ドリーム小説
最初はこれといった感想はなかった。
まぁ強いてあげるならば凡庸な子。だろうか。
特に目立ったこともなく、その辺を捜せばどこにでも居そうな子。
そんな子に毛利元就公はお熱を上げちゃっているわけだ。
その子の名前はちゃん。

あ、なんか言い方がオジサン臭いかも。

俺としては彼女よりも、元就公を織田家側に引き込んでしまうことしか考えていなかったから。
元就公がどんな事を思って。なんて知ったことではなかった。
織田家と手を結んでくれれば、俺の肩の荷も多少は楽になるってこと。
俺の願う。誰もが笑って寝て暮らせる世。ってのに一歩前進する為に。

元就公をなんとか説得してみて、願い叶ったりなんだけど。
官兵衛殿を引き連れて、元就公のもとへお邪魔する機会が増えた。
行くたびに元就公は「仕事はいいのかい?」と苦笑交じりで出迎えてくれる。
その時、いつも。

「いらっしゃいませ、半兵衛さん、官兵衛さん。遠い所お疲れ様でした」

ちゃんは笑顔で出迎えてくれる。
すぐさまお茶と茶菓子、それに蒸したおしぼりまで出してくれる。
ちゃんって花のようで、ふんわりした感じでさ。
なんつーか。
それが悪くなくて、元就公には悪いなーと思いつつも、なんだか邪魔をしたくなる。
あと、元就公の反応を見るのが面白い。

元就公と過去の戦の話をするのは嫌いじゃない。
寧ろ楽しくて好きだ。
面倒臭がる官兵衛殿を半ば引っ張り込んで、三人であーでもない、こーでもない。
って論争するのが楽しい。
場所問わず。野外だろうが、屋敷内だろうが。
どこでも構わず、時には天下を取るにはどうすればいいのか!何て事とかさ。

そんな事を頻繁にしていたら、ちゃんは面白くなかったようで。
ま、当然かな?
元就公ほどあからさまじゃないけど、彼女も元就公が大好きなようだし。

あ、大好き。とか口にするとなんか照れるものだな。

その日は俺と元就公で長いこと話こんでいたんだけど。
何を思ったのか、ちゃんは官兵衛殿の手を引いて俺達の前に現れて。

「あの、さん?」

「私、官兵衛さんと町に遊びに行ってきますね」

「え?」

「大殿はかまってくれないし。爪弾きにされた者同士で仲良くします」

「私は別に「じゃあ行きましょうか、官兵衛さん」

「あ、あの。さん!?」

だって。小さな抵抗ってところかな。
面白いことするなー、しかも官兵衛殿を連れて行くなんてさ。
いやーもう大笑いしちゃった、俺。
元就公の落胆振りも見事なものだったし。
二人が帰ってくるまで、右往左往する元就公がいたわけで。

「君は私を苛めて楽しいかい?」

「俺は別に苛めてませんよ?」

「なら私とさんの時間を潰すのは勘弁して欲しいんだが・・・・」

「そう言う時間は待つものじゃなくて、自分で作るものでしょう?」

「君が邪魔をしているようにしか思えないのだよ、私には」

「そうですかー?俺は強制していませんし、ちゃんを放っておいているのって実質元就公ですよー」

「・・・・・」

何が、元就公をそこませさせるのかなって不思議に思う。
だって、見惚れてしまいそうな絶世の美女ってわけでもない普通の子だよ?
まぁ、優しい子であるし、俺も嫌いじゃないけど。
けど、どっしり構えていなきゃいけない人が、一人の子にここまで左右されるなんてさ。
後から知った話だけど、元就公は織田家に負けた場合、自分の事より彼女の身を案じていたんだって。

家族思いのいい人だねーって言葉で済んでもいいけど。
同時に、それが元就公の身を狙う者にしてみれば彼女は最大の弱点にもなりそうで。
あ、勿論。俺はそんなことしないし、狙うつもりもないよ?
今は元就公とは手を組んだ仲だし、俺もちゃんの事は気に入っているしね。




それでまた別の日なんだけど。
俺達三人で三国志の中でも有名な赤壁の戦いについて話していたんだ。
その前に川で魚釣りなんてしてさ、しかもその日は川の主とのちょっとした戦いもあったので結構疲れたんだよね。
ちょっと抜けて、その時ちゃんが縁側で縫い物をしていた。
最初はニ三話して素通りしたけど、戻ってきてなんとなくそのまま素通りできなくて、また彼女に声をかけた。
そのまま会話してても良かったんだけど、疲れていたから、ちょっと元就公をからかいたくてちゃんの膝枕で寝たんだ。

まぁ、大方の予想はつくよ。
元就公もねー。戦においては謀略の冷将とか怜悧な策士なんて呼ばれているのにね。
本当、ちゃんが絡むとそんな呼び名が嘘みたいなんだよねー。

ほんの一時だったけど、ちゃんの膝枕で気持ちよく眠れた。
人の頭上でなんか喚いているなぁと思ったけど、やっぱりと言うか、それは元就公で。

「半兵衛さん、疲れたって言うから・・・・」

「けど、そこで寝なくてもいいだろう?そこは私の指定席だ」

「・・・・・・そ、そう言う恥ずかしい事を人様の前で言わないでください、大殿・・・・」

「人前と言うか、釘をさしておかないと再犯するだろうし」

わっかりやすっ!
ある意味人が変わったとでも言うのかも。

「半兵衛。さんを困らせるんじゃない。いい加減にしないか」

「大殿。だから無理矢理起こすのは可哀相です」

「狸寝入りをしているだけだよ。大方私の反応を見て楽しんでいるのだろう」

あーやっぱりバレてる。
けど、人の頬叩いて起こすことないじゃないですか。
つーかとっくに半分起きていたんですけど。

「本当、酷いですよね、元就公。気持ちよく眠っている者を起こしますか?」

「寝るなら別の場所にしないか。ここはダメ。私専用なんだ」

「でしょうね〜気持ち良さそうだと思ったんで使わせてもらったんですよ。仕方ない。元就公にお返ししますか」

二人を残して俺は室に戻った。
チラッと後ろを見れば、元就公は嬉しそうにちゃんの膝に頭を乗せて寝ていた。
いかにも幸せそうな二人の姿って奴。

「あーあー・・・・枕がなくても寝れるけど、やっぱりあった方がいいよねー」

「座布団でも枕にすればいい」

ちゃんの膝枕。中々良かったなー」

単に疲れていたからなのか、元々ちゃんには人を癒す力でもあるのか。
元就公の反応が見たくて、普段しもしないことをしただけなんだけど。
俺にとっても予想外って奴?

「元就が聞けば、反織田に寝返りそうだな・・・・」

「えーそれは困るよ。俺としては元就公が敵に回ると面倒臭いよ」

元就公との戦は楽しいけど、勝つのは容易じゃない。
正直二度とやりたくないとも思うんだよね。
何より、もし戦をするようなことになったら、きっとちゃんが悲しむんじゃないだろうか?

「ならば我慢しろ」

「はいはい・・・・」

俺は座布団を折ってそれを枕にして横になる。

「あ。官兵衛殿」

「なんだ?」

「官兵衛殿が膝枕してくれる?」

「断る」

「だよねー」

間違っても野郎のかったい膝枕なんて俺もして欲しくないけど。
なんなのか、これって。
わかりきったことなのに、すっげーつまんない。

元就公が羨ましいって思う。
俺も元就公みたいに、あんな子がそばに居てくれたらなって思えて・・・。

それって、単にお嫁さんが欲しいのか、元就公の大事なあの子を指しているのか。
ちょっと微妙なところだけど・・・。

俺ってば、どうしちゃったのかな?






【きっかけは小さな事で】








大殿夢のIfっぽい話で半兵衛ってところ。
10/04/07
19/12/27再UP