指定席。




ドリーム小説
竹中半兵衛の出した策により、毛利元就、毛利家は織田家に仕えることになった。
竹中半兵衛、黒田官兵衛、そして毛利元就。
最強の三軍師が誕生したことになる。
かと言って信長が天下を取れたかと言うと、それは別の話で。
毛利と同盟を結んでいた立花は一緒に織田についたが、九州には他にも反信長勢が存在し。
四国もいまだに信長の物とはなっていなかった。
その為に話し合おうなどとよく両兵衛は元就の所へやってくる。
両兵衛と言うか、半兵衛が官兵衛を無理矢理連れてくると言うのが正しい。

「だけど・・・・釣りに行くのはどうなのかな?」

今日は三人で近くの川へと釣りに行ってしまった。
は空を見上げる。
気持ちいいくらい清々しい青空に、温かい太陽の日差しを浴びれば室内に籠もるよりはマシかと思って。

「何か釣り上げてきたら、それが夕食になるのかな?」

とりあえず、いつ戻ってきてもいいように昼食の準備はしておこうとは思った。



***



魚釣りに出かけた三人は、その川の主を一度は釣り上げたものの逃がしてしまったと言っていた。
天下取りのように簡単に行かないかとボヤキながら昼食を平らげ、そして室で新たな策を練り始めた。

「本当、大殿は忙しいね。最近は」

少し前にかまってくれないからと拗ねてしまった
腹いせではないが、官兵衛を強引に引き連れて城下へ行ったものだ。
官兵衛からは元就がのことを随分気にかけて考えてくれていると聞いていたので。
自分的にはそう深く考えずに官兵衛との城下散策を楽しんだ。
官兵衛が楽しんでくれたかは、顔を見てもいまいちよくわからなかったが。
お土産を買って戻ってみると、廊下を右往左往している元就を見つけた。

「や、やぁおかえり!ど、どうだったんだい?」

と官兵衛の姿を見て言った元就。
顔は笑っていても、態度が焦っているように見えて笑ってしまったものだ。
元就は何を焦っているのだろうかと。

「元就公は単にちゃんが官兵衛殿に盗られちゃったと思って焦っているんだよ」

なんて半兵衛は言ったが、官兵衛が物凄く嫌そうな顔をしたのが印象的だった。
私、嫌われているのかな?とは思ったが、半兵衛に言わせると。

「官兵衛殿は面倒臭いことに巻き込まれたのが嫌なだけだよ」

といい。一番全てを見通しているのは半兵衛なのかもしれないと思った。
午後は恐らく三人でまた難しい軍略の話だろう。
は三人の居る室から少し離れた場所で待機する。
呼ばれればすぐにでも行ける範囲に。
は縁側に腰掛け縫い物を始める。
着物を仕立てるなど大きな事はできないから、小物作りしかやったことはない。
いつか元就に似合いの着物でも自分で仕立ててみたいものだが。

「あー疲れちゃったよ、本当」

「半兵衛さん?」

一人だけ半兵衛がやってきた。
とりあえず厠だと言っての後ろを通りすぎて行く。
視線を戻して縫い物の続きを再開する。

「へぇ器用なものだね。ちゃん」

いつの間にか半兵衛がの手元を覗き込んでいた。

「そうですかね?あまり得意じゃないんですよ」

あまり見られると緊張して失敗しそうだ。

「って・・・・半兵衛さん、戻らなくていいんですか?」

「うーん。そうなんだけどねー」

今は天下を取るための策を練っている最中らしい。
釣りをしながら三国志の曹操と袁紹、主に袁紹の話で盛り上がり。
その延長で、今も三国志の話をしているそうだ。

「今は赤壁の戦いの話をしているよ」

「あー私もそれは知っていますよ。流石に皆さんの話に交じれるほど詳しくはないですけど」

「そう?だったら聞くだけでも楽しめるんじゃないかな?」

楽しめそうだなと思いつつも、自分と彼らの頭の良さには天と地の差がありすぎる。
きっと難しい専門用語とか出そうで、その単語を理解するだけでも時間がかかりそうだ。
歴史の話なのに、聞いているには難しい物理の内容に聞こえるかもなどと考えてしまう。

「けどねー」

行こうか?と誘ってくれたのかとは思ったのが。
半兵衛は面倒臭そうに頭を掻く。

「俺、疲れちゃったんだよ。本当・・・・」

「川の主を吊り上げ損ねたんですよね?」

「まぁね」

その後昼食を腹いっぱいに食べれば自然と眠気に襲われると言うわけだ。

「だからさ、ちゃん」

「はい?」

半兵衛はニッと笑みを浮かべた。



***



「・・・・・・半兵衛が戻ってこないね・・・」

厠に行くと行ったまま戻ってこない半兵衛。

「どこかで寝ているのではないか?」

ずっと昼寝をしたいと言っていた。
官兵衛には厠へ行くと言う半兵衛の言葉はただの逃げの口実だろうと判断したらしい。

「うーん。じゃあ話の続きはどうしようか」

「別にたいした話でもないから、卿の好きにすればいい」

「あはは。参ったね・・・」

天下を得るための策を話し合おう。
などと言ったものの、し始めたのは三国志に出てくる戦の話。
過去の戦と今を照らし合わせて。
結果を知っているからこそ、色々好きに語れてしまう。

「あ。お茶がないね。さんに淹れてもらおうか」

半兵衛が戻ってこないから、てっきりにちょっかいでも出しているのかもと思ったが。
話し声が聞こえてこないのでそうではないらしい。
多少離れていても、宗茂がと話しているのを聞けば気になり飛んでいくのが元就だ。

さん。お茶のおかわり淹れてもらえるかな?」

ついでに彼女と一緒に菓子を食いながらと言うのもいいだろう。
両兵衛が毛利家に来るようになって、と過ごす時間は減った。
わざとそうしていないか?と元就には思えたが、半兵衛に言われてしまう。

「そう言う時間は待つものじゃなくて、自分で作るものでしょう?」

「そうですかー?俺は強制していませんし、ちゃんを放っておいているのって実質元就公ですよー」

などなど。
嫌なら俺達の誘いを断ればいいのに。
確かにそうかもしれないが、遠くから来てくれたことを思うと、帰れと言うのも気がひける。
それにも客が来ることに嫌がっているようには思えないから。
男性客だとそれなりに心配してしまうが、たまにァ千代も訪れるから。
女同士で何やら楽しんでいることもある。

「・・・・・・あれ?」

呼べばいつもすぐに返事があるのに、一向にの返事は来ないし、本人も姿を見せない。

「半兵衛が連れて行ってしまったのではないか?」

「・・・・・そ、そんなぁ・・・」

官兵衛はそ知らぬ顔で物を言う。
けど。

「お、大殿〜」

の困惑した声が聞こえた。
けど、少し小さめ。

さん!?」

縁側に出てみれば、座り込んだと、そのの膝の上に頭を乗せて寝ている半兵衛がいた。

「大殿・・・すみません。お茶・・・ご用意できなくて」

「そ、そうみたいだね・・・・」

半兵衛がの膝枕で寝ているから動けない。
実に簡単な話だ。

「半兵衛も面白い事をする」

「私にしてみると、まったく面白くないよ」

官兵衛もいつの間にか室から出てきていた。
元就の反応をわかっての半兵衛の所業に珍しく笑っているようで。

「卿は本当・・・・あの娘のこととなると己を見失うな」

「え!そ、そんな事はないと思うが・・・・」

参ったと頭を掻く元就。

「こら、半兵衛・・・起きないか」

「ちょ!大殿!ダメですよ、無理矢理起こすなんて可哀相じゃないですか!」

「え、だって・・・」

半兵衛の体を揺り動かそうした元就にが非難した。

「半兵衛さん、疲れたって言うから・・・・」

「けど、そこで寝なくてもいいだろう?そこは私の指定席だ」

「・・・・・・そ、そう言う恥ずかしい事を人様の前で言わないでください、大殿・・・・」

が顔を赤くして視線を逸らした。

「人前と言うか、釘をさしておかないと再犯するだろうし」

「と、とにかく!お茶は他の方に用意してもらってください。私は動けませんから」

「私が用意しよう」

やれやれと呆れた様子の官兵衛が申し出た。
二人のやり取りを見ているのも馬鹿馬鹿しいから、自分で用意した方が早いと思ったのだろう。

「あ。す、すみません。官兵衛さん」

官兵衛はすでに馴染みになっているらしい台所へと行ってしまう。

「半兵衛。さんを困らせるんじゃない。いい加減にしないか」

「大殿。だから無理矢理起こすのは可哀相です」

「狸寝入りをしているだけだよ。大方私の反応を見て楽しんでいるのだろう」

ペチペチと半兵衛の顔を軽く叩く元就。

「本当、酷いですよね、元就公。気持ちよく眠っている者を起こしますか?」

半兵衛は体を起こし大きく欠伸をする。

「寝るなら別の場所にしないか。ここはダメ。私専用なんだ」

「でしょうね〜気持ち良さそうだと思ったんで使わせてもらったんですよ」

ニコニコと笑みを浮かべひるむ事ない半兵衛。

「仕方ない。元就公にお返ししますか」

言って立ち上がる半兵衛。
室に戻ってそこで昼寝の続きをするらしい。

「大殿〜」

「彼の見た目に騙されちゃダメだよ。甘やかすと付け上がる」

「それは大殿にも言えます」

「あはは。そうかな。でも今回の半兵衛はやりすぎた」

そう言って元就はごろりと横になりの膝の上に頭を乗せた。

「大殿」

さんが膝枕をしていいのは、私だけなんだ」

はっきりと断言されると恥かしいのかは簡単に顔を赤くする。

「しかし、宗茂も半兵衛もわかっていて毎回さんにちょっかいを出す・・・」

「大殿にかまってもらいたいんじゃないですか?」

「なんでそうなるんだい。私としては放っておいて欲しいよ」

その所為でとの時間が削られる方が嫌だと思う。

「でも。大殿は楽しそうですよ?皆さんといる時も」

「まぁ・・・つまらないわけじゃないけど・・・・けど、さんとも一緒に居たいと思うから」

戦がまた起これば、出陣を命じられれば出ねばならないのが今の毛利家の立場だ。
少しでも彼女との時間を大切にしたいと思う。

「今度はさんも一緒に楽しめる事をしよう。うん、それがいい」

「私も一緒にですか?・・・・そうですね、それは楽しそうですね」

まだ何とは決められないが、これなら周りも余計な真似をしなくなるだろうから。







自分で淹れた茶を正座し啜っている官兵衛。
そのすぐそばで横になっている半兵衛。

「あーあー・・・・枕がなくても寝れるけど、やっぱりあった方がいいよねー」

「座布団でも枕にすればいい」

ちゃんの膝枕。中々良かったなー」

元就が予想していたように、半兵衛は元就の反応見たさにからかったようだ。
だけど、彼も予想以上に膝枕に好感触を示してしまった。

「元就が聞けば、反織田に寝返りそうだな・・・・」

「えーそれは困るよ。俺としては元就公が敵に回ると面倒臭いよ」

互いの策略を披露するには楽しめるものだが。
それを打ち破るとなると中々に面倒だ。
それでも元就に勝てたのは、官兵衛と言う強い味方が半兵衛には居たからだ。

「ならば我慢しろ」

「はいはい・・・・」

仕方ないから言われた通りに座布団を折り曲げて枕にする半兵衛。

「あ。官兵衛殿」

「なんだ?」

「官兵衛殿が膝枕してくれる?」

「断る」

「だよねー」

わかりきった官兵衛の返答に半兵衛はくつくつと笑った。







半兵衛EDで、「君のために〜」と繋がっているかの話。
あ。ドラマCDの中で釣りしていました。それもネタにしています。
10/01/15
19/12/29再UP