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そんな顔をされると、弱いんだよな。 【触れればふにゃっと笑う。】 「利さま、利さまー」 が利家の下へやってくる。 現在秀吉の屋敷に居候している利家。 叔父貴と呼び慕う柴田勝家の下を離れて、友秀吉のそばで己を磨いている。 そんな中で秀吉夫妻が娘のように可愛がると出会った。 秀吉が可愛がるのも頷けるなと思うほどに、利家もを可愛がってしまう。 身長差がある二人だから、ついの頭に手を伸ばし幼子に対するみたいに撫でてしまうことも。 「ん?どうした、」 「えへへ。あのですね、利さま」 後ろ手にして、何かを隠している様子の。 利家より年下の。 利家から見て、妹のようにも見えるがちょっと大袈裟に言えば秀吉みたいに娘のように見えてしまう。 「これからお出かけになると聞きました」 「あぁ。ちょっくら叔父貴に顔を出しにな」 「勝家さまですか・・・」 少しだけの表情が沈んだように思えた。 「?」 沈んだ表情はすぐさまなんでもない顔へと変わる。 「いつも思うんですけど、本当利さまは勝家さまが一番なんだなーって思って」 「へ?」 「あ、いえ・・・・その、あ!そのお出かけの時、食べてください!」 今まで後ろ手に持っていた包みを利家の前に差し出した。 「おにぎり・・・・なんですけど。ねねさまみたいに上手に握れなかったんですけど・・・」 少し頬を赤く染める。 利家は包みを受け取る。 「ありがとうな。」 わしわしとついの頭を撫でてしまった。 「い、いえ。大したものじゃないけど・・・・」 利家に頭を撫でられ悪い気はしないのか、は口元を緩めて笑っている。 「いい土産ができちまったな。あとで食うのが楽しみだ」 「お気をつけていってらっしゃいませ」 「おう。行って来る」 利家が出かけるのを見送る。 いってらっしゃい。と笑顔で手を振り続ける。 利家の後姿が見えなくなると、手を下ろす。 一緒にの笑顔も消えた。 最初からわかっている。知っていることだ。 利家が勝家を慕っている事。 彼の為にとわざわざ離れて頑張っていること。 それはと出会う前からのことだから、の知らない時間があるんだ。 「少し寂しいかな・・・・」 でも邪魔などできない。 利家は上に行こうと頑張っているから。 今のにできるのはちょっとだけ。 差し入れを出すぐらいで。 どちらかと言えば、自分の方が利家のおかげで笑って元気でいられるんだ。 「利さまが早く帰ってくるのを楽しみに待っていよう」 会えた時にその寂しさはスッと消えるだろうから。 「ん。うめぇ」 勝家の下へ行く途中。 あと少しだが、小腹が空いたので出かけにから貰った握り飯を食べていた。 「少し形が崩れてっけど・・・味は悪くね」 少し強く握れていなく、油断するとボロっと形が崩れる。 けど、が作ってくれたのだと思うと嬉しいから。 ありがたいと思うじゃないか。 「いいよなぁ。こう言うの・・・・」 利家の頬が緩む。 差し入れをくれて「いってらっしゃい」と笑顔で見送ってくれて。 きっと帰れば同じ様に笑顔で出迎えてくれるんじゃないかと。 「帰る・・・・か・・・・」 勝家の為に自分が上に上がれば、彼の為になると思った。 だから勝家の下を離れて秀吉の下に身を寄せた。 勝家の下が自分の帰る場所。そう思っていたのに。 いつの間にかがいる、秀吉の屋敷が帰る場所と思っていた。 「やっべ・・・・顔がにやける」 まだ勝家に会ってもいないのに。 頭の中では土産は何かいいかな?喜んでくれるかな?などと考えてしまっている。 「よっしゃ。腹いっぱいになったし、行くか!」 米粒を最後の一粒までぺろりと食べた。 気合を再充填し利家は歩き出した。 半月後、利家が勝家のところから戻ってきた。 「お帰りなさい、利さま!」 自分が一番に出迎える事が出来た。 それだけでは嬉しくなる。 利家がいない半月は何か物足りなさを感じるほどだった。 彼がここで暮らしている時間はそんなに長くないのに。 「おぅ。ただいま。。ほら、土産だ」 途中で茶店によったらしく、饅頭の入った包みを沢山の手に持たせる。 「ありがとうございます、利さま。秀吉さまたちも喜びます」 「そうか?・・・・あー・・・・」 何か言いたそうな利家。髪を掻くも、はそれに気付かない。 「沢山ですね、利さま。みんな喜びますよ」 「そうか?あ、あはは」 は皆に土産を渡してくると踵を返した。 「あ・・・・・あー・・・・・」 去っていく後姿。 なんか、予想と違うと利家は思う。 「しっくりこねぇって言うか・・・・・なんか違うな・・・」 出迎えてくれたのは嬉しい。 土産に喜んでくれたのも嬉しい。 なのに、なにかしっくり来ない。 「つまんねーって言うのか、な・・・・」 物足りない、何かが。 「利さま。お疲れじゃないんですか?お休みになったほうが良いと思いますけど・・・」 帰ってきたばかりなのに、利家は刀を振るっていた。 その場を通りかかったは思わずそう声をかけてしまった。 邪魔をしたかな?と思ったのだが。 「いや。疲れてなんかいねぇよ。ちょっと、な」 物足りなさを、体を動かして吹っ切りたかったのだ。 「どうかしたんですか?」 「んー?・・・・どうってほどでもねぇけどな」 刀を鞘に収める利家。 は利家のそばへとよった。 「利さま?」 「なんか物足りなかった。もっとが喜んでくれるんじゃねぇかって思って」 「は・・・?私が・・・・」 「俺がいなくても・・・・まぁ、別になんも変わりはねぇと思うんだけどよ」 両手に腰を当てて空を見上げる利家。 「変わりはない。なんてこと、ないですよ・・・・利さまが帰ってくるの、待ってました、私・・・・」 の声音が小さくなっていく。 唇を尖らせながら目線は利家とは逆に地面へと向いていく。 「けど、利さまが頑張っているのを邪魔したくないし」 「別にを邪魔なんて思ったことねーし」 なんとなくお互い気恥ずかしくなってきた。 利家も自分は何を子どもみたいな事を言っているのだと。 「お前ら、そこで何しとんのじゃ。お見合いしとるみたいじゃのー」 廊下を歩く秀吉が茶化すように出てきた。 「ひ、秀吉!?な、なんだよ!!」 「わしの可愛い娘を泣かしおったら許さんぞー」 「な!泣かすかよ!何言ってんだ!秀吉!!」 の顔も赤くなっている。 「こ、ここじゃ邪魔が入る。行くぞ、」 の手を引いて利家はその場を離れた。 「この辺でいっか・・・・」 屋敷を出て適当な場所までやってきた。 「あ。悪ぃ、・・・」 無理矢理引っ張ってきたとに詫びるも、は嫌な顔はしていない。 それどころか、笑っていた。 「?」 「えへへ。なんか利さまだなーって思って」 「は?」 「利さまが居てくれるのがなんかいいなぁって。さっきも言ったじゃないですか。 利さまの邪魔はしたくないって。私にできることって限られるから」 は利家の手をちゃんと取って、握り返す。 「でも、私の方が、なんか・・・利さまにいっぱい元気をもらっているなって思って」 「そ、そうなのか?」 「そうです。利さまと一緒に居ると嬉しいし、楽しいし・・・・なんか笑顔になります」 そんな効果、自分にはないと思う。 寧ろ利家自身の方が、に安心感を貰っていると。 「俺はが笑ってくれるのが、嬉しいんだが・・・・それってよ」 「利さまと一緒だと笑顔になっちゃいますね、私」 お互い知らずに効果を与えていたようだ。 「正直に言っちゃいますと・・・利さまの手が好きです」 「手ぇ?」 「はい。手です。利さまの大きな手で頭を撫でられるのが、あはは」 繋いでいない手をマジマジと見てしまう利家。 「安心できるのかなー。利さまの手って」 「そりゃ。俺が思う。の笑顔と同じだな」 戦で長い事離れることもあるが、帰ってきたときにお互いを見れば安堵する。 けど、やはりできれば一緒にいる時間を大切にしたいなと思う。 だから、利家は繋いだ手に力を入れる。 「なぁ、。今度はよ・・・・」 「はい?」 「叔父貴のところに行く時。お前も一緒に行かないか?」 一瞬キョトンとする。 驚いたのだろうが、少し表情を曇らせた。 「いいんですか?私が一緒に・・・・行っても」 「いいに決まってるだろ。叔父貴にもを会わせてぇと思うし。 戦には連れて行けるわけがねぇんだ。叔父貴のところなら安心して行ける」 「・・・・・邪魔じゃないですか?」 「だから。を邪魔になんか思わないって・・・・嫌ならまぁ、仕方ねぇけど」 「嫌じゃないです!私、嬉しいです!利さまに誘っていただけで」 も手を離すものかと力が込められる。 「一緒に。行きたいです。私も。少しは寂しくないかなって思うから・・・」 「あ・・・あー・・・・なんかアレだな。叔父貴に嫁さんを紹介するみてぇだな」 「じゃあ・・・・最初は。秀吉さまとねねさまに挨拶しないと」 顔を真っ赤にしては言う。 「そうだな。秀吉を驚かしてやるか」 来た道を戻る二人。 秀吉を驚かす。などと利家は言うも、きっと秀吉はすでにお見通しなのだろう。 「。好きだぞ」 「私も利さまが大好きです」 「お。言うなぁ。けど俺の方が大、大好きだぞ」 「私も負けませんよー。利さまのこといーーっぱい大好きですからね」 繋いだ手を振りながら屋敷へ到着するまでそんな事を言い合っていた。 09/07/26
19/12/27再UP
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