|
私はいつになく攻撃的になっている自分に気がついた。 いつもの私は、少し奥に引っ込んで、むきになっている自分を冷ややかに眺めている。 京極 「、何を読んでいるんだい?」 「わ!びっくりした」 熱心に何かを読んでいるを見た、姜維は。 それが何か気になってに声をかけた。 かなり集中して読んでいたのであろう、現実に引き戻されたは声を出して驚いていた。 「あはは、ごめんね。でも何を読んでいるのかなって気になったからさ」 「あ、うん。小説をね。読んでたの」 は持っていた文庫本を姜維に見せる。 「あぁ、が持ってきた不思議な話の載った本だね」 「うん。これね、何度読んでも飽きないからさ」 「どんな話?」 「えーとね、なんて説明すればいいのかな」 「難しいの?」 「色んな意味で。話だから、説明するより自分で読んだほうが面白いよ」 「へぇ」 特にこの作家さんの本に関してはと、は付け加える。 「でもさ、の国の文字ってなんか難しいなぁ」 「私から見ると、漢字のみのそっちの国の文字の方が難しいよ」 「平仮名だっけ?・・・・うーん」 姜維は文庫本をぺらぺら捲る。 「読んでみたいなぁ、これ」 「貸してあげてもいいけど、読めないよね?あ、でも漢字が読めるからそうでもないか」 「教えてよ、平仮名。習えば読めるよね」 「私が姜ちゃんに?・・・・できるかな?」 平仮名なんぞ、今まで人に教えたことはない。 でも、姜維が頼むし、姜維からこの小説の感想を聞かせてもらいたい気もある。 お互い話せる話題が増えるわけだし。 「うん、いいよ」 それから、暇があると、姜維はの元に通い平仮名を習っているのだった。 「うん、そうそう。姜ちゃん覚えるの早いね」 「そうかな?の教え方が上手いからね」 「あはは、おだてても駄目だよ〜」 今日は天気も良かったので、部屋にこもってではなく、庭園の東屋で平仮名の勉強をしていた。 姜維は熱心に一文字、一文字を覚えていく。 最初が少し不安だったが、姜維は簡単に覚えていくので、今では答え合わせをするくらいで は基本的に暇だった。 そんな時にはいつも小説を読んでいた。 今日もそうしようと思ったのだが、ふと、廊下にいる一段が目に入った。 (あ、趙雲さんだ) 趙雲が女官たちに囲まれてなにやら楽しそうに談笑している。 女官たちが羨ましいなぁと思う。 は趙雲に憧れていたから。 これが恋かとか聞かれると、ちょっと首を傾げてしまう。 と言うより、自信がない。 あの輪の中に入ってなにか話せたらいいなぁと思うが、正直それができない。 どちらかと言えば、昔から本を相手にした方が楽しかった。 別に人と話すのが嫌いってわけではないが、大勢の輪の中に入ると自分の意見は言えず いつも黙って聴いていることのほうが多かった。 (好きな人ができても、見てるだけで終わっちゃうんだよね・・・) こんな自分だから、相手にも気づいてもらえず・・・いや、自分から動く事もない。 だから、今も、趙雲に対しては憧れで済ませているのかもしれない。 本当はいっぱい話をしてみたいのに。 「、これでいい?」 「ん?見せて・・・えーっとね」 姜維とは不思議と気兼ねなく話せるのにね。 趙雲は運悪く廊下で大勢の女官に囲まれてしまった。 正直、女性を相手にするのは苦手だ。 どう扱ったらいいのかがわからない。 「今度はぜひ、うちにも遊びに来てくださいませ、趙雲様」 「あら、ずるいわ。ぜひうちにも」 「は、はぁ・・・」 「そうですわ、趙雲様は・・・」 なんか色々話しかけられるが、愛想笑いしかできない。 それでも無下にできなくて、最後までと言うか、よほどのことがない限り 彼女たちの話に付き合ってしまう。 これが馬超ならば、さっさと切り上げたり、上手く誤魔化すのだろうなぁと思う。 ふと、庭園に目が行った。 東屋で楽しそうにしている姜維とがいた。 (あ・・・・いつも一緒だな、あの二人は) 姜維が羨ましいと思う。 自分からはに中々話しかけられなくていつも見ているだけだ。 こう言うと、年下の少女に好意を抱いているように思えるが 実際はよくわからない。 好き嫌いで考えれば、まぁ、嫌いだなんてことはない。 趙雲からすると、のことをまだよく知らないので、話がしてみたい。 そう思えるのだ。 と出会った時間は姜維と同じなのに、距離は随分離れている。 やはり年が近いからか? こればかりは縮められないからどうしようもないのだが、やはり羨ましいとか思ってしまう。 (何を話しているのだろうな・・・) いつも楽しそうで。 大勢の人といるはいつも控えめに笑っているよなぁと思う。 自分も似たようなものだが、自分の場合黙っていると、人から『機嫌が悪いのですか?』と誤解されてしまう。 別にただ黙っているだけなのだが。 でもは独特の雰囲気を出していて、見ていて苦にならない。 一人でいるときは、いつも何かを読んでいる。 この国のモノであったり、のいた世界でのモノだったり。 いつもどんな内容を読んでいるのだろう?少し興味が沸く。 だって、誰かが声をかけない限り、の目は書物に夢中で生き生きしているから。 今度聞いてみようか? のことをもっと知りたいって思うから。 「じゃあ、一通り読めるかも。貸してあげるね」 と、は分厚い文庫本を姜維に手渡す。 表紙はカバーがかけられているのでよくわからない。 なので、姜維は中表紙を見る。 「え・・・もしかして、これってさ」 「ん?」 「怖いの?」 「ううん、別に怖くないよ。あ、ちょっと妖怪のお話が絡んでるかなぁ」 「へ、へぇ」 「姜ちゃん、ホラーとか駄目なら、別の貸すよ?」 「いや、大丈夫だよ。読んでみる」 「この作家さんの話ってね、細かくて難しいこととかいっぱい出てくるんだけど、 ハマると止められないんだよね、だから何度読んでも飽きないんだ」 「楽しみだなぁ」 姜維はペラペラ捲る。 ただ、この分厚い文庫本、読み終わることができるのか少し不安になる。 「あ、ただね」 「なに?」 「仕事の合間になんかは読まないほうがいいよ。一度読むと中々止まらないから」 「うん、わかった。あ、もう行かなきゃ。ごめんね、」 「いいよ、別に。お仕事頑張ってね」 姜維に手を振る。 姜維は文庫本を持って走って行った。 一人になったことで、さぁ何をしようかと考える。 手元にあった文庫本を姜維に貸したので今は何もない。 部屋にとりに戻ろうか。 「こんにちは、殿」 「こ、こんにちは。趙雲さん」 驚いた。 いきなり趙雲が現れて自分に声をかけるから。 反対に趙雲自身も驚いている。 姜維が去った事で、咄嗟にに声をかけたのだから。 なので、会話が続かない。 挨拶を交わしただけで、互いに黙ってしまう。 (これではいかん。何か、何か言わないと殿に不審に思われてしまう) (黙ったままって変だよね。何かないかな・・・・) 「「あの!」」 「な、なんですか?趙雲さん」 「いえ、殿の方こそ」 「「・・・・」」 再び訪れる沈黙・・・・ 何がしたいってわけでもないのだが。 「あの、殿。隣、宜しいですか?」 思えば突っ立ったままだった趙雲。 は腰掛けたままだった。 「は、はい!どうぞ」 「では、失礼しますね」 の隣に腰を下ろす。 座った所で何もかわらないのだが、まぁ、これはこれでいいかなと思う。 焦って何か言っても、それは意味不明なことになりそうだし。 まぁ、慌てずゆっくりでいいかと。 ただ。 ただね。 隣にいたかっただけなのかもしれない。 いつも一緒にいる姜維が羨ましくて。 遠くから見ることしかしなかった自分だから。 「今日も暑いですね」 が自分を見上げて言った。 顔を真っ赤にして。 もしかして、も自分と同じなのかな?って少し期待してしまう。 一生懸命言葉を考えて、何か言おうとして。 ようやく出してくれたんだ。 「本当ですね」 「風があるから、まだいいですけど。兵士さんたちは大変ですね、この暑い中の訓練で」 「ですね。暑いからと言ってだらけていると怪我をしますので、かなり集中できますよ」 「訓練で怪我しちゃ大変ですものね」 少しずつだけど、会話になってきた。 それだけで、ちょっと嬉しい。 今まで面と向かって話したことがないから。 憧れかな?とは思っていたものの、趙雲に対してどこか怖がっていたから。 武将としての風格などから厳しい人ってイメージしていたし。 話せて良かった。 柔らかく笑う人だものなぁ。 あの時、廊下で女官たちを相手にしていた時より、いい笑顔だと思う。 「こう暑いと冷たい物ばかり好んで食べちゃいますよ。かき氷とか」 「かき氷?」 「あ、氷を細かく削ったもので、イチゴなどの甘いシロップをかけて食べる物なんですよ」 「贅沢な食べ物みたいですね」 「え?そうですか?」 山のように盛った氷に甘いシロップかけて食うなんて、特にこれと言って考えたことはなかった。 と言うか、夏になれば普通に食べていたし、コンビニで買ったアイスを良く食べていたし。 「今度、作ってあげましょうか?」 「殿が?」 「はい。かき氷ってそんなに難しい物じゃないし・・・あ、氷があればの話ですけど」 と、それだけじゃない、削る道具なんぞもここらじゃ必要だ。 けれど、趙雲はその気持ちだけでも嬉しかったので、頷いた。 「楽しみですね。食べてみたいですよ」 「じゃあ、約束です!」 簡単にはいかないだろうが、とりあえず、今はいいらしい。 ちょっと距離が縮まればそれだけでいいって感じで。 のこと、少しだけ知った。 少し知ったら、もっと知りたくなった。 趙雲に笑ってもらえて嬉しかった。 もっと、もっと隣で笑って欲しいって思った。 いつも一緒にいれたら、もっと、もっと想いが大きくなっていくのだろうな。 それは嫌なことではないから、 できることなら育てたい。 だから・・・ いつも一緒にいれたらいいな。 キリ番リクでした。
04/08/09
19/12/22再UP
|