頼みごと。



ドリーム小説
「みっちゃんにお願いがあります」

が「はい」と挙手をする。

「なんだ?」

一応聞いてはくれるようだが、三成の顔は「くだらないことだろう?」と物語っている。
そんな視線に負けるものかとは大きく息を吸った。

「また戦に出るんだよね?」

「あぁ。おそらくこれで最後だと思う」

「うん。私も聞いた。ようやく秀吉さまの天下統一だーって」

ほぼ秀吉の天下と言っていいくらい。
奥州の伊達家が今だ微妙な態度なのと、頑なに拒んでいるのが関東の北条家だ。
この二つを抑えれば秀吉の天下となろう。
とりあえず、伊達は時間の問題と思われ、総仕上げとして北条に戦を仕掛けようとしているのだ。

「それがどうかしたのか?」

「うん。みっちゃんは当然行くんだよね?」

「あぁ」

当たり前の事を聞くな。と。

「そこでお願いがあります」

「だからなんだ?」

「私も連れて行って「断る」

言い切る前に断られた。



***



「清正〜私のお願いを聞いてください」

は清正の所へ行った。

「お願い?気味の悪いことを言う・・・・」

清正は面倒臭そうに答える。
何気に失礼な物言いだと思うも、は我慢をする。

「それで?お願いってなんだ?俺に聞いてくるのも可笑しなものだが」

「そんなことないよ。清正のことは前から頼りにしているしー」

「はいはい。それで?」

「もー」

見抜かれているのだろうとは思う。
三成に頼みに言ったが断られたことを。
三成がダメなら清正に頼もう。単純かもしれないが。

「戦に出るんでしょ?清正も」

「あぁ当然だ」

「うんうん。それでね、私のお願いを聞いてください」

「なんだ?」

「私もつれ「断る」

三成よりも早く断られた。



***



「正則〜聞いてよー」

三成も清正も酷いんだ。と正則に泣きついた。

「な、なんだよ。どうしたんだ?

「二人共私のお願いを聞いてくれないんだー正則だったら聞いてくれるよね?」

正則しか頼れないんだ。が懇願する。
そうに言われてしまうと、正則も悪い気はしない。
機嫌よく「俺に任せておけ!」などと胸を叩いた。

「本当!?やったー!さすが正則、頼りになる〜」

は手を叩き喜んだ。
どちらかと言えばが頼るのは三成や清正だから。
二人よりも自分を。などと言われれば正則だって期待に応えたいと言うのだろう。

「あのね、あのね」

「「待て。ど阿呆」」

正則に頼もうとしたとき、見事なくらいに同時に止められた。

「な、なによ。二人して・・・・」

「そうだぞ、お前ら。なんだよー邪魔するなよー」

正則も面白くはないだろう。
だが止めた二人。三成と清正は拱手しを頭上から威圧している。

「う・・・・・。いいじゃんかー正則に頼むんだから!」

は正則の背後に回る。

「そーだ、そーだ!俺がの頼みを聞いてやるんだ。薄情なお前らとは違うからな!」

「話をちゃんと聞け、馬鹿」

「馬鹿だから騙されるんだ、お前は」

二人からは頭ごなしに「馬鹿」呼ばわりだ。

「う、うるせー!馬鹿って言うな!」

「わかったから。話を聞け正則。こいつの頼みなど聞く必要はない」

三成がきっぱり言い切った。
それに関しては清正も大きく頷く。
二人が最初から同意見と言うのも珍しいものだと正則は思った。

「なんだよ。話ぐらい聞いてやってもいいじゃねぇか」

「そうか。なら聞いてやればいい」

「・・・・・・」

二人からの威圧はさらに酷くなる。
だが負けるものかと正則は耐えてと向かい合う。
は若干逃げ腰なのだが。

「で?なんだ、

「え、えとね・・・・・正則も今度戦に出るでしょ?」

「おう!叔父貴の天下のためだぜ!」

叔父貴の力になるんだ。そう言い右腕を高だかと上げる正則。

「そ、それでね。その戦に、私も連れて行ってほしいの!」

「・・・・・・え?」

正則は右腕を上げたまま止まってしまう。

「お願い、正則!私も連れて行って!!」

「・・・・・・・・・え、えっと・・・・・そ、それはだなぁ・・・・・」

力なく上げた右上を下ろしていく正則。
二人が聞く必要がないと言った理由がわかった。

「み、三成・・・・清正ぁ・・・・」

ゆっくりと振り返る正則。
ほら見ろ。あからさまに二人の目はそう言っている。

「わ、悪い。・・・・それだけは聞けねぇな」

「なんでよ!俺に任せろって言ったの正則だよ!!」

「だ、だけどよぉ・・・・お前・・・いくらなんでも、戦に連れて行けってのはぁ・・・・」

二人がその願いを聞くはずがない。
自分だって今お願いされて困っているのだ。

「わかったか、。誰に頼もうがダメなものはダメだ」

「・・・・・」

三成、清正、正則の3人を前にしては恨めしそうに目を向ける。
良心が痛むような顔をしているのは正則だけで、三成と清正はまったく動じていない。

「なんで、ダメなの?」

「ダメなものはダメだ。遊びじゃないんだ、これは」

「そんなのわかっているよ?」

「わかっているのならば、大人しく留守番をしていろ」

三成と清正に交互に言われてはシュンと俯いてしまう。

「な、なぁ・・・・理由ぐらい聞いてやろうぜ・・・頭ごなしにダメッて決め付けるのはよぉ」

正則だけはを不憫に思ったのか助け舟を出そうとする。
だが返ってそれが三成と清正に強く睨まれてしまう。

を甘やかすな、馬鹿」

「甘やかすと付け上がるだけだ、馬鹿」

「お、お前らなぁ〜」

どれだけに手厳しいのだ。
正則だって戦になどを連れて行きたいとは思わない。
けど、いつもなら連れて行け。などとは言わないのに、今回はどうしたことが頼み込んでくる。
それが正則には気にかかる。
秀吉が天下を取る瞬間を目にしたいのか?それともそこで一緒に喜びたいのか?

「だって、一緒に行きたいもん・・・・・留守番なんて嫌だよ・・・・」

「餓鬼だな」

「いつも一人で留守番だもん。3人は秀吉さまの役に立とうって意気込んでいるのに・・・・私何もできない」

「お前に戦場で活躍しろなどと誰も期待などしておらん」

「おい、三成。清正・・・・お前らもうちょい優しく言ってやれよ・・・」

が寂しがる気持ちもわかる。
戦になればは一人で留守番だ。
ねねでさえ、一緒に戦に出てしまうのだから。
だけどねねは戦うことができる。そして役割りがちゃんとあるから。

「次で終わる。俺はそう言ったぞ」

俯いたままのの頭を三成が撫でる。

「そうだ。秀吉様が天下を取れば戦は終わる。お前が留守番をしなくても済む」

「お、おう!あと1回だけ留守番してくれればいいんだぜ!」

清正も正則もこれで終わりなんだとに言い聞かせる。

「戦になれば、どこに居ようが危険なのは変わりない・・・・」

それが秀吉の居る本陣だとしてもだ。

「そんな場所で俺達はお前を守ることはできない。
秀吉様が天下を取られても、そこにお前が居なかったら、俺達は喜べない・・・・」

「戻ってきたらさ。そしたら・・・沢山のしたいことさせてやるよ!」

はキュッと口を結ぶ。

「我がまま、言ってごめんなさい・・・・」

納得していないような感じもするが、自分の身を案じてのことだと言われるとも引き下がるしかなかったようだ。

・・・・」

俯いたまま、は3人に背を向ける。
泣きそうな顔を3人に見られまいとしている。

「・・・・・・」

そして足早に去った。

「・・・・・・・」

「何をしているんだ、馬鹿」

「なっ!」

清正が三成の頭を小突いた。

「慰めてやるのが、お前の役目だろう。馬鹿」

「そんな役目知らん」

「いいから行け」

「お前が行かないなら、俺が行っちまうぞ、頭デッカチ〜」

正則に言われて三成はムッと唇を突き出した。
そしての後を追っていった。



***



わかっていた。
最初から自分の我がままだってこと。
秀吉に頼んだって、ねねに頼んだってきっと同じだ。
だけど、寂しかった。
いつも置いていかれるのが。
皆一緒に居るのが当たり前。なんて思われても、戦が始まればただの留守番。
何もできない。
戦える力もなければ、策略を巡らす頭もない。
せめて一緒に居ることができればと思ったが・・・・。

「戦になれば、どこに居ようが危険なのは変わりない・・・・」

「そんな場所で俺達はお前を守ることはできない」

結局はただの足手まといで、ただ心配をかけるだけしかできなかった。

「何をしているのだ、お前は・・・・・」

「・・・・・何もしてないよ・・・・」

「そんな面で言われても説得力がない」

必死で泣くのを我慢している

「お前の気持ちもわかる。わかるが・・・・俺達の気持ちもわかって欲しい・・・・・」

「みっちゃん・・・・・」

「清正が言っただろう?秀吉様が天下を取ったときに、お前がそこに居なかったら俺達は素直に喜べないと」

三成は深くため息を吐いた。

「こう言うのは・・・俺よりも清正の方が得意だと思う・・・・まったく・・・」

泣きそうな子の慰め方など知らないのだろう。
それがなんとなく可笑しかった。

「すぐに帰ってはこれん。長い時間、お前を一人にさせる。だが俺達は必ず帰ってくる」

「うん・・・・・」

「それまで、帰ってきた時にやりたいことでも考えておけ。仕方ないから付き合ってやる」

「し、仕方ないって・・・・酷くない?」

「そう思うからだ」

「あはははっ。みっちゃんらしいね」

泣きそうだけど、泣けば三成は困るだろうなとぼんやり思う。
泣かないように今三成なりに声をかけてくれるのだから。

「うん。いっぱい考えておくから。覚悟していてよね、みっちゃん」

「しょうがない」

「しょうがないって言うなー」

それでも、涙が出そうになるから、三成に見せないように三成に抱きつき顔を隠した。

・・・・本当しょうがない奴だ、お前は」

三成にはお見通しだったようで、頭上で「好きなだけ泣け」と言われた。




それからすぐに秀吉達は出陣した。
帰って来たら、一緒にやりたいことが沢山あるからちゃんと帰って来てね。
そう3人に伝えた。

「三馬鹿は一人でもかけたらダメなんだからね!」

そう言った時の3人は酷く嫌そうな顔をした。
だけど。

「馬鹿がヘマをしないように、見張っててやるさ」

「だってさ。ガンバってね、三成〜」

「一番の馬鹿はお前だ。馬鹿」

あぁいつもの彼らだと笑って見送ることができた。
彼らが帰ってくるのが今から待遠しいものだ。








10/01/20
19/12/30再UP