ドリーム小説
真田幸村は縁側に腰掛けてある方向を見ていた。
ぼんやりとだけど、微笑みは絶やさずに。
今日は久方ぶりに休みが取れた。
だから何もせずに、ただのんびりと寛いでいた。

「幸せだと顔から滲み出ているな、幸村」

「え?あ!み、三成殿!!?」

「それは仕方あるまい。実際に今の幸村は幸せなのだからな」

「か、兼続殿まで…」

急に訪れた友人たちに幸村は慌てる。

「で、出迎えもせず申し訳ない」

「いや、気にするな。勝手に上り込んだのだからな、我らは」

兼続は三成が不作法すぎると若干の嫌味を籠めた。
だが三成は気にすることなく淡々と言う。

「一応声はかけたが、聞こえなかったようだ。この幸せボケには」

「す、すみません」

「三成さん、兼続さん!いらっしゃい。あ…気づかなくてごめんなさい」

が桶を抱えて庭先からこちらへやってきた。
幸村が見ていたのはだ。
来客に対し、すぐに対応できなかったことを、は申し訳なさそうに詫びる。

「気にしなくていい。勝手に邪魔をしたのはこちらだ」

「今、お茶を用意しますから。ちょっと待っててくださいね」

三成達に会釈しは奥へ入って行った。

「元気そうで安心しただろう?三成」

「?」

幸村が奥の部屋へ案内しようとしたが、天気がいいと言う事もあって縁側でいいと。
三成と兼続はそのままその場に腰を下ろした。

の事だ。お前が一番気にかけていただろう?」

兼続に爽やかに肩を叩かれて三成は嘆息する。

「なぜだ?別に俺は心配などしておらぬ」

「そうなのか?」

「ようやく肩の荷が下りたと安堵したところだ」

「え、えと…三成殿」

「よいか、幸村。あれはお前の事でたくさん苦労したんだ。
今後、あれを泣かすような真似をすれば黙っておらぬぞ」

何もしてはいないのに、幸村は三成に扇で額を叩かれた。
先日、ようやく幸村はを自分の妻に迎えた。
三成はの後見人のような感じで、それまでずっと彼女の面倒を見ていた。
一応、は三成の身の回りを任されていたのだが。
最初は雇用関係が強いような感じだったが、いつの間にか家族のような感覚が三成には芽生えていたらしい。
中々祝言をあげない幸村に対し、三成が「うちの娘のどこに不満がある!?」と父親のようなことを感じて常々幸村に苦言していた。

「怖い小舅がいるな、幸村」

「そ、そのようで」

幸村は三成の前で正座し、軽く頭を掻いてしまう。

「お待たせしました」

「うむ。すまない」

三成はお茶を用意してくれたににっこりと笑った。

「本当…怖い小舅が居て大変だな、幸村」

「は、あはは…」

兼続の耳打ちに幸村は苦笑するしかなかった。
人付き合いが上手ではない三成が、だけには壁を作ることなく態度が柔らかいのだから。
本当にが大事だったのだろう。





日が暮れるころには三成達は帰って行った。
夕餉を共にと思っていたのだが、居ても邪魔だろうと彼らは言った。

「今度はご一緒できるといいですね」

「はい。そうですね」

「昼間、三成さんに何を言われていたんですか?」

「え?あ…あーいや、その…」

素直に言うべきか困惑する幸村。
そんな幸村の態度には小首を傾げる。

「言えないような…ことですか?」

「い、言えないと言うか…その、三成殿に改めてご忠告されまして…」

に隠し事はしたくない。
そんな想いからか、幸村は三成に言われたことを素直に話した。
隠すようなことではないし、ただ、自分が格好悪く映るのが嫌だったのかのしれない。
話を聞き終えたは小さく笑う。

「三成さんは心配性ですね。幸村さんがそんな事するはずないのに」

「ですが…過去に私はあなたに…」

「あれは…仕方のないことです。状況が状況でしたし。
私にも至らない部分があったから…もう、あまり気にしてはダメです」

「は、はい」

自分よりもの方が心が強いのかもしれない。
いつまで経っても、を傷つけてしまったことを悔いてしまう。
いや、これからはそんなことがないようにと心に誓うと思えばいいのだろうが。

「私は幸せ者です。あなたのような方を娶れて」

「な、なんですか?急に」

幸村の告白には頬を赤く染める。

「いえ。ここ最近特に思うのです。家事をしているあなたの後姿を見て。
共に食事をする姿を見て、私の隣で眠るあなたを見て…」

「幸村さん…」

「幸せなんだなと思えます。そして、あなたを…殿を愛おしく思います」

幸村がの手を取る。
にっこり微笑み、もつられるかのように微笑んだ。

「これからもずっと、あなたと共に…」





【一日一回、愛を告げよう。】








幸村夢の拈華微笑のその後。
10/10/10
19/12/27再UP