内緒が発覚?




ドリーム小説
「あ。三成さん!」

が回廊を行く三成に声をかけた。
だが三成は気づかなかったのか、立ち止まることなく行ってしまう。

「三成さん?」

三成も軍師という立場。
忙しいのだろうなとは思いつつも少し寂しかった。

殿。お一人ですかな?」

「遼様!」

寂しいなと思ったのも一瞬。
昔からを可愛がってくれる武将がに声をかけてくれた。
の声音は弾んでしまう。

「そうですね。暇なんです、私」

とつい笑みを零してしまう。
父夏侯惇が反乱軍にいることを知った後、張遼にもその話をしてみた。
誰もがを心配する話となるのだが、この男は三成と一緒で淡白なものだった。



「目的を間違えて何しているんですかね、あの方は」

なんてことをしれっと言った。

「殿を探すと言って出たのに、何しているのでしょうかねぇ、本当」

「やだ、遼様ったら」

張遼は目を細めながらの頭を優しく撫でる。

「可愛い娘を残して好き勝手しているのですから、もっと怒ってもいいのですよ?」

「怒るだなんて、別に・・・」

怒りよりも悲しみの方が大きかったから。

殿ができぬのならば、私が変わりに叱ってさしあげましょう」

「叱る?遼様が?」

「ええ、そうです。娘を置いて何をしていたのですか!・・・と」

コラと子どもを叱るかのように拳を掲げた張遼には声を出して笑った。

「遼様に叱られたら、父様では何も言えませんね」

「おや、私はそんなに怖いですかね?」

「口で遼様に勝てる人なんていませんもの。孟徳様だって敵いませんよ」



そんなことを話した。
彼は三成とは違った形での気持ちを和らげてくれたのだ。

「遼様はどこかへ向かわれる途中なのですか?」

きっちりと鎧を着込んでいる張遼にが問う。

「ええ。また戦に出ねばならなくなりましてね・・・・」

「は、反乱軍ですか?」

夏侯惇のいる所とだったらと思うと落ち着かない。
だが張遼の様子からは普段どおりでわからない。

「まあ・・・・反乱軍と言えば、反乱軍でしょうかねぇ・・・・」

己の顎に手をかけ軽くなぞる張遼。

「遼様?」

「妲己殿からの命令なのですがね。忍という集団が遠呂智軍の妨げになっていると言いまして」

「忍・・・ですか」

神出鬼没の忍者軍団に悩まされているという。
業を煮やした遠呂智が董卓に忍者集団の討伐を命じた。
それだけは心もとないと感じた妲己が曹魏側にも出陣することを命じた。
張遼は曹丕に命じられて出ることになったのだ。

「子桓は行かないのですか?」

「ええ。今回は董卓軍でほぼ構成されていますしね。ああ、でも石田三成殿にも命令が下っていたようですが」

三成は曹丕に対する監視役だと妲己は言った。
その曹丕の側を離れて三成は忍者軍団討伐に行くのか。
だから忙しく、先ほど声をかけても気づきもしなかったのか。

(でも・・・・いつもならば声をかければ止まってくれるのに・・・・)

少しだけ目線を下げて唇を尖らせてしまう。
そんなに張遼は目ざとく気づく。

「おやおや、子どもみたいですね、殿」

「え、いぇ、あの」

くくっと咽喉の奥で笑う張遼。
昔からこの人にか敵わない部分が多い。それは先ほども言ったが親子揃ってだ。

「そんなに長くは開けないでしょう、すぐに戻ってきますよ」

「そ、そうですか?遼様お気をつけて」

先ほどとは打って変っては落ち着きを取り戻す。

「おや、私の心配までしてくださるのですか?」

「何言っているんですか?遼様の心配だってしますよ」

心外だといわんばかりに張遼を軽く睨みつける
だが相手はより一枚上手の男だ。

「私よりも三成殿を心配なさっているのではないですか?」

「え、えぇ!!?わ、私は別に」

「お父上が戻られた時、あなたの隣に三成殿がいるのを見て卒倒しかねませんな」

「りょ、遼様!!」

は必死で張遼に抗議するも、張遼はそのの態度を楽しんでしまっている。
だが、すぐに柔らかい笑みを浮かべての頭を優しく撫でた。

「遼様?」

「いえ。それがいいのではないのですか?殿にとって」

「え・・・・」

大きくの目が揺らいだ。

「叶わぬ想いをずっと秘めているよりよほどいい」

「・・・・遼様・・・・」

知っていたのか?気づいていたのか?
が幼い頃から秘めていた曹丕への想いに。

「遼様・・・私・・・・」

張遼は人差し指を自分の唇にあてる。内緒だと言っているのだろう。

「言わなくていいですよ。今のあなたはとてもいい顔をなさっている。きっとお父上も喜ばれる」

「父様って・・・父様も気づいて」

「さあ、それはどうでしょうかね?ただ、娘の幸せを願うのが親というものではありませんか?」

誰の隣にいても、夏侯惇ならば苦虫を潰したような顔をするだろうなと張遼は思うが口にしない。

「さて。私もそろそろ行かねば」

張遼は背筋を伸ばす。
笑いながら適当に頑張ってきますなどと口にした。
今回の出陣、曹丕自体があまり乗り気ではないようだ。

「遼様、本当にお気をつけて・・・・」

「ええ。では行ってまいります」

ニコッと笑い、張遼はその場を後にする。
残ったは小さく溜め息を吐いた。

でも、そうだ。
三成のおかげで、今はさほど曹丕のことを辛く思うことはない。
何も伝える事はできなかったが、苦しい気持ちは薄れている。
終わったこと、過ぎたことだと感じられている。

「私・・・・・」

薄っすらと芽生えている何かに、いまだ気づく事はない。




(忍者軍団の討伐だと?・・・・なぜ、俺が行かねばならぬ・・・)

が自分に声をかけたことさえ気づかなかった三成は、相当苛々していた。
というのも遠呂智から命じられた今回の出兵についてた。
遠呂智軍の中核とも言える董卓が命じられるだけならまだしも、妲己から三成にも行くように言われてしまった。
嫌だと断れないのは、相手の集団にいるだろうある人の存在があったからだ。
それをネタに何を言われるかわからない。
だから素直に命令を受ける。
曹丕も曹魏からも兵を出せといわれていたようだし。

(誰があの人に勝てると言うのだ)

策に策を重ねて用いれば、そう難しいことではないとわかっている。
だが三成にとって相性が悪いのだ。
仲が悪いとかではなく、単純に頭が上がらない人と言えばいいだろうか。
育てられた覚えはないが、母親のように三成の世話を焼く人。
その人が忍者軍団の首領と簡単に想像がついた。

(頭が痛い・・・・・適当に事を済ませるべきだな)

なにせ、忍者軍団討伐は主に董卓が受けているのだ。
それに元々董卓の顔が気に入らない。素直に従うのも苛々する原因だろう。

(・・・・・簡単に済めばいいのだがな・・・・)

危惧していた通り、結局三成はあの人と遭遇し・・・



***



「三成がいなくてつまらんか?」

くすっと曹丕に笑われたような気がした。
は眉を顰めて曹丕を睨む。

「なーに。子桓・・・・何が言いたいわけ?」

三成や張遼が忍者軍団討伐に出てすでに一月近く過ぎた。
張遼は適当に済ませようなんて言っていたが、やはりそう簡単には行かないのだろうが?

「いや。ただそう思っただけだ。最近は三成にべったりしていたようだしな」

「べ、べったりなんかしていません!っていうか、相手してくれるのが三成さんが多いだけだもん」

折角仲良くなった尚香や稲姫は遠呂智からの命令で他所へ移動してしまったのだ。
反乱軍は主に自分達にとって元仲間という大切な人たちが多い。
この先、尚香や稲姫が傷つくことなく済めばいいのだが。

「そういう子桓だって甄姉さまがいなくて寂しいでしょう?」

「なに?」

思わず口に出た言葉に言った自分が驚いた。
驚いたが、それを曹丕に悟られるような真似はしたくないので、いつも通りの悪態をつき誤魔化す。

「甄姉さま、放っておいて何しているのやら〜子桓よりもカッコイイ人に盗られても知らないぞー」

「馬鹿を言って人をからかうな」

「子桓に対してからかえるのって甄姉さまのことぐらいだし?」

「あまり言うと、その倍を仕返しするぞ」

怖い怖いとわざとらしく声をあげる
自分でも驚いた。
曹丕の奥方である、甄姫のことが口から出るとは。
別に甄姫と仲が悪いというわけではない。寧ろ甄姫がよくをかまってくれた。
にとって周りは男性が多いので、年上で気配りのよく利く甄姫がかまってくれるのは、
本当の姉のように感じて嬉しかった。
でも、曹丕への想いがあったから、嬉しさは半減する。
同時に、そういう女性だからこそ、曹丕が側に置いておきたいと思ったのだろうと。

(これも三成さんのおかげかな?・・・でも)


「叶わぬ想いをずっと秘めているよりよほどいい」

「三成がいなくてつまらんか?」


・・・とは。
そんなに自分はわかりやすい性格なのだろうか?
すぐ周りに見てわかってしまう態度なのだろうか?
なんだか恥かしい。
ただ、三成に対しては曹丕のことを話せるのが彼しかいないから。
だから、頼ってしまう部分はあると思う。
思うのだが・・・・。

「ねぇ、子桓・・・・私ってそんなにわかりやすい性格?」

「小父上の前ではわかりやすいな。すぐに顔に出る。それ以外では・・・・私ぐらいにしか気づかないな」

「うーわー・・・・」

私ぐらいッて。
でもそのからの想いにはまったく気づきもしなかったくせに。
それとも、知っていてずっと知らぬ振りをしていたのか?
だったらそれは残酷だ。
まだはっきり言ってくれたほうがいい。

(あーでも・・・・意外に優しい所あるからなぁ・・・子桓は)

最愛の人にはなれずとも、妹分としてならば見てくれているのだろうか?
現に父に言われてずっとを守ってくれているのは曹丕だ。

「それがどうかしたのか?」

「なんか皆が私のことそんな風に言うから」

「そうか?」

「あーもー・・・・遼様が戻ってきたら問い詰めてやる」

相手は張遼か?と曹丕は声を出し笑った。

「なによ、子桓」

「いや、張遼が相手ではお前ごときでは勝てぬだろう」

「・・・そ、そうなんだけどね・・・」

口で張遼に勝てる人がいるなら会ってみたいものだ。



***



「へぇ〜ここが遠呂智軍の城かい」

忍者軍団討伐を終えて帰ってきた三成。
三成よりも数歩先を歩き城内をキョロキョロしている女性がいる。

「・・・・・おねね様。本気なのですか?」

「本気だよ。三成が悪いことをしないように見張っててあげるの」

「ここは遠呂智軍の拠点のひとつなのですが・・・そう言う事をいわれても・・・」

ねねは三成が仕えていた羽柴秀吉の奥方だ。
普通の奥方と違うのはねね自身も旦那の為と言い戦場に出て戦うこと。
しかも強い。
誰も彼女に口でも態度でも勝てる人はいない。
そのねねが忍者軍団の首領だった。
まあこのことはそうだろうなと三成には予想の範囲内だった。
戦場でも会わないようにしていたのだが、あっさり見つかった。
そして、終いには「強くなったねぇ。そうだ、悪いことをしないように見張っててあげる」などといい。
三成に着いてきた。
だから嫌だったのだ、今回の討伐に加わるのが。
ねねは秀吉に仕える武将達に中でも古参で幼い頃からそばに置いておいた三成たちを酷く構う。
福島正則や加藤清正はねねを慕っているのでそれが苦に思う事はなく喜んでいる。
三成だけはその逆で、構ってくることが鬱陶しいと感じる。
ねねを好き嫌いで言っているわけではない。
ただいつまでも子ども扱いされても、ねねに育てられたと思ってはいないのだ。
実の母親以上に口を出してくるねねにほとほと困る。
ねねが三成を心配しているというのはわかっているのだが。

「まあいいじゃないの。三成のこと心配だったからねぇ・・・・そうだ、幸村たちとは?」

「・・・・幸村は反乱軍にいます」

ねねに問われて素直に答えてしまう辺り、逆らえないと身についてしまっているようだ。
だが問うたことが友のことだったので、素直に答えただけかもしれない。

「そっか。三成がそんな顔するなんて・・・我慢しているんだね、三成」

ねねはスッと手を伸ばし、三成の頭をなでた。

「お、おねね様!何をなさるのですか!!人を子ども扱いしないでくださいとあれほど」

「あら。私から見れば、三成も正則も清正も可愛い子どもだよ」

「・・・・・まったく・・・・」

その正則と清正も忍者軍団の中にいた。
忍者軍団と言っても忍だけでは構成されておらず、他は秀吉と縁あるものだった。
ねねが三成について行くことに、清正たちは面白くなさそうだったが。
別で行動中の秀吉の下へ彼らを行かせることでなんとか収拾は着いた。
秀吉もまた、主君織田信長率いる反乱軍として動いている。

「それで、私はこれからどこで寝ればいいのかな?あ、三成の部屋でいいか」

「ちょ、おねね様!」

「さ。案内しておくれ。三成の部屋に」

とねねは三成の腕に自分の腕を絡めて歩き出した。

「・・・・・・・」

ただ。そんな二人の様子を見ていたがいるなど、三成は気づかなかった。
普段の三成ならば気づくだろうが・・・・。

「なんか・・・・面白くない・・・・」

三成たちとは逆方向には歩き出した。








08/01/17
19/12/29再UP