草芳し。




ドリーム小説
「まだまだー!」

「なんの!」

大きな武家屋敷と言うのが一目でわかる庭で青年二人が手合わせをしていた。
何故、そうなったのかはわからない。
が庭に顔を出した時にはすでに行っていたから。
そしてそれを自分の膝の上に肘をつけて見ている青年の隣に座る。

「三成さん、何してんの?」

か。見てわからんか?」

「あの二人がしているのはわかるけど、三成さんは・・・・見学?」

「何を見学するんだ」

「えーと二人の手合わせ」

「別に学ぶことはない」

「うわ、酷い〜」

はくすくすと笑う。
三成は特に変化はない。

三成はチラッとを見るが、すぐさま目線を手合わせしている友へと戻す。

不思議な子だ。

北条攻めの戦で真田幸村と出会った石田三成。
その戦で縁ができて直江兼続と三人でつるむことが多くなった。
自分が仕える秀吉の本拠地が大阪なので、それに伴い、三成も兼続を伴って大阪に帰ることにしたのだが
幸村も一緒にと誘った。
すると、彼は別行動で甲斐へ戻ると言い出した。
後で大阪には必ず行くと。

だから、待っている女でもいるのかと問えば、嘘がつけない性格なのだろう。
幸村は一瞬にして頬を朱に染める。
まっすぐな性格の幸村だから、どんな相手だと単純に気になった。
どこかの武家の娘かとか、考えてみたが、なんてことはない普通の娘。

会ってみて、コレと言って感想も出なかった。

でも、といる時の幸村の表情は柔らかい。
過ごす時間の短い自分では彼女の良さと言うのはわからないのだろう。

まぁ、別にいいか。
とりあえず、彼女も一緒に大阪に連れて行ってしまえ。
そう思ったから、幸村にそう言って連れてきてしまった。

彼女は物怖じすることなく笑顔で接してくる。
彼女は壁と言うのを最初から作らない人だ。
だからか、秀吉やねねにもすぐ気に入られた。

「最近のユキさん楽しそう」

「そうか。それは良かったな」

「同年代の友だちってのいなかったもんね、前は」

「前と言うのは武田の時か?」

「うん。同じ年頃の人ってのは確かにいたけど、身分って言うかユキさんに仕える人って感じだったし。
 軍の中だと、皆ユキさんより年上だもんね。だから、三成さんとか兼続さんといる時って楽しそうだなって」

「そうか」

は床に手を着き身体を少し後ろに傾かせる。
空をジッと見てポツリと呟く。

「私は少し面白くないかな」

「なぜだ?」

「だって、二人にユキさん取られちゃったんだもん〜なんでいつもここ来るかな〜」

「俺ではない兼続に言え」

「ま、別にいいけどね」

「どっちだ」

「ユキさん楽しそうだし」

が三成と話していても、手合わせ中の青年二人は気づいていないようだ。

「二人と出会う前のユキさんね。武田が滅んじゃったってのもあるけど、死んだ魚のような目してたね」

「どんな目だ、それは・・・」

「だから、死んだ魚だよ」

「もういい」

聞くのが面倒臭い。

は幸村の女ではないのか?」

「うわっ、ストレートに言うね!」

「すと・・・なんだ?」

「まっすぐとか直球とか・・・・別に良いけど。って私とユキさんそんなんじゃないよ?」

「ほぉ」

そうは見えない。

「だって、私の片思いだし」

今まで無表情だった三成に一瞬の変化が訪れた。

「なんだと?」

ゆっくりとを見る三成。
はえへへと笑いながら少し恥ずかしそうにしている。

「だから、私の片思いだよ〜恥ずかしいな、もう〜」

「そうは見えんぞ、お前ら」

「そう?でもそうだもん。ちょっと寂しいけど」

「・・・・・・・・」

幸村の表情や態度を見ていればなんとなく気づくだろ・・・

そんな風に三成は思った。
付き合いがまだ短い三成ですら感じたことだ。
当の本人はまったく気づいていないようだ。

「ちょ、ちょっと。なによ、その目!」

「呆れているだけだ」

「な、なんで、呆れるの!?あ、私に好きな人がいるって変なの?酷い、酷いよ、それ」

「そうは言っていない。寧ろ気づけ阿呆」

「何に?」

「・・・・いい」

「なによ、言ってよ。三成さーん」

三成の袖を引っ張る

「やめろ、馬鹿」

「言わないと、これから三成さんのことみっちゃんって呼ぶよ」

「言いたくないが、そう呼ばれるのも嫌だ」

三成は持っていた扇での頭を叩く。

「いやー!みっちゃん、それで戦ってるでしょ!?そんなもので人の頭殴らないでよ!」

「みっちゃん言うな!」

「もう決めました。三成さんはみっちゃんです。ちなみに兼続さんは兼やん」

「か、かねやん・・・・・」

言われてすごく嫌な顔するか、爽やかに受け入れるか、どちらだろう?
そんな事はどうでもいいのだが。
この少女といると調子が狂う。
嫌な感じではないが。

「幸村はユキさんで俺がみっちゃんか?可笑しくないか?」

「えーだって、ユキさんはユキさんだよ。ユキさん格好いいし」

「なんか腹がたつ・・・・」

「みっちゃんって可愛いでしょ?」

「可愛いと言われて喜ぶ男はいない」

「とりあえず」

「無視か・・・・」

はもう決定と言わんばかりでそのまま話を元に戻す。

「私は何に気づけばいいの?」

「・・・・・・そのうち気づく。もうこれ以上は言わん」

「えー」

果たしてそうなるかは三成には疑問ではある。
今まで全く気づいていないようだし。

殿、挨拶が遅くなりました。お邪魔しております」

手合わせを終えた二人、幸村と兼続が二人のそばにきた。
兼続は丁寧にに頭を下げる。

「いいえ。お気になさらず〜ユキさんも兼続さんも疲れたでしょ?お茶淹れてくるね」

は立ち上がって奥へと引っ込んだ。
兼続も手伝うと言って行ってしまう。
そんな二人の背を見て三成が呟く。

「・・・・兼やんではないのか?・・・・」

「どうかされましたか?三成殿」

「・・・・・いや」

少しムスッとした感じで目線を庭に向ける三成。
再び片肘を膝の上に乗せて
幸村がその隣に座る。

「・・・・あ、あの三成殿」

「ん?」

「その・・・・・・殿と何を話されていたのですか?」

「は?」

顔を幸村に向ける三成。
少し顔を赤くしながら俯いている幸村。

「何をと言われてもな。特にこれと言ったことは話していないぞ」

「そ、そうなのですか?」

「なんだ、いきなり」

「その・・・・・お二人とも楽しそうだったので・・・・い、いえ・・・お二人が仲良くしてくださるのは私も嬉しいのですが」

かくっと肘が落ちる三成。

(こいつら、馬鹿か・・・・)

互いに同じこと思っているようではないか。
でも、だからこそ気づかぬのだろうなと思った。
少し意地悪してやろうか。

が好いている男の話はしたぞ」

「え!?殿の!?だ、誰で・・・いや、その・・・・聞いてはまずいですよね」

(お前のことだがな、幸村)

に好きな男がいると知って慌て落胆する幸村。

「お待たせ〜」

と兼続が盆にお茶と菓子を乗せて戻ってきた。

「どうした?幸村」

「ああ〜い、いえ別に・・・・」

とか言いながらも気になっているようで、チラリと兼続や三成の顔を見る幸村。
三成には何を考えているのかすぐにわかる。

の好きな男が俺か兼続とでも思っているのだろうな)

「はい、ユキさん」

湯飲みを幸村に手渡す
にこりと微笑まれてしまい、幸村も少し口元が引きつりながらも笑い受け取る。

「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして」

幸村とを見て三成は不適に笑む。

「これは当分いい暇つぶしになるな」

だから遊ばれないように早く気づけ。
でも、自分からは教えてやらないけどな。







06/03/06
19/12/28再UP