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いつかは。
そんなお年頃ですなぁ…。 なんて事を最近耳にする。 どんなお年頃なのかと言えば。 「お前らいつも一緒だな。本当仲がいい兄妹に見えるぞ」 忙しいと中々顔を合わせることもない、と三馬鹿。 三馬鹿と言うと失礼な話かもしれないが。 だが、その反動なのか。ここ数日は4人で一緒に居る時間が増えた。 そんな4人に兄妹だと言ったのが、秀吉の友人前田利家だ。 秀吉が天下統一を果たす為に利家はかなり尽力した。 統一したのちも、秀吉のそばで今までと変わらずに力になろうとしている。 「お前ら兄貴ががっちり守っているから、中々嫁にいけないんだろ?」 利家は兄馬鹿もほどほどにしろと苦笑交じりで言う。 言われた三馬鹿…もとい、兄貴達は顔を見合わせた後、嫌そうな反応で返す。 「なんで俺たちの所為なんですか?」 「嫁にも何も、こんなじゃじゃ馬。嫁に欲しいなんて奴いねーと思いますぜー」 「それ以前に嫁に出せるほどのものじゃないな」 三成、正則、清正と次から次へと好き勝手に言ってくれる。 「3人とも酷くない?」 「本当の話だ」 「く〜自分らだって、お嫁さん一人もいない癖にー!三馬鹿が嫁を貰わないから私は心配して嫁にいけないだけだっての!」 「それこそ、俺たちの所為にするな」 清正などはねねを慕っているから、その気はまったくないだろう。 正則はどうだろう?案外一番早くに嫁を貰いそうだ。 三成は…。 (みっちゃんのお嫁さんか…) 妹分だと周囲にも思われてしまう。 家族と認識しているから、それは嫌ではない。 だけど、この先。 三成の隣に自分の知らない女性がいるのを見ることになったら…。 「まったくもー。好き勝手言って。いいもーん。そのうちいい男釣り上げてあげるからね! 三馬鹿がびっくりするような相手を連れてきてやる!それで盛大な祝言を挙げるんだから」 「うわー…無茶苦茶言うなぁ」 「正則に呆れられるほどなの?すっごく心外なんですけど」 「そもそも。そんな時期が来たら、お前ら男泣きするんじゃないのか?」 利家は傍観している立場だが、それが目に見えると笑っている。 「泣く理由がないですね」 「安心しちゃうよなーようやくかーって」 「ま。こいつを娶る物好きからいたらの話なんじゃないですか?」 「本当に、この三馬鹿は…こういう時ばかり気が合うんだから」 「行き遅れにならない方の心配が先だろ?」 「のあー!もう!煩い、三馬鹿!」 「馬鹿に馬鹿と言われる方が心外だ」 本心からは腹は立っていない。 別に自身。今すぐに嫁入りしたいなどと思っていない。 あくまで話のネタ。 今が楽しければいいだけの話。 「あーわかった、わかった喚くな、馬鹿」 「また馬鹿って言ったー!」 清正にわざとらしく突っかかる。 清正も苦笑しつつも、このやり取りが楽しいと思ってくれていると思う。 それは清正だけでなく、三成や正則も。 「その時は「その時は俺がを貰ってやるよ」 「へ?」 清正の言葉よりもはっきりとした言葉で利家が言った。 「前田殿?」 「なんだぁ?お前らのその面」 利家の発言に4人とも面食らっている。 「お前らがあまりに意地悪な事を言うしな。いいぜ、どうしてもって時は俺がを娶ってやるから安心しろ」 ある種の求婚にも思えたが、利家のノリのようなものを感じてしまうし。 もここは話に乗った方がいいと思った。 「利家様〜…売れ残らないと娶ってもらえないんですか?」 「あ〜そう言うわけじゃねぇけど」 「その前におまつ様って奥方がいるのに」 この時代、正室一人と言う方が珍しいので、側室が何人いようが問題ないだろう。 そんな事を言ったら秀吉はどうなると言うのだろうか? 「まつだったら。を気に入るだろうし。俺ら可愛がるぞ、絶対」 「それだと、嫁って言うより…お二人の子供って感じなんですけど?」 「あ。そうなるか…」 「けど、お二人の養子ってのは悪くないですよね〜」 生活は安定しているだろうし、両親にしても問題はない。 も二人の事は大好きだ。 だけど、嫁の話じゃ落ち着いていた正則が、急に慌てた。 「だ、ダメっすよ!は叔父貴とおねね様が可愛がっているんするから!」 三成達3人を兄と例えるならば、秀吉とねねは両親だ。 「そうだなぁ。まずは秀吉に相談しねぇとダメか」 「前田様。冗談はほどほどにしといてくださいよ?」 清正が呆れ交じりに言った。 まぁ。これも単なるノリでしかないのだろう。 *** 利家の申し出は冗談の延長だろう。 そう思うが、正直清正は驚いた。 本当だったら、あの場で清正は…。 「その時は三成にでも貰ってもらえ」 と言うつもりだった。 の気持ちを知っている清正なりに思ってだ。 ただ、言った場合。三成から酷く嫌そうな反応が出そうだ。 本気で嫌がるわけでなく、話のネタにされるのを嫌がりそうなのだ。 意外に利家からの申し出があるとは思わなかったが…。 「けどよ。もいつかは嫁に行っちまうかもしれねーんだな」 利家はもう去った後で、は甲斐姫が訪ねてきたと言うのでいない。 残された三馬鹿達は、解散するわけでもなく。 なんとなく三人で、茶を啜っていた。 「なんだ?正則」 しみじみ言う正則が珍しい。 「んー?そう言う話がよ…いつ来たっておかしくねぇだろ?本当ならば」 「そうだな…」 「案外…叔父貴のところに話が来ているとは言わねぇよな?」 「「………」」 それはわからない。 は秀吉の実子ではないが、秀吉が娘同然に可愛がっているのは知られている。 を紹介する際に、秀吉の娘だと言う者もいるくらいだ。 「その場合、しっかり吟味されていると思うけどな」 秀吉の目に適わない者はダメだろう。 「なら、前田のアニキは叔父貴の目に適いそうだよなー」 正則から見ても、利家は憧れのようなものがあるから。 「あとよー。面だけつーなら、三成のダチもいるだろ?」 「俺の?…もしかして幸村と兼続か?」 「おうよ。他にもいるよな。立花とか」 秀吉に仕える者の中から選べと言うなら、その点旦那候補は沢山いるだろう。 「が嫁ぐ日かー…」 正則が明後日の方向を見ている。 どうでもいいなどと口にしていても、実際、利家の言う通りそんな日が来た時には この男は感動して大泣きしそうだ。 「くだらん。来てもいない話などしてもしょうがないだろう」 三成は最初からこの話に口を出さなかった。 出したのは、軽口部分のみだ。 「なんだよ、頭でっかちー。お前寂しくねぇのかよ」 「ふん。そのような話が来る前から感傷的になっても仕方あるまい」 我関せず。 三成は一人だけ冷めている。 清正は利家の発言に驚いたし、正則ほどではないが。 いつかは来るだろう、そんな日を思うと少し寂しさはある。 できればの嫁ぎ先はいい所であってほしいし。 相手も自分が認められるような者であればいい。 要は、妹分である彼女が幸せになってくれればいいのだ。 戦が続くような時代はひとまず終わった。 戦ばかりだった頃だと、きっと大変だったはずだ。 「かもしれないが。あっさり話が来ることもあるだろうさ。その時後悔だけはするなよ?三成」 「…何を言っているのだ、お前は…」 「可愛い妹分には幸せになってもらいたいんだよ、兄貴分としては」 幸せにできるのは三成だろう。 の気持ちを考えたならば。 この男は実際、をどう思って、どう見ているのだろうか? 自分や正則と同じように兄のような目? 少なくとも、に何かあれば気はするし、何とかしてあげようと言う思いは湧くのが三成だ。 (やはり家族的な思いが強いかもしれないが…) いつかはのその視線に気づくだろうか? 気づいてほしいものだが…。 「このままだと、本当に…前田殿に嫁がれてしまうぞ」 「清正…何が言いたい?」 「さぁな」 清正は知らぬふりをして茶を啜った。 「いつまでも…って事はならないんだろうなぁ…」 「正則?お前…本当にどうしたんだ、今日は…」 こちらの嫌味にも応じない。 応じないどころか、感傷的になってしまっている正則。 そんな彼を見て、三成は気色が悪いとぼやく始末。 「お前の気持ち。わからんでもないが…」 清正も頷いてしまった。 この先いつまでも4人で馬鹿をやっていられたらと思うのだろう。 戦があれば、を留守番に残してしまう。 その分、一緒に居る時間をうんと大事に、沢山に笑ってもらおうとしていた。 短い時間だろうが、一緒に居られるのが楽しくて。 「三成?」 小さく三成が笑ったのがわかった。 「これでは、案外前田殿が言った通りではないか」 「「?」」 先ほどの事だ。 「お前ら兄貴ががっちり守っているから、中々嫁にいけないんだろ?」 気づかないうちに、を悪い虫から遠ざけていたとでも言うような? だけど、清正も正則も反論はできなかった。 「かもね。変な奴が近寄ってでもきたら困るしな」 「あぁ、ここは三成。やっぱりお前がを娶ってやれ」 「な、何を突然言い出すのだ、貴様は!」 あぁ、珍しく動揺した。 あまりからかうと次からは無視されてしまいそうなので。 ここらで勘弁する。 「お前。に不満でもあるのか?頭でっかちの癖によー」 「煩い正則」 「そうすれば、俺達も安心ができるって寸法だ」 いつも通りに三成と正則の間に入る清正。 「俺にしてみれば、貧乏くじを引かされたようにしか思えん」 「お前なぁ」 清正も正則も苦笑しかでない。 「仕方ね!誰も貰い手がいないなら、俺が立候補するか!」 「じゃあ、俺もだ。見知らぬ馬の骨にくれてやるよりはずっとマシだろう」 良い考えだと清正は納得する。 「………お前らじゃ、逆にが断るだろう…」 「「うっ…」」 否定できない。 そう思えて、わかりきった答えかもしれなくて。 思わず清正と正則は声を大にして笑ってしまった。 「いつまで。なんてのはわからんが…今を楽しむべきなんだろうな…」 それが三馬鹿の今の答え、願いだ。 三馬鹿兄貴達はそれぞれ妹分の幸せを願っている。 だけど、その頃のは、久しぶりに会った友、甲斐姫に対し、三馬鹿への愚痴を零していたのを、彼らが知る由もなかった。 11/07/21
19/12/30再UP
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