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「どんな子が好み?」 「………」 何故だろうか? 三成は頭の悪そうな話を振られたと思った。 下から向けられるキラキラした目。 「………」 黙って流してしまいたいが、どう考えてもこの場に居るのは自分だけ。 だから、その話は自分に振られたものだと言うのがわかる。 三成に話しかけているのはだ。 「………」 「聞いてる?みっちゃん」 ため息が出そうになった。 「聞いておらん」 「えー!」 から不満を漏らす声が聞こえるも。 その振りにはバカバカしくて答える気にもならなかった。 「だって、気になるじゃん」 「…馬鹿か、貴様は…」 「ぬ。ひどくない?」 「主語を抜かすな。今の言葉だと、俺の話のように聞こえる」 「みっちゃんの話じゃないよ?」 「そんな事は俺にもわかっている。だが、知らぬ者が聞けばそう思われる」 ぺちっとその額を叩いた。 横暴だと怒る。 「お前が言いたいのは、幸村の好みはどんな奴なのか?…なのだろうが」 「うん」 は三成の友、幸村に想いをよせているから。 「ならば最初から俺ではなく、幸村に聞け」 「えー聞けないよー」 ただ。知らぬ者と三成は言ったが。 の気持ちを知らぬ者などいないだろう。 (ただ一人を除いてな…) 幸村の事を三成に話すを見て。どこか遠い目をしてしまう三成。 「ユキさんの周りって色んな子がいるから。どんな子が好みなのかな?って」 「俺に聞いてどうする」 「みっちゃんはユキさんのお友達だから。そう言うのお話したりしない?」 「したこともないわ」 「そうなの?ちょっとぐらいはあるでしょ?町中を歩いていて、可愛い子をみかけたら、 お。あの子可愛くね?ちょっと声かけてみようぜ〜…なノリで」 前々から、馬鹿だとは思っていたが。 あぁ、馬鹿だったか…と呆れてしまう三成。 「お前…そんな風に俺と幸村が会話をしていると思うか?」 「………あー…うん、ないね…ない」 そんな色眼鏡で町中を歩く奴なんてのは、どこかの鉄砲使いだろうが。 「じゃあ、そうだなぁ…」 「続くのか、この話は…」 「話しを最初に戻そう。ユキさんはどんな子が好みだと思う?」 思わず、の頭を鷲掴みにする三成。 「痛い。痛い、みっちゃん!!?」 「だから、なぜ。俺に聞く」 「さっきも言ったー。みっちゃんとユキさん仲良しさんだからー」 「妙な言い方をするな!」 とりあえず、を解放する三成。 「もう乱暴だな、みっちゃんは」 「お前が下らぬ事ばかり言うからだ」 「でも。参考に…って事だよ」 例えば---。 は思い浮かべた人を口にする。 「ユキさんの身近な所で。稲ちゃんとか」 幸村の義姉稲姫。 「美人で真面目だし、涼やかな感じで」 「頭が固い小姑だろう」 「…じゃ、じゃあ…甲斐ちゃんとか。甲斐ちゃんも美人さんだよね。サバサバした姉御肌って感じだし、決断力あるし」 「喧しい猪女だ」 は咳払いする。 「い、いっちゃんも可愛いよね。いつも笑顔で元気いっぱいだし。たまに悪戯なんかして困らせちゃうけど、まさに小悪魔系とか!」 「小悪魔系どころか、ただの悪魔だ」 の口角が引きつる。 「あ…あーァ千代さんは男装の麗人っぽいよね。勇ましいけど、凛々しさがあって…」 「あれこそ頭でっかちと言われても可笑しくないはずだ」 「お…おねね様みたいな年上とか。包容力いっぱいで家事だってなんでもできちゃうし、みんなの面倒もみてくれちゃう」 「一言余計。余計なお世話。面倒を見てくれと頼んだ覚えなどない」 「…………みっちゃん…女性嫌いだった?」 全て名を出す女性を否定し潰していく三成に、は眉根がよってしまう。 この話、他の誰かに…女性陣に聞かれたら三成はどうなってしまうのだろうか心配になる。 「嫌いと言うより。お前が例えに出す奴らに問題があるのだ」 しれっと答える三成。 「え、えーと…じゃあ、ユキさんはその人達じゃない子が好みなの?」 「…そうだな。幸村は今、名が出た奴らが好みではないだろう」 「他にどんな子が好みなの?難しくない?私が知っていると言えば…」 指を折りながら名を連ねていくに三成は小さく息を吐いた。 「鈍感な奴だ」 「は?」 「幸村の好みは恐らく、鈍感な奴だ。あぁきっとそうだ」 「…鈍感な子?…そんな子いるの?」 「いるだろう…(俺の目の前にな)」 は腕を組み小さく唸る。 ほら見ろ鈍感だ。と三成は言いたくなるも、自分が口出しては幸村に申し訳がないと思い黙る。 「えー…それはどうなのかな?だって、ユキさんも鈍いのに?」 「お前が言うな…」 「ユキさんが鈍いのに、鈍い子が好みっておかしくない?」 まぁ一般的にそれだけではないだろうが。 「ユキさん。自分の想いを向けても気付いてもらえないじゃん」 「…そうだな…だが、お前が言うな」 何度もの額を叩く三成。 「ちょ、ちょっとみっちゃん!?」 そこへ、その話のネタにされていた幸村が通りかかった。 「殿。三成殿」 「幸村か…」 二人が和やかに話をしていると幸村が言ってきた。 どの辺が和やかなのか、そう見える幸村はやはり鈍感だろうと二人は思った。 「あぁ。ちょうどいい。、幸村に聞いてみろ」 「私に。ですか?なんでしょう殿」 「え、あ、き、聞けるわけないじゃん…」 好みの女性はどんな方ですか? などとが真正面から幸村に聞けるはずがない。 聞けないから、三成にどんな人かな?と話をしていたくらいだ。 「二人だけの内緒話ですか?それでは…私が聞くわけにも…」 幸村が困惑した表情を見せた。 「内緒にするほどでもない。仕方ない、俺が聞いてやろう」 「み、みっちゃん!?き、聞か「幸村。お前はどんな女が好みなんだ?」 余計なことを言うなと騒ぎそうなを後ろから口を押え黙らせる。 「は、はい!?」 「俺達は今までそんな話をしていたのだ。例えるならば、稲姫や甲斐姫。彼女らのような者なのか?とかな」 知り合いの名を出されては幸村も困るだろうが、そんなのはどうでもいい。 「え、えと…わ、私は」 「俺はな、違うだろうと、一つ一つ否定はしてみたんだ」 幸村の為に否定。と言うより、単なる三成の彼女らに対する印象だろう、あれは。 「そのどれにも当てはまらないのだろうと…そうだな、お前の好みは鈍感な奴だとに話していたところだ」 「ど、鈍感…ですか…」 「あぁ鈍感だろう」 幸村がの方に顔を向けた。 「むー!むー!」 暴れる。流石に息苦しかったようだ。 すまぬと一言詫びてを解放する三成。 「あ。あの…なぜそのような話をしていたのですか?」 「お前が鈍いからだろう」 「は?」 「だが、そうだろ?お前の好みは鈍い奴だ」 三成に言い切られてしまい、幸村は苦笑する。 「ですが…その…私は鈍いだけじゃなくて…その、明るく笑顔が素敵で、時折行動力のある姿に驚かされますが、そこもいいなと…あ…それにとてもお優しい方で…」 「なんか、それ…好みの女性。って言うより、ユキさんの好きな人の話だよね?」 「「………」」 「でも、そんな子いる?話を聞いていると甲斐ちゃんといっちゃん。稲ちゃんを足して3で割ったような人だよね…あ、鈍さも加えるから少し違うか…」 居たかな?そんな人。とは小首を傾げる。 「三成殿」 「なんだ?」 「確かに…私の好みは鈍感な方のようです」 「そうだろう。俺の言うことに間違いはないだろう」 笑う幸村に深く頷く三成。 「だが、このままでは困るだろうから、お前の好きにしろ」 「あ、はい」 幸村は後頭部を掻いた。 「あの、殿」 「なに?」 「お暇ならば、どこかに出かけませんか?私も殿ともっとお話がしたいです」 少し頬を赤く染めるも、すぐさま頷く。 「うん。私もユキさんとお話したいな」 「三成殿も「馬鹿か貴様は。俺の事はいい。俺は仕事があるんだ。さっさと行け」 お人好しにも程がある。 幸村の尻を蹴飛ばし、送り出す三成。 いってきます。と三成に手を振る。軽く会釈する幸村を見て、三成は息を吐く。 「まったく…」 鈍感な者同士の恋愛は大変だと思って。 実にバカバカしいが、の好きな人は幸村で。幸村の好きな人はなのだ。 それに気づいていないのは当人達だけで。 周囲は中々進展しない二人に若干やきもきしていたのだから。 「まぁ…これで少しでも進展すれば、こちらの気が楽になると言うものだ」 「ふーん。偉いねぇ、三成は。友達思いで」 「おねね様…」 背後から聞こえた声。振り返ればねねがそこに居る。 笑顔なのだが、若干口角が引きつっている。 「友達のためとはいえ、人の事をあんな風に言うのはどうかな〜って思うんだけど?」 どうやらねねには先ほどの話が聞こえていたらしい。 「…事実だと思いますが…」 ここで上手くいいわけでもできればいいのだが、三成がそんな事できるはずもなく。 否定もせずにそうだと言い切ってしまう。 「一言余計とはなんだい!?いつも三成の為を思って言ってあげているんだよ、私は!」 「それが余計だと言っているんです」 「なんだい、その態度は。お説教だよ、三成!」 そこに座れとねねに言われてしまう。 逃げもせずに素直にその場に正座してしまう三成。 いや、単に体がそう行動するよう植え付けられてしまっているのだろう。 結果的にねねに逆らえる者などいないのだから…。 「なぜ、俺がお説教など…」 「お友達を心配するのもいいけどね、自分の事も考えなきゃダメでしょ。三成は好きな子いないの?」 「話がズレていますが、おねね様。俺の事は放っておいてください」 「もう。この子は〜」 延々とねねからお説教&心配をされてしまう三成だった。 (これもすべて鈍感な奴らが悪いのだ…まったく、早くくっつけ…) 【傍観者ゆえの主張。】 11/08/15
19/12/27再UP
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