暖か、麗か。




ドリーム小説
あーもうすぐ2月14日だ。
今年はどうしようか。
そんな風に考えるのが楽しくてしょうがない。
外は冷たい風が吹いて寒いけど、何かいいものはないかな?
って探しに行くのが楽しい。

ここではバレンタインなんてものはない。
当然といえば、当然なんだけど。
他の誰も知らないイベントだし。
大体世間に広まったのも、時代の流れで言えばつい最近になると思う。
でも、私が居るのはそのつい最近の時代ではないから。

ここは戦国時代。
鎧着て、槍だ刀を振り回して斬りあう時代。
天下を己にと野望渦巻く世界。

・・・・・っていうと物騒だけど。
今は秀吉様が治めているので、皆が笑って暮らせる世になっている。
おかげで比較的穏やかに暮らせている。

私がそんな時代に居る理由とかは、まぁいいとして。
去年初めてバレンタインの贈り物をしてみたんだ。

お世話になっている秀吉様と利家様に、みっちゃん、兼続さん、慶次さんに左近さん。
ちょうどこっちに来ていた政宗くんや家康様や稲ちゃんのお父さん忠勝様にも。
男の人だけでなく、ねね様や阿国さん、稲ちゃんにもやったっけ。

でも、一番に渡したかった人には、皆とは違ったものを。
特別に贈った。


ユキさんに。


大好きな人だから。
他の人とは違う、特別なものにしたくて。
いわゆる、本命って奴。

でも、私ってば意地っ張りっていうか、素直じゃないっていうか、照れとかあったから。
皆と同じみたいに「いつもお世話になっているから」なんてとってつけたような理由でさ。

ユキさんは笑顔で「ありがとうございます」なんて言って受け取ってくれたけど。
あとで、みっちゃんから「馬鹿か貴様は」なんて延々と嫌味を言われたっけ。

でも仕方ないんだよー?
ユキさんに気持ちを伝えたいって思う反面、今のままでもいいなと思う気持ちもあるんだから。
ユキさんの隣はすごく居心地がいい。
穏やかになれるし、何より笑顔で居られる。
一緒に見る景色が、ユキさんと一緒ってだけですごく特別に。素敵に見える。
だから壊したくない。
壊れてしまうと思うと怖い。

それに、ユキさんが私に優しいのは、亡き御館様に言われたことをずっと守っているからだと思う。

御館様かー。
御館様にも何か贈りたかったなー。
チョコレートってのはないけど、御館様にも沢山の感謝の気持ちを込めて。
なんで、あの頃はバレンタインをやろうって思わなかったのかな?
やればきっと楽しめたのに。
御館様でしょ、信繁様に、信廉様。原様に高坂様、山県様・・・。
そしてきっと大本命になっちゃうのは幸隆様。
んー。御館様も大本命かな?
お二人には本当すごく可愛がってもらったもの。
感謝の気持ちはあるけど、恩返しすることができなくて、今頃へこむなんて・・・。

「おぉ殿ではないか」

「なんだ、間抜け面でふらふらして」

兼続さんとみっちゃんだ。
っていうか、間抜け面は余計だっつーの!

「みっちゃんこそ、何してんの?あれ、左近さんがいないってことは、仕事から逃げたの?悪いなー」

今頃左近さんは必死に探しているのかもしれない。
そう意地悪を言ってみるも、手にしている扇子で頭を叩かれた。

「お前のような奴と一緒にするな。左近は別件で今不在なだけだ」

今は兼続さんとのんびり散歩をしていたらしい。
兼続さんが急に何か菓子が食べたいとか言って。

「ふーん・・・・じゃあ、ユキさんは?」

いつも3人でいるのが当たり前なのに。

「幸村は一人でどこかに行った。何か考え事があるらしい」

「ふーん」

「幸村がいなくてつまらぬか?遭遇したのが我らで悪かったな」

鼻でみっちゃんに笑われたような気がする。

「別にそんな事言ってないし」

「それよりも」

それよりも?

「お前、今年も用意しているのか?バテレンがどうのという奴を」

バテレン?・・・・あぁバレンタインか。気づくのに時間少し時間かかったよ。

「まだ用意はしていないけど、考えてはいるよ。それがなに?」

「他の奴らのことはいい。幸村一人に絞れ」

「なっ!なな、何を言うのさ、みっちゃんは!!」

絞れって、なんか私が愛情と言う名の愛想を撒き散らしているような物言いじゃないか。

「ひどい、みっちゃん!」

「酷くない。幸村に渡したいが為に、隠れ蓑で俺達にもよこすのだろう?それを止めろと言うのだ」

「隠れ蓑だなんて思ってないよ。お世話になったからって気持ちでやっているもん」

思わずみっちゃんとにらみ合いになってしまう。
町中で邪魔だろうなとは思っても、みっちゃんお言い草には我慢ならないから。
だけど、兼続さんが割って入る。

「まぁまぁ。殿の気持ちは我らも嬉しいが、幸村はあのような奴だ。
恐らく真の意味などに気づきもしないだろう。だから幸村だけに渡せと三成は言いたいのだよ」

「真の意味・・・」

「そのばれんたいんというもののことは、我らにはよくわからぬものだろう?
殿は、渡す相手によっては意味が違うと教えてくれたではないか。本命と義理であったか」

三成は心配してくれているのだ。そう兼続さんが自慢げに言うので、みっちゃんが慌てる。
なんかその姿はすごく面白い。
だけど、兼続さんはみっちゃんが誤解を受けないように言っているんだよね。
本当、皆優しいよね。

「でも、皆に感謝しているし。私にできることってこれくらいだし」

「その気持ちだけでもありがたい」

義理であろうと、そういう気持ちがあるのは嘘じゃないんだ。
でも、みっちゃんも兼続さんも。

「くだらないな」

「三成!」

「私にできること。などとお前は言うが、俺達は別にお前に何かしてもらおうなどとは思っていない」

余計なお世話ってことなのかな?
なんかショックだ・・・
けど、みっちゃんの肩を兼続さんが少し強めに叩く。

「三成。そのような言い方ではわからぬぞ。殿、三成はそのように気にすることはないと言っておるのだよ」

「か、兼続!俺は別に」

きょとんとしてしまう。
つまり、お礼とか感謝とか考えずに・・・。

「普通にそばに居ていいってこと?」

「うむ。その通りだ!」

「兼続!!」

満面の笑みの兼続さん。珍しく顔を赤くしてバツが悪そうなみっちゃん。
うーん。すごいなぁ。私は悪い方向に考えちゃったのに。
兼続さんにはみっちゃんの真意ってのがちゃんと伝わっているんだ。

「な。だから、殿。わかったであろう?」

「え?」

「幸村に気づいて欲しいのならば、今回は我々へなどとは思わず、幸村一人へ贈るべきだということだ」

話が元に戻っている。
すごい。
兼続さんがすごいのかな?これって。
それとも私へわからせる為にみっちゃんがそういう道筋を立てたのかな?
どっちにしても二人の連係プレイって感じがして、すごいとしか言いようがない。

「でも、私は皆にも贈りたいですよー」

「うむ。では、翌日にそれを頂くとしよう。当日は幸村へということで」

兼続さんに決定事項として押し切られると嫌って言えないんだよね。
みっちゃんも押し黙ることあるし、現に今、話に挟めなくて口を閉じちゃっているし。
納得できたような、できないような気もするけど。
なんとなく、二人から応援されているような気がして。

「わかりました。皆には翌日ってことで」

そう言って、私は二人と別れた。
ユキさんに喜んでもらえるようなものを探そうと思って。


・・・・って。二人の話っぷりじゃ、私はユキさんに告白しなくちゃいけないみたいなんですけど?


気のせいだよね。


うん、気のせい、気のせい。





「あぁは言ったものの、に幸村の気持ちがまったく届いていないという事実が腹立たしいな」

フンと鼻を鳴らした三成。
軽快に走っていくの後姿を見て言ったことだ。
その隣の兼続はいいではないかと笑う。

「幸村の態度にも問題はあるからな」

「しかし、これは余計なお世話という奴ではないか?」

「そうか?後押しをしてやっただけだと私は思うが」

二人がこんなことをしたのには理由がある。
のため。とは言っているようではあるが、どちらかと言えば幸村のためであるのが大きい。
左近だったか、慶次だったか覚えてはいないが、去年から贈られた菓子について聞いた話。
「ばれんたいん」と言うものには好いている相手に贈るという本命と、お世話になっているものなどへ贈るという
義理というものに別れるそうだ。
自分たちはその義理であることに不満があるわけではないが、幸村にはどうも本命として渡された意識がないようだった。
殿の本命とはどなたなのだろうか?などと考え込む始末。
鬱陶しい!と三成は一蹴するのだが、戦とは違ってのこととなると、どうも後ろ向きの考えにとらわれてしまう幸村。
本命、義理とが分けるから悪いのだと三成は思って、だったら義理など渡さなければいいのでは?
と兼続が提案したのだ。

「大体、幸村もなぜ気づかぬ。去年俺達が貰ったものと、あいつが貰ったものではどう見ても扱いが違うだろうに」

「同じものと思ったのではないか?」

が素直に言えばいいものを。世話になったからなどと理由をつけて」

「素直。などと・・・・三成には言われたくないだろう、殿も」

さらりと言った兼続に言葉に三成は何も言い返せなかった。

「まぁ。あとは幸村次第だ。あれがちゃんとすれば問題なかろう」





ユキさん一人に。とは兼続さんたちに言われたけれど。
今年も去年と同じように「お世話になったから」って理由をつけてユキさんに渡しそうだなぁ。
あれから色んなお店を見て、探し回ったけど、結局ユキさんの大好きなお店のお団子にしたんだ。
チョコレートがないからね、ここは。
それと、いつもと違う。特別ってのを出したくて、バック。巾着袋っていうのかな?
いいなって思った男性用の巾着があったからそれにした。
信玄袋っていうもので、御館様が持って使っていたからそういう名がついた袋らしいんだけど。
私が選んだのは黒字に点々と模様がついたもの。
すごく渋い。
ユキさんみたいな若い男性が持っていても、というかユキさんなら似合うなって思ったもので。
お休みの時に、出かける際に使ってくれればいいなと思った。
去年はお菓子に奮発して特別っぽさを出してみたけど。
あんまり効果なかったみたいだし、プレゼント付きなら、ユキさんも気づいてくれるかな〜

って。
みっちゃんや兼続さんに言われたりしたけど、今年もどうかな。
余計な理由を作って渡しそう。
結局怖いからなんだけど。

私がユキさんに振られてしまったならば。
ユキさんは優しいから無理をしてでも気を使うんだと思う。
私とぎくしゃくしないように無理にでも笑って・・・。

正直ユキさんにそんなことをさせたくないし、その優しさは酷だと思う。

・・・・・どうしても悪い方向にしか物が考えられない、自分が嫌だな。
情けないと思うし。
みっちゃん辺りに馬鹿呼ばわりされるんだ、きっと。

「あ。殿、ちょうど良い所に」

「ユキさん。な、なに?」

ユキさんに手渡そうと思っていたのに、ユキさんに呼ばれるとは。
思わず持っていたプレゼントを後ろに隠してしまった。

「その・・・・殿にお渡ししたいものがありまして・・・」

「私に?」

はて?ユキさんが私に?私の誕生日はまだなんだけどな。

「どうぞ」

と。ユキさんが差し出してくれたもの。

「うわっ。可愛い!籠巾着だ」

赤い絹。桃色に青色の梅かな?それが描かれていて。
振袖っぽい着物で作られたかのような籠巾着。
冬場の今持つにはちょうどいいもので、すごく可愛い。

「可愛い〜。本当可愛いよ。本当、どうしたの?ユキさん・・・・あれ、中に何か入っている?」

ちょっと重く感じた。
新品のそれにしては。

「開けてみて下さい」

「うん・・・・箱?」

ユキさんに言われるままに籠巾着を開いてみれば、さらに箱が入っている。
蓋をあけてびっくり。

「あ〜可愛い〜!これ、練りきりだよね?」

こなしに椿にきみしぐれ、一口サイズのお饅頭まで入っている。
食べるのが勿体無いって思える可愛さ。
なにこれ、なにこれ。
ユキさんの顔を見れば、ユキさんは少し照れた顔をして、それでも優しく笑んでいてくれる。

「その・・・去年。殿が、お世話になっているからと、お菓子をくださいましたよね?」

「あぁうん。バレンタインでね」

「私はその後、お返しもしておりませんし・・・」

「え。いいんだよ、お返しなんて。私が好きでやっているんだもん」

そっか。ホワイトデーのことは話さなかったしね。知らないのは当然だよね。
というか、ユキさん。一年前のそんなこと律儀に考えてくれていたんだ。
お返しのことなんて、正直誰も言ってこないのに。

「いえ。そんな・・・・頂けた事、私はとても嬉しく思いましたし」

「そ、そうなんだ。あは、そう言ってもらえて私も嬉しい、かな」

なんかこっちも照れちゃうな。

「だ、だから!こ、今年は私が殿に先に贈ろうと思いまして・・・あ、いえ」

「私のこと驚かせようと思ったんだ。あはは、うん、確かにびっくりしたかな」

「そ、そうではなくて」

違うの?

「ば、ばれんたいんと言うものは、日頃世話になっている方々へ贈る物であるとお聞きしました」

「うん。そうだよ。でもそんなんユキさんが気にすることないのに」

私の方が世話になりっぱなしなんだしさ。

「で、ですが。それ以外にも、意味があるのだと。け、慶次殿が教えてくださって」

あ、うそ。
慶次さん、本命と義理の話しちゃったんだ。
去年、慶次さんに渡した時に言われたんだよね。ユキさん以外の人にあげてもいいのか?って。
その時は軽い気持ちで「本命と義理があるんで」なんて言っちゃったけど。
慶次さん、ユキさんにわざわざその違いを教えちゃったのか。
ということは義理です。って今明言されちゃうの?

「一応、あるね。いいよーユキさん。義理でも気にしないよ?」

自分で言っていてへこむけど。
むしろ義理にしては豪華すぎる代物だと思うけどね。

「ち、違います!義理などではありません!!」

「え?」

「こ、これはその」

ユキさん顔真っ赤。
貰った籠巾着も練りきりも可愛いけど、一番可愛いのはユキさんだ。ってぼんやり思っちゃった。

「私があなたに・・・・義理ではなく、本命として贈りたいと思ったからです」

「ほ、本命?わ、私が?」

「はい。殿が」

ユキさんは深呼吸をする。

「ばれんたいんと言うのが、好いている方へ贈り物を、想いを伝える日ならば。
女性からではなく、男性から・・・私から殿へ贈ってもいいわけですよね?」

息が止まりそうになった。
すごく信じられない言葉を聞いたと。

殿?」

「え、あ・・・ほ、本当?ユキさんの言っていること・・・」

「嘘偽りを申すつもりはありません」

ユキさんが私に向ける眼差しがすごく優しくて。

うわっ。

いやだ。

すごく、ドキドキする。

殿。あなたをお慕い申しあげます」

目をギュッと瞑ってしまった。

、殿・・・?」

信じられなくて。
ユキさんが、私を?って。

でも、すごく嬉しくて。

夢なんじゃないかなって思えるくらいで。

ユキさんは優しいから。
御館様が言った、私のことを守ってくれって言う言い付けを、律儀に守ってくれているんだって思って。

瞑った目を明けたら、一緒に涙が出ちゃった。

殿!あ、あの。わ、私の言ったことが、不愉快でしたか?そ、それでしたらなんとお詫びを」

「違う。違うよ。不愉快だなんて思わないよ」

いきなり泣けば、びっくりするよね。
私は涙を拭う。
できるだけ、笑顔をユキさんに向けて。

「嬉しかったからだよ。ユキさんにそう言われて」

殿」

ホッとしてくれた?
驚かせてごめんね、ユキさん。

「ありがとう。ユキさん。私すっごく嬉しいよ」

私もユキさんに贈り物があるんだ。
後ろに隠したそれを取り出す。

「考えていること同じだったのかな?はい、ユキさんに」

ユキさんに信玄袋と包みに包んだお団子を渡す。

「ユキさんに似合いそうだなって思って」

「私にですか?ありがとうございます。殿」

「私も。同じだよ、ユキさん」

「え?」

怖いから告白しない。なんて数分前の私はどこに行ったんだろう。
今は早くユキさんに、私の気持ちを知ってもらいたい。
同じ気持ちだったんだ、私とユキさん。
でも遠回りしたなんて思わない。
隠していた時期も、ユキさんと一緒に居られて楽しかったし。

「ユキさんのこと。好きです。ずっと、ずっと。好きでした」

ユキさん。
あとで一緒にそのお団子と練りきり食べよう。
それで、私が籠巾着を持って、ユキさんが信玄袋を持って、一緒にどこかに出かけよう?
きっと、今までよりもずっと、ずっと楽しいよ。








09/02/09
19/12/30再UP