今は、それでも。




ドリーム小説
「最近、の奴こないなぁ…が来ないとつまらないよな、惇兄?」

「…淵…」

さっきから夏侯惇の向かいで夏侯淵が同じことを何度も言っている。

「学校ってのは今日は休みだって言ってたのになぁ」

「…淵…」

「惇兄もが来ないと寂しいだろ?」

(…人の話を聞いておらんな、こいつは…)

は別世界の少女。
何の因果かの世界と夏侯惇たちが住む世界が繋がってしまった。
そしては学校が休みになると遊びに来るのだ。

しかし、この所一向に現れない。
なので、さっきから夏侯淵がぶちぶち言っているのだ。

確かにがいないとつまらないと言えばつまらないのは事実。
なんだかんだ言って、夏侯惇自身楽しみにしているのだ。

の奴、何してんのかねぇ」

「淵…いい加減にしないか。来ないものは来ない、それだけだ」

「惇兄ぃ、それは寂しいぞ」

「ふん」

残念ながら夏侯惇たちの世界からはの世界には行けない。
のみが行き来できるのだ。

「あ!」

「どうした?」

、病気でもしたんじゃないだろうな」

「…大丈夫だろう」

「いや、わかんねぇぞ、が病気で寝たきりだったらどうしよう、なぁ惇兄」

病気で来ないと決まったわけじゃないのに、夏侯淵はおろおろしている。
戦場でも見せない慌てぶりだ。

「はぁ…しょうがない奴だ…」

結局、その日もは現れなかった。





二月十四日。

「こんにちは〜」

!久しぶりじゃねぇか」

「淵ちゃん!えへへ〜ちょっちね〜。はい、これあげる」

「ん?なんだ」

「チョコだよ。今日はねバレンタインデーなのさ」

は夏侯淵に赤いリボンの着いた紙袋を手渡す。

「ばれんたいんで?なんだそりゃ」

聞きなれない単語に夏侯淵は首を傾げる。
そんな夏侯淵には笑って答える。

「女性が好きな人に愛を告白する日だよ。チョコを添えてね」

「あ!愛って。おめぇ、俺に渡しちゃ駄目だろ?だっては惇兄が…」

「淵ちゃんに渡したのは義理チョコだよ。淵ちゃんには色々お世話になってるからね」

「義理?」

「本命と義理は別物だよ。ほら!」

そう言って、は夏侯淵にあげたモノより大きく丁寧にラッピングされた箱を見せる。

「おぉ!すげぇな、

「んふふ〜頑張ったんだよぉ?私お菓子作り苦手でね。ずっと練習してたんだから」

「だから、この所来なかったのかぁ…納得した」

夏侯淵は数回頷いた。

「淵ちゃんには言っても良かったけどさ。夏侯惇さんにバレると困るからさ」

「惇兄、喜ぶぞ。ほら、行ってこいって!惇兄、今は執務室にいるぞ」

「うん、行ってくるね」

「頑張れ、ー!」



***



夏侯惇がいる執務室前。
は緊張してうろうろしてしまう。
夏侯淵には軽く『愛を告白する日』なんて言っては見たものの。いざとなると言葉が出ない。

(どうしよぉ〜めっちゃ緊張するよ…バレンタインなんて説明するの面倒だしなぁ)

説明前提で告白なんて格好悪い。

(でも、でも、食べてください!って言うだけでもいいかな?)

あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。

(よし!当たって砕けろ!渡すだけ渡そう!)

は覚悟を決めて扉をノックしようとする。
だが、先に扉が開いた。

、何をしている?」

「あ…夏侯惇さん…コンニチハ、良い天気ですねぇ」

タイミングがずれてしまい、どうでもいいような事がでてしまう。
夏侯惇はの気持ちなど気づいてもいないようで特に気にしてはいないようだ。

(タイミングずれたよ…どうするかなぁ)

、突っ立ってないで入ったらどうだ」

「は、はい…失礼します」

夏侯惇の執務室は彼らしく無駄な物が一切置いてない部屋だった。
さきほどまで仕事していたようで、机の上には書簡が積み重なっている。
夏侯惇は机に向かい仕事を始める。

「お仕事中だったんですか?」

「あぁ」

「邪魔しちゃいましたか?」

「いや」

(会話が続かねぇ〜)

元々お喋りではない寡黙な夏侯惇。
ただでさえ、今のはチョコをどう渡すか考えているので上手く言葉が出てこない。



「は、はい!」

「元気だったか?」

「???…はい、元気でしたけど」

「そうか」

(え?どういう意味だ?よくわからない…)

「淵がな、お前が来ないから病気じゃないか心配しておった」

「はぁ…(淵ちゃんがかよ!脈ないのかなぁ)」

夏侯淵にはチョコを渡せば、夏侯惇が喜ぶ!とは言われたものの
こんな様子の夏侯惇だから、自分のことなんて気にしてはもらえないのかな?などと思ってしまう。

渡せずにあるチョコタルト。
菓子作りが苦手なは、母に毎日特訓してもらった。
ようやく満足行くまで出来るようになった。
夏侯惇に食べてもらえたら嬉しいなって思って。

(これじゃあ、無理かな…仕方ないから後で淵ちゃんか誰かにあげようかな)

書簡と向き合っている夏侯惇。
は相手にもされてないようなので余計に気落ちしてしまう。

「…夏侯惇さん」

「なんだ」

「仕事の邪魔しちゃ悪いから、私帰ります」

「別に邪魔じゃないぞ」

夏候惇の目線は書簡に向いたままだ。

「でも…」

「なんだか」

「はい?」

「甘い匂いがする」

「え?(タルトかな?)」

自身はチョコタルトの匂いなんて気づかなかったのだが。
は告白の件は忘れて、チョコを渡すと言う事に集中する事にした。

「あ、あの夏侯惇さん」

「ん?」

は夏侯惇の机の前に行きさっとタルトの入った箱を夏侯惇の前に差し出す。

「これ、食べてください!」

「…俺にくれるのか?」

「はい!」

「そうか、ありがたく頂く」

受け取る夏侯惇。
その意味など当然知らないのだが、は夏侯惇が受け取ってくれただけでも嬉しかった。

「じゃあ、私はこれで!」

妙にテンションが高くなってしまったはそのまま夏侯惇の執務室をすごい勢いで出て行く。

「おい、…」



***



「あ、、どう…おーい?」

夏侯淵はに声をかけたのだが、は気づかず走り去っていく。
顔が嬉しそうだったから、上手くいったのかと夏侯淵は思った。

「うんうん、アレはきっと上手くいったのだな…惇兄もやるじゃないか」

夏侯淵はうかれているだろう従兄の元へ行って見ることにした。

「惇兄〜入るぞ」

夏侯惇が返事をする前に執務室に入っていく夏侯淵。
執務室に入ると、夏侯惇ががあげたチョコタルトを食べながら書簡を読んでいる。
まるでパンを食べながら新聞を読むと言った感じで。

「惇兄、美味そうなもの食ってるなぁ」

夏侯淵は知ってて聞いてみる。

「ん?あぁ…がくれた」

「(随分あっさり言うなぁ)俺はクッキーって奴もらったぞ」

「お前も貰ったのか?」

「(なんか違うな…)でも俺のは義理だぞ、義理」

「は?義理?」

「当たり前だろ、惇兄のは本命で俺のは義理だってが言ってたぞ」

「淵、意味がわからんぞ」

「はぁ?惇兄、に告白されたんじゃないのか?」

「なんのことだ?」

おいおい、食べ物渡しただけかよ!肝心の事は言っちゃいねェ…などと心の中でに突っ込む夏侯淵。

「あのな、惇兄。の世界じゃ今日はばれんたいんでって日でな。好きな男にチョコを添えて告白する日なんだと」

「…告白って…」

「だーかーらーの本命は惇兄だから、この所来なかったのは、それを作るのを練習してたんだと」

「………」

ようやく夏侯淵の言ってる意味が通じたのか、夏侯惇の顔が赤くなっていく。
耳まで赤くして…

「お、俺のも義理とやらじゃないのか?」

「なわけないだろ?こんなすげーのが義理だったら俺のはなんだよ」

従兄のあまりの鈍さに夏侯淵は呆れてしまう。

「…はぁ…惇兄の馬鹿…俺は知らん」

夏侯淵は執務室を出て行ってしまう。

「おい、淵、ちょっと待て!」

夏侯惇は慌てて声をかけるも夏侯淵はそのまま行ってしまった。
告白しなかったも悪いのだが、実際に告白されていないのだからしょうがない。

(受け取ってもらえただけでも嬉しいな)

現状なんてお構いなしに喜ぶ

(俺はどうすればいいんだ?)

考え込む夏侯惇。


答えは一ヵ月後に出るかもしれない。








アンケ結果からだったそうなw
03/02/13
13/03/23再UP