答えのあとには。




ドリーム小説
アイツが好きな人は、今は遠く離れた場所にいる。

離れていても心の底では想いが繋がっているように見えて正直キツい。

だって、絆ってのを見せつけられているようで…私はアイツが好きだからさ。





が鍛錬所に足を運ぶと、甘寧が周泰相手に手合わせしていた。
以前は甘寧が尚香の相手をしている風景が日常だったのだが…。
その尚香は蜀の劉備のもとへ嫁ぎ今はいない。

「たんま!少し休憩しようぜ!な?な?」

かなり汗を掻いている甘寧。
周泰も額に汗が滲んでいるのだが、息一つ切らしていない。
流石と言うべきか。

「ふー参ったなぁ。旦那とやると、手加減ないしな」

「…手加減して欲しいのか?…」

「いや、それは嫌だな」

「…ふっ…」

は二人のやり取りを離れて見ていた。
特に声をかけるわけでもなく。
なんとなく、最近の甘寧には声をかけずらい。

見ていても仕方ないし、と思い鍛錬所を後にする。
最近の自分はいつもこんなだ。

甘寧を見てると泣きたくなる。

「…さっさと諦めればいいのに…」

それは自分の事を言っているのか?
甘寧に言っているのか?

は知っていた。
甘寧が尚香に想いを寄せていた事を。
誰から聞いたわけではない。
本人を見ていたら気づいたから。
それは自分が甘寧を同じように見ていたから気づいた。

と同時に尚香も甘寧を好いてる事にも気づいた。

尚香は嫁いでしまったが、きっと彼女の一番は今でも甘寧であろう。
そして、甘寧も尚香が一番なのだろう。

「私は…中途半端だ」

は深く息を吐いた。

以前はそんな事を考える事もなかった。
今の自分はここにはいない相手に嫉妬してしまっている。

自分は尚香みたいに可愛くないし、武術もできない。
自分はただの居候で、お荷物だ。

自分は…
自分は…
自分は…

そんな事ばかり考えてしまう。

「どうした?…んな所でよ」

「え?」

いつの間にか甘寧が背後に立っていた。
周泰は一緒ではないようだ。

「………」

「なんだよ?」

「なんでもない…」

は甘寧から目をそむける。

、なんか知らねぇが元気出せ」

甘寧はそう言っての頭を少し乱暴に撫でた。

「元気ないように見えた?」

「少しな。やっぱあれか?姫さんがいないのが寂しいのか?」

「…それは自分じゃん…」

「あ?なんだって?」

ポツリと吐き出してしまった言葉。
甘寧には聞き取れなかったようだが。

「な、なんでもない。ねぇ、私って役立たずでしょ?」

「なんだよ、いきなり」

「なんて言うか…皆の役に立ちたいって思うのだけど」

「役立たずだなんて思わねぇよ。気にするなよ」

「気にしちゃうのだよ」

「すんな」

「する」

「すんな」

「する」

何に意地を張ってるのか甘寧にはわからないが、このの態度には少し困ってしまう。

「あのなぁ〜」

「だって…」

「だって、なんだよ。誰かに言われたのかよ」

「ううん。私がそう思ってるだけ」

「くだらねぇ」

「くだらなくないもん!甘寧にはわからないもん!」

面倒くさそうに言った甘寧には声を上げて反発した。
そんな事は初めてだったから、甘寧は驚いた。
は言ってしまった後、バツが悪そうにしている。
甘寧はに触れようとしたが、はそれを振り払う。



「ごめん」

はこれ以上何も言いたくなくて、甘寧に言われたくなくて逃げるようにしてその場から離れた。

「なんだよ、あいつ…」

やり場のなくなった手をもてあます甘寧。
そして、先ほどのことを思い出す。



『少しな。やっぱあれか?姫さんがいないのが寂しいのか?』

『…それは自分じゃん…』



自分。
さっきは聞こえない振りをしたが、甘寧の耳にはちゃんと聞こえていたの呟き。

「…チッ…俺ってば格好悪いぜ…あーくそっ!」

自分の髪を乱暴に掻く。
最近のはどこか他人行儀で可笑しいなと甘寧は思っていた。
そう、尚香が嫁いでから。
心配だったが、が近づいてこないから自分ではどうしようもなかった。
でも、さっき周泰と手合わせしていたらの姿が見えた。
周泰に頼んで手合わせを終了してを追いかけたのだ。

結果、全然自分は役に立たないで、を怒らせた。

「寂しい…か…そうなのか?やっぱり」

自分では以前と変わらず過ごしていたつもりだったが…。



***



「ほら、可愛い顔が台無しだよ、

「うっさい、陸遜」

「あはは、で?甘寧殿と喧嘩したから僕の所へ来たのかな?」

「………」

は陸遜の執務室に来ていた。
年の変わらない陸遜と
陸遜から見ると、は可愛い妹みたいなものらしい。
から見ると、陸遜は何でも気軽に話せる親友のようだ。

二人の間に恋愛感情は皆無のようだ。

それもそのはず、は甘寧が好きだし。
陸遜にもちゃんとお相手がいる。

「喧嘩はしてないよ。私が一方的に怒っただけだもん。甘寧は悪くないし」

「ふーん。にしても、尚香様といい、といい、甘寧殿はもてますね」

「…馬鹿」

「事実じゃないか」

「知ってるからね、陸遜は尚香の味方だったじゃん」

「あー味方って言うか、そうかな?」

「そうだよ…別に良いけどね。だって、二人は両思いだったしね」

「でも、尚香様は嫁がれてしまったじゃないか、今ならにだって」

「………」

「どうしたの?僕変なこと言ったかな」

「ううん。ね、さっきさ甘寧にもね聞いたのだけどね。私って役立たずでしょ?だから」

陸遜はの言葉を遮る。

「ちょっと待って。何それ、役立たずって」

「ん?私自身の事だよ」

「怒るよ」

陸遜は軽くの額を叩く。

「だって」

「甘寧殿にも聞いたって、同じこと言ったの?駄目じゃないか」

「…そう感じるもん、私はさ」

「はぁ。しょうがないな…で、何?」

「尚香みたいに武術できたら少しは変わるかなって思った」

「あのね…」

陸遜はこめかみにを押さえる。

「君は君。尚香様は尚香様。比べてもしょうがないだろ?」

「そうは思うけどさ」

「どっちにしても無理だよ。の細腕じゃ剣なんて扱えないでしょ」

「陸遜の細いのでも?」

「言ってくれるね」

陸遜は愛用の双剣を取り出す。
ちゃんと鞘に納まっている。

「これでもには重いはずだよ」

「持ってもいい?」

「え〜危ないよ」

「大丈夫」

「仕方ないなぁ、気をつけてよ。はい」

陸遜から渡された剣は確かに見かけよりも重かった。

「あ、本当だ。重いね、これ…こんなの2本も振るってるなんてすごいね、陸遜」

「僕のはほかの人に比べて軽量だけどね」

「ふーん…おりゃ!」

は鞘を抜いて剣を振るってみる。

「あ、危ないよ!

「平気、平気」

「もう…」

「役に立ちたいって事はさ、私のこと見てって事なのかもしれない。ううん、見て欲しいんだ」

「だからって、別の方法があるでしょ」

「別の方法が思いつかなくてさ、どうしても尚香と比べちゃってね」

「そんな事されても甘寧殿は嬉しくないと思うよ」

「………」

「君が剣を振るうなんてさ…どうしたの」

はいつの間にかうずくまってた。
陸遜がの前に駆けつける。

「…っ…あ、あは」

「あ!、斬っちゃったのか!あぁ、だから危ないって言ったのに」

「ご、ごめん」

「ほら、見せてごらん」

は慣れない剣を振るったために、集中力が途切れたために、剣を滑らせ腕を斬ってしまった。
深い傷ではないにしろ、血が多く流れ痛みがだんだん酷くなる。
陸遜に急いで手当てしてもらう。

「お医者様にちゃんと見せた方が良いね。ほら、行くよ」

「う、うん」

「ごめんね、僕の所為だね」

「違うよ、私が陸遜の言う事ちゃんと聞かなかったからさ」



***



医者に見せ、とりあえずしばらくは激しい運動はしては駄目と言われる。
傷自体は深いものではなかったようだ。

翌日からは自室で大人しくしていた。

「おい、怪我したって?大丈夫かよ」

甘寧が見舞いに来てくれた。

「甘寧…普通」

「そっか。どうした、いったい」

「別に…」

のそっけない態度に甘寧はため息を吐いた。

「お前ね、ちゃんと言わないと俺にはわかんねぇぞ。最近のお前、変だぞ」

(言えるわけないじゃん。あんたのことだし)

「おい、だんまりは良くねぇぞ。ほら、喋っちまえ」

「話した所で、甘寧が困るだけだからイヤ」

「何で俺が困るんだよ?」

(だから、あんたのことだからだよ!)

心配して見舞いに来てくれたのは嬉しいが早く帰って欲しいと願ってしまう。

「陸遜にも嫌味言われるしよ」

「嫌味?」

「なんか、知らねぇけど、の怪我は俺の所為だとかよ」

「はぁ!?」

が馬鹿なことを言い出したのも俺の所為だとか」

(陸遜〜何言ってるのよ!)

「ほれ、喋っちまえよ、

ずいっと顔を近づける甘寧。
その顔は面白がっているとしか思えない。

「しょ」

「しょ?」

「尚香みたいになりたかったの!」

「はぁ?あのお転婆にか?お前…物好きだな」

がくりと項垂れる
そのお転婆姫が好きだったお前はなんだ?と突っ込みをいれたくなる。

「昨日言ったじゃん、私も役に立ちたいって。尚香みたいに私も戦えたらいいかなって…痛っ」

甘寧はの額を指弾いた。
でこピンだな。
は弾かれた所をさする。

「あのなぁ、と姫さんは違うだろ?は戦になんか出なくていーんだよ」

「………」

「なんだよ、その顔…納得がいかねぇって面だな。しょうがねぇだろ、そう思うんだしよ。
そう言うのは俺の仕事だ。お前がわざわざする事でもねーだろ。他にもあんだろ?言ってみろ」

「え、別にないよ」

「嘘つけ。今の話だとどこが俺の所為になるのかわかんねぇぞ」

「………」

「ほれ、吐け」

吐けと言われても、これ以上のことは言えないだろう、普通。
後はもう、君が好きですってぐらいにしか理由にならないのだから。

「お前が元気ねぇとさ、こっちが調子狂うしよ。なりに真剣に考えてたんだろ?
わるかったよ、昨日はくだらねぇって言ってよ。だから、その…なんだ…」

「あのね、甘寧」

「おう」

「そんな風に言われちゃうと、私うぬぼれちゃうよ?」

「は?」

「甘寧は尚香が好きで、尚香も甘寧が好きでしょ?」

「ちょ、ちょっと待て!」

「二人は両思いでも、私もね、甘寧が好きなの」

「え」

「だからさ。私も尚香みたいになれば甘寧は私のこと見てくれるかなって思ったの…甘寧?」

「………」

甘寧は右手で顔を隠している。
わずかな隙間からなんとなく、顔が赤く染まっているだろうと想像ができる。

しばらく沈黙が続いた。

は一応告白してしまったわけだし、これ以上言えることはない。
ここは自室なので、どこかへ行く事もできない。

甘寧はチラッと見る、の腕に巻かれた白い包帯を。

「お前、馬鹿だな。それで剣降るって怪我してよ。でも悪いな、の気持ち嬉しいけど、今は応えてやれねぇ」

「…うん。わかる」

「早く怪我治せよ」

「うん」

甘寧はの頭を軽く撫でて部屋から出て行った。

「振られた、って事かな…ははっ…振られちった」

最初から叶わぬ想いではないとわかってはいたけど、改めて言葉差に出されて涙が出た。
拭っても止まらず、次から次からへと溢れ出る涙。

あぁ、こんなに好きだったんだね。
本気で好きだったんだね、アイツのことを。

いつか思い出として笑える日が来るのだろうか?

でも、今は。
今だけは、まだ君のことを好きでいさせてください。
君があの子を想っている様に。
私も君を想っていたいから…。







リクでした。でもって、無題(甘尚)の後日談でもありました。
確か、これ…さらにその後を書くつもりだったと思います。…でもつもりで終わってますなw
03/10/21
13/03/20再UP