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風が吹いて。
豊臣秀吉死後、東西に別れて天下を争う戦いが起きたが西軍が勝った。 西軍は秀吉亡き後でも豊臣の世を守ろうとする側だった。 色々問題はまだ山積みなのだろうが、もう戦が起きないと思えばなんてことはないだろう。 と言うより、この人にはそんなのは関係ない。 「だって大殿は隠居生活を満喫していますもんね」 「んー?どうしたんだい、急に」 毛利家は天下に関わらないように。と毛利元就がわざわざ遺言を残した。 歴史家になりたかったと言う元就は家の事を輝元らに任せて死んだ振り・・・。 もとい、隠居生活を送っていた。 けど、時代はそうも言っていられず結局寝ていたところを起こされてしまった。 それでもなるべく関わらないようにと常に後方に控えていた。 関ヶ原でもどっちに着くなどとは意見を述べず、輝元らに任せて。 輝元らは西軍、石田三成についた。 西側の諸侯が多くそちらについたからと言うのもあるかもしれない。 「毎日のんびりできていいですねーって話です」 「あぁそうだね。いいね、こうしてのんびりできるのは」 元就はの膝の上に頭を乗せて寝ている。 毎日好きな歴史書を読み、とのんびり話をして過ごす。 傍から見れば面白みもない生活かもしれないが、元就にしてみればその面白みのない生活が 一番重要なのかもしれない。 「大殿。本当だったら徳川の世になっていた。と話したら驚きますか?」 「いや、別に驚きはしないね」 「あれ、そうなんですか?今普通に豊臣の世なのに」 は少し驚かそうと思ったのだが、元就の反応があまりに普通なのでこっちが驚いた。 は元々ここではない遠い未来から迷い込んでしまった子だ。 歴史の流れは知っていたがあえて黙っていた。 済んでしまったことだから、違う流れに乗ってしまったと思うから少しだけ話を持ち出したのだが。 元就は「意外かい?」と小さく笑った。 「太閤殿下が亡くなった時に、また揉めるだろうなと予想はついたよ。 言ってはなんだが、跡継ぎの秀頼公には太閤殿下ほどの力はない。秀吉公の力に従っていたものさ。 それでもしばらく諸侯が大人しくしていたのは前田利家殿の目があったからね」 「実際その通りですよね。前田様が亡くなって一気に関係が悪化しましたし」 それは秀吉の子飼いと言われ常に彼を慕い従ってきた者のことだ。 誰もがその「家」を守ろうとしたが、正直すぎる部分で対立してしまった。 「抑え役の前田殿がいなくなれば、家康殿には怖いものがないわけだ」 「大殿はその抑えにはならないんですか?」 「私かい?ならないだろうね・・・実際抑えになっていないし。隠居した身だからねぇ」 「やる気がなかったんですよね、本当は」 は面白がって元就の鼻を軽くつまんだ。 「そう見えてしまうか、やっぱり」 仕方ないと元就は苦笑する。 「けど、そうはなりませんでしたね。関ヶ原では豊臣方、西軍が勝ちましたし」 「そうだね」 「なぜでしょうか?私は歴史では東軍が勝ち徳川の世になると学んだんですよ」 この先の豊臣滅亡の話はあえてしないが。 「私みたいなのが来ちゃったから・・・・歴史の流れが変わった・・・なんてことないですかね?」 「さぁね。私にはわからないよ。けど、さんが原因だなんて思いたくないな。 私はさんに出会えて嬉しい、こうして君と過ごせる時間が得られたのだから」 元就はの手を取る。 「西軍が勝ってくれたおかげでこうしてのんびりしていられるしね」 は笑ってその手を握り返す。 「そうですね。私も大殿に出会えてよかったです」 「そうだろうとも」 元就は満足そうに頷く。 「じゃあ・・・結局なんで西軍が勝てたんでしょうね。色々な面で徳川が勝っていたと思うんですけど」 「それはきっと勝ちたいって気持ちが強かったんじゃないのかな?想いの強い方が勝ったんだよ」 「想いの強さかぁ・・・」 「人の想いってのは計り知れないものさ。さんが私に会いに来てくれたみたいにさ」 「私、別に大殿に会いたくてこっちに来たわけじゃないんですけど」 「あれ、そうなのかい?」 正直言って歴史が得意だと言うわけでもないし。 毛利元就と聞いて思い浮かぶは「三本の矢」ぐらいだ。 元就には悪いが、それはないなと思う。 「そこは頷いて欲しかったものだね」 「逆に大殿が私に会いに来てくれればいいのに」 「うん。それもいいなぁ。私の知らないものが沢山あるんだろうね」 「けど、大殿の性格じゃきっと忙しなく感じて疲れちゃうかも。やっぱり大殿はこの時代が合っていますよ」 だからではないが・・・。 「私がこっちに来て正解です、うん」 「じゃあやっぱり、君が私に会いに来てくれたという事にならないかな?」 「そうなっちゃいますか?」 「なっちゃいますね」 二人は顔を見合わせて笑った。 どちらにしても、今のこの状況は二人にとって悪くないものなのだ。 *** ある日立花宗茂が元就に会いに来た。 「お久しぶりです、元就公」 「やぁ久しぶりだね。元気だったかい?」 「えぇ、見ての通りです」 九州を島津家と共に守っている立花家だが、いったいどうしたのだろうか? 「殿もお久しぶりです。相変わらず元就公のお世話で忙しいですか?」 宗茂に茶を出す。 彼の問いかけには笑って「そうですね」と答えた。 「おいおい、さん。私の世話で忙しいってのはなんだい?」 「宗茂さんのおっしゃる通りだと思いますよ?」 「まぁお二人が相変わらず仲睦まじいと言うのはわかりましたよ」 はっきりそう言われてしまうと元就もも少々頬を赤く染めてしまう。 「本当元就公が羨ましい」 「何を言っているんだい、君にだって大事な子はいるだろう?彼女を放って何しているんだい」 軽く咳払いをしてから茶に手を伸ばす元就。 宗茂も遠慮なく茶に口つけた。 「もしかしてァ千代の事を言っているのですか?」 「そうだよ」 「そう言われましても。別に俺とァ千代は元就公が思うような関係ではないですしね」 ァ千代の父道雪の養子となっているから一応義兄って立場なのだ。 「ァ千代はまだまだ餓鬼ですよ」 「その餓鬼である彼女に家を任せて来たのだろう?宗茂は。悪い奴だな」 「そうですね。彼女が居てくれるから好きにやれているのですが・・・・」 悪びれる様子のない宗茂。 以前に会った時よりも性格が変わっていないか?とは思えた。 優しい雰囲気のするお兄さん。紳士と言う言葉が似合うと感じたのだが。 まぁ思うだけであえて口にはしなかった。 口は禍の元。余計なことは言わないのが利口なのだ。 「それに俺としてはァ千代よりも、元就公を相手にできている殿に興味がありますよ」 「え?」 美男子と呼べる宗茂に微笑まれてしまう。 滅多にないことだから耳まで赤くなってしまう。 「わ、私に興味って・・・・あ、あの」 「言葉の通りですよ。どうですか?今度俺の相手もしてくれませんか?」 「宗茂。私は前にも言ったぞ。さんはあげないよ」 元就が宗茂を睨む。 「そうでしたか?」 「宗茂」 「あーはいはい。そうでしたね」 宗茂は元就の睨みにも怯む様子はない。 本当彼は大物だ。 「そ、それで、今回は大殿に大事な用でもあるのですか?話の邪魔になるなら私は下がりますけど」 は恥かしさを抑えて別の話を振る。 「いえ、お気になさらず。俺はただ外の世界が見たくて旅をしているだけなんですよ」 「旅。ですか」 「えぇ。そのついでに元就公や三成たちの顔でも見て行こうと」 いつ終えるかわからない旅であるが、行き先をそう言う風にして決めているらしい。 九州を出て一番近い場所に居たのは元就だったから、最初に彼に会いに来たそうだ。 「それもいいが、ちゃんとァ千代に文ぐらい出すんだぞ」 「まだ出立してそんなに経っていませんよ。知らせるほどのこともありませんし」 家が恋しくなる思うほどでもないらしい。 でも少しだけ宗茂の気持ちがわかる。 戦のない世の中になったと思えば、自分の好きに過ごしてみたいだろう。 ずっと戦に明け暮れていたのなら。 現に元就だってここ最近ずっと自分の好きなように過ごしているのだから。 なんて贅沢なことだろう。 「そんなわけで少しばかりお世話になります。馬を休ませてあげたいですしね」 「あぁかまわないよ。ただし、さんにちょっかいを出すことは許さないぞ」 「肝に銘じておきます。元就公を敵に回したくないですからね」 「本当にそう思っているのかね、君は・・・・」 頭を掻きながらため息を吐いた元就だった。 *** ふらっとやって来た宗茂だったが、出るときも急でふらっと屋敷から姿を消していた。 一応置手紙はあり、「またそのうち顔を見せます」と残してあった。 「やれやれ勘付かれたようだな」 その置手紙を読み元就は苦笑した。 「勘付くって何にですか?」 縁側で宗茂からの置手紙を読む元就。それを隣から覗き込む。 「あぁァ千代に文を出したんだ。宗茂がここにいるとね」 「あー大殿悪いんだー。宗茂さんを売ろうとしたんですね」 「人聞きの悪い事を言うなぁ。私は単にァ千代が困っているだろうと思ったんだよ」 今のァ千代は国を守る事を第一としている。 宗茂が側に居ればどれほど安心できるだろうか。 「本当ですか?」 「本当だよ・・・・あぁあと・・・・」 元就はの腕を引き、己の腕の中に閉じ込めた。 「さんを宗茂に盗られたくないからね」 「そんな心配しなくてもいいのに・・・・」 薄っすらと頬を染めるも元就の腕の中は居心地が悪くないので、口角が緩みあがってしまう。 「心配だよ。宗茂みたいな美男子相手じゃ私は分が悪い」 「そんなことないですー。私は大殿が大好きなんですよ?」 「宗茂に微笑まれて顔を赤くしていたのにかい?」 「うっ・・・それはですねぇ・・・・・でもでも。本当に私の好きな人は大殿ですよ?」 信じてくださいとは顔をあげ元就を見つめる。 その先には優しく笑った元就が。 「信じるよ、さん」 「大殿・・・」 「だってさんは私に会いに来てくれたんだからね」 それはそう思いたいだけの話で実際はわからない。 どんな理由で自分が戦国時代なんぞに迷い込んだのか。 だが、出会ったのが元就で良かった。 好きになったのがこの人で良かったと思う。 今こうして居られるのも、すぐ側に居てくれる人が元就なのも。 「はい。私は大殿に会いに来たんです」 は元就の背中に手を伸ばした。 「大殿、大好きです」 「うん、私もさんが大好きだよ」 宗茂がこの場に居たら言われてしまうかもしれない。 「ほら、やっぱり仲睦まじいですよ」 なんて。 「大殿、時間はたっぷりありますから」 「ん?」 「私たちも宗茂さんみたいに旅に出てみませんか?」 「それはいいね。さんとならどこに行っても楽しめそうだ」 まずはどこに出かけようか。 宗茂演武のED設定です。
09/12/18
19/12/29再Up
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