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じゅんばん。
「趙雲だったら、大切な人が描く夢の為に自分を我慢できる?」 突然にいわれた。 「我慢というのは?」 「ん〜色々あるのだけど。例えば強くなりたいから山に修行に行くって別れをいわれたとか」 「・・・・面白い例えですね」 それだと自分の大切な人は悪くいえば女性離れしているような気がする。 「例えだよ。あーじゃあ、官吏になりたいから結婚は待って。とか」 「官吏?女性がですが?」 「やっぱここもそうなの?だとすると月英さんってすごいね」 軍で活躍している女性なんて数えるほど。 武官として兵としてはそこそこ女性もいるようだが、政では女性はまだまだ活躍する場はないようだ。 いや、戦場に立つだけでも十分すごいとは思うが。 「ああ、差別するような言い方でしたね。すみません」 「いいよ、別に。女の人が政治に関わるって大変なんだろうしね。 でも女性じゃなければわからないこともあるとは思うよ?」 はやんわりと笑む。 「それで、話の続きですが」 「うん。あのね、本当はそばにいてほしいの。でもその人は昔からの夢に向かって恋愛どころじゃないの」 は誰のことをいっているのだろう? 今、彼女が大切に思う誰かのことだろうか? そう思うと、少し心が苦しくなる。 にもそう思う相手がいるのだと。 自分がを思うように・・・・。 「夢だと思っていたものが、手の届く所まで来ていて。 頑張っている姿を見ていたから。だからどんなに思いを告げようと思っても我慢するの」 「殿・・・・」 「相手としては、向けられた思いをありがたくは思うけど、答えることができないから断ろうとするんだけどね」 寂しそうには笑う。 辛いよね。それって。 「ただね。一方で、別に結婚しなくても一生いいお友だちでいましょうね。って意見もあるの」 「一生いいお友だち。ですか・・・・」 「趙雲どうする?笑顔でそんなこといわれたら」 「え、笑顔で・・・・それは表面上礼を述べてしまいそうですが・・・・気持ち的には落ち込みますよ」 の話じゃどうも求婚して、そういわれた。みたいな感じだ。 「だよね〜。それに、二人には立場っていうのがあるからやっかいなんだよね」 「な、なにやら大変のようですね」 「そう。大変だよ〜王様との恋愛は」 「は!?」 王などという存在は蜀には存在しない。 近くて劉備が。他国だと曹操や孫堅に当たるのかもしれない。 はいったい「誰のこと」を話しているのだ? は趙雲の様子など気にも留めずに話を続ける。 「王様がさ、権力つかって後宮入りをすすめたっていいわけでしょ?でも王様は彼女の気持ちを重視するの。 もし権力を使えば、以前とは違う関係に、自分が望む関係にはならないからって」 「あの、殿。その王というのは・・・・」 「あ、小説の話」 「・・・・・・」 「あれからどうしたかなぁ。続き滅茶苦茶気になるんだよね」 どっと疲れが沸いた。 それと同時に恐ろしく安堵している自分に気づいた。 思わず顔を緩ませ笑ってしまう。自分でも驚くほど声に出して。 「ちょ、笑いすぎー」 「す、すみません」 何故笑われたのかとは気づかず趙雲の笑みに不思議に思う。 「物語ですか?」 「うん。向こうで読んでた話。 伝説の女性官吏といわれるようになる少女と史書で最上治といわれるようになる王様の話」 「それはすごい組み合わせですね」 「物語上ではそこまで進んでいないんだけどね。王様がね、すっごく健気なの」 「そうですか。それで我慢ができるか?ですか」 「うん。わかりにくい話でごめんね」 は趙雲の顔を窺う。 「いえ。私はてっきり殿自身の話しかと思いました」 「私〜?いないいない。そんな風に思ってくれる人も思うような人も」 「いないのですか?」 「私は王様みたいに我慢できそうにないもん。多分あきらめちゃうよ」 情けないけどと苦笑する。 その人の夢を応援はするだろけど、きっと先を望めないならそこまでの関係で止まる。 傷は浅い方がいい。 新しい誰かを探すのかもしれない。 「趙雲は?趙雲ならどうするの?」 「私、ですか・・・・・さあどうするのでしょうね」 物語のようにが官吏になりたいと言いだしたら、どうするだろう? 普通に手伝いはしそうな気がする。 自分はしなくてもいい勉強を一緒にしたりして。 「ああ、でも。趙雲はその王様っていうより主人公のそばにいるお守り役のお兄さんっぽいね」 「はい?」 「頼りにはなるんだけど、一番甘やかすんだろうなぁって」 そういわれても趙雲にはそのお守り役の青年がどんな人物かはわからない。 「馬超に対してさらりと笑顔で言いくるめたりする所とか」 「し、していませんよ。そのようなこと」 「そうかな?」 くすくすと笑う。 「では、その女性官吏殿の守り役殿はどうしているのですか?」 「過去に色々あったらしい人だからね。一応お嬢様第一だけど武官として自分の足で立ち始めたかな」 は過去に読んだ記憶を思い起こす。 「えーと。お嬢様はその人に“世界で二番目に好きよ”って言ったね。一番目はお父さん」 「え、それだと王様は・・・・」 「・・・・彼女の中で王様は順位をつけられる人なのかわかんない。恋愛に関すると線を引いちゃうから」 「女性の心というのはわかりにくいですね」 趙雲は苦笑する。 ただでさえ、自分も恋愛ごとに関してはよくわからない。 の前ではおとなの振りして余裕ぶっているが、馬超などに比べればまだまだ。 「簡単にわかったら面白くないでしょ?それに私だって男性の心というのはわからないし」 「お互いそう思ってしまうのでしょうか」 「かもね」 戦においての相手の行動、読みなどはわかるのだが、難しいものだ。 趙雲はこれに関してはお手上げだと感じる。 まあ、だからこそ相手の為に一生懸命になるのだろう。 のため。 なんていうのはちっとも苦に感じない。 むしろもっと頼ってくれ、守らせてくれと思う。 「私は・・・・世界で何番目なのか・・・・」 「趙雲?」 「あ。なんでもないです」 思わずぽつんと呟いた言葉。 趙雲はにとって世界で何番目の好きなのかなと。 恥ずかしい言葉を聞かれたと趙雲は慌て首を横に振る。 しばらく趙雲の顔をマジマジと見ていた。 少し考えてから趙雲の顔を覗きこむように聞いてきた。 「ね、趙雲。趙雲にとって私は何番目に好き?」 「は!?」 「さっきの話。お嬢様がお兄さんにいった二番目に好きっての」 「わ、私ですか」 意地悪な質問だと趙雲は困る。 何番目と問われてどう答えてよいのか。 「やっぱり・・・・3、5番目くらい?」 「え、えっと・・・」 「一番が玄徳様でしょ?んで阿斗様で・・・・」 指を折りながら名前を出していく。 「あの殿・・・それだと・・・・」 お守り役のお兄さんがお嬢様にいわれたのと同じ「好き」ではないか。 「とりあえず、両手に入る分くらいだったら嬉しいな」 は両手を広げて趙雲に向ける。 10番目どころか、1番目なのだが・・・・。 「私はね、一番目だよ」 悶々としている趙雲を横目にはさらりといった。 なに?と顔をあげる趙雲。 は笑っている。 「世界で一番目に趙雲が好きだよ」 「・・・殿・・・」 その「好き」は自分がほしいと思える「好き」なのだろうか? 「あ。家族とかは別ね。だから一番は趙雲」 趙雲は小さく息を吸い腹にぐっと力を込める。 「私の一番も殿です」 あなたのいう「好き」が私の思う「好き」ならば。 先ほどのの話を思い出す。 お嬢様と王様の恋物語。 「殿に果たしたい夢があるのなら、私も共に参ります。殿が官吏になりたいのであれば一緒に勉強もいたします。 私は物語のような王ではありませんので、我慢する必要はないかと思いますし」 我慢している王様には悪いけど。 「べ、別に官吏になるつもりはないけど・・・・でも、ありがと」 でも、本当に一番なのかとは問うて来る。 趙雲の一番は劉備ではないのかと。 確かに劉備にほれ込み、彼の天下を望むべく毎日頑張っているわけだが。 「殿はいいましたよね。家族は別と。それと同じです」 比べられない大切な人。 「それに殿は天下統一をなさりますから問題は何もないです」 自分の夢はそれで叶う。 劉備が治める国、民が笑ってくらせる国になる。 「そっか」 は安堵し笑みを浮かべる。 さらりといったのはいいが、やはり緊張はした。 自分から言っておいてなんだが、あの物語の中ではお嬢様は好きな食べ物をいったような感覚で さらりと「世界で二番目に好きよ」といったのだ。 まあでも、自分はその物語を途中までしか知らないのでどうなったのかはわからないし。 お嬢様の気持ちも本当のところはどうなのか検討もつかない。 趙雲はお嬢様がいったのとは違う一番目をくれたので良しとしよう。 そう考えた時に隣にいた趙雲が大きく息を吐いた。 欄干に背をもたれ胸の辺りをさすっている。 「趙雲?」 「はは。緊張しました」 「私と同じだ」 「そうは見えませんよ」 「修行が足らんね、趙雲。もう少し女の子の気持ちを理解してほしいな」 「善処します。殿、お茶でも飲みませんか?緊張のあまり咽喉が渇いてしょうがないです」 格好悪いとは感じつつも正直にいう。 は頷き趙雲に手を差し伸べる。 「うん。行こう。私も同じ」 差し伸べられた手を取り歩き出す。 渇いた咽喉をゆっくり潤し、また沢山話をしよう。 自分たちはこういう結果になりました。 我慢している王様にも早く同じように幸せが訪れてほしいと願って。 彩雲国ネタでした。
06/06/06
19/12/22再UP
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