いい男?



ドリーム小説

「もちろん、それは関索が一番なんだけどぉ。いい男ならば結構いるよね」

鮑三娘が人差し指を己の顎につけて言った。

「えぇ!一番なのは周瑜さまだよー」

異を唱えるのは小喬。

「ほむ!それなら父上だって負けておらぬぞ!」

ガラシャだって負けてない。

「いい男の条件が人によって違うのは仕方ないけど、どっちもまだまだって感じじゃない?そこはほら、ちょい悪親父、渋いうちのお館様には敵わないと思うんだけど。かぐちんはどう思う?」

甲斐がかぐやに問いかける。

「え?わ、私にはちょっとわからないですけど…」

「じゃあ。稲と尚香は?あ…あんたらも出る答えが決まっていそうだけどね」

甲斐は話にならないと呆れた。

「ちょっと!それは酷くない?そりゃあ玄徳様が一番かな?と思うけど、うちの父様や兄様達だっていいところは行くと思うんだけど」

「稲は父上よりも……さまが…」

「え?何?稲ちん」

口ごもる稲にくのいちが問い返すも稲はなんでもないとかぶりを振った。

「誰も意見がかぶらないのはすごいね。いや、確実に二票入る人はいるか」

がくのいちに「ね」と同意を求めた。

「え、?」

くのいちは若干引きつっている。

「もう。わかっている癖に。私とくのちゃんの意見としてはやっぱりユキさん押しでしょ?」

「え?あーにゃははは〜まぁ、そうかもしれないけどねぇ」

「でも結果的に誰とは決められへんのやね。まぁいい男はんが仰山おるのは確かだし」

阿国が仕方ないと笑った。
年頃の女性たち。会話の内容は誰が一番いい男なのか?という事だ。

「だよね。沢山いるよね。タイプも色々だし…趙雲さんとか姜維さんとか…」

「渋め路線ならば夏候惇殿とか!」

「可愛い系なら関平ちゃんもええねえ」

「性格抜きなら曹丕や三成とかいいんじゃない?」

男性陣が聞けば、余計な話だと思うだろう。
妖蛇が世界を滅ぼそうとしているのに、何呑気な事をと思っているかもしれない。
だけど、逆に自分達だってそんな話しているんじゃないの?と思っている女性たちでもある。
まぁ中には真面目にそんな話をしない人もいるだろうが。

「抜きんでているのは、趙雲さんっぽいなぁ」

「あーわかる。爽やかで、強くて、優しくもあるし。忠義に熱く、部下からの信頼も高い!」

「ユキさんだって似たようなものだと思うけどな…」

にしてみれば、趙雲と幸村は似ているではないかと思う。
だけど、すぐさま。

「ユキさんの方がちょっと真面目で頑固かも」

と言ってしまったので、みんなが笑った。





結果的に話はまとまらなかった。
自分の夫が、彼氏が、父が、上司が、好きな人が一番だと思うから。

「でもでも。ユキさんも負けていないと思うんだけど?」

「や…わ、私などはそんな…」

こんな話をみんなとしたの。とはあっさり幸村に話した。
恐らくこんな話をしているのはと三娘ぐらいだろう。
いや、小喬もしていそうだ。

「この中で一番のいい男ってね…」

などと聞かされた幸村にしてみればたまったものではないだろうが。
現にどう反応していいのか困っている。

「現時点では趙雲さんが一番かな?って話ではあるんだ」

「そ、そうですね。趙雲殿ならば問題ないかと」

「もう。ユキさんだって負けていないって言ったでしょ?趙雲さんと色々似ているのに」

「いえ。私など趙雲殿に比べたらまだまだ若輩者です。趙雲殿に似ているなど恐れ多い…」

真面目だなぁとは思う。

「じゃあ。ユキさんから見てこの人が一番いい男だと思う人いる?趙雲さんは別として」

「それはもちろんお館様だと!」

そこではっきり言い切る幸村には笑ってしまう。

「そうだね。お館様は素敵だと思うけど、一番大事な顔を隠しているからダメだね」

「え…ですが、内面の事を思えば」

「内面も含めてだろうけど、まずは顔だよ、顔。お館様のお顔誰も知らないからね」

だから趙雲が現時点でトップなのだとは言う。

「ま。いい男の最初の基準は顔だよ、顔」

彼女らの話に出て来た人たちは皆顔がいいと思っている。
出てこない人達の中にも沢山いるだろうが。

「というか、こんなにイケメン多くてやんなるね、ここって」

「はぁ…」

「この前さ、仲間になったステルクさんも割とカッコイイと思うんだ。けど、姫にしか反応しないよね。折角のイケメンなのに、どこか残念なんだよね」

詳しくは姫だかお嬢様だか知らないが。

「って思うとやっぱり私はユキさんが一番だと思うんだけど?」

、殿…か、からかうのはやめてください」

「えー?からかっていないよ?ユキさんが一番いい男だと思うってだけじゃん」

「わ、私などはまったく、そのような事はないと思います」

幸村は顔を赤くしかぶりを振る。
そんなに否定しなくてもいいのにとは思ってしまう。

「もっと自信持っていいんだよ?ユキさん」

「い、いえ」

「ユキさんはカッコイイよ。私の好きな人だもん」

「そんな、私などは…え?」

幸村は動きが止まる。

「あ、あの…殿」

「なぁに?ユキさん」

ん?と幸村の顔を覗き込む

「………え、えと…なんでもないです…」

「そう?」

しょうがないなぁとは後ろ手に回して歩き出した。





「って事を話したんだけどね。ユキさん全然ダメ」

飯店で甲斐とお茶をしていた

「あんたね…よく面と向かって言えるわね。幸村様の性格じゃそうでしょうね」

「けどさぁ…ユキさんカッコイイよ?いい男だよね?」

「まぁね」

出してもらった桃を一口食べる。
世界は混沌としているが、食べ物はまともなものが多くて助かる。
たまにここで行われる宴もおかげで盛り上がっている。

「趙雲さんとユキさんって似ているのにねぇ」

「似ているかしら?」

「似ているよ。得物は同じ槍でしょ?優しいし、爽やかだし、丁寧な物腰だし、主君に忠実な所も、部下思いな所も。でもって戦では熱い人でもあるし」

一つ一つ趙雲との共通点を上げていく

「けど、幸村様の方が真面目で頑固なんでしょ?」

趙雲だって真面目な人だろうが、から見ると幸村の方がお堅いらしい。

「そ。同じことを趙雲さんにも言ってみれば反応が違うから」

「そう?似たような感じするけど」

「趙雲さんはね、普通にありがとうございます。ってお礼を言ってくるよ」

「……うわ。なんか想像ついたわ」

幸村は違うと否定をするけど、趙雲は否定はしないけど肯定もしない。
自分にそう言ってくれた事に対してお礼を言いそうなのだと。

「あとね、ユキさんは鈍いの」

「あらま」

「私が好きな人なのにね。って言っても、特に反応ないし」

「でも。そんな幸村様が好きなんでしょ?あんたは」

うりゃ。と甲斐に頬を突かれる
は口角を緩めて笑う。

「うん。そう。ユキさん大好き」

「はいはい。他のいい男達に目移りする事ないもんね、は」

「当然。だってユキさんが一番だもん」





「おや。どうかしたのか?幸村殿」

趙雲が木箱の上に座り込みぼーっとしている幸村に声をかけた。

「趙雲殿…いえ、別に」

「別にと言うには様子が変だと思うのだが…顔が赤いな、幸村殿、具合でも悪いのではないか?」

「い、いえ。そんな事はないです」

でも赤い。
変だと趙雲は思う。

「ただ…」

「ただ?」

「私は鈍いですか?趙雲殿」

真面目な顔で聞いてきた幸村に趙雲は困惑する。

「でも。大好きなんだそうです。これは良い事だと受け取っていいのですよね!?」

「ゆ、幸村殿?」

突然どうしたのだ?と幸村を落ち着かせようとする趙雲。
ふと彼の耳に届いた声。

「甲斐ちゃん。これも頼もう。美味しそう〜」

「もう太っても知らないわよ、

「じゃあ、甲斐ちゃんは食べないんだね?」

「食べるわよ」

ここは丁度飯店の裏側で、店の中と言っても、野外とほぼ変わらないようなものだ。
そこから楽しげに話し、食事を楽しんでいると甲斐の姿を確認できる。

殿と何かあったのだろうな、幸村殿は)

普段冷静な幸村に変化を与える事ができる者など限られている。

「幸村殿。私達も中で食事でもしないか?」

「え?趙雲殿?」

「ここで待つよりいいと思うぞ」

彼女らの食事に自分達も混ぜてもらおうと趙雲は幸村を引っ張っていくのだった。








19/12/30再UP