仲は悪くないはずだ。



ドリーム小説
馬鹿は加藤清正。
大馬鹿は石田三成。
どうしようもない馬鹿は福島正則。

三人揃えば馬鹿力が出せるらしい。

って言うのは石田三成に仕え始めた島左近の言葉だ。

「中々上手いこと言うねぇ、左近さんも」

「どこがだ」

不満を口にしたのは大馬鹿と言われた三成だ。
隣を歩く少女はふふふと小さく笑う。

「私はね、みっちゃんが馬鹿で清正が大馬鹿だと思ったんだけどねーそうか大馬鹿はみっちゃんか」

「その呼び方をいい加減やめろ」

「いいじゃん。みっちゃんはみっちゃん。親しみを込めて言っているんだよ」

「なんで俺だけ・・・・」

三成だからみっちゃん。
曰く、親しみを込めていると。
だが三成にすればそれこそ馬鹿にされていると思うのだろうか?

「じゃあミッチーにする?みっちゃんの方がしっくり来るんだけどね、私は」

「却下。普通に呼べぬのか、貴様は」

「みっちゃんて呼ぶの普通だよ」

「貴様の方が大馬鹿だと思うがな、俺は」

「あ、ひどーい」

は頬を膨らます。
けど本気じゃない。こうやって言い合っているのが楽しいのだ。
三成に嫌われているのならばきっと相手にもされていないはずだ。

「みっちゃん。あそこの茶屋で休憩しよう。ところてんでも食べよう」

「おい、こら」

三成の袖を引っ張り茶屋へ連行する。

「お腹空かない?」

「別に空いてない」

「けど、私は小腹が空きました」

「好きにしろ。仕方ないから付き合ってやる」

「ありがとう。みっちゃん」

三成のそう言うところが好きだ、やっぱり。



***



「けど、なんか気持ちが伝わんない。なんでだと思う?」

「俺に聞くのか?それを・・・・・」

別の日。縁側で清正と茶を飲んでいた。
その時に三成との事を清正に言ってみた。
けど、清正の反応が期待しているものとは違った。

「清正だから聞けるのですけどね」

「正則に聞いてみろ」

「無理。あいつ絶対馬鹿にするもん。みっちゃんのこと頭デッカチってからかうしー」

はむくれる。

「みっちゃんってそんなに頭デッカチ?優しいトコとかいっぱいあるよ?」

「だから俺に聞くな」

「清正はみっちゃんと仲良しじゃんか。親友でしょ?あ、勿論正則もいれて」

その割には普段からケンカの絶えない3人ではあるが。

「お前が三成のことをそうじゃないって知っているなら、それだけで充分だろうが」

はニ三度瞬きをするもすぐさま笑顔で頷いた。

「うん。やっぱり清正に話して良かった」

「そうかよ・・・・・俺は人ののろけなんぞ聞いても楽しくないけどな」

「のろけじゃないよー」

清正の肩をバシバシと何度も叩いた。

「お前。もし俺がお前の事を好きだと言うならどうする?惚れた女から他の男の話をされても嬉しくないんだがな」

はさっき以上に瞬きをするも、またも清正の肩を叩く。

「やーだー。そんなのありえないもーん。おっかしい清正ってば」

「あのな・・・笑い飛ばされる俺はどうすればいいんだ?」

「だって、清正の好きな人はおねね様だもん。私なんてのはありえないね」

「お、お前ッ!」

の話を飽き飽きした態度で聞いていた清正が急に態度を変えた。
珍しく顔を赤くしている。

「隠すことないじゃん。見ていてわかるよー。清正はおねね様が大事だもんね」

「そ、それは俺みたいな奴を拾って育ててくださったから、べ、別におねね様が特別じゃなく秀吉様の為にもと」

普段なんでも知ったような顔をしている清正だけど。
はこうして素を出した時の清正の方が好きだ。
まだ言えば、ケンカされるのは嫌だけど、三成、正則と馬鹿、馬鹿言い合っているのを見るのも好きだ。



***



「っていうか、あれで隠しているつもりだったのかねー?清正ってば」

「だよなー。気持ち駄々漏れじゃん」

正則が愛馬の世話をしている所に顔を出した。
話は清正のことだ。

「正則だっておねね様大好きでしょ?」

「まぁそうだけど、俺は清正とは違うしなー」

「あーうん。わかるわかる」

正則はねねの事を母親のような目で見ている。
けど清正はそれ以上のものがあるように見えるのだが。
この辺主の存在もあるから公にできないのだろう。

「秘めた恋って言うと、なんか燃えるよね〜」

「黙々と惚れた女のために動く清正。例えその任務が過酷なものだとしてもってかぁ?」

「あははは。ノリがいいよねー正則は」

こんな話清正に聞かれでもしたらあとでボッコボコにされると思うが。

「ただの例え話じゃん。本気にする奴なんかいねぇだろ」

「秀吉様は本気にするかもよ?」

「それは危険だな。その時は清正の性格なら黙って腹でも切るんじゃね?」

「だ、ダメだよ!私達の勝手な話で切腹なんて!!ダメ、絶対ダメ!!」

タダでさえこの時代はその手の胡散臭い話で、身を滅ぼされるなんてことざらなのだ。

「いや、だから誰も聞いてねーし。心配性だな、は」

「心配になるじゃん」

ただの悪乗りだと正則は笑う。
でもその悪乗りを一緒に楽しめるのは正則しかいないだろう。
三成も清正もその辺真面目だから。

「あの頭デッカチも、このくらい冗談でも言えるようになりゃいいのによー」

「正則はいつもみっちゃんの事をそう言う・・・・」

「あ。そういやはみっちゃんが大好きなんだっけな」

少しだけ癇に障る。
馬鹿にされたような感じがするから。
正則はいつもそうだ。他の事では一緒に盛り上がれるのに、三成の事となると途端態度が悪くなる。

「正則には関係ないでしょ!」

あっかんベーと正則に舌を出しては馬小屋を出た。



***



「あーあーまーた怒らしちまったぜー」

面倒くさいことになったなと正則がぼやく。
城下にある茶屋の縁台に腰かけて団子を頬張る。

か?何を言ったんだ、お前は」

その隣で清正がまたかと言う表情を浮かべた。
清正は茶を啜っているだけだ。

「別に。ただみっちゃんがーって言った程度だっての」

「それがにしてみれば嫌な風に聞こえたのだろう。あいつは三成贔屓だからな」

「あんな頭デッカチのどこがいいんだかなー」

「正則」

清正に睨まれた。

「わかってるよ。俺が悪いって・・・・」

「なんだかんだ言って、お前はが羨ましいんだよな」

「な、なんだよ!それ!!」

思わず縁台から立ち上がる正則。

「べ、別にが羨ましいなんて!これっぽちも思わないっつーの!なんで俺が!!」

「三成はには優しいからな」

さしずめ、もう少しこっちにも柔らかい物言いをして欲しいのだろう。
馬鹿はしょうがない。なんて目を三成は普段向けてくるから。

「三成に優しくされたって嬉しくなんかねーよ」

「はいはい」

気に入らないってだけで突っ掛かるようには見えないのだが。
それにも言っていたじゃないか。

「清正はみっちゃんと仲良しじゃんか。親友でしょ?あ、勿論正則もいれて」

三人でいるのがにはごく普通に映るのだろう。

「ま。悪いと思ったなら、ちゃんとに謝れ。いいな」

「わかったよ。あとで団子でも買ってついでに謝る」

ついでは団子の方だろう?と清正は言いたくなるが。
照れ隠しの意味もあるのだろうからあえて口にしなかった。

「みっちゃん、餡蜜食べよう、餡蜜〜」

「俺は食わん」

「いいじゃんか、今日も付き合ってよー」

「・・・・・」

二人が居た茶屋にと三成がやってきた。

「「あ」」

行きつけの茶屋は清正達の行きつけでもあった。

「・・・・・・・・」

「みっちゃん、他の店行こう」

「おい」

ツーンとそっぽを向き三成の袖を引っ張る
あからさまに避けられた事に正則が腹を立てそうになるも、そこは清正が抑えた。

「別に他の店に行くことないだろう。食ってけよお二人さん」

「だってさ・・・・」

「正則なら反省している。ちょうどお前の話をしていた所だ」

「べ、別に俺はよー!・・・・・あー、そのなんだ・・・・奢ってやるよ、悪いって思うからな」

と言いながら店の娘に先ほどが言ってた餡蜜を二つ注文した。

「ほら、座れよ。そっちの頭で・・・みっちゃんにも俺がご馳走してやる」

「誰がみっちゃんだ!」

「みっちゃんはみっちゃんだよね。ほら、みっちゃん座ろう」

は笑顔になって清正達の隣に座る。
三成の袖を引いて早くと。

「まったく・・・・」

三成も渋々座る。
店の娘は素早く注文した餡蜜を持ってきた。

「わーい。いっただきまーす」

「お、俺は別に食いたいとは言っていないのだが・・・・」

甘いものはそう得意ではないと三成は困惑気味だ。

「いいから食えよ。みっちゃん」

「清正っ!」

喧嘩になりそうかと思えば、案外そうでもなく。
三成は黙々と餡蜜を食べる。
もしかすると、清正と正則は知らないだろうが、も正則とケンカをした事を落ち込んでいたのかもしれない。
それを三成がなんとかしようとしようと散歩にでも誘ったのかもしれない。
だからあえて、今は二人にみっちゃんと言われようが怒らないのだ。

。俺だけでは不公平だ。こいつらにも何かつけてやれ」

「へ?そう?そうだねー」

「俺は遠慮する」

「俺もいらねーよっ」

だがは聞いていない。

「清正はキヨちゃんってところかな?」

「き、キヨちゃん・・・・」

「だはははっ!キヨちゃんだって!清正ぁ!」

三成も小さく笑っている。

「正則はまーくんかな?」

「ま。まーくん?」

「ほうそりゃいい。これからお前の事はまーくんと呼んでやる」

「だ、誰がだよ!やい、!もっとマシなのつけやがれ!!」

正則がに文句を言う。

「あだ名をつけられることに文句はないのだな、正則は・・・・」

三成が小さく呟いた。

「じゃあ・・・まっちゃん?マサ君?んー・・・・・・マー坊にしようか!」

「どれも嫌だっての!!」

「本当馬鹿ばかりだ」

そう言って清正が笑う。
左近が見ていたら言うかも知れない。
三馬鹿ならぬ四馬鹿だと。





「四馬鹿?そうですかねぇ。んー言うならば・・・・」

左近は逡巡してから言った。

「馬鹿と大馬鹿とどうしようもない馬鹿に可愛らしい馬鹿ってのはどうですかい?」

だそうだ。








三成よりの子飼い話。
10/01/09
19/12/30再UP