今は。



ドリーム小説
一度は乱れた豊臣の天下も、今再び落ち着きを取り戻していた。
は前田夫妻が後見になってくれていることもあり、今は夫妻の下で暮らしている。
たまに、利家の妻松とねねに会いに行ったりしている。

政はにはよくわからない。
まだ幼い秀頼には自ら関わる事ができないので、そこは五大老である利家や、五奉行の三成などが中心になっている。
警護の面でも、清正がついているので大丈夫だろう。

!土産持ってきたぜ〜」

「ありがと。でも、いつも食べ物なんですけど?馬鹿兄貴達は…」

今日も三馬鹿兄貴が利家の屋敷にやって来た。
忙しいだろう彼らは、互いの休みが重なれば決まってに会いに来る。
大方正則が清正と三成を無理やり引っ張って来るのだろうなとは思っている。
関ヶ原の合戦後、3人が会いに来てくれた時も、正則が引っ張ってきたそうだ。
早く3人でいる姿をに見せたいからと。
もう気にしなくてもいいと思うのだが、正則はやけにそこに拘っている。
正則自身が仲違いしてしまったのを一番気にしているのかもしれない。

「食べ物だと不服か?お前に一番似合いの品だと思うけどな」

「清正。酷い。もう少し乙女心ってものを考えなさいよ」

「乙女心って誰が?似合わねー」

「正則は絶対モテないよね」

はふて腐れ気味に言うも、これもいつものやり取りだと内心楽しんでしまう。

「乙女心についてはいつも甲斐ちゃんと話すんだよ」

「……一番縁遠い奴の名前が出たな」

「みっちゃん、甲斐ちゃんに蹴り飛ばされるといいよ」

「乙女とかいう奴がそんな事をするのか」

呆れた三成には乾いた笑みを浮かべる。

「でも。甲斐ちゃんって可愛いと思うけどなぁ…あ、カッコ可愛い。そんな感じ?」

「どんな感じだよ。こえーよ、あいつ」

正則は身震いをする。
戦場で何度か対峙しているらしい。

「え?でもさ…おねね様みたいじゃない?カッコ可愛いって」

「おねね様とあの猪女を一緒にするな!」

清正には二人を同じようにしてもらいたくないようだ。

「相変わらずだね。清正のおねね馬鹿」

「これだけは、一生変わらないだろうな」

「そんな清正の嫁になる奴は苦労するだろうなぁ」

、三成、正則は言いたい放題だ。

「お、お前らな…って言うか、おねね様を猪女と同じ扱いにするが悪いんだ。どこをどう見ればあいつが乙女なんだ…ま、まぁ…おねね様は乙女と言ってもおかしくないが…」

「それこそ、こえーよ。清正…」

「いくつになっても女子は乙女心があるって言う意味だよ、きっと」

「どっちも怖い存在だな…」

にしてみればカッコ可愛い、素敵な友達なのだが。
戦場での甲斐の姿を見たことがないので彼らの言葉に首を傾げてしまう。

「でも…やっぱり似ているんじゃないの?おねね様と甲斐ちゃんって」

「どこがだ!!」

清正は本気で否定する。

「え…だって、秀吉様って割と甲斐ちゃんを気に入っていたよ。側室にしたいって話聞いたことあったし…」

三人は絶句している。

「だから、どこかでおねね様と甲斐ちゃんって似ているのかなぁ…って」

「秀吉様の趣味はわからんな…」

「単に気の強い女が好きなんじゃねぇの?」

「絶対、似てない。おねね様とは絶対似ていない…」

「三人とも本気で甲斐ちゃんに蹴られるといいよ」

本人が聞けば絶対そうなるだろうとは思う。
そして。

「そうね…どこまでも蹴り飛ばしてあげましょうか?三馬鹿」

「にゃははは。甲斐ちんを怒らせたら本当に怖いぞ〜」

甲斐とくのいちがやって来た。
に会いに来てくれたのだろう。家人に通されてみれば、好きかっていう面々がいたのだから、彼女の口角は引きつっている。

「げっ。猪女!」

「誰が猪だ!誰が!絶対蹴り飛ばす」

「やべ。逃げるぞ!」

「な、なぜ俺まで!!?」

「待ちなさい。三馬鹿!!」

甲斐が三人を追いかけ始めた。

「あーらら…困ったものだね」

「怪我で済めばいいけどね。甲斐ちん手加減しなさそうだし」

でも、面白いとくのいちは笑った。





「うちも随分賑やかになったもンだな」

利家がやって来た。縁側に座っていたの隣に利家も腰を下ろした。

「あ。すみません。利家様…」

「謝るなっての。楽しくていいじゃねぇか」

庭先で甲斐に追いかけられている三成達を見て利家は笑っている。
利家はよくても、松には叱られないだろうか?

も元気になったし。いい事尽くめだな」

「あ、ありがとうございます」

なんとなく気恥ずかしい。
利家がこれからは秀吉に代わって父親代わりだと言ってくれてから本当に甘えてしまっている。
秀吉にだってそんなに甘えていないのに。
そんなに感情を見せていないのに。

「ま。今はいいけど。この先あんまり兄貴達を心配させるようなことはするなよ?」

「……あれは…あの時だけです」

勝手に縁談を。の話だろう。
三人がわざわざ来てくれるのは自分を心配しているからなのだろう。
いつまでも経っても妹のような存在なのだろう、自分は。
だけど、そうして三人がそんな態度をとってくれているから、今の自分は笑えているのかもしれない。
少しだけ。
少しだけ、今までみたいにできていない事がにはあるから。

「あ。そうだ。くのちゃん。頼みがあるんだけど…」

「頼み?あたしに?」

甲斐とともに一緒になって騒いでいそうなくのいちなのだが、今日はのんびり構えている。
は思い出したと、くのいちに頼みごとをした。

「幸村さんの時間がある時でいいんだ。お話したい事があって」

「幸村様?うん。聞いてみるよ。急にどうしたの?あたしに頼まなくてもみっちゃんにでも頼めばよくない?」

幸村は三成の友人なのだから。

「まぁ、そうなんだけどさ。くのちゃんに頼んだ方が早いでしょ?」

くのいちは幸村の部下だ。
常に幸村のそばにいるのだから、それもそうだろうと彼女は納得した。

「で?幸村様にお話ししたい事って?」

「今度話すよ」

「なんか怪しいな〜まさか、は、みっちゃんから幸村様に乗り換えるのかな?」

「ち、違うよ!くのちゃん…って、くのちゃん。利家様の前で変な事を言わないでよ〜」

いつものような会話でも、流石に利家の前で恋話などできない。
しかも、この会話からはが三成に惚れていると勘のいい者ならば容易に気づく。

「…と、利家様…」

「お、おう」

どうやら利家はが三成に惚れている事を今知ったようで、かなり驚いた顔をしている。
父親代わりになってやるぜ!なんて言う利家だから。
そんな父親に娘の恋話を聞かせるのは妙に恥ずかしく感じた。
これが松ならば、まだ楽しく話をできそうなのだが。

「じゃあ。あたしは幸村様に話をしてくるね。って事でドロン!」

「あ!くのちゃん!?」

くのいちは舌を出して笑い、そのまま姿を消してしまった。

「え、えっと…」

利家は後頭部を掻く。

「ま、まぁ。なンだ…俺も秀吉みてぇに変な縁談は持ち込まないようにすっから安心しとけ」

「そ、それはお願いします」

「あ〜今後は軽々しく、俺に嫁ぐか…みたいな事も言わないから」

なんか顔から火が出そうだ。

「と、利家様…今まで通りでいいんです。変に気を使わないでくださいね。向こうは私を妹みたいにしか思っていないですから…」

「そ、そうか」

利家は娘を思ってなのか、の頭を二、三度軽く触れた。
想いが知られてしまった事は恥ずかしいが、利家なりに励ましてくれているようだ。






ある日。三成は珍しい組み合わせを見たと思った。
大阪城の庭で、幸村とが話していたから。

「………」

幸村の事は自分からに紹介をしたのだから、別になんら問題はない。
ないが、今まで二人だけでいる姿など見たことがなかったから。
最初は不安げな様子だった
幸村から何か言われると、その不安げな表情が一転し嬉しそうに笑っている。
そして、何度も幸村に頭を下げていた。

が心配ですかい?旦那」

「な!」

どこからともなく姿を現したくのいちに、三成は内心驚くも慌てる姿を隠した。

「何が言いたい。貴様」

「にゃははは。あたしの質問に答えてないですぜぃ」

の何を心配するのだ、俺が」

今のどこに心配をする要素があるのだ、馬鹿馬鹿しい。

「それはもう。が幸村様に靡いちゃったらって事ですぜ」

「くだらん。俺には関係ない話だ」

「……ふーん」

くのいちから冷めた目を向けられた。
だが、事実だ。
がどこの誰に惚れようとも、そんな事は自分には関係ないはずだ。

「だったら、いつまでも覗き見するような真似はやめればいいのに」

「誰が覗き見だ」

「実際。気になるから立ち止まって様子をうかがっているんじゃないの?」

「貴様。何が言いたい」

「別に…さぁて、あたしは気になるから二人の所に行って来ようっと」

くのいちは達にわかるように駆けだして行った。

「何が言いたいんだ、あいつは…」

自分は見ていたのは、たまたまだ。
珍しい組み合わせだな。と思っただけで。
それ以上の事はない。
幸村とがうまく付き合えているならばいいじゃないかと。

「…ふん。くだらん」

なのに。
何故だろう。
今、少しだけ面白くないと感じたのは…。








13/06/16
19/12/30再UP