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比べても。
世界が滅亡に向かっている。 などと言う時に、不謹慎だとわかっているのだが、最近特に思う事がある。 「もう〜!また浮気してー!お仕置きだよ!お前さん!」 「ち、違うんじゃ、ねね!」 「あたしと言うものがありながら〜!!」 浮気されたとねねが夫秀吉に対し怒っている。 今からお仕置きだと秀吉を追いかけ、秀吉は誤解だと言いつつも逃げて回っていた。 一方で。 「本当っ!だらしないね!」 「か、母ちゃん、待ってくれ!」 「言い訳するんじゃないよ。今から扱いてやるから覚悟しな!アンタ!」 何かしでかしたらしい南蛮王孟獲に妻祝融が怒っている。 こちらも奥様に頭が上がらないようで低頭してしまっている夫。 さらに。 「また勝手に酒を持ち出しただろ?呂蒙殿に叱られるってわかっているのかい?アンタは」 「うるせーな。なんで、んな事、手前に言われなくちゃならねぇんだ」 「アンタが馬鹿しないように見張ってやってんだよ。俺だっていい迷惑なんだ」 孫呉の武将凌統と甘寧が喧嘩をしていた。 3組の様子をが見ていた。 「あれ?何しているの?ちゃん」 「あ。半兵衛さん」 竹中半兵衛がの姿を見て声をかけた。 最近ゆっくり昼寝ができないと愚痴っている半兵衛。 愚痴りながらも、妖蛇討伐の為に頑張ってくれているのだ。 「何ってほどでもないのですが…なんかいいなぁと思って…」 「え?何が?」 半兵衛がよくわからないと首を傾げる。 わからないからの視線を辿るととある3組が騒いでいるではないか。 「もしかして…あれ?」 半兵衛がまさかと思いつつその3組を示す。 は少し照れたように頷く。 「羨ましいなぁってちょっと思っただけです」 「……ごめん、ちゃん。どの辺が羨ましいのかわからないなぁ」 奥さんが夫を叱っている光景など。 しかも、3組目は同僚に叱られているではないか。 「えと…私も、あんな風にやり取りしたいなぁ…って」 「………ちゃんが…元就公と?…」 二度目の頷き。 「や……それはどうなのかな?」 は毛利元就の世話をしている者だ。 夫婦ではないが、夫婦に近い関係。 半兵衛や立花宗茂などがにちょっかいを出すと、大人げなく拗ねたり邪魔をする元就がよく見られる。 を大事にしているからなのだろうが。 「変。ですか?」 「変って言うか…わざわざしなくてもいい事じゃないのかな?」 「そうですか?」 「あ。よく考えてみれば似たようなしているじゃないか、ちゃんは」 「?」 半兵衛はへらっと笑う。 「だって、元就公を叱ることができるのってちゃんぐらいでしょ?普段から叱られているじゃん」 部屋を片付けろ、本を積み上げておくな。 などと、よく屋敷で叱られている元就を半兵衛は見たものだ。 だが、この異世界ではそんな光景は見られない。 だからは羨ましいのだろうか? 「は、半兵衛さん。ちょっと違う…」 「何が?」 「大殿を叱りたいってわけじゃないです。なんて言うか…あんな風に言い合えるような…」 「元就公と喧嘩してみたいってこと?」 「…喧嘩はしたくないですけど…なんか、いいなあって思えて…」 半兵衛は乾いた笑みが出てしまう。 今の状況、一部ではピリピリしていると言うのに、揉め事に自分から突っ込みたいと言うの気持ちがわからない。 「こんな状況だから、皆仲良く。の方がいいんじゃないのかな?」 「それはそうですけど。大殿と私って年の差があるじゃないですか…」 「そうだね。親子って言われても可笑しくないくらい?」 「だから…基本的に大殿を叱っても、大殿はすぐに謝ってくれるし、逆に宥めてくれるし…」 なんとなくだが、半兵衛はの言いたいことがわかった。 「そっか。元就公の方が大人だから、ちゃんに対してむき出しに怒るって事ないよね。 あそこの夫婦みたいに喚くことないし。それが羨ましいんだ」 が言うように、まぁまぁと元就は宥めるだろう。 喧嘩にならないように回避するだろうし。 だけどにしてみれば、もう少し本音で言い合いたいって所だろうか。 喧嘩するほど仲がいい。みたいな? 「無理かな…って気はしますけど」 「あはは。無理って言うか…年下の子相手に激怒する姿は見たくないなぁ。みっともないよねぇ」 「ですよね」 「叱る。って事ならば、傍から見れば親子喧嘩にしか見えないんじゃないの?」 父親が娘を。説教する。みたいな。 「怒らせてみたいなら、とりあえず不満でもぶちまけてみれば?」 「大殿に不満…」 が考えている。 「でもさ、俺が思うに。元就公って怒る時もあまり感情露にしない気がするけど」 「あ…そうですよね」 「多分、静かーに怒っているかも。それか、逆に満面の笑みでも浮かべていそうだよ」 「半兵衛さんに言われてみて、そんな気がしてきました…変な事を言ってすみませんでした、半兵衛さん」 が半兵衛に頭を下げた。 「ううん。中々面白い話が聞けたからいいよ」 「あと。言われて考えてみたのですが、大殿への不満ってないです…」 「いっぱいありそうなのに?」 部屋を片付けない。等のいつものあれは不満にはならないようだ。 「でもさ。面白そうだから、一度元就公に喧嘩を吹っかけてみようよ。俺も協力するしー」 「半兵衛さん。さっきと言っている事違いますよ?」 「そう?ほら、元就公がそれでちゃんを叱りつけたら、俺が傷心したちゃんを癒してあげようと思って」 「こら。それが狙いかい?半兵衛」 ぬっと現れた元就。 相変わらず、が他の男性と楽しく会話している姿にやきもきしているようだ。 半兵衛の頭を軽く小突く元就。 「いやぁ、ちゃんが元就公と大喧嘩してみたいって言うんで、あそこの夫婦みたいに」 いまだに騒いでいる3組。 一組は違うが…。 それを見て元就は嘆息する。 「私としては勘弁してほしいよ…さんにあんな風に叱られたくないよ…」 「あ、あの…私、別に叱りたいわけじゃ…」 「ちゃんがおねね様や祝融さんみたいになったら嫌なんでしょ?元就公は。だってかかあ天下だもんね」 「半兵衛さん。お二人とも、素敵な奥様だと思うんですけど…」 祝融の事はあまり知らずとも、ねねに関しては半兵衛は付き合いも長いので知っている。 夫を支える良妻であるのも。 だけど、たまに見るあの光景にその良妻が恐妻にすり替わってしまうのだ。 「そうそう。さんは、今のままが一番いいんだからね」 「大殿…それは喜んでいいのかな…」 「本当。元就公には勿体ないなぁ。さっきもちゃんは元就公に不満はないって言っていたし」 「私もさんに不満はないよ」 「はいはい」 「不満があるとすれば、君たちのような輩がさんの周りをうろうろしている事ぐらいかな?」 「えー酷いなぁ、元就公は。俺、結構ちゃんを守ってあげているんですよー?」 半兵衛は手を後頭部で組んだ。 不満いっぱいに唇を尖らせて。 「守るって?」 「さっきも。ちゃんが一人で居たところを、軟派な軍師さんが声をかけようとしていたんだよー」 先に半兵衛が声をかけていなければ、彼に連れていかれたかもしれないと。 軟派な軍師さんは、よく似たような軟派な鉄砲使いと女性に声をかけている。 元就は小さく唸る。 「まったく油断ならないなぁ、ここも」 元就は頭を掻いた。 「さっさと妖蛇を倒して、さんと以前のような生活に戻りたいよ」 「それは私も同じです。大殿とゆっくり過ごしたいですから」 「じゃあ、まだまだ昼寝返上で頑張らないといけないかなぁ」 半兵衛が二人の為になどと言って伸びをする。 「俺も、お屋敷に遊びに行くの楽しかったし」 「そうですね。宗茂さんやァ千代さん、官兵衛さんが来てくださるの楽しかったです」 「というわけで、元就公。あなたも頑張って策を出してくださいよ?」 「あぁ。わかっているよ」 ほんの些細なことでも、あの生活がよかったのだ。 元通りになれるかわからないが、そうなる為にもう少し頑張ろうと言う半兵衛。 「わ、私も頑張ります!大殿や半兵衛さん達のお手伝いしますから!」 「うん。それは心強いよ、さん」 元就はの肩に手を置き、に笑みを向けた。 「手始めに策でも練ろうか、半兵衛」 「はいはーい。付き合いますよ、元就公」 「じゃ、じゃあ。お茶用意します、私」 茶菓子も用意します。とは支度をしに駆け出した。 元就と半兵衛もその後に続いた。 きっと、他の者も集まって遅くまで盛り上がりそうだ。 12/06/11
19/12/29再UP
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