千里同風。




ドリーム小説
「本当、つまんない」

ここ数日、は非常に暇を持て余していた。
お世話になっている真田屋敷にいると特に。
なので、一人屋敷を出てぶらぶら散策しているのだが。
一人だからなのかつまらないと何度も零してしまっている。

「別に、私だって会えるのは嬉しいんだけどねぇ…」

深く息を吐く
誰でもいいから知り合いに会わないかな?と思うも、そんな時ほど会わないようで、余計につまらなく感じる。

「みっちゃんの所に強襲しようかな…」

その場合。仕事の邪魔をしたと不機嫌になるだろう。

「嫌味がいつもの倍来そうだな…そしてそれを宥める左近さんに迷惑がかかるかも」

次に考えるのが兼続だが、生憎三成宅へ行くほど気軽に行った事がない。
きっと兼続の仕事の邪魔をして軽く説教されるような気がする。
軽く。で済めばいいが、半日くらい正座させられた状態でくどくど言われそうだ。

「いつもなら甲斐ちゃんとかくのちゃんと遊ぶんだけどなぁ…二人とも今居ないし…」

秀吉に命じられて珍しく、二人でどこぞへ行っているらしい。
最強乙女組!とかと出発前に甲斐が叫んでいたのを覚えている。
元々暇人なのは自分だけであって、周りは皆忙しいのだ。

「あー…暇だよー…これもそれも全部ユキさんが悪いんだから」

暇になった元凶。居候させてもらっている屋敷の主真田幸村を恨めしく思う。

「いっそのこと、秀吉様の所ににでもお邪魔してみようかな」

天下を治めた太閤殿下のもとへ遊びに行くなど、一般的に許されないだろうが。
いや、ここは奥方のねねに会いに行く方がいいような?
そしてねねに沢山、話を聞いてもらいたい。
きっとの話を聞いたねねはしょうがないねぇと笑って。

「お説教だよ、幸村!」

とでも言ってくれそうだ。

「ま。実際ねね様はユキさんに説教しないと思うけどね」

幸村が忙しい理由を知れば納得しそうだから。

「なんかないかなー」

今のを三成辺りが見れば、暇なら少しは勉強しろ。とでも言いそうだ。
一番それが無難かもしれないが、生憎勉強などする気などない。

「あ。珍しい人発見〜」

はとある人物の後姿。というか、後頭部を捉えた。
そして駆け出した。

「藤堂さーん!こんにちはー!暇なら遊んでくださいなー」

「……あんたか」

見つけたのは藤堂高虎だった。
に声をかけられ、彼は立ち止まる。

「俺が暇なように見えるのか?」

「どこか行くところでした?」

「質問を質問で返すな」

高虎が歩き出すので、も歩き出した。

「ユキさんも背が高い。って思うけど、藤堂さんも背が高いですよね。お蔭で見つけられたんでいいですけど」

6尺2寸(190p)もある長身なので、人より頭が出ていて見つけ出しやすかったのだ。
気を悪くするいい方かな?と思いつつ、伺い見るも高虎の反応は特になかった。

「なんで着いてくるんだ?」

「言ったじゃないですか。暇なら遊んでくださいって」

「暇そうに見えるのか?」

「何か用事があるんですか?」

「あんたな…」

高虎が呆れている。話が進まないからだ。

「そうだな…遊んでやるよ。割と暇なんだ」

「ありがとうございます」

は笑い、高虎は苦笑した。

「珍しいな、あんたが一人なんて。いつもは幸村と一緒だろう?」

幸村と聞いてが唇を尖らせた。

「ユキさん、今忙しいんです」

「何かあったか?これと言って重要な案件などないはずだが」

「信之様が来られるんです。そのお出迎えの準備に忙しいんです」

「あぁ、そうか」

沼田にいる幸村の兄信之が久しぶりに京へやって来る。
幸村はその準備に追われているのだ。

「忙しい。って割に久しぶりに信之様に会えるから嬉しいんでしょうね。毎日楽しそうですよ」

「その代りあんたは楽しくないと」

高虎が小さく笑った。鼻で笑ったようにも思えるが。

「そうですよ。つまんないですよー」

は高虎に向かって舌を出す。

「別に信之様が嫌いってわけじゃないですよ?私だって会えるのは嬉しいですから。信之様も優しいし、私の事も可愛がってくださるし」

「それでも幸村の意識が兄殿に向かって面白くないか」

「藤堂さん。私の事ガキだって思うでしょう?」

「あぁ。ガキだな」

大概三成もはっきり言う性格だが、高虎もそうだと思う。
この性格じゃ敵も多いだろうなと思うも、自分から駆け寄るのだから嫌いではないのだろう。

「だが、少しの辛抱ではないのか?久方ぶりに会える兄殿に不便があっては困るだろう?兄殿がこちらへ来たら来たで色々忙しいはずだからな」

「見物に来るだけじゃないんですか?」

「あぁ。やる事は沢山ある。ただのらりくらりと遊びに来るわけじゃないんだ」

「ふーん」

高虎が小さく笑う。

「あんた。俺らの事、割と暇そうだと思っているだろ?色々あるんだぜ?面倒くさい接待とかな」

「面倒くさい接待?」

例えば気に食わない上司の接待だとか。

「藤堂さんでも面倒くさいとか思うの?きっちりやっていそうなのに」

「あとで面倒くさい事にならないようにきっちりやっているだけだ。実際先日の茶会は出るだけで疲れた」

先日の茶会…?
あぁ。とは思い出す。秀吉主催の茶会だった。似たような事を誰かが愚痴っていたのを思い出す。

「あ、うん。甲斐ちゃんも似たような事を言っていたなぁ」

「ほぅ」

「なんかね。秀吉様が甲斐ちゃんの為に着物を用意してくれたんだって。でも、甲斐ちゃんの趣味に合わないもので、甲斐ちゃん直前まで悶々としてた」

他人事だと思って笑って、甲斐に両頬を抓られた。

「そういえば、目に痛そうな着物を着ていたな」

なんとなく二人して笑ってしまった。





それから、一緒に芝居を見たり、ご飯までご馳走してもらった。
傍から見れば、立派なデートではないか?とちょっと思った。
自分から声をかけたものの、今まであまり会う事がなかったので、なんだか不思議だ。
ちらっとお城の話をすると、拘りがあるようで熱く語られてしまった。
石垣の反りと高さなどにはされてもよくわからないのだが。
ここに加藤清正と黒田官兵衛がいたら、もっと熱く激しいやり取りがされていたと思われる。

「まだ何か見たいものでもあるか?」

「んー?どうしようかなぁ。ちょっとした暇つぶしだったはずなのに、藤堂さん、沢山遊んでくれたし」

「幸村の代わりにはなったか?」

「べ、別にユキさんの代わりだなんて思っていないですよー」

また子供扱いされたなとは唇を尖らせる。
その行動が子供じみているとわかっていてもだ。
だけど。

「珍しい組み合わせだな」

「あ。みっちゃん」

三成が左近を連れていた。

「幸村に振られたって言うんで、遊んであげているだけだ」

「そうか。幸村に振られたか、

「別に振られてなーいー!変な事をみっちゃんに言わないでください、藤堂さん!」

「だが、似たような事だろう?幸村が忙しいから相手にしてくれないと拗ねていたのだから」

「藤堂さんの意地悪。みっちゃんが二人いるみたい」

「一緒にするな。馬鹿が」

三成はの頭を扇で軽く叩いた。

「左近さん。似てるよね?みっちゃんと藤堂さん」

左近に同意を求めるも、左近は苦笑するだけで答えない。

「くだらん事を言っていないで、早く藤堂を解放してやれ。お前が思うほど暇ではないのだぞ」

「はーい」

そう言い、三成は左近を連れて立ち去った。

「みっちゃん自身は暇そうに見えるんだけどねー」

散歩する時間があったならば、三成邸に強襲すればよかったと思う。
そうすれば、高虎にも迷惑をかけずに済んだのかと。
だが。
高虎の手がの頭に乗せられた。

「割と俺は楽しかった、あんたが気にする事はない」

「藤堂さん…」

これは一応宥めてもらっているのだろうか。
まぁ、悪い気はしない。

「幸村がユキさんで、三成がみっちゃんか。仲がいいな、本当」

「ふ、普通だよ。あ、悪くはないけど…」

ふとは思う。この流れだと、彼にも似たような感じで呼んでもいいってことなのかと。
だから恐る恐る呼んでみた。

「じゃあ。藤堂さんはタカさん…かな?トラさんでもいいけど」

「好きにすればいい」

高虎が歩き出すのでも続く。

「タカにゃんってのもアリだと思う」

「それは嫌だ」

「えー。可愛いと思うよ?タカにゃんって」

流石に高虎はうんざりしたような顔をする。
仕方ないだろう。6尺の大男に向かって可愛いとは言い難い。

「この図体でよく言えるな。そんな事が…それにあんたが言うのは、見た目ではなく、言葉の響きがいいってだけだ」

「そうかも。でも、いいよね。タカにゃん」

「次にそう呼んでも返事はしないからな」

「えー!…じゃあ諦める」

タカさんとか、トラさんは良しというわけだ。

殿!」

「あ。ユキさん!」

ちょうど真田屋敷の近くだったようだ。幸村が立っていた。

「藤堂殿とご一緒だったのですか?」

「うん。暇人の相手をしてもらっていたの。だから楽しかった」

「そうですか。よかったですね」

本当に心底そう思っているのだろうなとは思う。

「ユキさん。準備終わったの?」

「えぇ。大体は」

「よかったね。あとは信之様が来るだけだね」

「はい!」

あぁ、本当に嬉しそうだ。
これは信之が来たら来たで、また相手にしてもらえそうにないなと苦笑しかでない。

「じゃあ。タカさん。今日はありがとうございました!」

「いい。気にするな。俺も楽しかったと言ったろ」

気休めでもそう言って貰えたならばいいか。

「だから、またいつでも相手をしてやる。幸村は忙しそうだからな」

ポンとの頭に手を置き、数回軽く触れた高虎。

「藤堂殿?」

「うかうかしてると。貰っちまうからな、幸村」

の頭上でされた会話などには聞こえない。

「じゃあな。

高虎は二人を置いて立ち去る。

「……あ」

殿?」

は小さく笑った。

「名前で呼んでくれたなぁ…って思って。ずっとあんたって呼ばれていたから。これはちょっと嬉しいぞ」

見た目よりずっと面倒見がよくて、優しい人なのかな?って思った。
だから、次があるなら楽しみだ。








19/12/30再UP