武将番付。



ドリーム小説
ある日のこと。
が元就の室へと茶を持っていき、障子を開けると。

「大殿。隆景様。お茶をご用意いたしました。休憩になさいませんか?…大殿?」

二人で読書をしていると言う話だったが、何やら苦い顔をした元就と、苦笑している隆景がそこにいた。

「あぁ、ありがとうございます。殿」

隆景が入って来たに対し笑顔で答える。

「さぁ父上。少し休みましょう」

「あぁ、そうだね…」

「大殿。どうかなさったんですか?」

二人に茶を、菓子も添え出すが、は元就の様子が気になり彼の顔を伺い見る。

「何かお困りごとが?…戦でもまたあるのですか?」

隠居したと言っても、結局また現役復帰となってしまった。
だから、その元就が考え込むとなると、近々また戦でも起こるのだろうか?と不安になる。
そのの表情に気づいたのか、元就は小さく息を吐き後頭部をかいた。

さんにそんな顔をさせるつもりはなかったんだけどね。すまないね」

「いえ。違うなら別に」

ならばどうしたのか?と元就に問うも、元就は微妙に言いにくい様子だ。

「先ほど武田の忍びがここへ来たのですよ」

代わりではないが、隆景が理由を話し始めた。

「え!?忍びって。お二人とも、命を狙われたとか!?」

その割には落ち着いてみるが。

「いや、単純に今、巷で流行っていると言うものをわざわざ父上に見せに来たんだ」

「巷で流行っているもの?」

さんは知らないのかい?」

「はぁ…今、何が流行っていましたか…」

は首を傾げる。
女性の間で流行っているものならば、多少は耳に入るも、元就が興味を示すような流行りものの事など流石にわからない。

「上司にしたい武将番付。と言うものなんですが」

それは巷と言っても、兵たちの間でのことで、その生の声で作られた番付らしい。

「その番付が何か?」

「それがね」

隆景は苦笑し、元就は申し訳なさそうに頭をかいている。
聞けば、その番付。
五位北条氏康。四位武田信玄。三位豊臣秀吉と言う順位で、いずれも民の心をつかんだ名将ぞろいだ。
理由も、庶民派の秀吉は足軽の気持ちがわかっているとか、小田原の安定感は神とか、信玄公最高などの納得できる(?)理由ばかりだそうだ。

「一位は上杉謙信公だったのですが」

「はぁ」

には話がまったく見えない。
だから何だと言うのだろうか?と。
ちなみに六位は織田信長だったそうな。

「父上は上司にしたくない武将の三位に選ばれていました」

「え?」

「理由は、話が長い。話がつまらない。説教くさい。だそうです」

「外れていないだけに悲しいね」

しかも、忍びはどうやらそれを見せる為だけに、わざわざここへやってきたらしい。
気づけば忍びの姿もなく、残された二人は若干微妙な空気に包まれたそうだ。

「…単なる嫌がらせですか?その忍びの」

だとすると地味に酷い嫌がらせだとは思った。

「それで大殿は落ち込んでいるのですか?」

「いやぁ、それは。自分でも当たっていると思うから信憑性のある番付だとは思ったよ」

「だけど、面と向かって言われたら面白くないですよね…酷いなぁ、上司にしたくない武将三位って。大殿、とっても素敵なのに」

ポロっと漏らしたの一言に元就が顔を赤くした。

「残念ですが、兵の前と殿の前での父上の姿は別でしょうから」

「へ?」

殿の前では父上もカッコつけたいでしょうし」

「こら、隆景」

隆景が言うには、さき程述べられた理由。
話が長いとか、つまならいなどと言う事を元就がにしないだろうと言いたいらしい。
しかも、兵達の前では軍略家としての顔もあるので、良い印象だけにはならないだろうと。

「それはそうでしょうけど…」

「ふふっ。父上贔屓の殿には面白くない番付ですね」

隆景は茶を飲み、菓子も一口含んだ。

「巷の流行りより、殿一人の意見の方が父上は重要でしょうし」

「あ〜そう言われてしまうとねぇ」

「羨ましいですね、父上」

元就も悪い気はしないようだ。
先程の苦い顔は消え失せ、今は息子の言葉に口元が緩んでいる。

「けど、そう言う…武将番付って言うの、今も昔も好きなんですね。人って」

「今も昔も?…あぁ、さんの居たところでもそう言うものがあったと言うことか」

「ありましたよ。好きな武将ランキング。上司にしたい戦国武将ランキングとか。あ、ランキングってここで言う番付ですね」

「へぇ。中々興味深い内容ですね、それは」

「織田信長は大抵その番付では上位に入っていましたけど」

から見れば、好きな武将は別として、上司にしたいか?と問われれば流石に遠慮したい人だ。
彼から見れば、自分は興味を湧くような、彼の期待に応えられるような部下ではないだろうし。
失敗して、どんな処罰が下るかと思うと恐怖でしかない。

「それは、忍びが持ってきた番付表の理由に書いてあったね」

それでも、信長を慕う武将、家臣たちは居るので、人それぞれなのだろうが。

「あとは…お嫁さんにしたい女優ランキングとか、隣の部屋に引っ越して欲しい芸能人ランキングとか、抱かれたい芸能人、抱かれたくない芸能人ランキングとか…」

わかりにくいかと思い、は元就と隆景に女優や芸能人がどんな存在かと説明を加える。
この時代に芸能人と言うと微妙に違う存在だろうから。

「お嫁さんにしたいと言うのがあるなら、その逆。旦那さんにしたいというものもあるのでしょう?」

「ありますね。大抵上位はカッコい芸能人ばかりですが」

いいものから嫌なものまでなんでもあったなと思い出す。
この手のランキングは、芸能人にしてみれば一方的、勝手に言われるので、嫌な内容になればなるほど失礼な話だろう。

「あれこれ想像して楽しんでいるのでしょうけど。そう言うので盛り上がりたいだけだと思いますよ?」

「そうでしょうね。けど、武将番付に関しては本人の耳に入ると、後々面倒なことになりそうですね…あぁ、父上の場合は大丈夫でしょうが」

確かに、自分で悲しいけど当たっている。などと口にするくらいだ。
その番付に投票した者を捜し処罰しようなどとは思わないだろう。

「あぁ、でも。私から見てもお嫁さんにしたい一位は殿かな」

「「え?」」

隆景が笑顔で言った。

「た、隆景。お前は何を」

「先ほど殿が言った番付があったではないですか。私ならばと思っただけです」

「そ、そんな隆景様に選んでもらえるほどじゃないと思いますよ、私」

冗談なのだろう?と思っても、少し照れてしまう
そもそも、そんな番付。ここでは無意味だろうし。

「宗茂が居れば、同じことを言いそうで嫌だなぁ…半兵衛も面白がりそうだし」

元就は嘆息する。
今、彼らがこの場に居なくて良かった。

「でも。父上もそうなのではないですか?」

「「ええっ!?」」

二人して声を上げてしまう。
それを見て隆景は声に出して笑ってしまう。
そんな反応なのかと。
普段は、元就のそばで似たような事をしていると言うのに。
ただ、そう言う形になっていないだけだ。

「面白そうなので、今度うちでもその番付やってみましょうか?お嫁さんにしたい人番付」

「だ、ダメだ。何を馬鹿な事を言っているんだ、お前は…もし、そ、その一位がさんだったら、私が一番困るんだが…」

「な、ないですよ。そんな結果…あ、あ〜もう隆景様冗談ばっかり言って」

普通に考えれば、有名どころでお市とか、濃姫とかじゃないのか?とは言う。

「投票できるのが、毛利軍とすれば結果は変わると思いますよ?」

「あまり馬鹿な事を言うんじゃないよ、本当。誰が相手も、さんはあげないよ」

これ以上茶化すな。と元就にしては珍しく強めに隆景を叱った。





「形にしないとダメなのか…私としては今のままでも十分なのだけど」

隆景も退室し、元就は体を横にする。
は後片付けをしていたが、元就の呟きが耳に入る。

「さっきの話ですか?大殿」

「…ん?…あぁ…まぁね…さんの前で言う話じゃないと思うけど」

元就が考えるのは、を正式に娶れと隆景に言われているような気がしたからだ。

「気にしなくていいですよ。隆景様は大殿をからかっただけです」

「………」

「私は、大殿のおそばに居られて、お世話ができれば十分です」

絶対。と言うわけではないが。
恐らく、元就の方が先に逝くだろう。
それを考えると、を残してしまうことを思えば今の形のままの方がいいのかと。
自分が逝った後に、誰かがを幸せにしてくれれば良いのだから。
逝った者には、残した者には何もしてあげられないから…。

「大殿。変な事考えているでしょう?」

「え?いやぁ別に…」

「だったら、いいですよ?私、隆景様の所へお嫁に行きますから」

「え!?あ、冗談だよね?さん」

「大殿が変な事を考えなければ。の話です」

は立ち上がる。
夕餉の準備をしなければといい。

「私は言いましたよ。大殿のおそばに居られればいいんです」

それだけでも不満なのか?とは呆れながら退室してしまった。

「参ったね。これは…」

元就は体を起こす。

「別に私はさんに不満などないよ。そんな事言えば、それこそ罰が当たってしまうよ」

と、の機嫌を直す策でも考えようと、頭をかくのだった。







戦クロ3の武将番付会話イベから。
18/05/13
19/12/29再UP