ドリーム小説
「もう一度お願いします!」

趙雲に剣の稽古をつけてもらっている星彩。
最近目覚しい進歩を見せている星彩のようだが、まだまだ趙雲には敵わないようで
何度も得物を弾き返されてしまう。

それでも、星彩は何度も趙雲に挑み、趙雲も星彩に対して真面目に飽きることなく相手をしている。
これが最近の二人の日課になって言っていると言っても過言ではない。

「よし、来い。星彩」

「はい!」

それを面白くなさそうに見ていたのが

「あ〜なんつーか二人の世界って感じ」

そう呟きながら、見ていても面白くないからとは二人の側から離れる。
は星彩のように武器を手にすることもないし、兵法など学ぶわけでもない。
単なるこの国の居候ってだけだ。
星彩は元々が物静かな子だが、とは仲良く遊ぶ事も多い。
も星彩と一緒にいるのは好きだし。
でも、最近の彼女は趙雲に稽古をつけてもらっている時間の方が多い。
趙雲も最初は渋っていたようだが、メキメキと上達する彼女を、飲み込みが早い彼女を育てるのが楽しいようだ。

「つまんなーい」

は早足で廊下を進んでいく。
すると、前方に馬超と馬岱の姿を発見する。

「それは関羽殿の方に回してくれ。残りは俺が引き受ける」

「わかりました」

二人はどこからか戻ってきたばかりなのか、それとも急いで向かう途中なのか
会話をしながら足早に進んでいる。

「馬超〜!」

はかまわずに馬超の背に飛びついた。

「なんだ?

「遊べ〜」

馬超は振り返るようなこともせず歩いている。

「遊んでやりたいのは山々だが俺も忙しいのだがな」

「らしいね、でも遊んで欲しいな」

「あのな・・・・」

「いーじゃん、別に」

「俺の所じゃなくて趙雲のところにでも行けよ」

「嫌です。趙雲は星彩と仲良くしてますから」

ブスッとした表情の
馬超は想像がつくのか笑っている。

「くっ。またか」

「そう。またよ、また」

「だからつまらなくて俺の所か?

「そうよ、悪い?」

「悪くはないぞ。俺としては嬉しいがな」

「ならば遊んでちょうだい」

「少し待ってくれないか?急ぎの仕事があるんでな、そっちを片付けないとな」

「えー」

「待てないか?ならば今度は姜維の所にでも行くか?」

「それも良いけど、岱君も忙しいの?」

馬岱に話を振る
馬岱は自分に振られて驚くが、馬超の副官をしている身なのでそうですねと、答えた。

「岱君も?つまんないなぁ〜」

「そう言うな。俺だってたまには真面目にせんとな」

「あーだから、毎日雨が降るのね・・・・馬超が仕事するから」

「なんで俺の所為なんだよ。今はどこでも雨が降る梅雨の時期だ」

「そうとも言う」

ニシシとは笑う。

「あの従兄上も殿も聞いてよろしいですか?」

「あ?なんだ、岱」

「・・・・・よく、お二人はそれで会話できますね・・・・・」

「「ん?」」

馬岱に言われて馬超は足を止める。
確かに馬岱でなくても、それで会話が続いている二人がすごいとしかいいようがない。
なぜならば、は馬超の背に飛びついたままで、馬超はそのまま歩いていたから。
を引きずったまますでに数メートルも歩いていた馬超。
他の人が見たらなんと言うかわからない。

「あー確かに」

「おら、離れろ。

「嫌だ〜遊んでくれるまで離さないぞ〜」

「あ〜?別に俺はこのままでもいいぞ。お前が疲れるだけだし」

「ぶー」

馬超は気にしないと言った感じで再び歩き出す。
馬岱はがどこか怪我でもしないか少しハラハラしながら馬超の隣を歩く。
は馬超にしがみついたままだ。

「それで、これの期限はいつまでだ?岱」

「あ、はい。それは明後日まです。ですが早ければ早い方がよろしいかと」

「そうだな」

「あ!馬超。止まって、止まって!」

「あ?」

馬超は素直に足を止めてしまう。
は一度馬超から離れるが、すぐさま勢いをつけて背に飛び乗った。

「お、お前な」

いきなり飛び乗られて馬超は後ろに倒れそうになるがなんとか持ちこたえる。

殿・・・・その格好はどうかと・・・・」

従兄弟のことより、の格好に馬岱は心配してしまう。
馬超におぶさっているのだが、馬超はを落とさないように足を抱えているわけでもない。
だからは自分の足を馬超の腰の前で交差させている。

「これなら落ちない〜」

「俺にこれで仕事しろと?」

「そう!気にすんな、馬超」

「生足が見えていてもか?」

膝下部分の白い肌が見えている。
的には気にしなくて良いらしい。

「みっともねー格好するなって」

「いーじゃん、別に」

「嫁の貰い手なくなるぞ」

「じゃ、馬超が貰ってよ」

「俺がか?押し付けられたみたいで嫌だな。お前みたいなのは趙雲に伸しつけてやる」

「従兄上・・・・」

「とりあえず、お仕事しなさいよ、馬超。私のことは重りとか思って頑張って仕事してこい」

鍛錬もできて一石二鳥だとは笑う。
馬超は面倒になりそうだと嫌な顔をするがが降りる気配もないので仕方なく歩き出す。

「・・・・・」

人とすれ違う時にくすくすと笑われるのがちょっと痛い。
身体面のでの鍛錬と言うより精神面での鍛錬な気がしてくる。

「ぶっ。馬超殿、その格好はなんですか?何かの罰ですか?」

「姜維・・・・良ければお前にくれてやる」

「遠慮します」

孔明の所に報告書を提出に来たのだが、馬超を見た姜維は開口一番で噴出して笑っている。
孔明は呆れているようだが。

「何してるわけ?は」

「私はただの重りです。お気になさらず」

「口煩い重りなんだよ」

「それは“重り”ではなく“お守り”の間違いでは?」

「軍師殿勘弁してくれ・・・・」

「ほら、馬超。ちゃんとお仕事するの」

「してるだろうが!お前、本当にそろそろ趙雲のところにでも行けよ!」

「嫌です。絶対行かないもんね」

プイッと顔を背ける
姜維は微苦笑してしまう。

「なーに?趙雲殿と喧嘩でもした?」

「してないよ、別に」

「コイツが勝手に星彩殿に嫉妬しているだけだ」

「それは・・・・しょうがないですよね?趙雲殿は星彩殿の師匠なんですから」

「俺はできればこんな姿をアイツに見られたくないんだよ・・・・・」

すぐにでも飽きるだろうと思っていたのに、意外には馬超にべったりしたままなのだ。
こんな姿、趙雲に見られたらと思うと・・・・


怖い。


孔明たちに笑われながら部屋を出る馬超。
と、素敵な出会いに遭遇。
稽古上がりの趙雲と星彩にばったり会った。

「・・・・・」

「よ、よぉ。お二人さん、稽古終わったのか?」

唖然とした表情の趙雲に無表情の星彩。
だが、馬超に問われて星彩は軽く頷く。

「はい。機会があればぜひ馬超殿にも教えていただきたいです」

「あーそうだな。いつでもいいぜ・・・・」

「・・・・何をしているんだ?・・・・それに馬超殿も」

趙雲の目が静かに怒って見えるのは気のせいか?

「あ、それはだな・・・」

なんで俺がこんな重圧に耐えねばならぬ!と馬超は心の奥底で叫んでいる。
はと言うと

「馬超!」

ペシッと馬超の頭を叩く。

「なんだよ」

「走れ、馬超!」

「あ?」

「いいから、走る!」

「え?な、なんだよ?」

走れ走れとの頭を叩かれるので馬超は仕方なく走り出す。

!馬超殿!」

「・・・・・行ってしまわれましたね」

「・・・・」

「追いかけなくてよろしいのですか?」

「あ?あぁ」

趙雲は二人を追いかけ、星彩はそれを軽く笑いながら見送った。



***



「・・は・・・・お、お前・・・なんだよ、いきなり・・・」

あれからあっちに行け、こっちに行けとかなり走らされた。
気づけば城を出て川辺を歩いていた。

「だってさぁ」

「あそこでお前が素直になれば終わった事だろうが、俺を巻き込むなよ」

「うぅ、ごめんよ〜」

「はぁ・・・・足どかせ」

「え?」

「ちゃんと背負いなおしてやるから」

「うん!」

普通に馬超に負ぶさる形となり、そのままのんびりと歩き出す。

「腹の辺りが気持ち悪ィ・・・」

「ごめんってばー」

腰を足で締め付けられたまま走ったものだから。
でも、ようやくそれから介抱されて少しは楽になった。

「あのよ。わかってると思うが、趙雲が星彩殿に稽古をつけてやるってのは彼女のためでもあるんだぜ?」

「わかってるよ。戦に出て星彩にもしものことがあったら嫌だもんね」

「わかってるならいーじゃねーか。彼女が生き残る術を教えてやりたっていのは誰だってそうだろ?」

本来ならば戦に出なくてもいいと思うに、彼女は父と同じ場所に立ちたいと願う。
それに幼馴染である青年も同じようにがんばっている姿をみてそう思うのだろう。

「でも、ずっと一緒だし、私の知らない世界だからつまんなかった」

「まぁな。だからと言って、お前をその世界には巻き込まないだろう、あいつはよ」

「・・・・」

「・・・・まぁ、俺にずっとおぶさっていたって事に関してはどーでもいいが、逃げた事に関しては謝れよ?」

「うん」

「結局、アイツもには甘いんだ、怒りはしねーよ」

「そう?」

「そうだ。んなの見てりゃわかるっての」

馬超は声に出して笑う。
をおぶっていてふと思う。
こんな感じなのは久しぶりだと。

「・・・・・」

「馬超?」

「あ、悪い。なんか幼い頃を思い出した」

「どんな事を?」

「たまにだけど、こうやって弟たちや岱をおんぶしたなってな」

「・・・・そっかぁ、馬超は昔からお兄ちゃんだったものね。私はいつもおんぶしてもらった側だよ」

「だろうな、この女王様め」

「なによぉ・・・ふふっ、でも馬超はお兄ちゃんだからしょうがないね」

「今じゃ、そんな事もないけどな・・・」

弟たちは逝ってしまったのだから。
も馬超がどう思ったのかをなんとなく悟る。
だからあえて違う答えを出す。

「そうだね。岱君だって困るよね。大きくなっておんぶさせれらたらさ」

「お前は良いのかよ」

「私は良いのだよ〜あ、趙雲発ー見ー」

二人の前方に趙雲が、さらには馬岱も一緒にいる。

「おぅ、そろそろ降りろ。もういいだろ?」

「えー城まで乗せてけ。つーか、お兄ちゃんの背中はいいものだし」

「そうかよ。じゃあまた今度気が向いたらおんぶしてやるよ、兄ちゃんが」

「うん」

そう言っては馬超の背から降りる。
馬超は久しぶりの開放感に大きく伸びをする。
は趙雲に駆け寄り、ちゃんと説明はしているようでそれを聞いて微苦笑している。
入れ替わりで馬岱が馬超の方に向かってきた。

「ご苦労様です、従兄上」

「あぁ。まったくだ」

殿を連れて逃げたと聞かされた時は、またかと呆れましたよ」

「なんだよ、今回は俺の意志じゃねーよ。全部の所為だろう?」

「ま、そうなのですが」

馬岱はくすくすと笑う。

「なぁ、岱」

「はい?」

「今度はお前をおんぶしてやろうか?」

「は?何を言ってるんですか」

気持ちが悪いと馬岱は軽く眉を顰める。
その顔に馬超はくつくつと笑いながら馬岱の額を軽く小突いた。

「冗談だ。のことおぶって歩いていたら、昔を思い出した。鉄たちをおぶって遊んだなと」

「・・・・そんな事もありましたね」

小さい頃は兄弟、従兄弟たちと仲良く遊んだ。
色んな場所を駆け回って、幼い弟が転ぶと馬超が背負ってあげて。
馬岱自身も泣きながら馬超の背に乗ったこともあった。

「ま、もうそんな事はできないだろうけどよ・・・・」

「そんな事はないでしょう、従兄上」

「ん?」

「今度はご自分のお子をおんぶして差し上げればいいのですよ」

と馬岱はニッコリと笑んだ。

「・・・・ま、いつになるかはわからんがな」

そんな日が来る事を願う。








彼氏彼女の趙雲と彼女に巻き込まれた馬超ってところですかな?
05/07/03
19/12/22再UP