内緒話からはじめよう。




ドリーム小説
突如現れた遠呂智という謎の存在が今まで普通に暮らしていた世界を壊した。
自分たちがいた世界と、別の世界を融合させ新たな世界を作ってしまった。
共通するのは戦う者達がいたということ。

ただ、やられっぱなしではなく、それぞれが兵を率いて戦うも遠呂智に破れてしまう。
魏は曹操が死んだといわれその後を曹丕が継いだ。
曹丕は反遠呂智ではなく、遠呂智と同盟を結んでしまった。
それぞれの思いが交錯する中、は遠呂智の所有する、城にいた。

「・・・・ねえ。大丈夫なの?」

「なにがだ?」

「遠呂智ってのと手を組んで」

最近一層眉間に皺がよってしまっている幼馴染の顔を覗き込む。

「・・・・別に問題はなかろう」

「でも・・・・皆・・・・」

「やりたいようにやらせておけ」

曹丕のやり方、というより遠呂智の下についてしまったのが許せないようで
魏でも名のある幾人の武将たちは曹丕の下を去った。
その中にはの父夏侯惇もいた。

「父様!」

去ろうとする父の背中に呼び止める。
夏侯惇は立ち止まり振りかえった。

「すまぬな、・・・・」

「なんで私を一緒に連れて行ってくれないの!」

夏侯惇が曹丕の下を去ろうとしたのは、死んだといわれる曹操を探す為にだ。
曹丕のやり方も多少気に食わないところがあったのかもしれない。
武将として手強い相手と戦い、今まで打ち勝ってきた夏侯惇にとっては。
だが娘を共に連れて行こうとはしなかった。

「俺のそばにいるより子桓のそばの方が安心だ・・・・それに張遼、徐晃もいる」

「でも!私は父様と一緒に・・・・いたほうが・・・・」

あることを思うと曹丕と一緒にいるのは辛い。
俯く娘の頭を父は優しく撫でた。

「すまない。娘を危険な場所に連れて行けはしない」

「娘だから!どんな場所にでも一緒に連れて行って欲しいの!家族が離れ離れになるのはダメよ」

・・・・・」

でも夏侯惇はもう決めていた。
娘を連れて行くことはしないと。
だから一言「すまぬ」とだけ告げてに背を向け去ってしまった。
最初から夏侯惇は曹丕にのことを頼んであったようだ。
可笑しくなった世界でいつもをそばに置いた。
外敵から妹を守る。そんな感じで・・・・。

「小父上が心配なのだろう?だが大丈夫だ、きっと」

ポンとの頭に手を乗せた。

「・・・・うん」

泣きたくなるが我慢し、は頷いた。
もう曹丕に甘えるのはやめようと決めていたから。





ある日。遠呂智の参謀・軍師だという妲己が一人の男を連れて来た。
彼の名前は石田三成。
そして反乱軍討伐の為に共に軍を出すことになった。
いつもそばにを置いておいたが流石に戦には連れて行けない。
信用できる者をに任せ曹丕は出立した。

反乱軍と接触したという話が届き数日後、妲己だけが戻ってきた。

「あなた曹丕さんのなんなの?」

面白そうにの前で首を傾げる妲己。
知ってて聞いています。そんな風に取れる。

「なんなのって・・・・ただの幼馴染ですけど」

「へえ。その割には曹丕さんは随分あなたのことを大事にしているみたいだけど?」

「父様に頼まれているからじゃないですか?」

「ああ、軍を出て行った片目のお父様から。変に義理堅いのね曹丕さんは」

妲己はくすりと笑みを零す。
でも見惚れるような温まる笑みではなく、嘲笑うような冷たい笑みを。

「でも。そのお父様が曹丕さんと戦うことになったら、あなたどうするの?」

の体が固まる。
それは危惧していたことだ。最近の曹丕への遠呂智からの命令は反遠呂智を掲げた反乱軍の討伐だった。
曹操を探すと言ったが曹操が反乱軍にでもいたら迷わず夏侯惇は反乱軍に行くだろう。
曹丕と対峙したとき、きっと夏侯惇ならばそれもまた仕方ないと真っ向から勝負するだろう。
そんなことになったら・・・・
の顔が見る見るうちに青ざめていく。
その表情を妲己は悦に入るかのように見ている。
人間の絶望に押しつぶされる様を見るのが妲己にとっては一番の楽しみらしい。
目の前にいる女が怖い。
やっぱり無理にでも父についていけば良かった。
曹丕の下が安心だと言っても、ここに一人でいるのは辛いし怖い。
誰か助けて!いや、それよりも逃げ出してしまおうか?

「ねえ?どうするの?私はあなたの事情なんか知ったことではないから反乱軍抹殺を命じるけど」

「どうするって言われても・・・・私は」

曹丕も命じられたらそれを遂行するかもしれない。
どうしよう。
ただでさえ離れ離れになったことを悔やんでいるのに。

「参謀殿は弱いもの苛めがご趣味のようだな」

冷たさが漂う空間を誰かの声が壊してくれた。
少し高めの聞きなれない男性の声。
その声の主に妲己は口を尖らせ反論する。

「弱いもの苛めだなんて酷くない?三成さん」

つい先日曹丕と共に戦に出た石田三成だった。

「だが俺の目にはそう見えたのでな。なんの力もない女を甚振る顔が楽しそうでな」

は驚いてしまう。
曹丕に負けじ劣らずの口の悪さに。
でも不思議と安堵してしまう。
妲己の意識はではなく三成に向かっていく。

「楽しそうだなんて。そんな悪趣味じゃないわ、私は。ただ質問をぶつけただけじゃない」

「ほう。最初から興味をもっているような質問でもないと思うが?」

「三成さん、盗み聞きしていたの?そっちこそ趣味悪いんじゃないの?」

三成は手にしていた扇を口許で広げる。

「俺はたまたま通りかかっただけだ。お前の声が煩いから嫌でも耳に入った」

さも自分は被害者ですというそ知らぬ顔をする三成。

「もう!なんで三成さんに好き勝手言われなきゃならないのよ!反乱軍討伐はどうしたのよ!」

妲己は腰に両手をあてて三成に問う。
そうだ、この男は曹丕と共に反乱軍討伐に行っていたはずだ。

「あんなのはたいして苦もなく終わった。曹丕が後始末をしているだろう。俺はすることがないので帰還した」

「あっそう。ならいいわ。お疲れ様」

もういいと妲己はたちを残し行ってしまった。
三成のせいで気分を害したとあからさまな顔で。

「まったく・・・あれで軍師だとはな・・・・」

パチンと扇を閉じ妲己が消えた方向へ目を向けた三成。
は思わず声に出して笑ってしまった。
三成はなんだと眉を顰めた。

「すみません。あ、助けていただいてありがとうございました」

は三成に礼を述べる。

「別に助けたわけではない」

「でも私は助かりました」

ホッとした。
一人であの女を相手にしなくて済んで。

「あの。子桓はまだ帰らないんですね?」

子桓?と聴いて一瞬だけ間が開くが三成はすぐに曹丕のことだとわかった。

「ああ。明日には戻ってくるのではないか・・・・大した討伐でもなかったしな」

大きな被害を被ることもなく済んだとのことだ。
曹丕も無事なのだろう。は安堵する。

「お前は曹丕の奥方ではないのだな?」

「違います。ただの幼馴染です。子桓の奥さんは・・・甄姉さまは別の所にいるから」

は少し顔を曇らせるもすぐさま打ち消す。

「あ。私はっていいます。夏侯惇の娘です。石田三成さんですよね?」

初対面だったことに気づきは名乗った。
三成は「ああ」と短く答えた。





「あー!許チョさん!」

帰還した曹丕のそばにいた許チョを見ては顔をほころばせた。
許チョも曹魏の下を離れていた一人だったが今回戻ってきたようだ。
許チョもを見てほがらかな笑みを見せながら手を振ってくれた。

。不自由はなかったか?」

「え?う、うん。なかったよ、別に」

本当は妲己のことが引っかかったのだが、それを曹丕に言うつもりはなかった。
だが曹丕は引っかかりを見逃さなかった。
の頬を軽く抓る。

「い、いひゃい。子桓」

「お前との付き合い。どのくらいだと思っている?何を我慢しているのか知らんがはっきり言え」

「な、ない。なにもないよ」

お返しだと中々手を離さない曹丕の頬へとは手を伸ばす。
回廊のど真ん中で互いに頬の抓りあいをしてしまう。

「言わぬとその頬伸びるぞ」

「子桓こそ」

「年頃の娘の頬が垂れるのはどうかと思うが?」

「男前から益々遠ざかるわよ、子桓」

三成はそんな二人のそばをたまたま通りかかった。
いや通りすぎようとしたのだが、二人が真ん中を陣取り邪魔で通れない。
遠回りしていくのが嫌だったので割ってはいる。

「邪魔だ」

ブスっとした表情の三成にの方がパッと手を離した。

「三成さん!あ、ご、ごめんなさい」

曹丕も仕方なく手を離す。

「それが素のお前か?曹丕」

「なんのことだ?」

「その娘の前で見せる顔がお前の素だと思ってな」

軍議や戦場で見た事のない顔をしていた。
面白くなさそうな顔をした曹丕ばかりを見ていたので。
とのやり取りがそんな彼の顔を消している。

「こいつの前で取り繕う必要はない。するだけ無駄だ」

「それは褒められているのか貶されているのかわからないんですけど?」

憮然とするだったが、すぐさま三成の方へ顔を向ける。

「三成さん。どこかへ行く途中だったんですよね?邪魔してごめんなさい」

「いや・・・・」

三成はそのままスッと二人の間を通りすぎた。





「お前にとって奴はなんだ?」

たまたまというか偶然というか。三成にばったり会った。
暇だったこともあり、曹丕も忙しいようだったから三成に冗談のつもりで相手をしてくれないかと
頼んだところ、意外に付き合うと返事が返ってきた。
そんな三成が尋ねてきたのはそれだ。

「なんだと聴かれても・・・幼馴染って」

「奴はそうでも。お前がそれだけとは見えない」

「三成さん、そんなことを知ってどうするんですか?」

三成がそれを知ってどうとは思えない。
知ったところで損得何も得ない。
三成の返事はあっさりしたところだった。

「別にどうもしない」

「なら聴かないでくださいよー」

軽く頬を膨らます

「ならば意地悪な質問をしよう。奥方を遠くに置き、そばにお前を置くというのはなぜだ?」

「・・・・単純に父様に頼まれたからじゃないですか?甄姉さまはある程度安全な場所にいるらしいし」

勿論彼女自身が武にも長けているということもあるだろう。

「夫婦、家族は共にいるべきものだと思うが?」

それは自分も思ったこと。
どんな状況であれ父と一緒にいたかった。

「べ、別に。子桓たちだけがそうだというわけじゃないし・・・・」

遠呂智の所為でバラバラになってしまった人たちは多い。

「そうだな」

三成は欄干にトントンと軽く扇で音を立てた。

「遠く離れていても心は繋がっているというものか?人の心は脆く弱い。だが強く繋がっているときもある」

「三成さん?」

「奴も奥方とはそうなのだろうかと思っただけだ」

「・・・・・」

ああそうだ。曹丕には甄姫という綺麗な奥方がいる。
離れ離れでも強い絆で結ばれているのだろう。
曹丕が自分と一緒でも嫌な顔せず甄姫は離れた。
夏侯惇とのことを気遣ってくれるほどで・・・・。

「俺がいうのもなんだが、我慢するのは良くない。それに気づいた周りも気分を害する」

「な!」

三成が何を言いたいのかすぐにわかった。
曹丕がを妹同然の扱いをしても、がそれ以上の想いを抱いていたこと。
だが三成に気分を害されるようなことをしたことはない。
が我慢しているのは曹丕に対して甘えるのをやめたことだ。
弱音を吐くのも泣くのももう彼の前ではしないと。

「三成さんには関係ないもの」

「ああ、そうだな。俺には関係ない。だがたまたま目に入ったからな・・・・」

でも。思わず口に出したくなった。
彼女を見ていると自分が知っている少女を思い出す。
友のことが好きな癖して、何を勘違いしているのか自分は片想いだと思いこんでいる少女を。
今まで早くどうにかしろと友自身やその少女をけしかけてみたが、結果。
何も変わらないまま可笑しな世界に巻き込まれた。
二人はどうしているのだろうか?

「告げたくとも中々告げられないじれったいことをしていた奴を知っているのでな」

「それって三成さん?」

「俺ではない。俺の友だ」

「ふーん」

その少女と彼女を照らし合わせたわけではない。
寧ろ少女の方が彼女よりは良かったはすだ。
なにせ友自身も少女のことを想っていたのだから。

「三成さん以外の人にも私は気分が害するように見えたのでしょうか?」

「さあな。俺はたまたまだ」

なんだかよくわからない。

「ただ・・・俺は・・・たまたま、お前が辛そうな顔をしているのを見た」

「・・・・・・私は」

「曹丕にいえぬなら、誰か愚痴る相手でも探せ。少しでも気分を晴らしておかねばこんな場所ではやっていけない」

また妲己に見つかり余計なことを言われるのがオチだ。
三成は自分のことを心配してくれたのだろうか?
気難しそうな顔をして曹丕に負けず口も悪く敵も多そうな人だ。
でも、曹丕以外気づきもしないの微妙な変化に三成は気づいた。
だから、少しでも。
まだ出会って何かを知っているわけでもないけど。

は三成の袖をちょんと摘んだ。

「三成さん。私の話聞いてくれませんか?」

三成は眉を顰める。なぜ俺がと顔で語っている。

「だって、気づいたの三成さんじゃないですか。遼様とか他の人には言えないですよ」

愚痴ならば張遼や徐晃にも聞いてもらえるだろう。
愚痴を言ったところで、きっと黙ってくれる。
でも二人は近すぎた。
が話したいのは愚痴ではない。他の事。
曹丕の耳には入れたくないものだから。

「ふん。暇な時にでも聴いてやる」

「じゃあ今暇なんですよね?」

「・・・・暇だな」

は微笑んだ。

「あのね、三成さん。昔からずっとね・・・・」

これで何か変わることができるだろうか?









曹丕夢の「ひーちゃんと私」設定です。
07/06/26
19/12/28再UP