今日という日は。




ドリーム小説
「なんか・・・場違い?」

はつまらなそうに廊下を歩いていた。
正確にはつまらないのだ。

今は蜀との小競り合いが続き、武将たちは皆戦場へと行ってしまっている。
元々居候の身のには戦が起きても何もする事がない。
戦場などには当然連れて行ってもらえるはずも無いし。

「はぁ〜暇〜暇で暇でしょうがないなぁ〜」

いつも相手にしてくれる大人たちはいないのだからしょうがない。
曹操は政務のために何度が戻ってきて着ているが、そんな彼に遊んでもらうわけにも行かない。
が頼めば、曹操は時間を作ってくれるだろうが、そんなのはただの我が侭だ。

「お子様たちとでも遊ぼうかな」

の足は曹操邸へと向かっているようだ。
そんなに暇なら勉強でもすればいいのに・・・ねぇ?

途中、は忙しそうに部下に指示しながら歩いてくる曹操と出くわした。

「あ、孟徳様」

「おぉ、か。毎日、寂しくないか?」

「寂しくは無いですけど、皆忙しくて暇ですね」

などと苦笑してしまう

「そうか、暇か。待っておれ、。あと、5日、いや、3日で終わらすからな」

「はぁ?」

「わしはもう行かねばならん。留守番頼むぞ、

「あ・・・はい・・・いってらっしゃい・・・」

は曹操の背中を黙って見送る。

3日で戦を終わらすって。
曹操の言葉には唖然とする。
それって、つまり、が暇だから、戦を早く終わらせるって事ですか?

「そんなの無理だっての・・・って言うかそんな理由で終わらすなっての」

言葉に出すも、深く考えはしなかった。
戦が簡単に終わるなら、最初からする必要はないだろうにと。

あれは曹操なりに気を使ってくれた言葉だろうと。

・・・君主が気を使うってのもおかしな話だが。



***



だが、あの言葉は冗談ではなかった。
本当に3日後に曹操達は戦を終えて帰還した。

「・・・マジっすか・・・」

凱旋する兵士たちの姿を見て呆然とする。
あちらこちらで兵士たちの無事を喜ぶ声がする。

「あ!惇兄」

数人の部下に囲まれ何やら指示をしていた夏侯惇。
駆け寄ってくる少女の姿に口元に笑みを浮かべる。

「では、将軍」

「おぉ、後は任せる」

「はい」

部下たちは夏侯惇に一礼して、すれ違うにもニコと笑んで立ち去っていく。

「帰ったぞ、

「お帰り、惇兄・・・」

「ん?どうした」

「あのさ・・・あ、ううん。なんでもないよ」

「なんだ」

「あ〜その・・・早かったね、帰ってくるの」

「なんだ、早く帰ってはまずかったか?」

「そんな事無いよ!もう」

口を尖らせるに夏侯惇はフッと笑む。

「すまん。、これから孟徳の所に行くぞ」

「これから?私も?」

「あぁ、お前もだ。と、その前にな」

夏侯惇は曹操の所ではなく、別の場所へとを連れて行く。
そこは甄姫の部屋で、彼女は快く出迎えてくれた。

「お待ちしていましたわ、殿」

「え?え?なんですか?」

「俺は向こうで待ってるからな」

「え、惇兄!?」

「さぁ、殿こちらへ」

言われるがままに甄姫に部屋へと通される
何がなんだがわからない。

「甄姫様〜なんですか、急に」

「うふふ、後でわかりますわ」

甄姫はとても楽しそうに女官たちに命じてに着替えをさせる。

「髪は結い上げて、化粧も少ししましょうか」

「甄姫様〜」

「着物はこちらのもので、首飾りはこちらのものを」

てきぱきと指導する甄姫。
は人形のように成すがままだ。

どのくらいの時間が経ったのだろうか、別室で待っていた夏侯惇の前に綺麗に着飾ったが甄姫と現れた。

「ほぉ、変わるものだな」

「惇兄〜からかってるでしょ」

「いや、全然」

は薄い桃色の生地に金糸や銀糸で花が刺繍されている着物を着ていた。
髪も綺麗に結い上げられて、数本の綺麗な簪をつけて、耳飾りもつけて。
まるでお姫様のようだった。

「本当、よく似合いますわ、殿。ね?夏侯惇殿」

「あぁ、似合ってるぞ」

いつもの彼なら照れて素直に口にしないだろう言葉か出ては驚く。

「あ、あの、甄姫様。これって」

「うふふ、殿と夏侯惇殿が殿の為に用意させたものなのよ」

「え、孟徳様と惇兄が?」

が夏侯惇のほうを見ると、夏侯惇は軽く咳払いしている。

「惇兄」

「あ、なんだ・・・孟徳の所に行くぞ、

「え、うん」

歩き出す夏侯惇に後に続く
だが、夏侯惇は急に立ち止まり、上を向いたり下を向いたり首を動かしている。

「ん」

夏侯惇はぶっきらぼうにに手を出す。

「え、なに?」

「〜〜いいから、手を出せ」

「え、う、うん」

は夏侯惇の手に自分の手を重ねる。
そして、再び歩き出す。

(そっか・・・エスコートしてくれてるのか、惇兄ってば)

とは言ってもただ手を繋いで歩いているようなものだが。
彼なりに気遣ってくれたのかと思うと嬉しい限りである。



***



が夏侯惇に連れて来られた場所は曹操自慢の庭園だった。
小規模だが宴の用意がされている。
そこにはすでに曹操が待っていた。
辺りが少し暗くなっていたので、ぼんぼりに灯がともされる。

、待っておったぞ。早くこちらへ来い」

「はい」

「なんだ、元譲。それでは子どもの引率みたいではないか」

紳士らしいエスコートではない夏侯惇に曹操は呆れる。
もっとマシにできると思ったのに。

「う、うるさいぞ、孟徳」

「はははは、しょうがないな、わし自ら行けば良かったのぅ」

「ぐ・・・こいつ」

からかわれて面白くない夏侯惇だが、実際そうなのだからと我慢する。

曹操はを自分の方へ招く。
卓の上には食事が置かれている。
場には曹操と夏侯惇との三人だけ。

「うむ。よく似合っておるな、

「ありがとうございます。甄姫様から聞きました。孟徳様と惇兄が用意してくれたと」

「なに、これくらいなんてことない。座るがいい」

は言われたままに腰を下ろす。
夏侯惇がその向かいに座る。

「今日はな、何の日か覚えておろう?」

「え・・・?何の日でしたっけ?」

「なんだ、自分の誕生日も忘れたか、

「・・・あ。あ〜」

しょうがない奴だと、曹操と夏侯惇は顔を見合わせて笑った。
思えば、今日は自分の誕生日だった。
去年だって、別に祝った記憶もないし、ここでは戦が続いたりと平凡な毎日ではない。
自分は居候の身なので我が侭は言いたくないし。

「わしらはちゃんと覚えておったぞ。今日がの誕生日だと」

以前教えたかもしれないなぁと思う。
と言うことは二人はわざわざその為にこれだけの事をしてくれたのか。

「じゃあ、この前戦を3日で終わらせるって」

「なんだ、お前そんなこと言ったのか!?」

「言ったとも。あの時点ですでに終結に向かっていたから言えたのだがな。
 まったく、何もこんな時に戦を仕掛けてこんでも良いのにと思ったな」

「孟徳様、それはちょっと」

「それとな、

「ん?」

今度は夏侯惇が口を開く。

「今日はお前の誕生日でもあるが、同時にお前が我らと出会った日でもあるのだぞ」

「・・・・あ」

去年の誕生日の記憶がないのは、そんな状況ではなかったからだ。
は思い出す。
意味もわからず、この世界に飛ばされて心細く不安な毎日。
戦が近くで行われていてどうすることも出来ずにいた日々。

そうだ、そして去年の今日・・・・曹操と夏侯惇と出会い受け入れてくれた日だ。

「そうだった。私、忘れてるなんて・・・」

「仕方ないだろう。ここでの生活に慣れるのに忙しかったしな」

「ここは戦も起きる、年中平穏ではないからな」

「他の者もの誕生日を祝いたいと言っておるが、今日は特別、わしと元譲だけと決めておった」

「我らにとっても、今日は大事な記念日だ」

「孟徳様・・惇兄・・・ありがとうございます」

大人ばかりの世界で、正直寂しい日もあった。
家族と離れ離れになって泣きたい日もあった。

でも、ここでも家族と同じように自分を大事に思ってくれている人たちがいた。

「すっごく、嬉しいです。本当、とっても・・・」

嬉しくて嬉しくて涙がでる。

あぁ、悲しくなくても涙が出るものなんだ、と泣きながら思ってしまう。

「泣かんでも良い。折角化粧までしたのに取れてしまうぞ」

「だ、だって、嬉しいんですってば」

曹操は手絹をへ差し出す。
素直には受け取り涙を軽く拭った。



「「、誕生日おめでとう」」



「わしと元譲は今日と言う日にに出会えて嬉しく思うぞ」



「いつまでも・・・そのなんだ・・・・我らのそばで笑っていろ」



曹操と夏侯惇。
二人の男性にこうして祝って、自分と出会った事を嬉しく思ってくれる。
の今年の誕生日はとても思い出深い・・・いや、一生忘れる事の出来ない日となった。


「よし、来年のの誕生日までには三國を統一してやろう」

「孟徳・・・無茶は言うな」

「あはは、楽しみにしてますね」

「任せておけ。わしはやると言ったらやる男だ」

・・・孟徳を乗せるな」


さて、来年のさんの誕生日にはどうなっているのでしょうか?
翌日は他の武将も交えての誕生日を祝うのでした。

それはとても盛大に。







キリ番リクでした。
03/11/02
19/12/22再UP