鈍感な恋愛10のお題→だいじょうぶ、って。


ドリーム小説
「何をしているのだ、邪魔だ馬鹿」

三成が思いっきり顔を歪める。
彼の行く手に大きな図体が阻んでいたので。

「うっせーなー。今良いところなんだよ、邪魔するな頭デッカチ!」

大きな図体は正則。
柱の影に隠れて何かを窺っている様子。
三成は正則に邪険にされても、別に構わずその場を通りすぎようとしていた。
用があるのは正則にではないから。

「あ!ちょっと待った!」

「なんだ?」

だから素通りしようとすると正則に止められる。

「お前、どこに行くんだ?」

「お前には関係ないだろう」

「お、俺には関係なくても、お前の行き先は関係するかもしれないんだ!」

「何の話だ・・・・・」

意味不明だと、三成は無視を決め込んだ。
三成は暇ではないからと。
だが。

「もしかして、清正か?だったら、少し待て!な!」

「何を言っているのだ・・・・俺は暇じゃないんだ」

正則が言うように用があるのは清正だ。
あぁちょうど良いところにその清正の姿があった。

「きよ「わー!待て待て待て!」

ぐいっと体を正則に引っ張られた。

「何をする!」

「シーっ!シーッ!いいから黙ってろって」

「なんだ?」

「あ、やべぇ、バレる。こっちこい、三成」

近くの室に押し込められた。
そして障子を少しだけ開けそこから正則は外の様子を窺っている。
さっきから意味がわからなすぎる。
清正に用事があると言うのに、正則に邪魔をされて。

「気をつけろよ。バレたら煩いからな」

お前も見てみ。と外の様子を指す正則。
こんな事をしている暇はないのだが、何かが済まないことには用事は片付かないらしい。
仕方なく三成も開いた障子の隙間から外を見た。

「清正がどうした?」

庭先に居るのは清正。
そんなのは三成もわかっている。自分が声をかけようと思っていたのだから。
だがよく見れば清正の体に隠れてわからなかったが、少女が一緒に居た。

?」

「おう。清正とだ」

は三成達が主とする秀吉夫妻に可愛がられている子だ。
三成達の知らぬ先の時代から来たらしい。

「二人がどうかしたのか?」

「どうってお前・・・・うーん。なんつーか、こう苛々する」

「苛々?」

「だから見てりゃわかるって」

別に正則が清正と仲が悪いわけではない。寧ろうざいくらいに清正にくっついている。
ではの事かと言われても、そうでもない。
とも一緒に騒いでいるくらい仲がいい。

「なんだ、二人に仲間はずれにでもされたのか?」

「ちげーよ!」

二人の仲の良さに嫉妬でもしたのか?と三成は思ったのだが。

「って言うかよ・・・・仲いいだろ?あの二人」

「まぁそうだな。元々清正の奴が世話焼きだからな。の面倒もよく見ている」

も清正を頼る事が多いもんな」

自分は頼られなくて寂しいとか感じているのか?この男は。
そう思ったが、そうではないらしい。

「だからよー。それ以上にならないのが苛々するんだよ」

「は?」

「だってよー。どう見たッてが清正に向けている目が違うじゃんか」

「・・・・・・正則、お前・・・・」

「な、なんだよ」

三成は意外だったと瞠目する。

「気づいていたのか、あいつの」

「あいつのっての?あ・・・・なんだよ、お前も気づいていたのかよ」

気づいていたもの。
が清正に向けている想いという奴だ。
気づかない方がどうかしていると三成は思う。

「だよなー・・・・なのに、なんで清正は気づかねぇんだ?」

うわっ。清正が珍しく正則に馬鹿にされている。
馬鹿と言うより、哀れんでいる。これはもう本人が知ればかなりの衝撃だ。
三成は軽く咳払いする。

「いや、俺達が勝手にそう思っているだけで、実際の所清正は気づいて・・・・おらぬな・・・・」

三成は嘆息した。
正則も肩を下ろす。

は、清正がおねね様の事を好きだと思ってんだろうなー」

「あれは誰がどう見てもそう思われるだろう。馬鹿だ」

清正の表情があからさまに変わったのだ。
ねねが来たことにより普段より柔らかくなっている。
もねねを邪険にすることなく共に話をし笑っているが、清正と二人で居る時に比べて若干固い。

「清正・・・・のことをどう思ってんだろうな」

「嫌い。ではないだろう・・・」

悪い印象を持っているとは考えにくい。
でなければ必要以上に構うことを清正はしない。
あれは人との繋がりを誰よりも大事にする男だ。

「単に恋愛の対象にならないのではないか・・・・」

「なんかが可哀相だよなー。あいつすげーいい奴じゃん。清正の奴罰当たりだよなー」

あぁそれは確かに。口に出さずとも三成も正則のその言葉には同意する。

「あれか?トンビでも出てこねぇとダメか?」

「鳶?」

「おう。よく言うじゃん。鳶が油揚げをなんとかーって」

最後までちゃんと言え。
三成は呆れるも、正則の言いたい事はわかる。

「清正の前で誰かがを攫えばいいと言うわけか・・・そんな奴いるのか」

「・・・・どっかに居るんじゃね?あ、お前がやればいいじゃん」

三成は柳眉を歪める。

「何故、俺が。面倒事に巻き込まれるのはゴメンだ。人の恋愛など特にな。お前がやればいいだろう」

「お、俺だって嫌だっつーの!」

そこまで言い切って正則は慌てて口を押さえた。
大声を出して外の清正達に知られれば大変だ。
そっと様子を窺うも、どうやらばれていないようだ。

「とにかく。を心配しての事だろうが、事が事だ。放っておけばいい」

「そうかもしれねぇけどよ・・・・」

なんとなく釈然としない様子の正則に三成は小さく笑った。



***



「お前も大変だな」

「え?何が?」

きょとんとする
暇だったからだ。だからをなんとなく連れ出した三成。
餌付けをしているわけでもないのだが、茶屋で団子を奢っていた。

「何が。と言われても・・・・まぁ、その辺は察せ」

「難しい事を言うね、三成・・・・あ、そう言えば」

一口団子を頬張ったところで、は串を小さく振り回した。

「正則もね。なんか優しい・・・・特に最近」

「正則が?」

思わず噴出しそうになった三成。
正則は正則でに気を使っていると言う事か。

「察しろってそれ?」

「直接は関係ないが。正則の厚意は素直に受け取っておけ。ない頭を使って考えたのだろう」

「ふーん」

二つ目の団子を食べる

「あれかな・・・・・三成も正則も、私の心配してんの?」

「心配?何をだ」

三成は茶を軽く啜った。
何食わぬ顔をして。

「ん、とね・・・・いい年頃なのに、惚れた男の一人でもいないの、かっての」

その言葉で三成自身が驚くくらいに目をパチクリさせた。

「お前・・・その言い方だと、誰かに言われたようなものではないか」

あまり考えたくないが、の顔を見ると言った人間が誰なのか容易く想像がついた。
は眉根を寄せて苦笑している。
3つ目の団子を食べて。

「うん。言われた」

「・・・・・・(大馬鹿は清正の方ではないか)」

軽く聞き流せなかった言葉なのだろう、には。
他の誰に言われても別にいいが、清正には言われたくなかったようだ。
恐らくいつもみたいに軽く言ったつもりなのだろうが。

「いる。と言ってやればいいのではないか?」

「え?」

「いるのだろう、実際は」

ただその相手が大馬鹿で気づかないだけで。

「いる。けど・・・・まったく気づいてもらえていないから・・・・」

「別の女を見ているからか?」

この場合、ねねの事を「女」と例えるのは少々三成も気が引けた。

「・・・・・・三成って意地悪だよね」

知っていて聞いて来るんだ。とは唇を尖らせる。
少しだけ涙を目に溜めて。

「今頃気づいたのか?」

「うん」

だけどは溜まった涙を軽く拭ってニッと笑った。

「お。なんだよーお前らだけでー」

そこに正則がやってきた。
いつもならば「煩い奴が来た」と眉を顰めてしまいそうだが、ここ最近ののことで比較的気にならない。
正則はの隣に座った。

「正則も食べる?美味しいよ」

「おう」

三成の奢りであるのは最初から承知のようで、遠慮なく団子を食べる正則。
他愛のない会話を三人でしていたが、がふと席を立つ。
「ちょっとね」と言って席を外す。余計な詮索は無用、単に厠だろう。
正則と二人になった。

「・・・・清正は一緒じゃないのか?」

あえての前では聞かなかった。

「あぁ?あー・・・・おねね様の手伝いしてる」

正則は面白くなさそうに唇を尖らせる。
ねねが嫌いなわけではない。を思ってのことだろう。
三成はため息を吐く。

「先ほどから聞いたのだがな・・・」

三成は清正に言われたらしい、先ほどの言葉を正則に話す。
案の定、正則は大袈裟にも縁台から転がりそうになった。

「なんだ?なんだよ、それ!どんな面で言ってんだ、清正〜」

信じられないと頭を抱える正則。
それも二人がの想いを知っているから言えるのだろうが。

「どうしようもない馬鹿の称号は清正に捧げるべきだ!」

「あぁそれはいい。今のあいつはまさにそれだ」

先ほど大馬鹿に格上げされたばかりなのに、ついにどうしようもない馬鹿になったようだ。
と言うより。

「どうしようもない大馬鹿だ」

ではこれからどうしようか?
には清正を諦めて、他に居るだろうもっといい男を探すべきか?
こればかりはの気持ちが大事だろう。

「あーあれだよ、お前のダチにいいのいるじゃん」

「幸村か?」

「真田でもいいし、直江でも、前田慶次でもいい」

「まぁあいつらならばと思うが・・・・・立花なんてのもいるな・・・・」

「あいつは、おっかねぇ姉ちゃんがそばにいるじゃねぇか」

「だが清正と親交が一番あるのは立花だ」

「ダチがと仲良くしていれば多少変わるもんか?」

あくまで自分達の勝手な推測にすぎないのだが。
珍しく腕を組み考え込む二人。

「お待たせー・・・なに?どうかしたの?二人共」

戻ってきたは珍しいものを見たと驚く。

「いや、別になんでもねーんだけどよ・・・・」

「お前は気にするな。団子でも食え」

「う?うん?」

二人の間に腰を下ろす

「結局よー。俺らがどうこう言っても、要は本人の気持ちなんだよなー」

正則が悟ったかのように口にしたので、はギョッとする。
食べようとした団子を零しそうになって。

「な?なに!?正則どうしたの?突然!!?」

なんか変なものでも食べた?大丈夫かな?正則は!?と三成の袖を掴む
だが三成は正則のそれに動じていない。
それどころか同意してしまっている。

「仕方ない。放って置くべきだとも思うが、我らが手を貸してやるべきかもしれん」

「え?え?三成!?」

いつもいがみ合う二人が不思議なくらい仲がいいのでは驚き以上に顔を青ざめる。

「ゆ、雪でも降るかな?」

思わず空を見上げてしまう。

「だからな、

「え?」

正則はの肩に右手を置いた。
そして左手の親指をグッと立てる。

「俺らがついているぜ!」

「へ?」

「なんとかなるはずだ。余計なお世話かもしれんが協力はしてやる」

三成もニ三頷いた。

「正則・・・三成・・・・」

そこでもようやく二人が言う意味が理解できた。

「あははは。ありがとう、二人とも・・・ね、私まだまだ大丈夫かな?」

「「大丈夫だ」」

揃ってきっぱりと言い切った。
その根拠は二人にもないのだが、このままではが可哀相すぎる。
いや、いわば二人にとってもは家族であるわけだから、その家族の為に上手く行くよう応援したいわけで。

「よし。頑張ろう、私も」

茶屋で奇妙な結束が固まったのは言うまでもない。

「三成、正則。お前らここに居たのか。秀吉様がお呼びだ」

清正がわざわざ二人を呼びに来た。

「「・・・・・」」

二人は無言で清正を一瞥する。

「なんだ?」

両手に腰をあて仁王立ちの清正。
縁台に腰掛けている二人はその顔を見上げる形になるのだが。二人共示し合わせたわけでもないのに。

「「どうしようもない大馬鹿」」

と口にした。

「なっ!」

三成だけならまだしも、正則にまで言われて清正は怒鳴り返そうとする。
だがそうなる前に二人はスッと縁台から立ち上がる。

「つーわけでよー。俺ら叔父貴に呼ばれちまったから行くわ」

「あ、うん」

「では、またな」

清正を置いて行ってしまう二人。

「叔父貴の用事が終わったらよ。も交えて作戦会議開こうぜ」

「まぁいいだろう。協力してやると言ったわけだしな」

結局自分達もに甘いんだ。
流石に自分達が鳶になるのは無理なのだが。
清正以外に盗られぬように見張っていなくてはならないだろう。

「背中を押してやるのが我らの役目か・・・・」





【だいじょうぶ、って。】





「なんだ?あいつら・・・急に仲良くなって・・・・」

清正は頭を掻いて二人の背中を見送ってしまう。

「あははは・・・・あー・・・・うん。頑張ろう、私も」

は団子にかぶりついた。

「なんだ?お前まで・・・・・ったく・・・・」

「最強の応援団ができたんだ」

「あ?」

だからまだまだ大丈夫なんだ。







清正って言うより子飼い夢。で、三成支店かな?
10/03/11
19/12/27再UP