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導いてくれたのは。
「・・・おい、どうした」 「・・・」 「」 「ん〜?・・・あ、惇兄ぃ」 は欠伸をしながら軽く伸びをする。 そんな自分を夏侯惇が変な顔をして見ている。 「なに?惇兄」 「いや、普通だと思って」 「普通?なにが?」 「お前寝ながら泣いてたぞ」 「へ?」 言われて見て初めて気づいた。 自分の頬には涙が零れた跡があり、目がなんかおかしい。 「怖い夢でも見たのかと思ってな」 が寝ていた場所は夏侯惇の執務室。 置かれた長椅子に座りいつの間にかうとうとしてしまったのだ。 寝ているに気づき夏侯惇が被子を掛けてあげようとしたら、は泣いていたので 夏侯惇は心配になって起こしてみたのだ。 「怖い夢・・・は見てない気がする」 「そうか」 「目が覚めたときに忘れちゃったみたいだから大した事ないんだよ、きっと」 「ふむ、ならば良いか。だが風邪でも引かれたら困るがな」 「あはは、ここ日当たりいからついね」 確かに憶えていない夢の内容。 思い出すこともなく過ごした日。 だがその日の晩。 は普通に寝床に着いた。 いつもみたいにだんだんと眠りに落ちていく。 はただひたすら歩いていた。 森ではなく松林の中を。 周りには人の姿などなく、ただ一人で。 聞こえるのは姿なき鳥の鳴き声と自分の足音。 固い土のではなく砂の上を歩く。 どこまで行こうが、人の姿はなく静かな林。 誰もいない。 そう誰も。 でもこの風景はどことなく覚えている。 懐かしくも感じる場所。 確かこのまま行けば見慣れた場所に出るはずだ。 だが、林を抜けることなく同じことの繰り返し・・・ 「・・・・」 はそこで目を覚ました。 また涙を流していた。 上体を起こし窓の外を見る。 まだ朝にはなってない。 所々からもれている灯がそう時間は経っていないと教えてくれる。 の見た夢。 昼間も同じ夢を見た。 でもその時は憶えていなくて。 もう一度寝転ぶが涙が止まらなくなっている。 「眠れないよ・・・」 は被子を羽織ったまま部屋を出た。 ずるりずるりと城の中を動く物体。 遠くから見るとかなり怖いものがあるがは気にも留めずある場所へと向った。 「・・・いるかな・・・」 その場所の前まで来て、隙間から明かりが漏れているのを見て安堵した。 コンコン その部屋の主は扉を叩く音がしたので開けてみる。 「誰だ」 開けてみると白い物体が目の前に立っていた。 「のわっ!な、なんだ!?」 「惇兄ぃ・・・私」 「・・・なんだこんな時間に」 白い物体の正体を知り夏侯惇は落ち着いてみせる。 「眠れなくなっちゃた・・・」 「昼寝したからか?」 「違う〜夢見たの」 「まぁいい。とりあえず入れ」 そこは夏侯惇の執務室。 夏侯惇は屋敷には帰らず仕事をしていたらしい。 机の上には沢山の書物やら書簡が重なっている。 「お前、被子をかぶってなんだ?」 「だって怖かったから・・・」 は長椅子に腰掛けるがいまだ被子を羽織ったままだ。 「こんな時間だから何も出んぞ」 「別にいい。お腹空いてないもん」 「じゃあ、そこで寝てろ」 夏侯惇は机に戻り仕事の続きを始める。 は言われたとおり被子に包まり横になる。 「・・・・」 寝てろと言われてもすぐには寝付かない。 こんな時だから夏侯惇に甘えたい気持ちがあるのだが、仕事を邪魔する気にはなれない。 屋敷帰らず、執務室にいただけでもラッキーなのだから。 ふと、さっき見た夢のことを考える。 別に何かに襲われたと言う怖い夢でもないのに涙が出てきた。 なんでだろう? でも昼間同じ夢を見ても、その後は何も変わらなかったはずなのに。 何度も何度も寝返りを打つ。 「どうした、眠れんのか?灯が邪魔か?」 「ち、違う。灯は邪魔じゃないよ」 はバッと身体を起こす。 夏侯惇は軽くため息を吐くと手を止めこっちに来た。 そのまま長椅子に腰掛ける。 「なんだ、泣きそうな顔をしおって。言ってみろ」 「・・・夢の中でね、私たった一人で松林の中を歩いているの。 どこまで進んでも林を抜けることはなくてね」 その松林はの知ってる場所だった。 が元いた世界。 愛犬の散歩をするのに朝早く通った松林。 だから林を抜け坂を下ればそこはの住んでいた町があるはず。 なのに、林はどこまでも続いていた。 「お前のいた場所か」 「でもね、昼間はなんともなかったんだよ。さっきまで気づきもしなかったのに」 「そうか」 夏侯惇はの肩を抱き引き寄せる。 もそのまま頭を夏侯惇の肩へ預ける。 「帰りたいか?」 「わからない・・・ねぇ、惇兄」 「なんだ」 「私、惇兄のそばにいちゃ駄目かな?」 「・・・」 答えない夏侯惇には夏侯惇の顔を覗き込む。 「俺は今まで駄目だなんて言ったことはないぞ」 「うん、ありがと」 はそのまま目を閉じる。 「惇兄、大好き」 「しばらくこうしていてやる。安心して寝ろ」 「うん」 妹のように可愛がっている少女。 いつまで兄貴風を吹かせていられるのかわからない。 いつかは自分の側から離れていくのだろう。 でも、今は。 にとって一番の存在でいたいから。 彼女の我が侭に付き合ってあげよう。 夢を見た。 さっき見たのと同じ夢。 誰もいない知ってる松林。 やっぱり淋しくて、どこまで行っても景色は変わらない。 迷い込んでしまった。 もうこんな夢は見たくないのに。 でも 今度のは違った。 『、早く来い。置いていくぞ』 惇兄が待っていてくれた。 大きな手を差し伸べてくれて。 もう淋しくないよ、惇兄と一緒なら・・・ そうか、わかった。 昼間見た夢を憶えていなかったわけが。 『』 惇兄が私を見つけて呼んでくれたから。 きっと、もう大丈夫。 次に目が覚めたときはちゃんといつもの私でいられる。 惇兄が側にいてくれるから・・・ 03/05/04
19/12/22再UP
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