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のんびーりしたらこうなった
今日は休みでのんびりしていた午後。 夏侯惇は静かに過ごしていたが、ちょっと散歩がしたくなり一人で屋敷を出ていた。 いつもならがついてくるのだが、今日は出かけているようだ。 自分は休みだが、他の者は働いている。 それは町の人間もそうだ。 配達であっちこち世話しなく移動してる者。 店先で客を一生懸命呼び込んでいる者。 それぞれだ。 一通り歩き回った後、屋敷へと戻る。 と、その前にへの土産としてが好みそうな菓子をいくつか買って帰る。 自宅の門をくぐると、庭先からの笑い声が聞こえた。 夏侯惇の足は自然とそちらへ向かう。 「お帰り、惇兄」 「あぁ」 は庭で犬と遊んでいた。 その犬はが拾ってきた犬だ。 名前は『小太郎』とが名づけた。 「小太郎ちゃんと遊んでたんだよ」 「小太郎とか?小太郎での間違いではないか?」 「そんなことないよ」 「ほれ、土産だ」 夏侯惇はに先ほど買った菓子を渡す。 「ありがとう。惇兄も食べるよね?」 「俺はいい」 「でも、私一人じゃ食べれないよ。一緒に食べよう。お茶淹れてくる」 は厨房の方へ駆けて行った。 残された夏侯惇は仕方なく、小太郎と遊ぶ。 と言うか、昨日降った雪の残りを玉にして小太郎に向かって投げつけてみる。 「ほれ、ほれ」 苛めかと一瞬思ってしまうが、小太郎は遊んでもらえて嬉しいのかはしゃいでいる。 そのうち、夏侯惇に向かって飛びついてくる。 「こら、やめんか」 じゃれてくる犬をどう扱ってよいかわからない夏侯惇。 犬は嫌いではない。 でも、飼うと言うことをほとんどしたことがないのだ。 なので慣れない。 「小太郎ちゃん、惇兄に懐いているね」 が盆をもって戻ってきた。 庭先でのお茶の時間となりそうだ。 小太郎は二人の足元で寝そべっている。 ゆっくり茶を飲む夏侯惇。 「ねぇ、惇兄」 「ん?なんだ」 「犬ってさ、夢見るのかな?」 「犬がか?さぁな」 「さっきね、小太郎ちゃんの小屋に行った時にね、小太郎ちゃん仰向けで幸せそうな顔して寝てたんだ」 「仰向けでか、それは豪快な犬だな」 「でね、私が近づいたらパッと目を覚まして小屋からのろのろと出てきたの。 でもね、なんかぼーっとしてて意味不明な行動を取ってたんだ。あれって寝ぼけてるのかなって思う」 夏侯惇は小太郎を見るが、小太郎は自分の事だと気づくはずもなくあくびをしている。 「犬も寝ぼけるものなんだって、なんか可笑しくてさ。 そしたら、犬も夢を見るのかな?って思ったの。どう思う?」 「さぁな。俺は犬ではないんでそんなことは知らんな」 「えー少しぐらい考えてよ」 「あのなぁ・・・犬も寝るなら夢を見るのではないか?・・・でいいか」 夏侯惇は苦笑しながら言った。 それでも的には満足の答えのようだ。 「そうだね、犬も寝るんだもんね。夢ぐらい見るかもね」 は夏侯惇の買ってきた土産の菓子をつまんで食べる。 別になんでもないのんびりした午後。 こんな日もたまにはいいだろう。 「犬って言えばさ」 「あ?」 「徐晃さんって大型犬っぽいよね」 「徐晃?」 「で、遼さんは猫っぽいよね」 に言われて夏侯惇は二人の同僚を思い浮かべる。 普通に思い浮かべたはずなのに、いつの間にかその同僚に獣の耳とシッポがついてしまっている。 「くっ、なんだそれは」 「は?私そんな変なこと言った?って言うか、想像してるの惇兄じゃん」 「いや、そうなんだが。はははっ、なんだが笑いが止まらん」 「どんな想像してるのさ、惇兄」 珍しく声を上げて笑う夏侯惇。 「淵ちゃんは大猿っぽいなぁ。許チョ君はパンダ。で、典韋君がクマ。あ、仁ちゃんの方がクマっぽいかな」 「ははははは、やめんか。笑いが止まらん」 「張コウさんが極楽鳥?大きく羽ばたいて飛んでいくんだね、きっと」 夏侯惇の脳裏には、動物化された同僚たちが浮かんでいく。 中でも張コウが『美しい〜』と言いながら羽ばたいている姿が強烈に浮かぶ。 つーか、その姿は鳥ではない。 いつもの張コウが普通に空を飛んでいるのだ。 「同じ鳥でも司馬懿ってオウムって感じするなぁ。口癖は『馬鹿めが!馬鹿めが!』って煩いオウム」 「お、お前。はははは、腹が痛い、もう勘弁してくれ」 「別に私は言っただけで、惇兄の想像力が可笑しいんだって。笑うほどの物かな?」 に言われるも、そう想像してしまうのだからしょうがない。 ちなみに今の夏侯惇の脳裏には極楽鳥の張コウと紫色のオウムの司馬懿が占拠している。 「いかんな、このままでは・・・ははは、明日、奴らの顔を見たら噴出してしまいそうだ」 「怒るだろうね、皆。特に司馬懿辺りがさ」 「だな・・・ははは」 「徐晃さんなんかは、『え、え、拙者何かしたでござるか?夏侯惇殿〜』って言うと思うよ。 それで、惇兄が適当に言っても『拙者のどこがいけないのでござろうか』って言ってシュンって項垂れるんだ。 ちなみに、項垂れた時にワンコの耳とシッポまでもがシュンって垂れるんだよ」 「ふふ、はははは。もう止めろ、」 簡単に想像出来てしまうのが怖い。 「遼さんは、笑い続ける惇兄に『なんですか!いったい!』って爪と髪を逆立てるんだ。 猫が威嚇した時みたいに『シャーッ!!』って」 「お、俺も同じ事を考えてしまったぞ。あはははは、もう、本当に勘弁してくれ」 笑いすぎて、顔と腹の筋肉が痛くなってきた夏侯惇。 このままでは本当に明日になったら、同僚の顔を見て笑い続けたたままになってしまう。 「あー惇兄って結構想像力豊かなんだね。こんな話でそんなにうけると思わなかったよ」 「別に、そう言う訳ではないぞ」 「だってねぇ」 足元では小太郎が二人の騒ぎを我関せずと言った感じで寝そべっている。 お茶もすっかり冷めてしまったので再び淹れ直し一服する。 「はぁ、楽しかった」 「俺はもう勘弁して欲しいぞ。ったく・・・」 「惇兄、今日の夕餉はさ」 「ん?」 話題を変えようとした矢先、客人が来たようだ。 使用人に案内されて庭に入ってきた。 「お邪魔しますぞ、夏侯惇殿」 「こんにちはでござる、殿」 「ちょ、張遼・・・徐晃」 「殿からの用事で参ったのですが・・・夏侯惇殿?殿?」 「どうしたでござるか?二人とも」 まさか、今日顔を見るとは思ってなかったために、急に笑いがこみ上げてくる。 「・・・す、すまん・・・くっ、ははっはは・・」 「と、惇兄、わ、笑うの止めてよ。私まで、つられるって・・・・ぷっ、あはははは」 「「?」」 いきなり夏侯惇とは声を上げて笑い出した。 なんのことだかさっぱりわからない張遼と徐晃。 「これは驚いた。夏侯惇殿が声を出して笑っている・・・」 「拙者も、初めて見たでござるよ・・・」 しかし、予想外にも、この二人は怒ったりオロオロする事もなく呆然としていた。 それは滅多に声を上げて笑う事のないづ同僚の姿を見ることができたからであろう。 夏侯惇とはその後もしばらく笑い続けたのだった。 **翌日 「なに?元譲が今日も休むだと!?」 朝になって夏侯惇の使いにそう告げられた曹操。 「なんだ?病気か?あやつが連続で休むなど・・・」 「あ・・・いえ」 「なんだ、言ってみよ」 「はぁ・・・・笑いすぎて腹が痛いとのことです・・・」 「は?」 翌日まで影響が出るほど笑ったらしい夏侯惇。 どうしたら身体にそんな影響が出るのだろうか?彼の笑いのツボは案外わかりやすいものかもしれない。 のどかな午後の一時が、愉快な午後へと変わった。 まぁ、そんな日もあるのだろう・・・ 03/12/19
19/12/22再UP
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