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ガキは相手にしない。 みたいな事を言ってるくせに、そのガキである私によくちょっかい出してくる奴。 しかも口悪いし、人のこと小馬鹿にしたような態度だし。 からかわれまくりの私は、いつもこいつに負けっぱなし。 でも嫌いじゃないんだよね。 素直じゃないって感じがして。 素直になるのが恥ずかしいんだ、きっと。 …てなぐらい思っておかないと、私だけ損した気分になる。 。 漢王朝が乱れ、世はまさに乱世と呼ぶに相応しい三国時代に何の因果か飛ばされてしまった少女。 だが、この三国時代はが知っている三国志とは少し様子が違う。 そんなこと、当の本人はどうでもいいわけで。 今は運良く、行く当てのない自分を拾ってくれた孫家の世話になっていた。 周りは武将たちと言うゴツイ男たちばかりかと思えば、自分と年の変わらない女の子たちもいて 中々毎日が中々楽しかった。 そんな中で、のことをいつもからかいかまっていたのが凌統。 のことがそんなに気になるか?ってぐらいに。 本人にそれを言えば 『はっ、何言ってんの?』 って鼻で笑われるも、といる時の楽しそうな姿を見ればそうとしか思えなかった。 「そんな面ばっかしてっと、元に戻らなくなるぜ?」 クッと笑いながらをまたも相手にしているようだ。 「戻らなくなったら、凌統君の所為ですー」 ベーッと舌を出し、顔をくしゃッとさせる。 それを見てさらに凌統は笑う。 「もー酷いー最初に人をそんな顔にさせてるのは凌統君でしょうがー」 「そうだったかな?」 「もう」 毎度のことなのでも深くは追求しない。 それに凌統とのこういう時間をなりに楽しんでいるのだ。 じゃなきゃ、毎回からかわれるのが嫌ならば相手にしなきゃいいのだから。 「ま、お詫びと言っちゃなんだが、今度飯でも連れて行ってやるよ」 「本当?」 「あぁ。たまにはの機嫌を取っておかないとマズイしな」 「何それ。別にそんなことしなくても、凌統君のこと嫌いにならないよ?」 「いやいや、サンは執念深そうだからな」 そこだよ。 素直に一緒にどこか行きたいって言えば済むだけなのに、一言多い…。 「また、言う!」 凌統に向かっては拳を突き出すも凌統に軽く受け止められてしまう。 そのまま拳を握り下ろさせるもその手は離そうとしない凌統。 「弱っちいな。そんなんじゃ誰も倒せないぜ」 「別に私は武将さんではないので戦いません。それに私が凌統君に勝っちゃったら困るのはそっちでしょ」 「勝てると思ってんの?」 「どうかな〜」 普通にやればが凌統に勝つなんてあり得ないのだが、は余裕たっぷりにふふんと笑う。 「頭でも俺に勝てないのに、どこにそんな自信があるんだかね、は」 の手を握ったまま遊び始める凌統。 にはそれが少し恥ずかしいのだが、止めろと言えない。 言ったところで、本人の気がすまないときっと離さないだろう。 凌統には頭脳どころか口でもまず勝てない。 親指の腹で掌をなぞってみたり、軽く握ってきたり、何がしたいのだろうか?凌統は。 と、つい口に出してしまう。 「何してんの?凌統君」 「さぁ?」 「さぁ?って…人の手で遊んでるし」 「いけない?」 「いけないって…意味がわかんないよ」 こっちは恥ずかしいのだ。 凌統の手は武将の手である前に男の手だ。 の手よりも大きくて簡単に包み込んでしまう。 力強さとか硬さを感じてしまうも、男性に手を握られ遊ばれるなんて初めてに近いのでは困ってしまう。 なんでもないような顔をしているが、正直動揺しまくっている。 こんなのがばれたらまたからかわれるなぁと微苦笑してしまう。 「の手」 「ん?」 「冷たい」 「体温は低目かな?凌統君の手は温かいね」 「そうか?」 「知ってる?手が冷たい人はその分心が温かいんだって」 凌統は眉根を動かす。 「それは俺が心が冷たい人間だって言ってんの?」 「さぁ?」 「しょーがないね、まったく」 別にお互い気分を害したわけでもないので笑っている。 だが、笑っていた凌統の顔が一瞬にして冷めた顔になった。 「?」 握っていた手にも力が入っている。 「凌統君?」 凌統が軽く舌打ちしたのがの耳にも入る。 二人の前に呂蒙が陸遜ともう一人甘寧を連れて来たのだ。 「相変わらず仲がいいな、二人とも」 「呂蒙さん。お仕事中ですよね?なのに、凌統君遊んでますけどいいんですか?」 「遊んでいられては困るな」 はははっと豪快に笑う呂蒙に陸遜もつられて笑っている。 甘寧も腕を頭の後ろで組んで顔は笑っている。 「呂蒙殿。凌統殿はの世話で忙しいのですよ。それは仕事みたいなものですから」 「陸遜、酷い〜」 「いやぁ、本当のことだし」 「もう。呂蒙さんたちはこれからどこか行くのですか?」 「あぁ。甘寧にも色々教えねばならんことがあってな」 甘寧は最近入ってきたばかりの男だ。 水賊あがりだと言っていたので怖い人かなとは思っていたのだが、話してみると気さくで、楽しいと思える人だった。 「面倒だからいいって。おっさん」 「何が面倒だ。しっかり覚えてくれなきゃ困る」 「へーへー」 戦してる方がマシだと愚痴る甘寧には笑う。 凌統はずっと会話に参加もしないがは気にせずにいた。 「そうだ。今度、甘寧の船に乗せてくれる約束どうなったの?」 は甘寧に話しかける。 「船?」 陸遜が甘寧の方を見る。 凌統もの言葉に反応した。 「そういや、したっけな。水軍の訓練が見たいってが言うからよ」 「殿は水軍に興味があるのか?」 「うー水軍って言うか、船に乗ってみたいなぁって…えへへ、船に乗って遊びたいだけです」 「そんなところだろうね、は」 だが別に窘められるわけでも、呂蒙も陸遜も変に納得してしまっている。 「おっさんがいいって言えば、俺はいつでもいいぜ」 孫家のお客様と言えども、は軍には関係ない子だ。 「そうだなぁ…殿が勉強と言う目的ならば許すが」 「勉強?します!訓練見たりして。勉強します」 「本当にできるのかな、に」 「少しぐらいならば」 軍略なんてにはまったくわからない。 「あはははは。まぁ、いいだろう。訓練の邪魔をせずに見ててくれれば」 「やった!呂蒙さんのお許しが出た〜つーことで甘寧、今度よろしくね」 「まぁいいけどよ」 喜ぶに、甘寧は悪い気もせずに笑う。 それを目の前で見せられて凌統は面白くない。 自分の知らないところでこの男ととが仲良くしていることがものすごく嫌だ。 「その辺でいいでしょ」 「わ!」 凌統はそれだけ言って呂蒙たちに背を向け歩き出した。 当然、とは手を繋いだままなのでも歩き出すのだが。 「りょ、凌統君!あ、あははは。じゃ、じゃあまたね、みんな」 挨拶もなしに行ってしまう凌統には強引に連れて行かれるも空いてる方の手で彼らに手を振った。 「なんだ、ありゃぁ」 甘寧は凌統の態度をただ見送ったが、呂蒙と陸遜だけは苦い顔をしていた。 「やはり、そう簡単にはいかないか」 「の前で暴れないだけマシじゃないですか?」 「なんだよ、二人して」 「あなたは凌統殿に酷く恨まれているのはわかっているでしょう?」 「まぁ。突っかかってくるしな。でも、そんなの気にしてたらキリがねぇよ」 俺は知らねーと甘寧は凌統たちとは反対方向に向かって歩き出した。 「ちょっと!甘寧殿、逃げる気ですね!」 呂蒙たちは慌てて甘寧を追いかけ始めた。 *** 「………」 黙ったまま歩いている凌統。 握ってくる手も力が入っていて痛い。 「凌統君?」 「……なんで」 「え?」 「なんであんな奴とへらへら笑っていられるんだよ」 「あ、あんな奴って?」 「甘寧って奴」 「そんな言い方しなくても…い、痛いって」 一段と強く握り締める凌統には声を出す。 「父上を殺したあんな奴となんか」 「あ……」 それは聞いた。 陸遜からで、凌統から直接聞いたわけじゃない。 でも、だからと言って甘寧はすでに孫呉の一員なわけで、は戦場でのことを知らないし 甘寧が悪い人だって思えないから。 話しかけられれば答えるし、自分も話しかけるし。 凌統の気持ちを無下にしたわけじゃないのだが。 目の前に親の仇がいれば、そう思ってしまうのも無理はない。 自分が彼と同じ立場ならばきっと同じ態度をとってしまうだろう。 でも、どちらかと言えば… 「行くなよ」 「どこに?」 「さっき、話してたことだ。あいつの水軍の訓練なんか行くなっての」 「そ、それは」 「行くな」 「それは凌統君じゃなくて私が決めることだよ」 「なんでだよ」 「凌統君の気持ちはわかるけど、私は別に甘寧のこと嫌いじゃないし…」 凌統は立ち止まり、の手を離した。 「すげームカツク」 「………」 「俺の知らないところであいつとが仲良くしてるなんて」 いつもの皮肉めいた物言いではなく、静かに怒りを滲ませているのがわかる。 「でも…そうだよな…俺にはの行動を制限する決定権なんてないんだ」 に背を向けたままの凌統。 「だから、もう俺も知らない。お前に一切干渉しない」 それは甘寧と一緒にいる限り、凌統はもうかまってくれないということか? 極端すぎる考えには呆れてしまう。 甘寧との事になると凌統はいつものキレがなくなるらしい。 「なんでそーなるのよ!」 は今にでも逃げていきそうな凌統の服を握る。 「私には私の付き合いがあるけど、凌統君との縁までなんで切らなきゃいけないのよ」 「………」 「私は凌統君との時間なくなるの、嫌だ」 「………」 「もっと大人になれ、ガキ!」 「っ!?」 ピクリと肩を震わせた凌統。 口元が多少引きつっているが、からは見えない。 「な・ん・で。俺よりガキのにガキ扱いされなきゃいけないわけ?あ?」 くるりと身体を反転させる凌統。 さっきまで冷たい空気がなくなっている。 「だって、ガキっぽいもん凌統君の態度」 「お前に言われたくないっての」 「甘寧にヤキモチ妬いたんだ〜あ〜私って意外と凌統君に愛されていたんだなぁ」 「な、何言ってやがる!」 カーッと頬を赤くした凌統には声を殺して笑う。 「だって、私と甘寧が仲良くしてるの嫌なんでしょ?ムカツクーとか言ったし」 「そ、それは」 怒りに任せての勢いだったとはいえ、確かに言ってしまった。 「それは、あれだ。自分の玩具が他人に勝手に持っていかれたら誰だって面白くないだろ?」 「お、玩具…」 「あとは子分が別の親分のもとに行かれたらとか」 「子分…何、そのジャイアニズムは…」 「ジャイアニズム?」 「お前の物は俺の物。俺の物は俺の物っていう考え方」 「へーじゃあ、は俺のものか?」 「違います!」 だんだんと普段の凌統に戻って気がする。 やっぱり少し憎たらしいが、これが彼らしくて一番いい。 怒った振りをしながらも、フッと目を緩め口元に笑みを浮かべてしまった。 「?」 「やっぱ、凌統君はこーじゃなくっちゃ。そっちの方が私は好きだ」 「そっちって?」 「皮肉屋さんの凌統君」 「お前ね…」 凌統は嫌そうな顔をするが、は気にもしない。 口には出せないが、凌統が甘寧と仲良くなってくれたら楽しいだろうなって思う。 今の凌統には無理かもしれないが、きっといいコンビになると思うのだが。 「私と甘寧が仲良くするのが嫌だったら、今度の水軍の訓練ついてくる?」 「誰が行くかよ」 「あらら〜それじゃあ私と甘寧の親密度は上がるね」 「別に、お前が誰と仲良くしようが気にしないことにしたから」 「へ?」 「その分、俺がを追いかけてやる」 「え、えーと」 「あー腹減った。飯、食いに行こうぜ。さっき約束したろ?」 「し、したけど。今度って」 「あいつとその親密度とやらが上がる前に俺との親密度あげてやるよ」 ニヤリと笑う凌統には目を大きく見開く。 「行くぞ、ほら」 先ほどとは違い、優しく手を握り歩き出す凌統。 (すでに凌統君との親密度はMAXな気がするけど〜わ、悪くないや) なんて思ったが口には出さずに当分、これを楽しむことにしただった。 描いたのが登場初期のころだったので、彼の口調が滅茶苦茶でしたw
05/03/05
13/03/12再UP
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