君と出会って・・・。




ドリーム小説
遠呂智は倒れた。
人の力によって。

いまだ劉備だけが遠呂智の人質になっていたようだが、蜀の諸将たちを中心とした趙雲軍が
劉備を救出し、遠呂智を倒した。
孫呉も曹魏も織田軍もそれぞれ遠呂智の残党とやりあい、それを援護する形となった。

遠呂智が倒れ平穏が訪れる。
その証拠に今まで覆われていた暗い空から青い見慣れた空が顔を出した。

「世界は・・・・・このままか・・・・」

このまま。と言うより遠呂智によって作られた新しい世界となり。
創造主がいなくなってもそれが維持されているようだ。

「喜ぶべきなのだろうな・・・」

三成は青空を見て呟く。
世界がこのままであるのをどこかで望んでいたのだろうか?
たった一人の、自分が愛した人の為に。





曹魏の本拠地となる許昌へ戻ってきた。
謁見の間では曹操を中心とし遠呂智打倒を果たしたことで盛り上がっていた。
曹丕はそれを見届けたあと、一人後にする。
オレンジ色の夕焼けが目に入る。
今まで空色などなんとも思った事はないのに、ごく当たり前の夕焼けが。
今はとてもいとおしいものに感じるから不思議だ。

「・・・終わったな」

曹丕の前に三成が姿を見せる。

「終わってはいない・・・・覇道はまだ道半ば。私が成さねばならぬ」

「覇道か・・・前からひとつ聞きたかったのだが・・・・。それは皆が笑って暮らせる世なのか?」

三成の主がずっと成そうとしている世。
覇道が成されれば、主が成そうとしていた世になると言うのだろうか?

「少なくともお前は笑いそうにないな」

話には聞かされるものの、曹丕が穏やかに笑って暮らすなど三成には想像がつかなかった。

「フッ・・・」

曹丕は小さく笑う。
その答えはこれから見られるのかもしれない。
二人の下へ曹丕が自ら得た仲間たちがやってくる。
以前は敵対していた者同士だったのに。
父曹操を慕う曹魏ではなく、曹丕個人へこの先を見出した者たちだ。
だがこれから先、彼らは彼らの道を行くだろう。
それはいい。当然のことだ。
だが得られた絆はそう簡単に切れる事はないだろう・・・・。

「子桓!」

妹のような存在であるが駆けてくる。
妻である甄姫も一緒にいるが、彼女は穏やかに微笑みながらゆっくりと歩いてくる。

「お祝いしようって。孟徳様たち宴を始めちゃったよ。子桓も行こう」

曹丕の腕を引く

「甄姉様。早く、子桓を連れて行かなきゃ〜」

「うふふ。そのように慌てることはなくてよ、

「だって父様たちだけで盛り上がるなんてずるいです」

皆一緒に。ここまでやってきたのは曹操たちだけではないのだ。
曹丕が曹操に代わって軍を率いてきたのが大きいだろうに。
はそう言いたいらしい。

「わかった。行こう・・・・だが、

「なに?」

「誘う相手を間違っている」

「え・・・・」

しっかりと曹丕の腕を掴んでいる

「隣で拗ねている男を放っておいて良いのか?私を優先するのはまぁ当然だろうが」

「優先とか、別に、私は」

隣で拗ねている男、三成のことか。
皆の前でそう言われ三成は「拗ねてなどおらぬ!」と声をあげる。
誰も三成とは言っていないのに、自分であると認めたようなものだ。
三成の普段見たこともない、いや初めて見せる態度に皆は笑った。
が曹丕から離れ三成の前に立つ。

「三成さんも行きましょう。おねね様が沢山美味しいもの作ってくださったんですよ」

からかわれっぱなしで釈然としない三成ではあったが、に促されると邪険にもできない。
夏侯惇や曹丕ではないが、自分もに甘いものだと再認識してしまう。

「そうだな。行くとするか」

曹丕は甄姫の肩を抱き歩き出す。
三成たちもその後に続く。
今夜はきっと大盛り上がりだろう。





魏、呉、蜀。そして織田、武田、上杉など。
有力な統治者たちが集まり、現状を話し合った。
どうやら今の所、この世界に異変と見られるものはなく。
安定しているようだ。
三國と戦国の世の融合した世界。
新しい世として、そこの住人として自分たちは暮らしていかねばならぬようだ。
そこで、改めて情報をまとめ、地図を作成する。
大急ぎで作られたそれを基に、自分達の治める領土を話あった。
誰か曰く。
意地っ張りの御仁の集まり。だそうだからそう簡単に纏まらず。
新たな火種になりやしないかと心配されたが、元々治めていた領土を中心とすればなんてことなく
話は済んでしまう。
元々広い大陸の一部に新たな土地が加わって出来た世界だ。
そう揉める要素はなかったらしい。
そして、各々が引き上げていく。
新たな地盤で新たな世を築く為に・・・・。





「子桓。この後暇なの?」

曹操の後継者として認められている曹丕。
遠呂智出現前に比べて格段と忙しくなった。
曹操から任される仕事が増えているのだ。
いずれはそれら全てを自分が負うのだから泣き言など言うまい。
昼食を食べたあと、に午後の予定を聞かれた。
甄姫と。3人で食事をしていた。

「あぁ。そうだな。久しぶりに時間ができた」

「ふーん」

ようやく活気の戻ってきた町並み。
穏やかに過ぎていく日々がこんなに良いものかと思わずにいられない。

「甄、この後「残念でしたー」

ここ最近放っておいてしまっている妻を誘い過ごそうかと思った曹丕。
それをが笑顔で遮った。

?」

「甄姉様はこの後、私との約束があるんでしたー」

「お前・・・・」

「んふふ〜姉様と着物を見に行くのよ。お市様が誘ってくださったの」

方々、各領土へ戻っていった仲間たち。
以降も文のやり取りなどは続いている。
その中でお市からと甄姫に個人的に誘いが来たようだ。

「子桓も行きたい?甄姉様の着物姿を見たいと思うでしょ?」

「お前。最近甄にべったりだな」

は噴出しそうになるのを堪えている。
珍しく幼馴染が拗ねているのが目に見えて。

「そうよ。だって私甄姉様大好きだもん。今まで姉様に甘えられなかったからうんと甘えるだー」

「あらあら。ってば」

甄姫も悪い気はしないらしくコロコロと笑っている。

「一番に甘えたい相手がそばにいないから。私に対する嫌がらせか?」

「我が君」

甄姫から珍しく目で制される。
それ以上言うなと。
は一瞬、悲しげな表情を見せる。
うっかり口が滑ったと曹丕は舌打ちしてしまう。

が一番に甘えたい相手。
三成はここ許昌にはいない。
半月も前にねね達とともに、主秀吉の下へ帰っていった。
それを知ったのは本当に直前だった。

「そう・・・ですか・・・・帰るんですね、三成さんも」

多くの仲間たちが己の居るべき場所へ帰っていった。
唯一の例外は蜀の軍師ホウ統であった。彼は蜀へは戻らず。
曹丕の人柄に惹かれたとか、この先を見てみたいとかで曹丕の元へ残った。
もしかしたら三成もとはどこかで期待していたのかもしれない。

「俺の主は秀吉様だ。秀吉様のもとであの方の力になりたい・・・・すまぬ」

は首を振る。

「謝ることないですよ。私は・・・・」

なんて言えばいいのだろう?
一緒に連れて連れて行ってくれと言うべきなのか?
正直それは考えていなかった。
いや、父のもとを、幼馴染のもとを離れることができなかったから。
それは三成にもわかっていたのか、彼はの頬にそっと触れる。

「俺は・・・・少しだけ遠呂智に感謝している。この世界が崩壊しなかったことにな」

「三成さん・・・」

「遠呂智を倒した後どうなるのだろうと。元に戻るのか、崩壊するのか・・・結果このままだった。
それを意味するのはなんなのかはわからない。これから再び何か脅威にさらされるのかもしれないなどと。
だが、世界がひとつになったままであれば、お前と別れずに済む。それだけは遠呂智に感謝する」

まだ不明な点が多すぎるのも確かだ。
だからやるべき事はまだまだ多いのだ。
皆が笑って暮らせる世にする為に。

「私も・・・・」

三成が触れている手をそっと取る
その手を優しく包み込み三成を見つめる。

「不謹慎かなって思うけど、遠呂智がこの世界を作ったから三成さんと出会えて良かったって思います」

大勢の人が傷つき苦しんだ。
自身もそうだった。
けど、そんな世界の中で出会えた人が居たから。
三成だけではない、他にも多くの人と出会えた。

「怖かったです、本当は・・・・・。遠呂智が倒されたあと、どうなるのか。考えないようにしていましたが」

三成ともその覚悟はしておいた方がいいと言われたが。
それよりも彼らの無事を願い、今少しでも一緒にいる時間を大事にしていた。
そして遠呂智が倒されたと知らせが入った時、どうなってしまうのだろうかと不安が一気に訪れた。

「同じ世界に居られるだけでも、充分、ですよね・・・・・」

それでも離れることがわかると悲しいものだ。
泣かないようにしたつもりでも、目に涙が溜まってしまう。
三成はを抱きしめる。

「落ち着いたら・・・・会いに行く。文も出す。なにより、俺の友をお前に会わせたい」

「みつ、なり、さん・・・・」

「夢でも幻でもないのだ。俺とお前はここに居る」

三成の胸に顔を埋めは何度も頷く。

「どうしても我慢できなくなったら、会いにくればいい。迎えに行ってやる」

三成にしては優しい声音に眼差しだった。
そして三成は主の下へ帰っていった。

「そうだよ。嫌がらせだよー」

沈みそうなった気持ちを浮上させる。
曹丕に向かってニッと笑みを見せる。

・・・」

「子桓ばかりにいい思いはさせないんだからね!姉様、子桓には留守番をさせて楽しんできましょうね」

二人に心配かけただろうなと思ったから。
自分は大丈夫である姿を見せた。
強がりの部分も確かにある。
だけど、三成と約束した。
必ず再び会おうと。

「我慢できなくなったら、私から三成さんに会いに行くから平気よ」

「小父上に止められそうだな」

「その時は父様でも許さないんだから」

ならば良いか。曹丕は小さく安堵する。
三成がを置いて行ってしまったとわかったとき、以上に腹立たしいと思ったが。
二人の間でちゃんと決めているのならばいいだろう。
自分が口出すことではないのだ。

「だが・・・・案外。よりも三成の方が我慢できずにやってくるかもしれんな」

「それは・・・・」

は眉を寄せて苦笑する。
嬉しいやら恥かしいやら。

「我が君。お留守番をお願いいたしますね。、そろそろ行きましょうか」

「はい。甄姉様」

「甄・・・」

甄姫は席を立つ。も嬉しそうに返事をする。

「たまには女同士で楽しんできますわ」

「あぁ、楽しんでくるといい」

たまには。などと言うのは可笑しくないか?と思いながらも。
愛した人がそばに居るだけ、自分は幸せなのだろう。





「なんじゃー。最近のお前さんはトゲがなくなった感じだなぁ」

「・・・・・は?」

滑らせていた筆が止まる。
何を突然言い出すのかと主秀吉の顔を見る三成。

「清正達とも上手くやっているようだしの・・・少し心配しておったが、うん。一安心だな」

「・・・・・・・秀吉様。口よりも手を動かしてください」

仕事が溜まる一方だ。主を叱る三成。
だが実は秀吉の言うように、加藤清正や福島正則とソリの合わない三成であったが。
この所諍いも起きず関係が穏やかだった。
別に三成自身、好きでケンカをしかけるわけではない。
寧ろ生意気だとか理由をつけて対抗してくる二人だったから。
だが理由など特にない。
そんな事も気に留めているわけでもないのだ。

「なんじゃあつまらんのう。三成」

「忙しいんですよ。やることが多くて・・・・秀吉様が率先してやってくださらないと終わりませんよ」

「あー。わかった、わかった。だからそんなに目くじらを立てるなぁ」

本当にわかっているのか?と思わずに居られないが、秀吉は書翰に目を通し始める。
ここで戻ってきて半月。
今頃はどうしているだろうか?
大好きな父、幼馴染がそばにいるのだ。寂しいなんてことはないと思うのだが。

「それは違うよ。三成」

「お、おねね様!なんですか、いきなり・・・・」

人の心を詠む術でも持っているのか。ねねに一蹴されて驚く三成。

の性格ならば、寂しくてもアンタの為を思って我慢するような子だよ?」

「・・・・・」

ねねは三成のそばにしゃみこみにっこり笑う。

「会いたい時に、会いに行ってあげなさいよ。行けるときに行かないでどうするよ」

「おねね様、俺は・・・」

二人で何の話をしているのかと秀吉は思うも、茶化すと三成が意固地になるのはわかっている。
だから今は暖かく見守るべきだ。
詳しい話はねねに聞けばいい。
だけど・・・・。

「おう。そうじゃった。・・・・三成。曹操殿に届けて欲しい物があるんじゃ、お前さん行ってくれるか?」

「え?」

「あれまぁ。良かったじゃないのさー。許昌に行けるよ、三成」

秀吉が信頼する三成に頼みたいのだ。そう秀吉は言う。
都合が良すぎないか?と思いつつも、ここは夫妻の心遣いを無下にせずに遠慮なく受けよう。

「わかりました。これから許昌に参ります」

「おう。頼むぞー」

「うんうん。曹丕や夏侯惇殿にによろしくね」

我慢しきれなかった。
と思わずにはいられない。
だが、久しぶりにに会えるならばいい。
土産に何を持って行こうか。
彼女の喜びそうなものを何かひとつ用意しよう。

だから、いま少しだけ待っていて欲しい・・・・。






終わり

09/04/18
19/12/29再UP