ぼくとお父さんと彼女といっしょ。 




ドリーム小説
「おはよう!修兵!」

起きた修兵に対し、元気のいいが台所で朝食を用意していた。

…」

「もう大丈夫だぞ、俺」

顔色はいい。無理をしている様子は見られない。
あぁ、いつものだと修兵にもわかった。

「そっか。じゃあ、朝飯食うか」

「おう!」

久々にいつもの朝に戻ったようだ。





【その20】





元々忙しい死神だが、ここ最近特に忙しい。
九番隊は隊長不在が続いているため、その忙しさは半端ないのだが、修兵が隊長代行を務めてからそれなりに対処している。
隊士達も修兵に協力してくれているからだろう。

つい最近忙しさのピークを迎えていたはずだったが、ここに来て再び忙しさが戻って来た。
原因は一部の上位席官が現世に任務で行ってしまった事だ。
現世の死神代行との関係から十三番隊の朽木ルキアが行くことになり、ルキアと親しく、近いものだという理由で恋次の同行が決まった。
恋次の信頼する先輩、強く戦える戦闘員として一角に同行を頼んだ。
ここまではよかったのだが、一角が行くならば絶対自分も行く。と弓親が。
どこからか話を聞いてきた乱菊が面白そうだから。との理由で無理やり同行してきた。
流石にこのままではまずいと、日番谷に引率?を頼む羽目になったのだ。

十番隊は隊長、副隊長不在なので、仕事に支障が出るのはわかりきっていた。
一角と弓親が抜ける事で十一番隊でも事務仕事に支障が出ていた。
剣八とやちるが真面目に事務仕事などやるはずもない。
瀞霊廷通信の編集をしている修兵たち九番隊は、割とその影響を受けていて忙しかったりするのだ。

だからではないが、の健康状態が戻ったことは修兵にとってありがたかった。



「おはようございます。副隊長」

朝、廊下を歩いているを見かけた修兵は彼女を呼び止めた。
向かう先は修兵の使用する副官室なので、自然と足を並べる事ができた。

「昨日はすまなかったな。牛乳寒天」

「あ…いえ。余計な真似をしてしまったのではないかと思ったのですが」

「んな事ねぇって。の奴すげー喜んでいたからさ」

寝ていたに何を食べたいかと聞いたとき、が答えたのは「姉ちゃんの作った牛乳寒天」だった。
滅多にない息子の我儘に嬉しいとは思ったものの、流石にいきなり用意してくれと言うのは気が引けた。
こっちから話をしておいて、やっぱりいいと話を切り上げたのだが、彼女は自分の気づかぬ間にせっせと用意してくれていたのだ。

「無理言ったみたいで、なんか申し訳なくてさ」

「そんな!私が勝手にやったことですので」

「それでだ」

「は、はい」

修兵はに笑みを向けた。

「飯。今夜うちに食いに来いよ。が礼をしたいってさ」

「え、あ、あの!いえ、そんな気を遣わなくても」

の頬が薄らと赤くなった。

がどうしてもって言うからさ。来てもらえないと俺があいつに叱られるし」

「あの、でも、副隊長…。逆に私がいつもご馳走になっているのですが…」

「そうか?別にそれこそ気にしなくていいけどな」

そんなに気を遣わなくてもいいのに。と思う。
いつも遠慮なくやってくる者共がいるのだから。
それに比べたらの訪問なんて可愛いもの…いや、とても嬉しく思うものだ。

「とりあえず、そういう事だ」

修兵はの肩を軽く触れ、先に副官室に入った。

(……し、自然に誘えたよな?…)

いつも通りを心掛けていたものの、内心緊張しまくった。
けど、少し情けない。
誘う理由が息子だったから。
いや、元々が「姉ちゃんに礼をしたい!」と言ったのだから、間違ってはいないのだ。

(この先、息子抜きで誘う日なんて来るのか…わかんねぇなぁ…)

修兵は頭を掻いた。
の事を好きだと思って、嫁さんにしたいとか、の義母になってもらえるならば彼女だという思いはある。
けど、どこか抜きでと言う考えが浮かばない。
もしデートするような機会があったとしても、何故だろう。
息子同伴のような絵しか浮かばない。
それも悪くない気はするが…実際どうなんだろうか?





(ど、ど、どうしよう〜)

修兵に夕食のお誘いをされてしまったは、現在の仕事場である副官室に入る事なく戸惑っていた。
憧れの人からの誘いが嬉しくないわけない。
ただ、それ以上にどうしていいのかわからないのだ。
檜佐木家で食事など、初めてではないのだが、修兵から誘われる事がほとんどないので。

(だ、大丈夫。目的は君であって、副隊長は深く考えていないはずだから)

修兵も言ったではないか、「が」と。
だからこれに深い意味はないのだ。
檜佐木親子の礼なのだろう?
それでも、

(やっぱり、嬉しい…)

と出会い、仲良くなる事もなかったら、こんな風にはならなかっただろう。
以前自分は、修兵と話すだけでも緊張して、中々顔を合わす事もできなかった。
今みたいに長い時間一緒に居る事もなかったはずだ。

(お礼ならば、私の方が沢山君にしなくちゃいけないんだけどな)

何か一品でも持って行った方がいいだろうか?
作っている時間はない。
無難にどこかで土産を用意した方がいいのかもしれない。

(あ…お土産、沢山の方がいいのかな?)

檜佐木家には急な客が多いと聞く。
が言っていた事だ。だから自然と夕食も親子二人分ではなく、それに合わせたものにしていると。
それを思うと、少しがっかりした気分になった。
今夜も恐らく、大勢の客がいるのだろう。
そしてその中の一人なのだ、自分は。
それがちょっと寂しくなった。

?どうした?」

中々入って来ないを不思議に思ったらしい修兵が顔を出した。

「な、なんでもないです!」

まずは今日の仕事を終わらせないと。まだ1日始まったばかりなのだから。





「なんか、物足りないよなぁ」

「おや?何がだい?」

はいつもの公園に来ていた、その公園のいつものベンチで浮竹と話をしていた。

「恋次も冬獅郎もいないから…菊ちゃんもいないから、少し静かだよなって事」

「あぁ、そうだったな。先遣部隊として出向いているのだったな、彼らは」

浮竹は袖から煎餅をだし、に手渡した。

「いつも思うけど、シロさんの袖ってどうなってんの?沢山お菓子が出てくるけどさ」

不思議に思うも、はくれたお菓子を食べる。

「どうって言われるほどでもないな。君と会うのだろうなと思うと自然と仕込んでしまうんだ」

「えー?俺の所為なの?」

「いや、君だけじゃないぞ。日番谷隊長にもあげてしまうな」

「冬獅郎にも?」

「あぁ。同じシロちゃんだからな」

笑顔をに向けて言う浮竹。はわずかに首を傾げる。

「浮竹十四郎、日番谷冬獅郎。な?」

「あ。本当だ」

も笑ってしまう。

「あまり子供扱いをすると日番谷隊長が怒るんだが、ついその姿を見つけてしまうと渡したくなるんだ」

「冬獅郎は子供だけど、隊長でもあるからじゃないの?でも、シロさんから見ればみんな子供に見えるよな」

「そうだな」

それでも、二人の間に友情が築けているので不思議なものだ。
だからだろうか?
浮竹は妙に笑顔だった。

「なに?シロさん。なんか嬉しそうだよ」

「ん?そうか?なんだろうな。君が嬉しそうだからじゃないかな」

「俺、さっき物足りないって言ったよ?」

「それでもだよ。今日の君はいつもより嬉しそうだと俺には見えたんだ」

そうかな?とは顔を空に向けた。
恋次達がいなくて、いつもより静かで、どちらかと言えば寂しいかな?と思ったのだが。
浮竹には嬉しそうに見えるのだと。

「何かいい事でもあったんじゃないのかい?」

「いい事?……あ!」

「あったみたいだね」

あった。ではなく、これからいい事になるんじゃないか?という期待だ。
それを思うと楽しみである。
だから、自然と喜びが出ていたのだろう。

「うん。何か変わるかな?と思う事がこれから起きたらいいなと思って」

「これから?」

「うん!あんな、シロさん。内緒だぞ」

浮竹に耳打ちをする
誰にも聞かせたくない話なのだ。

「今夜、修兵のお嫁さんになってほしいが家に来るんだ。一緒にご飯を食べるんだ」

「ほぅ」

態勢を戻し、煎餅にかじりつく

「俺がそう思っているだけで、修兵がどう思っているかはわからないんだけどさ」

君にとってお義母さんになってほしい人でもあるんだろ?」

「うん」

浮竹はの頭を撫でた。

「シロさん!?」

「いやぁ、君も変わったなぁと思って」

「変わった…って言うか。今はシロさんに隠している事ないし…」

「それでもだよ。自分の気持ちを素直に言えるようになったと思ってな。あとはもう少し檜佐木君に甘えられるようになったらいいとは思うな、シロさんは」

が嫌そうな顔をする。

「俺、そんなにガキじゃないよ」

「いやいや、君は十分子供だよ」

「シロさん!」

「あはははははっ。悪い、悪い」

本当に悪いと思っているのだろうか?
けど、別に浮竹にからかわれたわけではないので、嫌な気はしない。
他の人に言われたら腹を立ててしまいそうだが。

「今夜、楽しみだな。君」

「うん!」

今夜は何を作ろうか?
そんなに奮発できるようなものは作れないから、いつも通りではあるだろうが。
だけど、二人に「美味しい」って喜んでもらえるようなものが作れたらいいなと思って。

「本当…修兵はどう思っているのかなぁ…」

「ん?なんだい?」

「あ。えと…俺はこの人が修兵のお嫁さんになったらいいなって思うけど、修兵自身はどうなのかな?って…」

「そうだなぁ…そればかりは檜佐木君本人じゃないとわからないしね。周りが好き勝手言うと意固地になってしまう事もあるから、自然に任せた方がいいと思うよ、俺は」

だが、すぐさま浮竹は後頭部を掻きながら苦笑する。

「長い事独り身の俺が言うのも変な話なんだけどな」

浮竹自身はさほど結婚に興味がないらしい。

「ううん。そんな事ないよ。けど、大人は本当難しいな。俺、まだまだ子供でいいや」

「あははははっ。そうだな、大人は難しいな。簡単な事でも難しく考えるから」

浮竹だって大人なのに、不思議と二人で笑ってしまった。
さて、そろそろ夕食の準備をしようかな。






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回復した息子君が提案した彼女へのお礼。ちったぁ、大人二人が意識すればいいんじゃね?って所ですかね。
まぁ、すぐには結婚までいかないんですけどね、この二人は。
でも、少しずつ変わればいいってことで。
13/10/27