井戸端会議?



ドリーム小説
「元就。先日話した史書の事だが…」

「やぁ曹操殿。私もあなたに聞きたい事があるんだ。時間は大丈夫かな?」

「わしから声をかけたのだ。問題ない」

最近の元就は曹操と仲が良い。
元々歴史家になりたかったと言う元就だから、目の前にいる三国志の英雄の一人に会えた事が相当嬉しいらしい。
しかも、二人で小難しい会話を楽しんでいる。
他にも孫家に仕える呂蒙とも似たような感じだ。

しかし、過去にもそう言う事はあった。
元就は世界の危機でも純粋に英雄達の存在に心躍らせていた。

生憎、当時の記憶は封じられているようで今再び新たな関係を築ける事になり、それはそれで喜んでいるようだ。

「大殿は本当、毎日が楽しそうで何よりです」

はいそいそと曹操と出かけていく元就の姿を見て言った。

「月英さんから見て、自分の旦那様が他の人と楽し気にしている姿をどう思いますか?」

「私…ですか」

「と言うか、諸葛亮様の場合、慕われる側じゃないですか、色んな人から。なので、また別かと思いますけど…」

元就が出かけてしまったので、の予定としては家事をするくらいなので。
月英の時間があるならば、肉まんづくりでも教わろうかと思っていた。
彼女は発明も行うので、比較的忙しい人なのだが快く引き受けてくれた。

「私はこれと言って…孔明さまが楽しいのであればそれは相当なのだろうと」

「最近、隆景様となぞなぞみたいな会話していますよね」

「そうですね」

元就が食いつくかと思ったが、そこは息子の隆景が孔明のもとへ行く姿の方が多かった。

殿は元就殿に放っておかれて寂しいのですね」

「そうでもないですよ。ここには色んな人がいるので寂しいと言う事はあまり」

強がりに聞こえるかな?と思ったが、本心なので仕方ない。
それに、常に放置されているわけでもないし。
自分がしたい話をちゃんと元就は聞いてくれるから。

「と言うか、この手の会話…初めてな気がしないです…」

「そう言えば、過去に皆さんとは共に戦っていると言う話でしたね」

「会話をしていて、あれ?って言う感覚が結構あるみたいですよ、皆さんも」

「そのようですね」

完全に思い出した。と言うのはごくわずかな人のようだ。

「きっとその時の私も、大殿は楽しそうだな〜って思って見ていたと思いますよ」

「記憶はなくても、性格は変わりませんからね」

肉まんづくりも恐らく過去に教わっているのではないか?
だけど、記憶は封じられていたために、もとの世界に戻っても肉まんを作ろうと言うことにならなかったのだろう。
なので、改めて覚えるのは良いのだが、再び忘れてしまうことになるのはちょっと嫌だ。

「……もったいないなぁ」

「どうかしましたか?殿」

「あ、いえ。今回も平和になって元の世界に戻った場合。せっかく月英さんに美味しい肉まんづくりを教わったのに、忘れちゃうのかなぁ…ってそれは勿体ないです」

少しだけ唇を尖らせたに、月英は優しく微笑む。

「そう言ってもらえるだけ嬉しいですよ」

「そうですか?」

「はい。でもきっと大丈夫です。もし忘れてしまったとしても、体は覚えているかもしれません」

何度も何度も、肉まんづくりを続ければ。という事らしい。

「うーん…まぁ、そうかも…」

と言うのも、肉まん自体をが忘れる事はないだろうから、何かしらのきっかけで作り方を思い出すかもしれない。

「その前に。今からそのように不安に思わなくても。戦いが続いているのですから」

「はい」

「それに、まだまだ手つきが甘いですよ、殿。それでは合格点はあげられませんから」

「うっ…精進します」

「はい。そして元就殿に喜んでもらえるように頑張りましょう」

まだまだ合格点ではないとは。
作業する手が止まっていたは、気を引き締めた。

「大殿が喜んでくれるなら頑張れるし」

それに月英に色々教わるのは楽しい。
なんだかんだで自分もこの世界を楽しんでいるのだなと少し笑ってしまった。





「あら。殿はそれだけで良いのですの?」

「それだけって言われても…」

月英から教わりながら作った肉まん。
結構の量ができたところで、甄姫などが集まってきて味見を兼ねて味わってもらった。
楽しくお茶を。と言うだけならば良かったのだが。
話がには不都合な方向へ進みだした。

「こんなに可愛らしい奥方を放置しておくなんて。元就殿を許せませんわ」

「し、甄姫様、あの」

「そうですわ。殿が旦那様に尽くしているのに。それを当たり前のように感じられるのはいけませんわね」

「春華様も、あの、私は…」

甄姫と共に司馬懿の奥方張春華もいた。
二人して元就への文句を並べている。

「妻が旦那に付き従う事は悪い事ではないのですよ?現にわたくしは我が君の為ならばと常日頃思っていますから」

「それは当然ですね。旦那様を支えてこその妻ですから」

静にお茶を啜っていた月英にも二人は目を向けるが、月英も「そうですね」と静かに頷いている。

殿。フラフラしているばかりの旦那様は一度ガツンと叱って差し上げた方が良いですわよ」

「春華様は…司馬懿様を…いえ、なんでもないです」

うふふ。と笑みを浮かべる張春華にそれ以上聴くのは怖かった。
司馬家の誰もが、この女性には逆らえないと言う話を聞いていたので。
は気を取り直す意味も込めて軽く咳払いをする。

「甄姫様も、春華様も、少し勘違いをなさっていますよ?」

「何をですの?」

こういうのを自分の口から言うのは嫌だなと思いつつ、元就を悪く言われてしまうのも嫌なのでちゃんと言う。

「お二人とも、大殿の事を旦那様と言いますけど、私…大殿の奥さんではないですよ?」

「ま!なんですって!?」

「奥方でもない子に世話をさせていると言うの!?」

「あれ?」

なんか違った反応が帰って来た。
でも実際、元就の妻ではない。

「使用人…なの?殿は…」

「えーと…」

この場合。なんと答えれば良いのだろうか?
始まりは確かに元就の世話をするところだったが。

「わ、私は大殿の事、とても大事に思いますし、お慕いしています。ので、その…」

他人に向かって元就の事を言うのは恥ずかしい。

「お、奥さんにならずとも…私は大殿のお世話ができて、そばに居られるだけで十分で」

なので二人が思うほど苦労をしているわけでも、寂しい思いをしているわけでもない。
そうは言いたかったのだが。

「「殿!!」」

「わ!?」

甄姫と春華がをギュッと抱きしめた。

「身分違いの恋なのね!」

「片想いでも十分って・・・どれだけあなたは」

なんかまた勘違いをされたようだ。

「いいのよ、一人で苦しい思いをせずとも。わたくし達はあなたの味方ですわ」

「そうよ。いつだって相談に乗りますから」

「あの、お二人とも。私は別に」

主従の恋と言うものを勝手に想像されてしまったようだ。
これではまた元就が誤解されてしまいそうなのだが。
月英に助けを求めるも、月英は苦笑しているだけだ。

「甄?何をしている…」

「春華もどうかしたのか?」

二人の旦那。曹丕と司馬懿がやってきた。

「我が君…」

流石に他所の子の片想い話などできないと思ったのだろう。
なんでもないと甄姫は微笑んだ。

「その娘…最近父の話によく出てくる娘か」

「はい?」

曹丕の父は曹操のことだ。
曹操とは言うほど会話などしたことがないので、元就が何か言ったのだろうか?

「曹操様が、殿のことを?」

「あぁ。まぁいつもの話だ。息子の嫁にどうだ?などと言っていたな、息子など言うのは本気で思っていないだろう、実際は自分の妻にしたいのだろう」

年下の義母など今更だと曹丕はなんとも思わないらしい。
実際新たにできたとしても、自分の母が何も言わないのであればどうでも良いのだ。

「我が君…今後はそのような話…殿の前でしないでくださいませ」

「あ、あぁ」

「旦那様も。ですよ?」

奥方の突然の強い視線に旦那二人は若干引いてしまう。

「あぁでも…殿ならばうちの息子の嫁にと言われたら断る理由がないですわ」

「春華様、あの」

「普段からボーっとしている子元だけど、殿が見ていてくれたらきっと…旦那様どうでしょうか?」

「春華…話が変わっているようだが…」

殿の事を思ってですわ。決して私が殿みたいな娘が欲しいからと思っているからではないのですよ?」

「そっちが本音かな?」

ポンとの両肩に手が置かれた。

「あ、大殿」

元就がの背後で爽やかに笑みを浮かべている。

「甄姫殿も、春華殿も何か勘違いをしているね」

「あら、どういうことですの?」

「私にとってもさんはとても大切な人なんだ。だから変にちょっかいをだして欲しくないんだ」

特に春華に対しては。

「残念だけど、君の息子達にさんはあげられないよ」

「…大殿…もしかして…」

元就は曹丕にも顔を向けた。

「私は君の父上の事はとても尊敬しているよ。けど、女性で身を亡ぼすこともあるからほどほどにね」

行こうか。との肩を抱くと元就はその場から離れた。

「わたくし達が先走ったようですわね…」

「本当…でも残念だわ。殿が子元のお嫁さんになってくれなくて」

甄姫と春華も色々反論したい部分はあったが、普段見せる頼りなさげな、穏やかな笑みではなく。
とても冷たい目で口角だけで笑みを作っていた。
謀神、謀将と呼ばれる男の本質が垣間見えたような気がした。





「大殿〜?」

まったくの無言で歩く元就には顔を覗き込んだ。

「っ…あ、あぁ…すまないね、さん」

の目に見られたと思うと、元就は困惑してしまう。

「英雄色を好むとはよく言うけど…はぁ…」

「大殿、怒っていますか?甄姫様達に」

「あ、いやぁ…」

立ち止まる元就はいつものように後頭部をかいた。
は元就の前に立つ。

「珍しく大殿が怒っているなぁって感じはしたんですが」

甄姫や春華が言っているのはいつもの事だと思っているので深く考えはしなかった。

「私も…自分が至らない部分はあるとわかっているから、自分にも腹がたってね」

「大殿が?」

「あぁ、さんにはいつも嫌な思いをさせているのだろうなって…」

「していないですよ、別に。けど、あれです。甄姫様達は私を可愛がってくださるから。
ちょっとだけ、大殿が悪者になっちゃっただけです。私はちゃんと大殿をお慕いしていると言いましたし」

「………」

あれ?信じてもらえないのだろうか?
この辺もいつも通りの話なのだが。

「大殿。私はいつだって大殿のことしか見ていないんですよ?それではも私が嫌な思いをしていると思いますか?」

「…それで思うと答えたら、本気で甄姫殿達に叱られてしまうよ」

元就はの手を取る。

「だけど、今後は曹操殿には十分に気をつけるように」

「大殿が曹操様と楽しんでばかりいなければ問題ないですよ?」

「あぁ頭が痛いね」

そして再び歩き出す。
はこの話の発端になった経緯を元就に話した。
傍から見れば、夫婦ではなく親子に見えるかもしれないが。
ちゃんとお互いを想っていることはわかっているので十分なのだ。

「なんか、前にもこんな会話したなぁって月英さんと…あー!」

「え?さん?」

突然が声をあげた。
そしてその視線の先にくのいちと甲斐姫が居た。

「くのちゃん!!?」

「にゃ?」

は唐突にくのいちに向かって言った。
しかも元就とは手を繋いだままで、元就は引っ張られるような形になってしまう。

「思い出した!くのちゃん、酷いよ〜!!大殿のことからかいに来た事あったでしょ!?」

「にゃにゃ?」

?」

くのいちは何のことだと首を傾げる。
甲斐はどうしたものかと不思議そうに見ている。

「あたしが?元就の旦那のこと?…そうだっけ?」

「あったよ!武将番付っての、わざわざ上司にしたくない武将番付ってのを大殿に言いに来た!ひどいよ〜大殿そんな人じゃないもん!!」

そう言われてくのいちと甲斐は元就に視線を向けてしまい、元就は困りつつを落ち着かせようとする。

さん、その話は別に…」

「あの時、隆景様は武田の忍って言っていたから、あれはくのちゃんだって急に思い出した!」

「それって…前に遠呂智や妖蛇と戦ったときの話?」

「違う。元の世界での話!」

いつだったか、元就と隆景が談笑しているところに、武田の忍が姿を見せた。
偵察でも暗殺でもなく、単なる噂話をしに。
その内容が、上司にした武将番付と上司にしたくない武将番付のことだ。
元就は不名誉な上司にしたくない武将3位に選ばれた。
それをわざわざ武田の忍が言いに来たと…。

「あんた面倒くさい事してんのね…」

甲斐はくのいちに呆れた視線を送る。
肝心のくのいちは本気で覚えていないようで、曖昧に笑うだけだ。

「くのちゃん。反省しないなら、この話、真田様に言いつけにいくからね」

「にゃにゃ!?ちん!それだけはご勘弁を〜」

珍しく慌てるくのいち。
甲斐は助ける気はないようだ。

「旦那〜毛利の旦那〜もう悪い事はしませんので、お許しくだせぃ」

くのいちは唯一を止められる人物である元就に助けを求める。

「まぁ、そうだね。あの番付結果は仕方ない部分もあるし…」

「大殿!!」

「まぁまぁさん。彼女も反省をしているようだし、いいじゃないか」

落ち着こうとの背中をさする元就。

「それより、さっき美味しそうな肉まんを食べていたよね。私もお腹が空いたんだ。何かないかな?」

「あ。じゃあまだ肉まんありますからご用意します」

「うん。ありがとう、さん」

ニコリと笑いあう元就とに、くのいちは今の内だと逃げて行った。
甲斐は仕方なくくのいちを追いかけた。

結局のところ。
悩む必要なんてどこにもないと言う話だ。






18/12/09
19/12/29再UP