ちゃんやくのちゃん。直虎ちゃんにも関わる他の事あったでしょ?そっちの方が聞きたいなぁ、私は」 3人の顔を見比べはニヤッと笑う。 「な、なんですか?さん」 直虎は大柄な外見とは裏腹に身を縮めてしまう。 「小少将さんが開催したって言う…」 天下の色男決定戦とはまた別の催し物があり、それに3人は出ていたそうだ。 「そっちの話、興味あるなぁ。中々豪華な参加者ばかりだったみたいだし?」 3人共首を振って口を閉ざしてしまう。 何とか聞き出そうとは追及を緩めないのだった。 *** (天下の色男決定戦かぁ…やっぱり、あの人がいないのは納得いかないなぁ) は往来を腕を組みながら歩いている。 (色男さんだと思うけどなぁ…) の思う人物は性格上、恐らく参加しないだろうとは簡単に想像がつく。 (でも、みっちゃんに大谷さんとかも出てるくらいだし…) 上手く話を持って行けば出たんじゃないだろうか? (逆らえないような人から命令するとか?…うわ。すごく嫌そうな顔したの想像できた) 思わずは小さく笑ってしまう。 「一人で間抜けな顔をして何をしているんだ、お前は」 「間抜けとは失礼なり!」 あからさまな言動には声の主に振り返った。 「だが、そう見えたのだから仕方ない。ニヤニヤしながら歩いていて恥ずかしい奴だ」 「もう!タカさんってば、ひどい!!」 藤堂高虎がいた。 は高虎に向かって拳を振り上げるも、6尺2寸もある彼には簡単に届くわけもなく。 寧ろ高虎の手が伸びてきて、の頭を押さえている。 「タカさん、扱いが雑!!」 「そうか?普通だろ」 「どこがよ!!」 高虎は手を離せばは反動で前につんのめりそうになる。 「うわ」 「おっと。鈍臭いな、あんたは」 高虎が受け止めてくれた。 顔を上げれば不敵に笑う高虎が目に入る。 「………」 「どうした?」 「なんでタカさん、天下の色男決定戦に出なかったの?」 「はぁ?」 「だから。天下の色男決定戦!ユキさんや信之様が出たって言う。タカさんも色男さんだと思うんだ。だからなんで出なかったの?って」 高虎の手が伸びてきて、の鼻先を軽くつまんだ。 「な、なに!?」 は鼻先を押えながら後ろに飛びのいた。 「そんなものに俺が出てどうする?」 「別に可笑しくないよ?タカさん色男さんだと私は思うから。出ていない事に不満だったし」 高虎のなんとも言えない表情が目に入る。 そんなに自分はおかしなことを言っただろうか? だが実際、高虎の不参加には納得していないのだは。 「あれかな?タカさんも信之様と同じで、自分よりも他の人が色男だ!って思うわけ?」 「信之?」 「信之様。色男は幸村だ!って叫んでいたから」 兄馬鹿だよね。とは笑う。 信之だって色男の部類に入るはずなのに。 「……別にそれでもいいが、色男の意味を知っていて、あんたは言っているのか?」 「ん?色男の意味?普通にイケメンって事でしょ?」 それ以外にあるのか?とは首を傾げる。 「タカさん、イケメンだし。あ、男前!って事だね」 どう言おうが、高虎はかっこいいんだよ!とは言いたいのだ。 それに対して高虎は鼻で笑った。 「男前ってのは長政様みたいな方だと思うけどな」 「………真田兄弟のブラコンぶりも大概だと思うけど、タカさんのそれも異常だよね」 「なんだ?」 長身の男から見降ろされながら睨まれると怖いものがある。 は何でもないとかぶりを振る。 (なんだろうね…私の周りはこんなんばっかで…) もっと自分の方を売り出せばいいのにと思う。 例えば、信之とか幸村とか…高虎もだ。 「まぁ、そうだね。長政さまは、正統派イケメンヒーローみたいなものだよね」 ノリは暑苦しいが…と思うが、この辺は黙っておく。 「爽やかさが売り。みたいな?」 「そうだろう」 「でも、やっぱり!私はタカさんが誰よりも男前だと思うの!」 話はまたそこに戻るのかと高虎は嘆息した。 「つか、褒めているのに、なんで面倒くさそうな顔をするわけ?」 「別に俺は自分がそうだとは思っていないからだ」 「えー。もっと自信持っていいよ?背が高くて、常に冷静で、友達思いだし、あとね」 「止めろ」 ぴしゃりと言われては肩をびくつかせた。 そんなに嫌な事など言っていないのに。 悪口でもない、寧ろ褒め言葉なのに。 嫌味に聞こえるのか? そんな自分は嫌な性格はしていないと思うのだが、高虎の気を悪くさせたのだと思うとこれ以上は言わない方がいいのだろう。 「………ごめんなさい……」 寂しさがふっと湧く。 調子に乗りすぎていたのか、自分は。 気安く高虎に接しすぎていたのか。 悪ふざけをしてごめんね!って軽く言えればよかったのだが、滅多にない拒否されてしまった事に動揺してしまう。 は唇を噛みしめ、俯いたまま高虎に背を向けた。 今、顔を上げたら不機嫌な高虎を見るのかと思うと怖くて。 「違う。そうじゃない」 背後から聞こえた高虎の声。 「タカさん?」 が恐る恐る振り返ると、高虎がしゃがみこんで顔をそらしていた。 「……言われたことを不快に思ったわけじゃない…ただ、なんだ…」 「照れ臭かったの?」 「……………」 そっぽを向いたままの高虎だが、若干顔が赤いように見える。 は高虎の前にしゃがみこんで笑顔を見せた。 「タカさんのそういう所好きだな、私」 「あんたな…」 「うん。やっぱり私が思う天下の色男さんはタカさんだと思うよ!」 「色男と言われても俺は嬉しくない。好きだと言われて嬉しくは思う、俺もあんたが好きだからな」 「へ?」 今度はが顔を赤くする番だった。 「や、あの。私が言った好きは、えと」 性格とか、態度の事であって。 あれ?でも、高虎の事は嫌いじゃないし、寧ろ決定戦に出ていない事を納得していないと思うと、面白くないと思ったわけで、高虎が一番だと考えているから…。 「そういう好きなのかな、やっぱり」 「違うのか?」 「違わない」 照れ臭そうには笑った。 「でも、さっきの言い方少し厳しいよ。照れ隠しでも私はちょっと傷ついたぞ」 いつまでも往来でしゃがみこんでいては邪魔だろうから二人は歩き出す。 「あんたに言われて冷静で居られなくなったんだ、仕方ないだろう」 「ん〜?」 「好きな女の前ではカッコつけていたいものだからな」 大きな高虎の手がの頭をくしゃりと撫でた。 その言葉と行動にがさらに顔を赤くしたのは言うまでもない。 19/12/30再UP |