殻を破れ。




ドリーム小説
「もう長いことそうやってるけど、いつまでココにいる気だ?」

「・・・・・いちゃダメ?」

「別に俺はかまわんが、鬱陶しいのだけは止めろ」

「馬超の意地悪」

「置いてやっているだけありがたく思え」

ここは馬超の執務室でもある部屋。
は朝からこの部屋を訪れている。
一応彼の仕事の邪魔はしていないつもりだ。
馬超の足元で膝を抱えている事を除けば。

「私、鬱陶しい?馬超」

「あぁ。女々しいとも言う」

「・・・・だってさ・・・・」

「お前の気持ちもわからんではないが、その度に俺のトコへ来られてもな」

傍から見れば馬超は椅子に腰掛けて真面目に執務をしているように見える。
扉を開けても机での姿は見えないだろうから、今入ってきた者がいるとすれば
この部屋には馬超一人としか見えない。

「やっぱ邪魔みたいじゃん、私・・・」

「邪魔なんて言ってねーだろ?誤解されても俺は知らねーぞって言ってるんだ」

「誤解・・・してくれるかな?」

「確信犯かてめー」

馬超は微苦笑する。
本当に誤解されたら困るのはなのに。

「お前もアレくらい積極的に行けばいいだろうに」

「無理」

「そうか?」

「なんか恥ずかしいって思っちゃうから」

「へー。でもよ、ぐずぐずしてるととられちまうぜ?」

「・・・・」

「しょうがねー奴だな」

馬超は笑いながらの頭を軽く撫でた。

が馬超の元にいる理由。
それは今、趙雲の元に別の女性がいるから。
仲良き姿を見たくないと拗ねてしまっているから。
二人の会話からとれるように、の好きな人は趙雲。
でも告白もしてないから、拗ねるというのはお門違い。

「でもよ、アレだけの攻撃を受けても爽やかにかわしているアイツもすげーな」

「今の所、それが私の救いかも」

「鈍いんじゃねーの?」

「そうとうも言う」

二人してくつくつと笑ってしまう。
馬超は馬超なりにの気を紛らわしてくれているようだ。

「その鈍い奴が好きなお前はなんだ?」

「なんでしょうね。別に鈍いから好きってわけじゃないよ?」

「そうか、俺はその鈍さに惚れているのかと思ったぜ」

「それはそれで面白いね」

「けどよ、

「んー?」

「いつまでそうしている気だ?告白するしないはお前の勝手だが、奴から隠れてもどうにもならねーぞ」

「まぁ・・・そうなのだけどさ・・・・」

今の自分はきっと可愛くない行動をしてしまう気がする。
そんな事をして嫌われてしまうぐらいならば隠れていた方がよほどいい。
馬超には迷惑をかけてしまうだろうが。

「付き合いの長さだけならば、あの女よりお前の方が長いわけだし。今頃心配しているかもしれねーぞ?」

毎日顔をあわせていたのだから、急に見せなくなれば心配するだろう。
元々に関しては心配性な趙雲だから。

「でも趙雲が心配してくれる理由ってさ・・・・護衛だからとか・・・そんな理由じゃん」

「あー否定できねぇな、それは」

別に護衛されるような身分でもないなのだが、劉備らがを可愛がり心配だからと
どこかへ行くようならばと、必ず趙雲を護衛につけるのだ。
は一緒にいられるのは嬉しいと思うが、それが彼の仕事の一つだと思うと少し悲しいし
本来は劉備や孔明に付くべきだろう。

「それが嫌ならば、やっぱその枠を越えちまうしかねぇな。コレを機にスパッと言っちまえ、

「で、できないよ」

ブンブンと首を横に振る
馬超から見るとその自信のない姿に少し苛立ってしまう。
が思うほど悪い結果にはならないと馬超には見えているのだ。

「お前さ」

馬超がに言いかけたとき扉を叩く音がし、趙雲の声がした。

「失礼します、馬超殿」

「おぅ。どうした?」

は声の主が趙雲だとわかると、より一層身体を丸めて顔を膝に埋めてしまう。
馬超にはどうしたものかと軽く溜め息が出てしまう。

「お一人・・・でしたか?話し声が聞こえたようでしたが・・・」

「・・・・あー、なんだよ、用件は?」

入ってきた趙雲にはの姿はちょうど死角になっていて見えないらしい。
だが見つかるのも時間の問題だろう。

「申し上げにくいのですが・・・その・・・月英殿から申し出がありまして・・・」

歯切れの悪い趙雲のその台詞だけで馬超には彼の言いたいことがわかった。

「まて。それは・・・虎戦車の事か?」

「はい。改良したとのことで色々試してみたいとかで・・・」

「最悪だな。アレは味方としているなら問題ないし頼れるんだが・・・敵には回りたくねぇな」

趙雲も同じようで苦笑している。

「ここで愚痴っても、どうせ決定なんだろ?」

「えぇ。兵士たちに相手をさせられないとの事で」

余計な犠牲者は出したくないと言うのが孔明の本音だろう。
趙雲ら将軍クラスならばなんとかなると思っているらしい。

「しょうがねぇな。やるしかねーか」

「怪我をしないように頑張りましょう」

「だな」

「ところで馬超殿、今、お暇ですか?」

「あ?暇・・・なのかね・・・・」

「?」

「ずっと、コレの相手してっから」

馬超は左手で頬杖をつき、右手で自分の足元を指差す。

「コレ?・・・殿?」

趙雲が覗き込んだ先にがうずくまっているので驚いてしまう。
馬超は今まで趙雲がまったく気づきもしなかったことに笑ってしまうのだが。

「どうかなさったのですか?」

「・・・・」

殿?」

「あー無理無理。少し前から嫌な事があって逃げてんの」

何からとはあえて言わない馬超だが、は余計な事を言うなと内心叫んでいる。

「嫌な事?」

「そ。俺に泣きついてんの。この所ずっと」

馬超なりににきっかけを与えてくれているようなのだが、今のには素直にそれを喜べない。

「何かあったならば私にも話してください、殿。あなたのお力になりますから」

「・・・・」

無反応な
馬超には話せて自分には話してもらえないのかと趙雲は少し落ち込む。

。いい加減にしろよ」

馬超に強めに言われては渋々顔をあげる。
だが、唇を強く噛締めており見ただけで不機嫌なのがわかる。

殿?」

「私・・・・」

「失礼します!趙将軍はこちらでしょうか?」

凛とした声が扉の向こうから聞こえた。
馬超が入れと応じると女性が一人入って来る。
その女性の登場では息を吐く。

「施綾か。どうかしたか?」

彼女は最近になって趙雲の護衛兵としてついた女性だ。
星彩や月英と同じように戦場に立っても男性たちに負けず中々の腕前だ。
彼女は先の馬超との会話からわかるように趙雲に好意をもっているらしく。
積極的に趙雲へ自分を売り込んでいるらしい。
見た目も綺麗だし、仕事も良く出来る女性だ。
普通の男性は一発で彼女に惹かれてしまうところだろう。

「やはりこちらでしたか。お話中お邪魔して申し訳ありません」

馬超に軽く微笑み一礼する施綾。
馬超は気にするなと手を軽く振る。

「何か急ぎの用なのか?」

「はい。先ほど丞相様からの使いが参りまして、至急来ていただけるようにと」

趙雲と馬超は顔をあわせる。
恐らく虎戦車との手合わせ(?)のことだろう。

「俺も行った方が良さそうだな」

馬超は自分の髪を掻く。

「私も自分の部屋に戻るよ」

は立ち上がる。

殿」

「お仕事大変だろうけど頑張ってね、じゃあね」

趙雲の顔をも見ずにはさっさと部屋を出て行く。
馬超は軽く舌打ちし、趙雲は苦笑するしかなかった。



***



は自室に戻り寝台に寝転んでいた。
被子にギュッと抱きつき自己嫌悪に陥っていた。
あんな風に逃げては趙雲に失礼だとわかっているし、あからさま過ぎて嫌だ。
趙雲が悪いことなんてことは何一つない。
勝手にが拗ねて妬いているだけだ。

「・・・・最低だよ、私・・・・」

馬超も次に行った時には相手をしてくれないような気がする。

「あー馬鹿だ、馬鹿だ、馬鹿だ〜」

あんな態度をとっても嫌われたくないと思ってしまう自分がいるし。
ちょっと気にしてくれたかなって思ってしまう嫌な自分がいる。

「う〜」

ゴロゴロと何度も寝返りをうつ。

「謝ればいいのかな?・・・・可笑しな態度とってごめんなさい・・・・」

なんてできないよ!と被子に顔を埋める。

殿」

扉の向こうから自分を呼ぶ趙雲の声。

「・・・・趙雲?」

なんだろうと思い身体を起こす。
だが、なんとなく顔を合わせづらい。
このまま居留守をしてしまおうか?

「・・・って逃げてばっかりだ、私」

自分の情けない行動に涙が出る。
は涙を拭って扉の前に立つ。

「何?」

まだいるかな?
それとももう去ってしまったか。
は恐る恐る扉を開ける。

殿」

の顔を見てどこかホッとしたような表情を浮かべる趙雲。

「あなたと話がしたくて来てしまいました」

「話?」

「入ってもよろしいですか?」

「・・・う、うん」

趙雲を中へ招きいれる。
は寝台に背を預け床に座り、趙雲は寝台に腰を下ろした。
話がしたくてと、言った趙雲だが、何も話そうとしないため、沈黙だけが辺りを流れる。
気まずい空気。

「・・・・」

は頭の中で必死に何か言葉を考えるのだが上手く出てこない。
どのくらいの時間が流れただろうか?
にしてみるとやけに長く感じる沈黙。
だが、実際にはほんの数分程度だろう。

「・・・ふ」

頭上から漏れた趙雲の声。
は趙雲の顔を見ると、彼はくすくすと笑い、そのまま床に座りなおした。

「趙雲?」

「話すならばこの方がいいです」

「・・・・」

ニコリと微笑まれてしまい、の顔に熱が走る。

殿はどこか行きたい場所でもありますか?いつでも私は付き合いますよ」

「行きたい場所・・・」

「最近、どこにも行かれていないですし。街で買い物でも良いですし、遠乗りでもなんでも」

自分の仕事が忙しく、の護衛として中々一緒について行けなかったし。

「・・・ご、護衛なんて私はいらない・・・・そんな守ってもらえるような偉い立場でもないし・・・」

殿・・・」

悲しげな目をする趙雲。
だが、ここでちゃんと自分の思っていることを言わねばとは決め、大きく息を吸う。

「護衛としてじゃなく、趙雲って人と一緒にどこかに行きたいとは思う」

意味が通じたかな?と思うも趙雲の顔をまっすぐに見ることが出来ない。
ダメかな?それともあの人みたいにサラリと気づかず流されちゃうかな?
思い切って趙雲の顔を覗き見る。
趙雲は驚いているのかいつもより目が大きく開いている。
そして困っているかのようにも見える。

(あ〜ダメってことかな?・・・・はぁ)

ど「やっぱナシ!今の聞かなかったことでいいから!」

は趙雲の言葉を遮り一気に流して趙雲に背を向けてしまう。
返事を聞くのも怖い。
今のには何もかもが怖くてしょうがない。
後ろから溜め息が聞こえた。
どうしようもなく自分が情けなくて泣きたくて、胸が痛む。


「ナシにされると困るのですが、私は」


え?と思った瞬間に身体を後ろに引かれ気づくと趙雲の腕の中にいた。

「趙雲?」

「聞かなかったことになどしませんよ。ようやくあなたを手に入れられたと思ったのに」

「え?え?」

少し怒っているのか拗ねているのか、が初めて見る趙雲の顔だ。

「私では駄目ですか?殿」

「・・・・だ、駄目じゃないです。趙雲がいい・・・・」

「良かった」

そしてニッコリと笑った。

「私はあなたが、殿が好きです」

これからは私のことも頼ってください。
趙雲は拗ねたように言う。
いつも馬超に引っ付いていた
内心それが面白くないと趙雲は思っていたらしい。
は施綾に。
趙雲は馬超に。
互いに妬いていた。

なんてことはない。
思い込むより先ずは攻めろ。
そんな感じなのだろうな。










キリ番ニヤピンリクでした。
05/07/28
19/12/22再UP