負けずに。


ドリーム小説
ずるい。って自分でも思うけどね。
相手が誰だろうが負けたくないからなんだよ?





「信之さま、質問いいですか?」

武田家に世話になっている
いつも周りが良くしてくれるので不満はない。
別に信玄公の娘ではないのだが。

今日はある事を思って行動してみた。

「ん?なんだい?」

武田家に仕えている真田信之。
真田家は祖父の代から武田に忠義を誓っている。
幸村の兄という顔が強く感じるが、から見ても「お兄ちゃん」と言う感じがする。

「信之さまは、お館様とユキさんと、私。一番大事なのは誰ですか?」

笑顔で問いかけたに対し、一瞬信之は呆けるがすぐさま笑った。

「難しい事を聞くんだな、は」

「聞いてみたいと思ったからですよ?」

「そうだな…の望む答えになるかはわからないけど…」

くだらない。と切り捨てるわけでもなく、信之は答えてくれた。

「それぞれ立場が違うだろう?だから誰が一番とは選びにくいな。私としてはお館様の天下の為ならば真っ先に動くだろうし、幸村は大事な弟だ」

信之はの頭に手を置き、数回撫でた。

は異性の中では親しみやすく、一番大事かな?」

「無難な答えですね〜」

「ははっ。気にいらなかったか?」

はかぶりを振る。

「信之さまならばそう答えそうだなって気はしていましたよ」

想定内という奴だ。

「それに異性の中で。と言っても、信之さまから見れば、きっと私はユキさんと同じような家族的な意味合いの大事だと思うから」

それに関して嫌だとは思わない。
自身、信之に「お兄ちゃん」のようなものを向けているから。

「妹みたいな。って思ってません?」

「否定はしないよ」

「ありがとうございます。信之さまみたいなお兄ちゃんがいたらいいなって私も思っているんで」

信之は笑う。

「だったら、なぜこんな事を聞いたのかな、は」

は少しだけ唇を尖らせた。きっと信之はわかっていて聞いているからだ。

「お宅の弟さんの所為なんですけどね」

「それは困ったな」

「相変わらず鈍いんですけど、ユキさんは。もう天然ですよ、あれは」

信之は腕組みをする。

「昔から一直線な奴なんだが…そんなに鈍いだろうか?」

「恋愛に関しては」

「手厳しい」

昔から武芸に励んでいた事もあるし、何より尊敬する信玄公の為に頑張っている事もある。
兄信之と共に真田の為にと言うのもある。
恋愛なんぞに興味はない。という感じだろう。

「同じ質問をユキさんにもぶつけてみようと思うんですよね」

「同じ質問を?幸村では即答もできないだろうし、悩むに悩むだろうな」

「そうですか?割とあっさりお館様です!とか言いそうですよ」

否定はできないと信之も思ったようだ苦笑している。

「私、同じ質問をお館様にもしたんですよ」

「お館様に!?」

本来ならば恐れ多い事だと思うし、に深い意味などなかろうが信玄公に対しては失礼極まりないと事だ。
だが、信玄公は頭の切れる人だ。の意図にあっさり気づいて話に乗ってくれた。
とりあえず、信之と幸村と私。一番大事なのは誰ですか?と聞いてみた。

「お館様は私が一番だって言ってくれましたよ〜」

羨ましいでしょ?とは信之に自慢げに言う。

「あぁ、羨ましいね」

「理由が単純でしたけどね」

「?」

「信之と幸村は可愛くない。可愛いが一番じゃよ。って」

信玄公のちょっとした茶目っ気だ。
それも信玄公らしいと言えばそうなのだが。

「それで?幸村にも聞いてみて、納得できない答えならばどうするんだ?」

「どうしましょうか」

深く考えていない。
多分、幸村は焦るだけ焦って答えを出さないような気もするし。
くだらない事を聞かないでください。と一蹴されてしまうような気もする。

「悩んでくれるだけマシかと思うんですが」

一番の確率はあっさり「お館様です」と答える事だから。

「ちょっとでも、私の事を意識してもらいたいな。ってだけです。ユキさんの周りには綺麗な子とか可愛い子とか多いですから」

幸村に向けている目の事だ。

「もちろん。信之さまも多いですけどね」

真田兄弟があこがれの的だろう。

「ま。信之さまの方が手馴れてもいるんでしょうけど」

「こら」

悪戯っぽく言うに対し、信之はの額を軽く叩いた。

「だが、実際はどうなんだろうな。幸村の答えが」

にしてみれば、悩むことなく先の答えが出るだろう。
そうして二人で話をしているところに、噂の幸村がやってきた。

「兄上!」

兄を見つけて嬉しそうにやって来た。
そんな風にには見えた。

「案外、兄上です!って言いそうですね」

「そうか?それはそれで嬉しいが、少し複雑だな」

笑う信之。

「どうした?幸村」

「いえ、実は…殿?どうかされましたか?」

「別に」

きょとんとした顔の幸村に対し、自分の事など気づかれずにいたは面白くない。
だから、その視線を幸村は感じたのだろう。

「はい!ユキさんに質問です!」

はわざわざ手を上げる。

「私に?」

「ユキさんは〜お館様と信之さまと、私。誰が一番大事ですか?」

まぁどうせ。三択というより二択だろう?とは思っている。
今の幸村を見ていると、主以上、兄以上の存在なんていないだろうなと。
それでも、に対し傷つけまいとして、どう答えるべきか沢山悩むのだろう。
そして。

殿ですよ」

「へぇ、やっぱり…って、え!?」

今度はが面食らう番だった。

「わ、たし?」

「はい。殿です」

予想外の答えには、自分で質問していて顔を真っ赤にしてしまう。

「や……えと…」

「良かったじゃないか、。一番で」

信之がの肩に手を置く。

「き、気を遣わなくてもいいよ?本当はお館様なんだよね?ユキさん。それか信之さまで…」

「いえ、気を遣ったわけではないです。私にとって、殿はお守りすべき一番大事な方です」

それは普通信玄公に向けるべきものではないか?
それとも守り役という意味の存在か?
あぁ、それとも戦えない民衆代表みたいな?

それでも、幸村に思ってもみない返事を貰えたは、嬉しさと恥ずかしさも交じって顔だけでなく、耳も、首も真っ赤になってしまう。

「では、私も殿にお聞きします」

「は、はい?」

「お館様と、兄上と、私。殿にとって一番大事な方はどなたですか?」

「!!?」

信之には幸村の反応を見る為、少しでも自分を意識してくれたらいいな。と話してみたものの、まさかの反撃にはたじろいでしまう。

「え、えと…」

魚みたいに口をパクパクさせてしまう
面と向かって「ユキさんだよ」と言えなくて。
ちらっと横目で信之を見れば、楽しげに笑っている。きっと助け船も出してくれないだろう。

殿?」

「………………………………キ、…さん、です」

蚊の鳴くような小さな声でが呟くも、幸村に聞こえず、彼は聞き返した。

「はい?」

「ユ、キさんだよ!!」

勢いでは口にするも、恥ずかしくなって逃げ出してしまった。

「やーん、もう!なんなの〜いつものユキさんなら絶対言わないと思ったのに〜」

駆け出しながらは喚く。
幸村の意識を…なんて言いつつ、きっとどこかで、まだそんな答えを知りたくなくて。
困惑する幸村を見て、そのやり取りを楽しみたいだけだったのかもしれない。

「明日からユキさんにどんな顔をして会えばいいわけ〜」

嬉しい結果なのに、恥ずかしさの方が上だった。





「しょうがないな、も」

逃げて行ったの後姿に信之は苦笑する。

「幸村?」

まさか弟がサラリと答えるとは信之自身も思っていなかたわけで。
その弟に目を向けると、彼は口元を押え、しゃがみこんでいた。

「どうした?」

「あ、あああ兄上…、殿は…えと、あの……」

「ん?」

信之もしゃがみ、幸村の顔をのぞきこめば、弟はと同じくらい顔を真っ赤にさせていた。

「い、今頃になって、恥ずかしくなってしまって……あと、不安で……」

信之は弟の頭を撫でる。

「お前もしょうがない奴だ」

幸村にしてみれば、余裕を見せたかったのかもしれない。
けど、実際は超が付くほど緊張しまくっていたに違いない。

「良かったな。の一番がお前で」

「は、はい…」

「ちなみに、はお館様と私にも同じ事を聞いてきたんだ」

幸村は顔を上げる。

「答えは私もお館様もだと答えたぞ。さぁ、どうする?幸村」

「こ、こればかりは、兄上にも譲れません!」

「そうか。ならば、今すぐにを追いかけた方がいいな。このままだとお前達、互いに逃げに回るだろうからな」

「あ、ありがとうございます!」

礼を言われるのは変な話だが、幸村はしっかりと立ち上がり、の後を追った。

「本当に困った弟妹だ」

信之は小さく笑う。
信之にしてみれば、二人とも大事な家族には違いなく、二人の背中を押すのも兄の役目だと思ったのだから。








19/12/30再UP